IBM Z

メインフレーム55年 そして未来へ – 第3回 今も圧倒的なIBM Zの優位性

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IBM Zの起源であるシステム/360(= IBM System/360、以下、S/360)が発表された1964年4月7日から、今年で55周年を迎えました。IBM Zは他のコンピュータ設計にも影響を与え続け、史上最も成功したコンピュータの1つとされています。

IBM Zの歴史から学ぶ教訓と今後を語るシリーズ、第3回。なぜIBM Zは今も、銀行や保険、小売りから運輸など幅広い分野において、停止が許されないミッションクリティカルな業務を一手に引き受けているのか。圧倒的なシェアを支える技術的な強みとは何なのか。IBM Z の最前線のエンジニアとして現在も活躍する、IBMの技術理事(Distinguished Engineer)川口一政が、その理由に迫ります。

 

今も圧倒的なIBM Zの優位性

優れたS/360を継続発展させてきたIBM Zですが、今も他のサーバーと比較して圧倒的な優位性を保っているのは、どのような点でしょうか?それは仮想化技術やパフォーマンス性能など、たくさんありますが、敢えて3つに絞ると次の点が挙げられます。

 

(1) 独自のz/OSとオープンテクノロジー/Linuxの2つを持つ

55年の歴史があるz/OSは、基幹系業務で継続使用されています。一方、オープンテクノロジーを使用したLinuxも、IBM Zで稼働します。プライベートクラウド環境において基幹系を構築する場合も、zLinuxを使用することで、高度な非機能要件が実装されます。これら2つの選択肢をお客様に提供できる点は、IBM Zの大きなメリットです。

zLinuxは1998年にIBM Zに採用され、大成功を収めました。これはIBM Zが戦略的に取り組んだものではなく、ある技術者が開発ツールとして稼動させたことから始まった試みでした。よって、このLinuxはIBM Zの為に開発されたものではなく、オープンソースであるLinuxそのものです。他のLinuxやUnixのアプリケーションとは、ソースレベルで高い互換性があり、zLinuxへのポーティングが容易です。一方、IBM Zへ移行後は、IBM Zのハードウェアのメリットである大量I/O処理、優れた仮想化技術、多重処理、そして高速ネットワークなどを享受できます。しかもLinuxをIBM Zで動かすHW上の課題はありません。分散サーバー統合による運用コスト削減や、Oracle統合によるSWコスト削減などを享受できます。zLinuxの事例は業種を問わず多数あります。今後は基幹系業務をプライベートクラウド環境に構築するケースでの、zLinuxの利用が進むと考えられます。

 

(2) 大量データの高速並列処理

IBM Zは長年かけて、大量データのI/O要求を高速並列処理する改善を行ってきました。その結果、この分野は他のサーバーを大きく凌いでいます。特にバッチ処理のような、大量I/Oをまとめて並行処理する場合は、IBM Zと他のサーバーシステムズで大きな差があります。

図3 : スピードで階層化されたストレージ構造

IBM Zはスピードで階層化したストレージ構造を持っています。最上位のCPUを筆頭に最下位のDisk装置まで、順にスピードは遅くなり、安価で大容量となります。S/360ではこのようなストレージを階層化して利用することで、最適な全体設計を導きました。1968年にキャッシュを主記憶装置とCPUの間に置き、1982年にはDisk装置にもキャッシュを内蔵させました。1985年には主記憶装置の補助として拡張記憶装置を導入しました。それ以後もキャッシュのスピード、サイズ、構成などの設計を工夫し、チャネルの改善をすることで、処理スピードと並列度の改善を行ってきました。最新のz14では4階層のキャッシュをCPUと主記憶装置との間に持っています。その結果、次のような他のプラットフォームの追従を許さない高速並列I/O処理を、最新のz14は実装しました。

  • 最大システムI/Oバンド幅 832GB/秒
  • 1つのI/Oパス当り30万回IO/秒 (4kブロックの場合、zHPFのFICONチャネル)
  • 1つのI/Oパス当り3.2GB/秒の転送 (Large sequential read/write mix、zHPFのFICONチャネル)

 

(3) 高度な非機能要件実装と圧倒的な実績

IBM Zが55年の経験と改善で積み上げた高可用性、連続稼働、高度セキュリティなどの非機能要件の実装は、ミッション・クリティカルな業務に必須です。IBM Zの基幹系では考えられない、設計や運用の考慮漏れが原因のセキュリティ事故が、分散サーバーでは起きています。他のサーバーはIBM Zの高度非機能要件実装を、一朝一夕では真似られません。ここではIBM Zの高可用性と連続稼働を実装する例として、並列シスプレックスについて少し述べます。

並列シスプレックスは複数サーバーで稼働し、データ共用を利用して最大32OSを連結して、リニアにスケールするスケール・アウトを実現します。しかし、冗長構成だけでは高可用性を実現できません。一部のサーバー、OS、ミドルウェアなど(ここでは単にこれらをサブシステムと呼ぶ)が障害やハングを起こした場合、処理中だった共用データは、直ぐには他のサブシステムで使用できないので、全体障害となります。データの整合性を維持する回復処理が必要だからです。

図4 : 並列シスプレックスによる高可用性

並列シスプレックスでは、障害サブシステムの上位層で障害やハングの検知を行う仕組みがあり、ハングなどまだ停止していない障害サブシステムを、確実に停止させる仕組みもあります。(SFM: System Failure Management)また、サブシステム停止後に、自動でデータ回復やサブシステム再始動を行う仕組み(ARM: Automatic Restart Manager)も持っています。これらによって、一部のサブシステムが障害となっても、残る他のOSで処理継続ができる、高可用性(HA)が実現されるのです。

図5 : 並列シスプレックスによるローリング移行

計画停止の極小化を実装する連続稼働(CO)も、並列シスプレックスのメリットの一つです。制約はありますが、異なる世代のサーバーや、異なるOS/ミドルウェアのレベル(バージョンやリリース)を共存できます。よって並列シスプレックス全体を止めなくても、一部を止めて新しい世代のサーバーやOS/ミドルウェアへ移行する、「ローリング」という方法で、全体を止めない連続稼働が維持できます。

データ共用をサポートするDBMS (Data base Management System)は他にもありますが、このように高可用性機能や連続稼働をサポートするDBMSやサーバーは、他にはありません。よって、24時間365日の連続可用性(HA+CO)を求めるシステムには、IBM Zの並列シスプレックスが最適です。

図6 : IBM Z の利用実績

また、IBM Zの利用実績は銀行や保険などの金融業界だけでなく、小売や航空会社など非金融業界でも多くあります。その業界のトップ企業での占有率が高く、ミッションクリティカルな業務に多用されていることも、IBM Zの非機能要件実装が優れている証です。

 

このように、大量データを高速で処理をしながら、セキュリティーや連続稼働などの非機能要件にも優れつつも、z/OSにもオープンなLinuxにも対応するIBM Zは、他に追随を許さない優位性を保っています。最終回となる第4回では、IBM Z は今後どのように発展していくのか、その展望を述べます

 


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  • 進化を続けるIBMメインフレームが、IBM z14で「iF Design Award 2019」を受賞 – 当記事では、IBM Z の機能を中心にご紹介しましたが、IBM Z が優れているのは、その中身だけではありません。その筐体デザインも著名なデザイン賞を受賞するなど、高い評価を得ています。そして、そのデザインは、IBM Z の優れた機能とも密接に関係しているのです。その秘密については、こちらの記事をご覧ください。


我々の生活を見えないところから支える、IBM Z。システムやサービスの停止時間がないことの意味や意義をイメージした動画をぜひご覧ください。


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