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Think Summit 2019レポート#2 – 日本市場におけるIoTの実践セッション・レポート(Neuro Meets CVI)

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日本IBMの大型イベント「Think Summit 2019」2日目の「Industry Solutions Day 2」にて開催されたWatson IoT事業部長 村澤賢一と、慶應義塾大学 満倉靖恵教授による講演「日本市場におけるIoTの実践 – その可能性をどこまで広げることができるか」の模様をお伝えします。

 

■ 産業分野向けIoTの現況マッピング

最初に登壇したWatson IoT事業部長 村澤賢一は、「ちょっと壇上からだと皆さまとの距離が遠すぎますね…」と言うと、ステージから降りて話を始めました。

 

ここ5年ほどバズワード的な扱われ方をしているIoTですが、日々、現場でお客さまと一緒にIoTを軸に動いている私どもとしては、いよいよ実証実験のステージから本番普及の段階に入ったことを感じています。

 

少し見づらい図で申し訳ないのですが、この図が示しているのはIoTやその周辺の技術、そして関連する重要な取り組みとして私たちWatson IoT事業部の産業分野向けの取り組みをマッピングしたものです。

いくつかを解説させていたただきます。

 

  • MES(Manufacturing Execution System: 製造実行システム)

製造業において顕著ですが、センサーで取得した音声データや画像データをAIにより解析し、良品不良品の見極めを新しい次元で実施することで大幅な効率アップにつなげている企業が出てきています。

 

  • EAM / APM (Enterprise Asset Management: 設備管理 / Application Performance Management: アプリケーションパフォーマンス管理)

設備や装置を単体ではなく、企業全体の資産管理という視点で見ていく手法を用いて設備管理や保全業務をレベルアップしていこうというものです。

 

  • PDS(Personal Data Store: 個人データ取引)

一例として「つながる車両」を挙げると、車両の走行に伴う運転者や車に関するさまざまなデータを、企業グループやコラボレーションを介して適切に共有することで、新たなサービスやビジネスをお客さまに提供しよういう動きです。

 

  • PLM(Product Life cycle Management: 製品ライフサイクル管理)

IBMでは、Continuous Engineeringという言葉で、プロダクトライフサイクル管理とアプリケーションライフサイクル管理(ALM)の連携を推進しています。メカ・エレキ・ソフトの一体化が進む中では、情報活用の一元化が新しい価値創造のプロセスには欠かせないものになっていくことは間違いないでしょう。

 

■ IoTを価値創造に。IoBの実践へ

特に注目しているのが「IoTの利用価値の捉え直し」であり、それが顕著に現れてきているのがIoBだと村澤は続けました。

 

産業分野におけるIoTには、取得できるデータを分析して「予兆保全」という故障やトラブルを未然に防ぐ技術に有効活用する動き、それから現場で起きる出来事をデータ化して解析し、設計やアフターサービスにフィードバックすることで新しい価値創造につなげる動きが活性化しています。

ここで一つ、KONEという800万から900万基のエレベーターやエスカレーターの管理をしているヨーロッパの企業の例を紹介させていただきます。彼らはエレベーターを単なる上下動のための手段として捉えるのではなく、ピープル・フローという概念からエレベーターを「人の流れの起点」という新しい定義付けをし、問いかけをしています。

初期の段階ではIoTデータを故障予知などに活用していましたが、さらにそこから利用者の体験価値の最適化を実施し、新たなサービスを生み出そうとしているわけです。

 

今後、先ほどのチャートの3番目のPDSに代表されるように、社会資産としてデータを共有化していくことや、周辺業務や日常に用いられているテクノロジーとの関係から、IoTの利用価値を捉え直していくことが一層重要となっていくことでしょう。

特定分野や目的に対するIoTを縦軸としたら、さまざまな動きを横軸で捉えて再整理することで、これまでにない大きな価値を見出すことができるのではないか。

私たちWatson IoT事業部では、そんな観点からお客さまとお話しさせていただくことが増えています。

 

そんな中で、とりわけ多くの企業さまから注目を集めているのが、身体データをインターネットにつないで活用するIoB(インターネット・オブ・ボディーズ)の実践です。

日本の社会課題である少子高齢化や働き方改革への対応と合わせ、体調管理やパフォーマンスコントロールにいかにIoTデータを活用していくか。人生100年時代、現役75年社会の働き方へと、企業の、そして「働くプロフェッショナル」としての私たちの意識をアップデートするときが来ていることを感じます。

 

ここからは、脳波解析や生体信号処理の第一人者である慶應義塾大学の満倉靖恵教授に、そのあたりの最前線について、お話しいただきます。

 

■ 脳波や生体データを正しく解析する秘訣とは

村澤からマイクを受け取った慶應義塾大学 満倉教授は、最初に聴衆に一つの質問をし、驚きの解説を始めました。

「あなたは昨日はよく眠れましたか? よく眠れたという方は手を挙げてください。…大体半数くらいの方たちがよく眠れたようですね。でも、実は半数の方は間違っているんです。」

 

「自分の睡眠のことなのだから、当然正確に答えられる」と皆さん思われているかもしれません。

でも実際には、これに正しく答えられる人はほとんどいないんです。科学的な詳しい調査の結果では、なんと半数以上の52%が正しく把握できていませんでした。

 

睡眠には5段階のレベルがあり、5段階目の深睡眠に入れているかを調べるには、従来はPSGという接触型の装置を使い2日間入院する必要がありました。そしてPSGを使った検査では、頭や顔のあちこちにコードをつける必要がありました。

でも、私たちの研究により、PSGのようなコードは不要で、非接触技術で心拍測定し信号解析する「睡眠深度解析」技術が開発され、PSG以上の精度で深睡眠の状態を測れるようになったのです。

 

このように、人体が出している信号をデータとして取得して分析していくのが私の仕事です。最近、私が特に注目しているのは脳波なのですが、脳を対象として研究は多数あり、工学、理学、医学と他分野にわたっています。

ここでいくつか、私がこれまでに企業と共同で行なってきた研究開発や商品開発を紹介させていただきます。

 

 

最近では単極型で簡単に計測できる脳波計測器が多数世の中に出回っています。でも、あまり知られていないことですが、実は脳波計測では「ノイズ除去」が大変重要な役割を占めています。こうした計測器では、脳波を取っているつもりでも、顔の筋肉の動きなどの脳波以外のデータばかりが混入してしまうのです。

そして実は、現在出回っているほとんどの簡易型脳波計測器には、ノイズ除去のためのアルゴリズムが搭載されていません。これでは正しい測定はできず、分析結果もあてにならないものとなってしまいます。

 

先ほど紹介した「疲れにくいタイヤ」の開発実験などに用いられているのは、KANSEI Analyzer(感性アナライザ )という、私のこれまでの15年以上の研究により取得した生体信号データに基づいて設計された製品です。

感性アナライザの特徴は、ヘッドバンド型の小型脳波計とタブレットだけで、左前頭葉の FP1と呼ばれる感情や感性を司る場所の状態を測定します。そしてノイズ除去をした上で「興味・好き・ストレス・眠気」などの感性を、いつでもどこでも簡単に計測、分析できることです。

 

このように、脳波や生体データを正しく解明していくことで、人びとの暮らしを良くしていけるのではないでしょうか。

今後も、社会に役立つさまざまな研究を、企業の皆さまとご一緒できれば幸いです。

 

■ Neuro Meets CVI – 行動変容を促すIoTとは

最後にもう一度マイクを手にした村澤が、興味深いデモ映像と、Watson IoTの今後の方向性を紹介してセッションは終了となりました。

(上記画像をクリックいただくと、当日セッションで生中継したデモ動画をご覧いただけます(音声なし)。

 

満倉教授、どうもありがとうございました。

実は今回、たった今ご紹介いただいた感性アナライザと、ミツフジさんという注目のIoT企業が提供しているhamonという身体センサーを身につけた、Watson IoTの徳島さんというチームメンバーがタクシーに乗車して都内を走行中です。

こちらの画面は、今現在の徳島さんの感性と心拍などの情報、そして弊社のCVI(IBM IoT Connected Vehicle Insights)と呼ばれる「つながる車」サービスによる乗車中タクシーのテレマティクス情報(車からリアルタイムで送られてくる位置や急ブレーキや急加速などの運転情報)を統合表示しています。

 

今回は乗車中のスタッフのデータですが、もしこれが運転手さんのデータであったらどうでしょうか。さまざまな活用方法が考えられると思いませんか。

例えば、運転中に覚醒度が下がって眠気に襲われそうだとなったときに、車内に覚醒度を高める刺激臭を出すなどの対応策が取れますよね。

 

このように、IoTデータを検知するだけではなく、どういう風に次のアクションへとつなげるのか、どのような行動変容をユーザーに促すものとすれば、より良いサービスやより良い社会につなげることができるのか。

私どもIBMは、こうした大きな問いを一緒に解いていくパートナーを探しています。ぜひ、こうした観点からIoTに取り組みたいと方がいらっしゃったら、私たちCognitive Application事業  にお声掛けください。

 

関連ソリューション: IBM IoT Connected Vehicle Insights

 

 

TEXT: 八木橋パチ

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