Power Systems

AIが支えるHPCの変革

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今週、米国ダラスで開催中のスーパーコンピューター・コンファレンスが30周年を迎えるにあたり、スーパーコンピューターがどれほど凄く、そしてHPC業界が大変な興奮に包まれているのかを、身に染みて感じています。新しいプロジェクトに取り組みたいと考えている研究者にとって、ビッグデータというブームによる膨大な量の情報は、素晴らしい機会をもたらします。しかし、それはまた新たなチャレンジの連続でもあります。情報という恵みは、洞察を創出し最大化するために新たな演算が必要となるからです。

今日、我々は、新しい洞察を明らかにするためにAIの手法をHPCに取り込む方法を研究しています。そして、押し寄せる膨大なデータの混沌とした状況に秩序をもたらし、一見すると意味のなさそうなデータも理解できるような能力を研究者に提供できるよう、最先端のHPCワークフローのほぼすべての段階で優れたツールを作成しようとしています。

インテリジェントなシミュレーション

コンピューティング能力におけるハイパフォーマンス・コンピューティングの飛躍的な進化は、必ずしも改善された洞察には結びついていません。我々は、研究者が高度なアナリティクスを適用することで、より優れた実験が計画できるような方法を検討しています。そのようなツールの1つが「ベイジアン法」です。それは、既知の事実を分析し、次に何をすべきかを示してくれる、実績ある数学の原理です。それにより、実験計画から望ましい結果が望めないようなシミュレーションを止めることができます。

私たちは医薬品、化学、材料科学の分野で顧客と協力してきました。ベイズの原則を適用したアプリケーションでは、シミュレーションの数が 75%も削減されたにも関わらず、回答の精度が向上することがわかりました。ムーアの法則が有効ではなくなってきた時代に、これは目覚ましい成果と言えるでしょう。従来のHPCと最先端のアナリティクス技術を組み合わせることで、こうした技法がハードウェア費用の根本的な削減やより深い洞察の獲得に繋がるでしょう。

現時点では、処理能力を向上させるため、どのようなアーキテクチャーの既存クラスターにも導入できるアプライアンスとして、この機能のカプセル化に取り組んでいます[i]

現在のところ、アプライアンスは事前にプログラムされているため、研究者が必要なことはデータを交換するようシステムに指示するだけです。あとは、ベイジアン・アプライアンスがプライマリ・クラスターに対してよりスマートなシミュレーション命令を策定してくれます。しかし、これはシミュレーションをよりインテリジェントにするための最初のステップに過ぎません。インテリジェントなシミュレーション・ソリューションの構築には、エコシステムによる強力なサポートが見受けられます。

Penguin Computingの最高技術責任者フィル・ポコロニー氏は、次のように述べています。「PenguinとIBMは、どちらもOpenPOWER Foundationのメンバーです。HPCユーザーに高付加価値ソリューションを提供するため、IBMと協力しています。インテリジェント・シミュレーションは、当社のソリューション能力を向上させる大きな可能性を秘めていると考えており、IBMとともにアプリケーション領域の評価に取り組むことを楽しみにしています」。

Crayのアライアンス担当エグゼクティブ・ディレクターであるジョセフ・ジョージ氏は次のように述べています。「CrayとIBMは、お客様に最高の価値を提供するために、両社の技術を組み合わせて多くのHPC案件で協業してきました。IBMと協力して、複数のアプリケーション・ドメインにわたる協調ソリューションにインテリジェント・シミュレーション・ツールを含める機会の評価を楽しみにしています」。

HPC向けコグニティブ・ディスカバリー

ベイジアン最適化のような高度なアナリティクス手法でよりスマートな実験を計画できますが、依然として従来のHPC手法を使用した作業を行なっています。また、非構造化データの準備や取り込みに研究者の時間の最大80%が占めており、さらにベイジアン最適化がその主要な問題には対処していないと認められています。

我々は、石油・ガス、材料、製造などの多くの顧客との協業を通じ、大量データの取り込みを支援するための新しいツールを調査しています。これらの統合ツールは、科学データのカタログを蓄積し、データを自動的に「知識グラフ」に変換するように設計されており、データの関係を視覚的に表現します。 IBMの研究者は、未リリースのツールを使用して科学文献4,000万本の知識グラフをわずか80時間で作成(1時間あたり50万本)したことを実証しました。研究ツールは、PDF、手書きのメモ帳、表計算シート、画像などの形式のデータを取り込み、解釈することができます。このツールは混沌としたデータに秩序をもたらし、組織がこれまで実行してきたあらゆるHPC作業に関する企業の記憶を確立することに貢献します。それは、従業員の退職に際しては非常に重要なものとなります。

それには深い検索機能が組み込まれており、知識グラフに対する非常に複雑なクエリーの実行と、目的のクエリーに対する関連性が評価された検索結果が示されます。

これらのツールを幅広いビジネスのユースケースに適用するため、ドメイン固有のアプリケーション作成にそのツールが利用されます。たとえば、今年ボストンで開催されたACS(米国外科学会議)では、有機化学反応の結果を予測するIBM RXNというツールが紹介されました。このツールは、スイスのIBMチューリッヒ研究所のシステムで稼働しており、Web上で無償利用できます。

HPCにおいて、この技術は、データに基づくアナリティクスにより既存のシミュレーションを補完するための統一されたアプローチを提供します。そして、場合によっては、伝統的なモデリング&シミュレーションを完全に置き換えることさえできるでしょう。

IBM SystemsによるコグニティブなHPCの追求

我々は、既存のAI関連製品群にこうした機能を加えようとしています。対象製品には、SummitSierraに採用されたIBM Power Systems AC922サーバーとIBM ESSストレージ、業界をリードするビジネスのための深層学習ツールキットPowerAIが含まれます。素早く導入してご利用になりたいユーザーの方には、新しいIBM Power Accelerated Computing Platformオファリングを試すことができます。それは、ラックにコンピューターやストレージ、ネットワーク、プリロード・ソフトウェアが組み込まれています。

[i] IBMの将来の方向性および意図に関する記述は、予告なく変更または撤回される可能性があり、目標および目的のみを表しています。

*本記事は、Fueling the HPC Transformation with AIの抄訳です。


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