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鈴木 みほ: 技術や価値観の大変革に備え、共創の準備を | #5 Unlock

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21世紀もはや四半世紀を迎えようとしています。「大きな変革の時期を迎えている」と言われ始めてからかなりの時間が経っていますが、私たちは十分にそれに向かって行動を起こせているでしょうか?

シリーズ「Unlock(アンロック)」は、そうした行動の遅れを取り戻すべく、積極的にその動きを加速させているIBMのシニアリーダーたちの声をお届けしています。

今回は、前半でまず鈴木さんにご自身のキャリア・ヒストリーをお話いただき、後半は私、村澤との対談をお届けします。

鈴木 みほ(すずき みほ)
日本アイ・ビー・エム ソニー・エンタープライズ事業部 事業部長 Managing Director
村澤 賢一 (むらさわ けんいち)
日本アイ・ビー・エム 執行役員 テクノロジー事業本部 クライアント・エンジニアリング担当

前半 | 鈴木みほキャリア・ヒストリー

鳴かず飛ばずの新入社員時代…。そこからの大ブレーク

入社時に「新しいことにチャレンジするのが大好き」ということを伝えたところ、当時新たに設立されたばかりのネットワークサービスという部門に配属されました。ネットワーク環境の構築や保守業務を、アウトソーシング的に契約していただく営業部門ですね。

そこで2年近く、IBMとこれまでお取り引きのない企業様を担当させていただいたのですが、私はまったくの鳴かず飛ばずでした。

まだ経験が浅く、所属長や周りに相談することもうまくできなくて…。あるとき「もう無理…限界」と異動を願い出たんです。正直、メンタル的にも追い詰められて、元気を失っていました。

結局、「国際ネットワーク」担当となり、外資系の自動車会社やハイブランドを担当しました。ただその仕事はそれまでとは違って、こちらから売りに行くというよりは、本国のお客様から依頼に基づき日本のお客様を支援していく仕事でした。そこで半年くらいの期間少し違うスタイルで仕事をした後にまた通常の営業職に戻り、同じお客様を担当しました。今から思うと当時の所属長は忍耐強く見守ってくれたのだと思います。

元来、私が華やかな世界が好きで、世界に名だたるハイブランドのお客様を担当して嬉しかったことと自分で考えて動けるように少し成長したおかげで仕事が楽しくなり、そこで私、自分で言うのもアレですけど「大ブレーク」したんです。

そして不思議なもので、バンバン売れるようになったら、すっかり元気も取り戻していました。

この時代にちょっとおもしろい自慢話…自慢かな? があって。

私が昔から大好きだったラグジュアリーブランドがあったんですが、そのとき、日本ではそのブランドはA4サイズのバッグを取り扱っていなかったんです。

ありがたいことにそのブランドを担当させていただく機会ができて、その際に「仕事中もこのブランドのバッグを使いたい!」と思っていた私は、勝手にデザイン画を描いて打ち合わせに持っていき、頼まれてもいないのにそのバッグのデザインについて50分くらいプレゼンしちゃったんです。ネットワークに関する打ち合わせで、全部で60分の予定だったのに。意外にもお客様は私のバッグ案の話を真剣に聞いてくれてマーケティングに出してあげる、とデザイン画を受け取ってくれました。同行したIBMのお客様専属担当営業部員がポカーンとしていました(その後大きな契約をいただきました)。

アメリカ本社で感じた「日本の社員の方がすごくない?」

その後も「新しいことがやりたい」とずっと言い続けていたら、あるとき「アメリカで働いてみないか?」と声をかけていただいたんです。私、「海外で働いてみたい」って夢も持っていたので、「これはいいチャンス」と大喜びでIBMアメリカ本社に出向しました。

セールスオペレーションの仕事で、ソマーズというニューヨーク市郊外のオフィスに1年半通いました。

私、何か引き寄せちゃうんですかね? 高速道路で走行中にタイヤがバーストしたり、大家さんの都合で急にアパートから強制退去させられたり、水道管が破裂して家中が水浸しになったりとか。なかなかのサバイバル生活で、毎日がスリリングでしたねー。

仕事の面では、「IBM本社には優秀な人間が溢れているのだろう」と身構えていたんですけど、「日本と変わらない、いや案外日本で一緒に働いていた方たちの方が優秀かも?」と思うことも多かったです。母語じゃないので英語は大変でしたけど、そこさえどうにかできれば大丈夫だなって私は感じていました。

日本に戻ってきてから、十数年に渡り自動車のお客様を担当し、いろいろな体験をさせてもらいました。たとえば、お客様もI BMも初めての経験であったアウトソーシングサービスでは、サービス開始の初めの1年くらいは関係がギクシャクしました。でも大規模な契約を一緒に修正検討しているうちに、気づけばお客様と一緒に頑張る日々になっていました。また経営が苦しかったお客様を担当した時には、お客様のために社内と随分戦い例外的なことを通しました。

それから2011年の東日本大震災のときは、とある外資系のお客様のサポートに奔走した結果「サプライヤー・アワード」という賞を初受賞させていただき、本国での豪勢な式典に招待いただいたなんてこともありました。

その後2014年からは、現在まで続くソニー様の担当となりました。今では考えられないことですけど、あの当時のソニー様は赤字続きで大変な時期で…。IBM社内でもソニー様担当チームは混乱していたし、正直チーム内のムードもギスギスしていましたね。

でも私は、やっぱりお客様とリレーションを地道に作っていくしかない、お客様に役立つものを作り提案させていただき、一緒に歩んでいく以外にないと社内を奔走していました。

あの頃、一緒にソニー様の支援に取り組んでくれた方たちは難しい状況であったにも関わらず一緒に頑張ってくれて本当に大感謝です。私にとってとても大切な仲間です。その後のソニー様の目覚ましい復活劇は、村澤さんもよくご存知ですよね。

鈴木さんの現在までの歩みをここまで語っていただきました。とても印象深かったのは、お客様のビジネスに対する本物の興味に常に溢れていらっしゃったことと、大変そうな話も実に楽しそうに語られる姿です。

ひょっとしたら、その姿勢には、キャリア初期に「誰にも相談もできず思い詰めた」という経験が関係しているのかもしれません。

それでは、ここからは対談をお届けします。


後半: 未来に向けて鈴木みほが見ている世界

お客様を大好きになり、脳みそに汗をかきながらトコトン考える

村澤:デザイン画の話もアワード受賞の話も、現在の鈴木さんの姿を象徴する話だなと思って聞いていました。先日私も一緒にソニー様との打ち合わせに参加させていただきましたが、鈴木さんが語るaibo(アイボ)の話を、お客様がニコニコと聞いていらっしゃる姿がとても印象に残っています。

鈴木:「お客様を大好きになる」って、私はIBMの営業としてとても重要なことじゃないかと思うんです。

もちろん、私たちよりお客様の方が自社のことをよくお知りですし、お考えになられています。でも、脳みそに汗をかきながら、お客様についてトコトン考えたことをお伝えすれば、お客様もしっかりと受けとめてくださいます。「社外から、そこまで真剣に考えてくれているのか」と。

村澤:そうなんですよね。私たちが思っている以上に、お客様は私たちの熱量を敏感に感じ取られていますよね。ところで鈴木さんは現在をどのような時期として受け止められていますか?

鈴木:そうですね、これからの5〜10年は、100年スパンの大変革の方向が形作られていく時期だと私は思っています。それはテクノロジーだけの話ではなく、イデオロギーや価値観も含めてです。

コンピュータも従来のノイマン型だけではなく、量子型の社会実装が進むでしょうし、一部バズワード化しつつあるメタバースも、エンタメだけではなく生活や仕事の中にも組み込まれていくと思うんですね。そうなると、これまで築き上げてきたものも、未来のために意識的に崩していかなければならないものも出てくるだろうと思うんです。

そんな中で、こうした変化が社会や日常にどう組み込まれていくのか、そしてお客様にどんな影響を与えるのか。社内外から得られる情報だけでなく、自分自身やチームでよく考えて、お客様にお伝えしていくことが大切です。

→ 参考: プレス・リリース | 東京大学とIBM、日本初のゲート型商用量子コンピューターを始動

 

村澤:おっしゃる通りです。実は私も、チームメンバーと共に「プラネット・リソース・プランニング(PRP)」といういわば「全地球資源計画」というものについて、考えを進めています。

地球における人類の活動を大きく4分類して、人間の基本的な営みを支える食・住・エネルギーなどが全人類にあまねく行き届く分配システムと、経済合理性をより適切に用いたゲゼルシャフト的な貨幣経済社会の在り方とを見つめ直し、その循環や組み合わせを考えていこうという取り組みです。

一種の「思考実験」とも呼べるかと思いますし、以前であれば夢物語として片付けられてしまったかもしれません。でも、これからの大変革の中であれば、技術や価値観の大変化に伴って、実現可能なのではないかと思っているんです。

→参考: ゲゼルシャフトとゲマインシャフト | 在りたい未来を支援するITとは? シリーズ#1

 

鈴木:壮大ですね! でも、本当にそれだって可能になり得るし、そこでは多くの社会課題が同時に解決に向かっていくんだろうと思います。是非日本発で実現させたいですね。

技術や価値観の大変革に備え、アイデアソンで共創の準備を

鈴木:私も、この大変革の時代においてお客様についてとことん考えるための入り口として、ソニー様担当チームでアイデアソンを頻繁に行うようにしているんです。例えば、「量子コンピューティング × ソニー」をテーマとしたアイデアソン。一生懸命考えて出したアイデアをソニーの役員の方がたに投げかけてみたところ、とても楽しいディスカッションへとつながっていきました。

私、アイデアソンのような気軽に楽しく意見を出し合える場があることって、大切だと思うんですよね。そしてそうした場が、ダイバーシティの溢れる場となっていることが重要だと思っていて。村澤さん率いるクライアント・エンジニアリング(CE)のメンバーにも色々な意見やアイデアを出してもらって、本当に感謝しています。

村澤:こちらこそ貴重な機会をありがとうございます。鈴木さんもご存知のようにCEの100人強のメンバーは8割以上がIBMとは異なる会社・業界で、デザイナー、エンジニア、サイエンティスト、コンサルタントとして活躍してきた方たちです。彼らの多様な経験と視点が、新しいアイデアや意見へとつながっていきますよね。

鈴木:「ビジネスを妄想してみんなで自由に話す」という体験は本当にワクワクするし楽しいですよね。

でもそれだけじゃないんです。そうやって真剣に自分たちの頭で考えたことをお客様にお伝えし、お客様との会話を通じてヒントを見つけ、考えたことを深化させていく。それを繰り返すと、共創を始め、共に価値を生みだしていくという入り口に辿り着ける。−−こうした大きな喜びに溢れた体験を、できるだけ多くのIBM社員に体験してもらいたいんです。

村澤:お客様のビジネスに対する共感力がますます重要になっている中で、そういう体験価値をどれだけ実感できているかは大きな違いを生みだしますね。そして思考力や対話力の幅や深みも、ぐっと増すでしょうね。

先々を見据えて、思いっきり自分の信じることをやって欲しい

村澤:私はIBMという会社には2つの「不変の価値」を持っていると思っているんです。

まず1つは研究所から生まれるもので、何十年にもわたって毎年研究に多額の投資を行い、必死になって「ゼロイチ」の価値創出を続けています。

そしてもう1つが、社会インフラ全体を支え続けていくために、情熱も能力も腕前も総動員して、全体オペレーションを磨きに磨いて付加価値を増大させ続けているという点です。

この2つは、私たちがなんとしてでも次の世代に残していかなければならないものですよね。そしてその実現の鍵となるのが「チャレンジ」だと思っています。

最後に、鈴木さんから改めて、若者たちへのメッセージをお願いします。

鈴木:先々を見据えて、思いっきり自分の信じることをやって欲しいです。そしてIBMにおいては、それを笑顔で支援するのが私たちシニア・リーダーの役割だと思っています。

ところで、ゲームと車に強い興味を持っていて、ソニー様に新たな価値提供を行いたいと考えている社員には、どんどん私に連絡してきてもらいたいです。


 

最後までお読みいただきありがとうございました。

鈴木さんにはここには収まらないくらいの多くのアイデアやご意見をお聞かせいただきましたが、「私たちにはもっと人間の幸せ度を上げる活動ができるはず」という言葉がとても強く印象に残っています。

ありのままの自分を消したり分離させたりすることなく、まるごとの自分自身でいる状態を「ホールネス」と呼びますが、そうした人間が人間らしく生きられる社会をサステナブルに築いていく方法について、私自身もこれからも脳みそに汗をかきかき考え続けていこうと改めて意を強くしました。

皆さまより当記事への率直なご意見・ご鞭撻を頂戴できましたら幸いです。(村澤)

 

 

TEXT 八木橋パチ

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