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高橋 聡一郎: 守破離と細心大胆 | #2 Unlock

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私たちIBMは今、変革の最中にいます。そして私たちはこのスピードをもっと速め、より大胆で魅力的なアプローチを推し進めていくことが必要だと感じています。それはおそらく、日本という国にも当てはまることではないでしょうか。

この国が真の力を解き放ち30年間の停滞を脱するのに必要なのは、新しいリーダーシップの同時多発的な発現であり、それを支え加速させるシニアリーダーたちの支援ではないでしょうか。

 

シリーズ「Unlock(アンロック)は、IBMのシニアリーダーたちのありのままの声を、内にとどめることなく広く社会に向けて発信していこうというものです。そして率直なご意見・ご鞭撻を頂戴することにより、一層のスピードと大胆さで社内外の変革に取り組もうというものです。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

日本アイ・ビー・エム 執行役員 テクノロジー事業本部 クライアント・エンジニアリング担当

村澤 賢一

 

もくじ | 高橋 聡一郎 Unlock

■ マネージャーは部下を抱え込まず後輩に早くポストを
■ 陽は東からではなく西から昇る | Something New Something Big
■ 守破離 | ビジネスリーダーの8つのルール
■ 長期潮流 | IBMは何に取り組めば良い?
■ 細心大胆 | イーネットのパーパス


 

株式会社イーネット 代表取締役社長 高橋 聡一郎

 

「IBMへの入社理由? それは給料が良かったからだよ。あ、でも記事には『テクノロジーで世界を変えられるのではないかと思ったから』って書いておいて貰った方がいいかな(笑)」 −− こんなやりとりからスタートした今回のUnlockインタビュー。

第2回は今年、株式会社イーネットの社長にご就任された高橋 聡一郎さんに話を聞きました。(村澤)

 

マネージャーは部下を抱え込まずに早く後輩にポストを

 

村澤: IBM入社後10年にわたり福岡で地方銀行担当をやっていた高橋さんが、その後、本社経営企画スタッフを1年間されています。この異動は少々珍しいもののように見えますが、何か経緯があったのでしょう?

 

10年同じ仕事をしたから、そろそろ違うことをしたいって希望したんだよね。そうしたら「金融系営業部のマネージャー職と経営企画のどちらが良い?」って聞かれて。でも、自分じゃなかなか選べなくてね、何人かの方にアドバイスを頂いたんだ。

「最短距離でマネージャーになるべし」と言う人も居られたけど、「地に足をつけてしっかり進んでいく方がいいんじゃないか」と、とても信頼している方に言われて。福岡に長く赴任していて、本社のこともIBM全体のこともよく分かっていなかったからね。

振り返ってみれば、あのアドバイスのおかげで今があるのかもしれない。そのときの出会いとつながりが大きな財産になっているしね。今、IBMの社長をやっている山口さんともあの時代に知り合ったな。

 

その後、ハードウェア製品の営業部長をやってからは、ずいぶんと長く金融事業の中で担当部長や事業部長を経験させていただきました。

それぞれの場所で上に引き上げていただいたけれど、当時のマネージャーたちって、自分のポストを守るようなことはせず、下の人間を育てながらどんどん自分は新しいチャレンジに乗り出して行ったよね。僕もそうやって上の人にポストを作っていただいたから、同じようにそれを引き継いでやってきました。

 

マネージャーの皆さんには、部下を抱え込むことなく、早く後輩にポストを渡していくことを強く勧めたいね。3年で次に進むくらいの気でいた方が良いんじゃないかな。

一方で、若手・中堅社員には「自分から仕事を変えていけ」と勧めたいな。ただ、今のIBMは人事ローテーションがしづらくなっているよね。これは大きな組織的課題だし、役員レベルでの積極的な支援が必要だと思う。

 

陽は東からではなく西から昇る | Something New Something Big

 

村澤: 高橋さんの資料には営業経験から学んだこととして「真の意味でのお客様満足の実現」と書かれていますが、どのような経験から導き出されたのか、少し時代をさかのぼって教えてもらえますか。

 

まずIBM入社後に感じたのは、成果主義・実力主義で不公平感の少ない外資系っぽさと、仲間意識や家族的ムードの日本っぽさの二面性だったね。運動会をやったりソフトボール大会をやったり、ちょっと大学のサークル活動の延長線上みたいなところが昔はあったよね。

社内だけではなく、お客様との関係性にもそういう面があった。当時PCやATMの価格破壊を行なったり、ATMの共同利用という当時の常識ではまったく考えられないと思われたことをやったりできたのも、社内でもお客様とでも、コミュニケーションに時間をしっかり費やすことができたからだと思う。

実際、これだけの新しいことを、それもある種の破壊的イノベーションにつながるような活動をスタートするには、入り口で苦労するものなんだよ。それを突破してやり切るには、お客様のお悩みに向き合って考え抜くしかないんじゃないかな。

 

村澤: 複数銀行の共同利用などは、現在の「プラットフォーム・ビジネス」にもつながるものですよね。こうした発想に顕著ですが、高橋さんのやってきたことは社会の半歩先を行くものが多いですよね。どうやってそれを身につけたのでしょう?

 

うーんなんだろうね。しつこくそれを要求される環境で鍛えられたのかな。

「陽は東からではなく西から昇るんだ!」と、福岡ではいつもワイガヤをやっていたからね。そういう「何か新しく大きなことをやろうぜ。それでお前はどんなでかいことを?」と問われ続けているうちに、自分自身がそういう発想で考えるようになったのかもしれないね。

 

守破離 | ビジネスリーダーの8つのルール

 

終始穏やかな語り口調の高橋さんですが、その口から出てくる言葉は、相手の脳裏に「直感的にイメージを沸かせる」もの、あるいは「それはなんだろう?」と身を乗り出させるものが多いことに気づきました。

それは「守破離」や「感謝でつながる組織」や「細心大胆」という分かりやすいものから、「牛丼優先」「一筆書きシステム」「四番手にチャンスあり!!」など…。

まず、守破離について伺ってみました。(村澤)

 

守破離は自分にとって大切な言葉なんだよね。まずは「整える」、そして学びを守り確実に実行する。それがないと口だけになってしまう。地盤づくりだね。

僕はビジネスリーダーとして8つのルールを自分に課しているんだけど、それも「守破離」。少しずつ、以前学んだもの進化させて、独自のものへと変えてきています。

 

村澤さんもビジネスリーダーだからここに書かれていることは分かると思うけど、でも特に声を大にしてリーダーたちに今伝えたいのはルール3かな。

「本気で、一人の人間として部下のことを気にかけているか? 心の底から、メンバーの成功だけではなく、彼らの心身の健康や生活を気にかけそれを優先してあげられているか?」ということ。

これが本物じゃなければ、部下だってマネージャーを本気で見てくれるわけなんてない。「この人のために」なんて思ってくれるわけがないよね。

 

それから、ルール6のキャリア開発支援だけど、しっかりと次のリーダーとなる人物を決めたら、本人に対するコーチングだけじゃなくて、「次はこの人がリーダーだな。任せられそうだ」という空気をチーム内に作っていくのも大切な仕事。ときには自分の手柄を放り出してでも。それがシニアリーダーの役割りだよね。

 

それからもう一つ。メンバーが本当に辛い状況にいるときに、自分が率先して矢面に立てること。ルール8の「必要とあらば袖を捲り上げ、メンバーと一緒に課題に取り組む」だね。難題を前にした部下と、共に取り組む。

 

長期潮流 | IBMは何に取り組めば良い?

 

村澤: 高橋さんの目には、今の潮流がどう見えていますか? それに対してIBMは、どういうビジョンで何に取り組んでいくべきだと思われますか?

 

難しい質問だね。これはあくまでも高橋個人の意見として語らせてもらいますね。

僕は、IBMという会社の一番の特徴はお客さまとの強固なリレーションシップじゃないかと思っている。揺らいできている部分もあるのかもしれないけど(笑)。

 

あとは、その関係性をどうやって強みに、戦略に変えていくかだよね。

それを活かすには、日本を代表するようなトップ10%企業がもっと進化できるように、ヒト・モノ・カネを投資するべきじゃないかなあ。

あるいは、それを成功させるためにスタートアップやベンチャー企業に注力するのもありだろうね。

まあIBMは両方やるべきなんじゃない? ただし、その真ん中はない。そこはないね。

 

細心大胆 | イーネットのパーパス

 

村澤: なるほど。ではイーネットはどうでしょうか。

 

今はまだイーネットの社会的使命、いわばパーパスを問い続けているところだね。イーネットの社長としての僕は、まだ守破離の「守」のステージにいると言ってもいいかもしれない。

とは言え、まだはっきりと明言できる答えではないものの、ATMを本当に必要としている人がいるところに置きたいとは強く思っていて。サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)や介護施設もそういう場所の一つかな。

キャッシュレス社会と言うけれど、社会にはまだ現金が必要だし、現金しか扱えない人もクレジットカードを持てない人もいるんだよね。まだまだこの分野でも貢献すべき領域は大きいと思っている。

 

一方で、若者の行動変容に伴った転換も必要だよね。彼らはATMへの入金が多いんだよ、おそらくはいちいち現金で支払うのが面倒だから、全部スマホで済ませられるようにしたいからだろうね。それからビットコインをATMで扱えるようにして欲しいって声も届いている。ただね、ATMは金融庁の指導下にあることもあって、なかなか新しいことがやりづらいのも事実だね…。

そうは言っても、リーダーの役割りは「難しい」で終わらせず、前を向いて突破を図ることだから。イーネットという会社自体も、そうやって生まれた会社だし。

 

村澤: そうですよね。現在名誉相談役の北城恪太郎さんが、アメリカ本社と何度も何度も何度も掛けあって生まれた、伝説の会社ですもんね。

 

さっきも言ったように今はまだ「守」のステージで、こうした話もまだ構想に入る前段階くらいに受け取っておいて欲しいんだけど、ただこれは強調しておきたいな。大事なのは「細心大胆」だということ。計画の大切さと同じくらい、大胆に勝負することも重要。

慎重に検討を重ねているうちに、勝負することを忘れちゃったなんて人も案外いるからね。そうならないようにしないと(笑)。

 

村澤: 高橋さん、今日は本当に貴重なお時間をありがとうございました。

 

村澤さん、最後にもう一つだけ言わせてもらっていいかな。繰り返しになるところはあるんだけど、イーネット社の社長としてこれはどうしても伝えたいことなので。

キャッシュを必要とする人たちが社会にいる限り、イーネットのATMが社会に存在し続けなければいけないと僕は思っているのね。

それは、イーネットのATMが、メガバンクやゆうちょ銀行だけじゃなく、ネットバンクや信用金庫、クレジットカードにも幅広く対応しているから。そしてそうした人たちの負担をもっと下げるために、求められている場所にもっとATMを設置したいと心から思っているんです。

この考えに賛同いただけるのなら、イーネット共同ATMを1回でも2回でも多く使って欲しいです。このATMで入出金していただくだけで、それが大きな応援となるので。何卒よろしくお願いします。

 


 

我われIBMはいま、変革の真っ只中にいます。そして日本も同様かと存じます。

ただ、同じようなときがこれまでにもなかったかと言えば、そんなことはありません。何度か、あるいは何度も「変革のとき」を迎えていたのに、私たちはそれをうまく捕らえ十分に活かすことが出来ず、今に至っているのではないでしょうか。

 

「幸運の女神には前髪しかない」という、レオナルド・ダ・ヴィンチのものとされる言葉があります。前髪を掴むのは暴力的過ぎるしいささか前時代的に過ぎますので、しっかりと女神の手を取り、一緒に前へと進んで行きたいものです。

そのために必要なのは、同時多発的な新しいリーダーシップの発揮だと私は信じています。そしてそれを支えるシニアリーダーたちの支援が、ここIBMでも日本という国家にも必要ではないでしょうか。(村澤)

 

 

TEXT 八木橋パチ

 

 

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