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顧客目線でプロダクトを徹底的にデザインする。IBM Cloud Garage のデザイン思考を体験してきた

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IBM Cloud Garage のデザイン思考を体験してきた

当記事は2017年6月19日にTHINK Watsonで公開された記事「顧客目線でプロダクトを徹底的にデザインする。IBM Cloud Garage のデザイン思考を体験してきた」を再編集して掲載したものです。
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4月27日、28日に品川で開催されたIBM Watson Summit 2017にてCloud Garageサービスのワークショップ体験に参加してきた。

このワークショップ体験では、IBM が展開するコンサルタンシー・サービス「Cloud Garage」における「IBM Design Thinking(IBMデザイン思考)ワークショップ」の体験が行える。デザイン思考とは果たして何だろうか? そして実際に参加した感想などをお届けできればと思う。

 

デザイン思考とは? ビジネスにおいてどんな意味をもたらすの?

日本IBMクラウドテクノロジー部長中鹿秀明氏がDesign Thinking について説明するシーン

ワークショップではまず、日本アイ・ビー・エム株式会社の中鹿秀明氏(クラウドテクノロジー部長)がデザイン思考の概念について説明した。

デザイン思考とは「あるプロダクトを展開する上で、ユーザーが求めるものを徹底的に考える過程」のこと。

日本で「デザイン」というと、色や外見などスタイリングやパッケージを作るものという意味合いが大きいが、本来は「問題の解決や新しい提案のためのアプローチ手法の一つ」としての認識が正しい意味だという。

例えば、掃除機で有名な某家電メーカーも、製品を作り出すまでには数千回のデザイン思考を経て世に送り出している。その結果、掃除機は世界的に大ヒットした。デザイン思考の“たまもの”の一例である。

色や外見などスタイリングという意味での「デザイン」は絶対に必要なものではないが、ユーザーの求める機能への気づきを与えるための設計という意味での「デザイン」は必要なものだと中鹿氏は語る。「顧客のニーズを徹底的に洗い出し、顧客視点に立ったデザインをプロダクトに取り込むことが重要なのです」

 

体験をデザインするデザイン思考の例

MRI 装置を「ごっこ遊び」の場にした事例を紹介するIBMのデザイナー藤枝久美子氏

デザイン思考の成功例の一つとして、IBM のデザイナーである藤枝久美子氏は GEヘルスケアの MRI機器の事例を紹介した。

同社の MRI は医療機器としてスタイリッシュでデザインが良く、デザイン賞を受賞したこともある。しかし、子どもにとって MRI 検査は苦痛なのか、泣き叫ぶ子どもも多く、場合によっては鎮静剤を打って検査をすることもあるという。「どうしたら子どもたちが MRI を苦痛に感じなくなるか」という課題を設定し、徹底的に子どもの行動を観察。MRI検査室を子どもが好きな海賊や探検隊の「ごっこ遊び」の場に内装を変えたところ、子どもたちから「明日もMRI室に来たい」と声が次々に上がるようになった。

このようにデザイン思考は、機器の外見的なデザインだけではなく「ユーザーにどうすればより良い体験を提供できるか」を考えることが大事だと藤枝氏は話をしめくくった。

 

IBMのデザイン思考は、通常のデザイン思考となにが違うの?

IBM Cloud Garageメニューの図

デザイン思考が、プロダクトの使用感向上に大きな意味を成すことは理解できた。しかし、デザイン思考によって生まれたアイデアだけではより良いプロダクトを実現させることはできない。実際にプロダクトの実装までデザイン思考を反映する必要があるとIBMは考える。

そこで IBM では、デザイナーとアプリケーション開発者、さらにビジネス企画者も交えて、ユーザー体験向上のためのアイデア出しから、プロトタイプの開発、実装までをサポートする「IBM Cloud Garage」を提供している。

 

具体的な流れは

  1. IBM Design Thinking ワークショップ(アイデアの共創)
  2. MVP(Minimum Viable Product)ビルドアップ(アイデアの検証)
  3. ガレージ・トランスフォーメーション(アイデアの拡張)

ユーザーのニーズをよく理解し、プロトタイプを開発し検証、ユーザーに近い立場の人に使ってもらうことでフィードバックを得て、更に拡張する工程を、最短2~3ヶ月で行う。では、それぞれの工程について紹介しよう。

 

IBM Design Thinking ワークショップ

IBM Design Thinking のスライド資料

まずは「IBM Design Thinking ワークショップ」。いわゆるデザイン思考のプロセスだが、IBM の開発者やデザイナー、そしてクライアントの企画担当や事業担当者が加わり、ユーザーが体験すべきストーリーや、プロダクトに実装すべき機能の優先順位の決定やアイデアの洗練を、2日から5日かけて行う。このプロセスにより、どんなプロダクトをどういったターゲット層に届けたいのかを明確にすることができる。

 

MVPビルドアップ

MVPビルドアップの説明資料

そして「MVP(Minimum Viable Product) ビルドアップ」。IBM Design Thinkingワークショップで挙がったアイデアを使って、最低限動くアプリケーションのプロトタイプ(Minimum Viable Product: MVP)を IBM Cloud を用いて構築する。

Cloud はIBM が提供するクラウド上の開発プラットフォームだ。IBM Watson をはじめとして、さまざまな API が使えるようになっているため、4週間から12週間という、きわめて短期間での開発が可能となっている。

 

ガレージ・トランスフォーメーション

ガレージ・トランスフォーメーションの図。観察、洞察、試作を繰り返すイメージ

そして「ガレージ・トランスフォーメーション」では、構築したアプリケーションを検証、挙がった解決案やアイデアを再度組み込むことを繰り返し、本番の環境で動作可能なアプリケーションに仕上げていく。

このようなアジャイル開発環境でアプリケーションを構築するため、近年の高速化するビジネス変革にも対応できるようになるのが、IBM Cloud Garage のウリだ。

Watson Summit の IBM Cloud Garage ワークショップ体験では、「IBM Design Thinking ワークショップ」の工程の一部を実際に行うことができた。その様子を記事の後半で紹介しよう。

 

テーマは旅行——実際にワークショップに参加してみた

デザイン思考導入エクササイズの図。皆付箋に花瓶の図を描いている。

ここからはIBM Cloud Garage のIBM Design Thinkingを、ワークショップ形式で体験する。時間は1時間半。参加者は全部で23名、それぞれ4チームに分かれてディスカッションを進めていった。

付箋に花瓶を描いている人の図

まずはデザイン思考が概念を知るところから。2分間で「花瓶をデザインする」というお題が課され、参加者が自由に付箋に絵を描いていく。

参加者のデザインした花瓶を見てみると「一輪挿しのように見える花瓶」や「某魔神が出てきそうなランプのような花瓶」などバラエティに富む花瓶が描かれていた。

そして次のお題は「家庭で花を楽しむ方法」。すると参加者は「定期的に家族のテーマに合った花が届く」「妻に花束をプレゼントする」など、どうすれば、人々が花を楽しめるかという方向性で多数のアイデアが挙がった。

花瓶は花を飾るための道具なので、花瓶の機能(インターフェイス)ではなく、”人々が花を楽しむ方法(ユーザーのニーズ)” をデザインすることが、本来のデザイン思考の本質だと藤枝氏は参加者に語りかけた。

ここからは本格的にワークショップに移行する。テーマは「ホテル滞在をもっと便利に・もっと楽しく」。

デザイン思考の工程のAgenda

本来であれば2日から5日間の期間で行う IBM Design Thinking ワークショップだが、本ワークショップ体験は1時間半で行われた。通常の4つの工程のうち「共感マップ制作」「大胆なアイデアの創造」の2種類を体験した。

 

ターゲットを詳細に設定するための「共感マップ」を制作

共感マップの図を説明する藤枝氏

デザイン思考で重要なのは、ターゲットとなる人物像(ペルソナ)を共有すること。ワークショップでは「家族旅行中のお父さん」をペルソナの軸として設定。年齢や職業、家族構成、ITリテラシーや、どんな意図で家族旅行を計画しているのかという情報に至るまで、参加者は詳細なペルソナを設計する。

「どんな発言をする人間なのか」「どんな時に嬉しいと考えるのか、また嫌いなのか」など、事細かに性格や人間性を細かくイメージしていくのだ。

共感マップについてスタッフと参加者が会話をしているシーン

筆者が参加したグループでは、ターゲットとなる人物を「ヒロシ」と設定。ヒロシの性格や、よく話す言葉を具体的に想像するため、参加者は「旅行滞在中に何を言うか」「どんなことが嬉しい or 嫌いか」など感情や思考について、思いついたことを付箋に貼り付けてボードに貼っていく。

嫁と姑の関係を気にしたり、子どもとの悩みを深刻な面持ちで貼り付ける参加者もいて、ヒロシに対して感情移入するようすが伺えた。例えば「奥さんは両親との旅行でうまくやってくれるのか」や「本当は家でゆっくりしていたい」など。参加者に比較的馴染みが深い人物設定だけに、参加者のリアルな気持ちがペルソナづくりにうまく反映されている。

それぞれのチームが、このようにペルソナを設計。同じ「42歳の営業課長」の設定でも、家庭では弱気なタイプだったり、子どもに厳しいタイプだったりと、チームによってもペルソナの人格はさまざま。全体的に、ふだん仕事ではバリバリ活躍しているが、家庭では尻に敷かれるタイプの営業課長が多かったのが印象的だ。

共感マップDチーム

次に参加者が貼り付けた付箋の系統を整理し、参加者がそれぞれ「ヒロシだったらこういう感情を持っているだろう」という項目に、手持ちのシールを5枚貼り付けて、シールを貼った付箋から順番に優先順位をつける。そうすることで、このペルソナが家族旅行に期待することが浮かび上がってくる。

筆者のグループでは、「子どもが楽しめるコト」「両親と妻が仲良くできるために」「非日常な体験」の3つの項目にまとまった。

次項では、「このペルソナは、どういったサービスがあると嬉しいのか」というところにフォーカスして、プロダクトを創造していく。

 

こんなアイデア実現できるの? 「大胆なアイデア」の創造

大胆なアイデア

ここからは参加者が「家族旅行でこんなサービスがあったらよさそう」というアイデアを出し合い、先ほど設計したペルソナを基にディスカッションしていく。ここで、革新的なプロダクトを展開するには「大胆なアイデア」が必要となることが理解できる。

「大胆なアイデア」はどのようにして生まれるのか。ここで藤枝氏は「通常のディスカッションでは、心の中に思い浮かんでも『実現できなさそうだな』というアイデアは提案しない場合が多いと思いますが、この場ではアイデアを拡散することが目的なので、絶対に実現しないと思うようなアイデアもこの場で共有することが、アイデアの幅を拡げるコツです」と語った。

大胆なアイデアの例

藤枝氏は、この工程から実現したサービスを紹介。海外の事例として、「冬になると電柱に雪が積もってしまうのをなんとか解決したい」という課題が挙がった際に、実現が難しそうなアイデアとして「クマが電柱を揺すって積もった雪を落とす」というアイデアが出たエピソードを紹介した。

このアイデアをもとにしたディスカッションの結果、クマではなくヘリコプターのプロペラが起こす風圧で電柱に積もった雪を落とす施策に発展し、大幅なコスト削減に繋がったとしている。

この例のように、どんな突拍子もないアイデアでも、実用性のあるアイデアに発展する可能性があるため、柔軟性をもって考え、視野を拡げたあとに「実現可能かどうか」「(ユーザーにとって)重要かどうか」の優先度を付けていく。

ワークショップでは、ペルソナ設計で「家族旅行に期待すること」をお題に、参加者は再現性を考えずにいろいろなアイデアを出し合った。

「この旅行中は子どもがお父さんになる」や「子どもが目的地までのルートを自由に選ぶ」「サイコロで会話のテーマを決めてみんなで話す」など、短時間で15個以上のアイデアを出し合った。

大胆なアイデアの工程のボード部分

ここで出たアイデアから、実際にプロダクト化できそうなものに優先順位を付ける工程に移る。それぞれ参加者が「ペルソナの悩みを解決できるアイデア」に青色のシールを貼り付け「実際に実現できそうなサービスとなるか」に緑色のシールを貼り付けていく。それぞれのステッカーの合計数でランク付けを行い、そのアイデアを軸にプロダクトを展開していくという流れになる。

筆者が参加したグループで選んだアイデアは

  • (旅行中に撮った写真で)写真コンテスト
  • 両親の思い出の場所にみんなで旅行に行く
  • ホテルがゲームの世界になっている(すぐに実現は難しいがアイデアとして人気だったもの)
  • ホテルではなく野宿

の4つ。単純にシールを貼った数が多い順で並べているが、同じ数のステッカーを貼ったアイデアがあった場合は「実現可能か」を優先して選ぶ。

写真コンテストは、アイデアとしては考えつきそうなモノかもしれないが、シンプルだからこそ、家族旅行でやったら盛り上がりそうだと感じた。

アイデアを絞り、いざプロダクト化に向けてブラッシュアップというところで、今回のワークショップは終了。IBM Cloud Garage では、このあとリスクや目標の設定をし、IBMの開発チームがMVPからプロダクトを作っていくという流れとなる。

 

IBM Cloud Garage のワークショップに参加してみた感想

参加者が皆拍手をしているところ

この体験ワークショップでは、IBM Cloud Garage のデザイン思考を体験した。プロダクトを開発するうえで、最も重要な要素の一つが「なんのためのプロダクト」なのかを意識すること。それを考えるうえで、デザイン思考は大切な工程の一つだ。

「デザイン思考とは、どんなことをするのだろう」と最初は不安に思っていたのだが、ワークショップに参加してみて、グループでディスカッションしながら進んでいくうちに、参加者から「こういったサービスがあったら良いよね」「現実的に考えると難しいかもしれないけれど、こういった使い方ならできそうだよね」といったように意見が出るようになっていた。ワークショップに参加して、デザイン思考のイメージが沸いてきたようだ。

IBM Cloud Garage では、実際に動くプロトタイプを開発する。通常であれば数年はかかることもあるプロダクト開発だが、IBM Cloud Garage ならば、2ヶ月から3ヶ月程度で動作可能なプロダクトを構築できる。アイデア創出から、プロトタイプ、プロダクト化まで、これらの要素を一貫して行えるのが魅力だ。

今回、 IBM Cloud Garage のコンサルティングの発想のもとであるデザイン思考を体験することで、さまざまな役割、立場の参加者が顧客視点で参加することにより、プロダクトが飛躍的に発展するためのコツをつかんだような気持ちになった。

 

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