IBM Research (コンピューティング)

古典コンピューティングの現在と未来

記事をシェアする:

Bit今日のほぼ全てのコンピューティング(古典コンピューティング)は、数学と情報学を組み合わせた「Bit : ビット」により情報を「0」と「1」で表現し、処理を行なっています。

社会インフラを支えているコンピューティング・システムにとどまらず、身の回りで日々使われているスマホや家電製品、医療機器、車や産業機械にもビット処理を行う半導体チップが搭載されています。

古典コンピューティングの進化は、半導体の進化と共にあるといっても過言ではありません。IBMでは、さらなる半導体テクノロジーの進化と活用に向けて取り組んでいます。

微細化の追求

半導体の進化は、これまで微細化が中心となって支えてきました。これは、IBM Fellowのロバート・デナードが1974年に発表した論文で唱えた「微細化によりトランジスターの消費電力は低減し、性能が向上する」という理論が注目を集め、業界の方向性を定めたからに他なりません。IBMは、過去何十年と半導体の研究開発を続けてきましたが、直近では、2015年に7nmノード、2017年に5nmノード、2021年の今年は2nmノードのテクノロジーを業界に先駆けて発表しています。

製造技術と持続可能性の追求

しかし、半導体の微細化は、物理的な限界と無縁ではいられません。トランジスターの集積度が18ヶ月で2倍になるというムーアの法則の限界が叫ばれてから久しいですが、今後もコンピューティングの進化を支えていくために、微細化に加え、持続可能性も追求していく必要があります。

東京基礎研究所では、半導体実装や回路設計、ツールチェーン構築に注力して活動しています。物理・化学などの基礎研究を通して、国内の素材・装置メーカーなどと協業しながら、今後のコンピューター・アーキテクチャーに大きなインパクトを与える画期的なデバイスを研究しています。特に、実装技術に関する国内メーカーの技術レベルは世界的に非常に高く、共創による新たなブレイクスルーに期待が寄せられています。

もう1つ忘れてならないのは、半導体製造に関わる持続可能性です。IBMは、30年以上前に微細化を推し進めるための重要な素材の1つであるフォトレジストを開発して導入した最初の企業ですが、膨大な数の半導体チップが製造・使用される現在、チップの製造に使用される材料の効率性、有効性、安全性をさらに高める取り組みを先導しています。

IBMサーバーへの実装

2015年に業界初となる7nmの試作チップを発表してから約6年が経過しました。この間、新たな価値を提供するための回路設計やソフトウェア開発が行われ、いよいよ今年からIBMサーバーへの実装が始まりました。

IBM Power E1080(2021年9月出荷開始)

最新モデルが採用するPower10は、半導体テクノロジーの世代を全モデルの14nmから最先端の7nmに世代交代しています。デナードの法則に則り、コアあたりの性能は最大30%向上し、エネルギー消費量は33%削減することができました。また、より多くのトランジスターを集積できるということで、4つの行列演算アクセラレーターをコアごとに搭載し、AI推論の精度を最大5倍以上向上させています。さらに、透過的なメモリー暗号化機能の採用や、コアあたりの暗号化エンジンの数を4倍にするなど、セキュリティーの向上も実現しています。

IBM Z / IBM LinuxONE(2022年発表予定)

今年8月には、次期IBM Z / IBM LinuxONEに搭載予定のTelumプロセッサーを発表しました。チップ上の8つのコアは、同じチップ上のAIハードウェア・アクセラレーターにアクセスでき、トランザクションの実行中にAI推論を行えます。銀行、金融、商取引、保険といった用途や顧客接点などに活用されることの多いシステムにとって、推論を実行するために他のシステムにデータを転送する必要がないことは、レイテンシーの観点でもデータ保護の観点でも大きなビジネス価値を実現できるでしょう。

今年発表された2nmノードの研究開発によって、エンタープライズ向けサーバー IBM Power / IBM Z / IBM LinuxONE 向けプロセッサーの更なる進化(低消費電力化や高機能化)に必要となるコア・テクノロジーをIBMが手に入れたことは、これらのプロセッサーが長期にわたり安心してご採用いただける最先端のプラットフォームであると言えるでしょう。


半導体テクノロジーの進化は、社会インフラを支えているコンピューティング・システムに加えて、半導体を搭載している身の回りで日々使われている電子機器に、省電力化や高機能化といった恩恵を与えると期待されています。IBMはその最先端で、パートナーとともに半導体テクノロジーの研究開発をこれからも続けていきます。

More IBM Research (コンピューティング) stories