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グローバル・リーダーが採用するAI基盤(Think 2019 より)

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(2019年4月2日更新)

IBM最大で唯一のグローバル・イベントThink 2019が、会場をラスベガスからサンフランシスコへと移し、2月11日から2月15日にかけて開催されました。冬のサンフランシスコは雨が多く、市内中心部の会場間を移動するのが大変でしたが、世界中から約3万人(日本からも850名以上!)のお客様やパートナー様、IBM社員が参加し、各セッションや展示は熱気に包まれていました。

今回のThink 2019では、IBM POWER9やオープンなディープラーニング・プラットフォームPowerAIを採用した企業・組織による事例セッションも数多く行われましたので、そのいくつかを紹介したいと思います。

宇宙の天気予報(米国 NASA Frontier Development Lab)

NASAのグラハム・マッキントッシュ氏は、Power SystemsによるAIワークロードの取り組みについて語りました。太陽からの放射線は、絶えず変化する複雑な方法で地球に影響を及ぼし、送電線や衛星、通信システムなどの人類の技術基盤さえもダメージを受ける可能性があります。この脅威に対抗するため、NASA Frontier Development Labは、これらの現象を深く理解し、予測するための革新的なAIソリューションの開発プラットフォームとしてIBM POWER9を導入しました。衛星通信事業者が自社衛星をより安全に保護するため、AI研究者がNASA太陽観測所から送られてくるデータの欠損を埋めるためのニューラル・ネットワークの学習を行っています。新しいAIモデルで、太陽活動によるGPSへの影響がいつ・どこで発生するのかという、いわば「宇宙の天気予報」の精度改善に取り組んでいます。

モデル・リスクの低減(米国 JPモルガン・チェース)

JPモルガン・チェースで定量リサーチ部門を率いるエレニタ・エリノン氏は、「JPモルガン・チェースは新しいタイプのリスクであるモデル・リスクに直面しています」と語りました。同部門は、取引および他の分野におけるモデル・リスクを減らすために、投資銀行のリスク管理システムと連携したMorpheusと呼ばれるプラットフォームを構築しています。JPモルガン・チェースとIBMは、日々行われる取引が危険かどうかを理解して、損失を防ぐために、機械学習の潜在的な用途の開発に取り組んでいます。同社が取り扱うセキュリティーや詐欺、規制、不正取引などのデータセットは大規模になるため、AIプラットフォームとしてIBM Power Systemsを選択しました。Power Systemsの他に類を見ないスケール・アップ能力はGPUアクセラレータとの相性が最高(IBM POWERはNVLink2を実装した業界で唯一のプロセッサー)で、さらに柔軟性やメモリー・コヒーレンシー機能も備えているため、高速な処理が可能になっています。

ビジネス課題の解決とリスク分析の改善(米国 ウェルズ・ファーゴ)

ウェルズ・ファーゴでは、重要な財務検証プロセスに準拠するためにディープ・ラーニング・モデルを使用しており、毎日何百ものモデルを構築、強化、検証しています。同社でコーポレートモデルリスクの責任者を務めるアガス・スジァント氏は、財務レポートの提出、詐欺や金融犯罪の監視、信用リスクや
市場リスクの評価など、全てを時間的制約のあるなかで行わなければならず、洗練された高速なシステムの重要性を語りました。顧客ごとの長期履歴を含む大量のデータに対して複雑なモデルを適用するため、たくさんのモデルを同時並行的かつ高速に扱うために同社が選択したプラットフォームは、IBM Power Systems AC922サーバーと、IBM Watson Machine LearningおよびIBM Spectrum Computingソフトウェアの組み合わせでした。NVIDIA NVLink2で接続されたCPU-GPU間の高速データ転送についても高く評価しています。

スポーツのハイライト映像の自動生成(中国 テンセント)

バスケットボール・ゲームの編集

中国インターネット大手のテンセントは、選手の動きを分析するのが最も難しいと言われるバスケットボールの編集作業に、IBM PowerAI Visionを採用しています。初めて自動編集された映像が放映されたのはNBAファイナル2018で、およそ1億4300万人のユーザーが視聴しました。PowerAI Visionを採用したシステムは、2-3時間におよぶ試合の各フレームをリアルタイムで分析、分類します。具体的には、選手を識別し、その表情(不満、悲しい、幸福など)と主要な動き(シュート、リバウンド、ブロック、床への落下など)、ボールの弾道、バスケットボールの位置とともに、リアルタイムにタグ付けが行われます。こうした分析を行うための事前学習には、200時間以上の映像が利用されました。フレームごとの分析結果を利用して、わずか20秒ほどで試合状況に応じた1分のハイライト・ビデオを自動生成することができるようになりました。デープラーニングやコンピューター画像の経験がなくても、簡単にビデオや画像の分析ソリューションを利用できるようになったそうです。

44万人の従業員をハッピーに(米国 アクセンチュア)

アクセンチュアのカール・デュカズ氏は、「競争力強化を目指しているビジネスリーダーは、より良い結果を求めるためにGPUによる高速化を検討すべきである」と語りました。アクセンチュアが重視しているのは、一から新たに作るのではなく、市場で入手可能な最良の解決策を評価・展開することです。実際、アクセンチュアは、IBM PowerAIを使ったパイロット・プロジェクトを複数立ち上げています。その1つは、従業員の全ての領収書を読み込んだ後、出張全体を理解し、経費報告書に自動的に記入するというシナリオで、より良い結果を出すために取り組んでいます。同氏は、ビッグデータの処理を高速化するにも、今後のAI関連テクノロジーに備えるにも、GPUでより良い結果を生み出そうとするのは賢明な判断だと主張しました。

バイオマーカーの発見を加速(日本 第一三共RDノバーレ)

日本からも、第一三共RDノバーレの小野 祥正 氏が登壇し、基礎研究の成果を創薬に応用するための橋渡し研究(トランスレーショナル・リサーチ)と、薬の患者さんへの効果を解明することに役立つバイオマーカーの研究を支えるIT基盤について語りました。シーケンサーの性能向上によって生成される膨大なゲノムデータは、スケーラブルかつクラウド連携、データ保護機能が備わったIBM Elastic Storage Serverおよびテープ・ライブラリーに格納されます。その膨大なデータに対して、NVIDIA GPUを搭載したIBM Power Systems上のNVIDIA Dockerを利用したゲノム分析ツールやPowerAIのディープラーニングの環境が構築されました。第一三共RDノバーレは高速な全ゲノムシーケンス解析を可能にする研究開発基盤を整備し、病状を改善する可能性のあるバイオマーカーおよび治療法の発見に取り組んでいます。

Summit による人類の課題への挑戦(米国 オークリッジ国立研究所)

世界最速スパコン Summit

モスコーン・コンベンションセンターでは、Power Systemsのデモや機器展示が数多く行われていました。その中でも最初に目に入ったのが、世界のスパコンランキングTOP500で2連覇中のSummit(米国オークリッジ国立研究所)。主要コンポーネントとして、IBM Power System AC922とIBM Elastic Storage Serverが採用されており、世界最速の計算能力を人類の難題に対して活用されています。
(参照)Summit: 世界で最もスマートなスーパーコンピューター

  • 核のレベルから星の最後の瞬間の大規模な流体力学までを高精細にモデル化し、数千倍も長いシナリオのシミュレーションにより天体物理学の謎を探求
  • 量子モンテカルロアプリケーションQMCPACKにより、従来よりも多くの原子を対象にシミュレーション行い、次世代の材料を探求
  • テキストベースの論文を医療画像などの構造化されていないデータと組み合わせて機械学習を行い、米国のがん集団の包括的な情報を提供
  • 遺伝的および生物医学的データセットに機械学習とAIを適用して人間の健康と病気に関する理解を促進

この他にも、世界中で人気のある機械学習プラットフォームH2O Driverless AIのGPU対応やPower Systemsへの最適化をお伝えするセッションや、PowerAIのx86対応、IBM Watson Machine Accelerator(旧IBM PowerAI Enterprise)の発表、来場者を映すカメラと連動したPowerAI Visionのデモなど、充実したコンテンツが提供されました。

さて、次回のThinkイベントは、サンフランシスコを訪れるにはベストシーズンとなる5月上旬の開催を予定しています。ぜひ、皆様の参加をお待ちしています。


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