IBM i

「IBM i の聖地」を訪れる

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広大な敷地に、鮮やかな青色のビルが建ち並ぶ、米国ミネソタ州ロチェスター市の郊外。知る人ぞ知る、「IBM i(AS/400)の聖地」と言われるIBMロチェスター事業所です。1956年、当時のIBM社長トーマス・J・ワトソン・ジュニアがこの地で新たな開発製造拠点を開設すると発表してから、System/3、System/32、System/34、System/36、System/38、そして名機AS/400などのシステムが全世界に出荷され、現在でも、IBM iおよび関連ソフトウェアの開発が行われています。今年7月、短い夏を迎えたロチェスター市をお客様と一緒に訪問しました。ちょうど1ヶ月が経ちますが、開発陣とのディスカッションに、未だ高揚感を覚えています。その時の様子を、少しでもこのブログでご紹介できればと思います。

 

開発拠点だからこそ

今回実施したIBM i開発拠点ツアーには、米国側からIBM iチーフ・アーキテクトを筆頭に、実に10名の開発陣が講師として参加してくれました。彼らは、IBM iの戦略や方針を決めたり、日々開発に携わったりしている人々です。その道のエキスパートであり責任者でもある彼らの言葉は、断然、説得力が違います。今年4月にもIBM i 7.4およびDb2 Mirror for IBM i を発表しましたが、なぜ今回の新機能が追加されたのか、なぜ新しいアプリケーションが発表されたのかという背景や開発陣の意図は、開発拠点を訪れないとなかなか聞けません。開発拠点でお客様をお迎えするIBM Client Experience Centerは世界中にいくつかありますが、開発者直々のメッセージにはいつも圧倒されます。お客様・パートナー様はもちろん、社員にもぜひ訪れることをお勧めします。

さて、今回の講師陣で特徴的なのは、IBM i開発チームの若手メンバー2名に加わってもらったことです。IBM iの将来を心配する声がある一方、今年4月にはメジャーリリースIBM i 7.4の発表とIBM iロードマップの更新が行われました。当の本人達は現在の仕事をどのように選び、IBM iについてどう思っているのかをぜひ直接聞きたいと思っていました。若手開発者が来日する機会は滅多にないため、ロチェスターだからこそ実現したセッションと言えるでしょう。

 

若手の人材を惹きつけるテクノロジー

その若手2人とIBM iチーフ・アーキテクトとのラウンド・テーブルが始まりました。2人とも、現在の職場を「毎日学ぶには魅力的だ」「毎日楽しい。設計に裁量もある」「新しいことはエキサイティングで、今後も設計を続けたい」と評価しています。IBM iチーフ・アーキテクトが隣に座っているからといって、お世辞を言っているのでしょうか?「将来も今の仕事を続けるか」との質問には、「自分が成長していける環境でなければ、この仕事続けないだろう」とも語っていたので、お世辞ではなさそうです。2人にとって現在の職場が魅力的だと語るその答えは、オープンで先進的なテクノロジーが扱えるということです。あえて「IBM iの」と言わなかったのは、そうしたテクノロジーを扱うのにプラットフォームを「意識する必要がない」からだそうです。

彼らがIBM i開発陣のメンバーであることは間違いありませんし、彼ら以外にも、毎年オープンソースをバリバリ使っている若い開発者がIBM i開発陣に多数加わり、IBM iおよび関連ソリューションの進化に取り組んでいます。若い人材が入社後に新たなスキルを獲得すればよく、IBM iを学ぶための敷居を低すればよい(IBM iを最新のテクノロジー/環境に順応させる)と考えているからでしょう。「IBM i/RPGのスキルをもった人材不足をどう考えているのか?」という質問にも、躊躇なく「そもそも人材募集の際に、IBM iやRPGのスキルを問う必要はありません。優秀な人材は、新しいスキルをすぐ獲得することができます」という自信を持った発言に納得感がありました。「IBM iは、若い開発者を惹きつけるだけのプラットフォームに進化している」ということが当ツアーを通じて実感でき、IBM iに対する私自身の見方が大きく変わりました。

 

IBM iはノーマルだ

改めて各セッションを振り返ってみると、皆が「Normal」という単語を意図的に使っており、戦略や方針を決める際の根底にある“信念“のように感じました。新しいテクノロジーに長けている若い人材が活躍できるよう、開発陣はIBM iを最新テクノロジーが「普通」に使えるプラットフォームであり続けることに注力しているのでしょう。

これからのアプリケーション開発はモジュラー化が一層進み、全てのアプリケーションを特定の言語のみで開発するものではなくなっていくと考えられています。そうすると、言語の特徴を見極め、最適(効率的)な言語を選ぶ目利きが必要になってきます。従来の言語(RGPやCOBOL)をレガシーだと言うのは簡単ですが、これほどビジネス・ロジックを端的(シンプルかつ効率的)に表現できる言語は、オープンソース系の言語には見当たりません。そうした言語で書くことはできるかもしれませんが、アプリケーションの作りは複雑になり、バージョンによる互換性の問題に悩むことになるでしょう。一方、オープンソース系の言語は、グラフィカルなユーザーインターフェースも、アナリティクスもAIも得意な領域です。IBM iがオープンソースを積極的に取り入れているのは、ビジネスに注力してもらうためにシステムはシンプルであるべきというIBM iの本来の統合による価値感を、時代の進化に合わせて進化させていくことに繋がっているのだと感じました。

参考:JavaベースのアプリケーションからILE RPGで記述したプログラムへと移行した立命館大学様の事例

 

IBM iユーザーに「2025年の崖」は関係ない

今回のツアーでは、実に数多くのユーザー事例を紹介してもらいました。それらの事例では、海外のIBM iユーザーは、若手メンバーが中心に取り組んでいる新しいテクノロジーをIBM iの本番環境に統合し、それまでのIBM iに対する投資価値をさらに高めようとしていました。そこには、老朽化や複雑化、ブラックボックス化といったレガシーシステムが抱えがちな課題に悩む姿はありません。IBM iの進化を実にうまく取り入れ、IBM iに蓄積されたデータをより一層活用し、新たな経営・事業の変化を起こそうとしているのです。こうした新しいテクノロジーを積極的に取り入れようという考え方を持っているIBM iユーザーには、巷で話題の「2025年の崖」は関係ないのかも知れません。

考えてみれば、IBM iが稼働するサーバーは、世界のスパコン・ランキングTOP500で3連覇(2019年6月現在)を達成したシステムと同じPOWERプロセッサーを採用しており、仮想化環境PowerVMは脆弱性報告が0件というように優れた堅牢性を発揮しています。30年前のアプリケーションがそのまま稼働するという、多くのアプリケーション開発者にとっては信じられない離れ業(30年を超える後方互換性の確保)をやってのけることもあれば、300を超える主要なオープンソース・ソフトウェアもIBM i上でネイティブに稼働するのです。これまで使ってきたシステムや昔からあるシステムが「レガシー」なのではありません。進化し続けられないシステムが、レガシーなのです。

 

IBM iは50周年を迎えるか?!

IBM iは現在170カ国でビジネスを展開しており、直近の6四半期も売上を伸ばしています。「IBM iはレガシーだ」と思われている方には不思議な現象かもしれません。その戦略を決めているのは、IBM iチーフ・アーキテクトのSteve Will氏とIBM iプログラム・ディレクターのAlison Butterill氏です。両者は、「IBM iはビジネスに変革を起こすためのプラットフォームであり続けなければならない」と考えています。そのために、常に新しい機能によって変革を続け、プラットフォームが理由となってユーザー企業が変革を止めることがないよう最新の注意を払っています。これほど明確にプラットフォームの存在理由を伝えることができ、発表当時の価値を維持しながら進化を続けているプラットフォームって、皆さんの周りで他にあるでしょうか?

今年4月に発表されたIBM i 7.4は、3年振りとなるメジャーリリースでした。今回の発表に合わせてIBM iロードマップが更新され、IBM i 7.4の次と、さらにその次のメジャーリリースに対して、IBMはコミットしました。実績として、これまで各メジャーリリースに対して発表から拡張サポートを含めて10〜11年間のシステム・ライフが提供されてきています。ここからは、私個人による皮算用です。3年ごとの更新だとすると7.4の次の次は2025年(ちょうど崖ですね)にリリースされ、そこから11年サポートが提供されたとすると2036年までのロードマップが描けます。正式なIBM i White Paperではそこまでの記載はありませんが、2036年はAS/400が発表されてから48年となります。

出典:IBM i White Paper(水色は発表済みの拡張サポート)

2011年、「IBM i 25周年記念セミナー」を企画していましたが、当時の弊社社長 橋本さんは、「次の25年に向けて」と題した熱いビデオ・メッセージ収録に快くご対応いただきました。当時発言された「次の25年(50周年)」は遠い将来のように感じましたが、いよいよ現実味を帯びてきたということですね。継続できるということは、本当に凄いことです。IBM iの将来が垣間見えところで、このブログを締めくくりたいと思います。これからも、ぜひIBM iにご期待ください。


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