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スポーツ・エンタテインメントのDXを支えるIBMの技術

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本記事は、弊社取締役専務執行役員 三澤智光によるSoftBank World 2019 特別講演「IBMの技術とFIFAワールドカップ、ラグビー」の講演レポートです。


皆様もご存知であろう経済産業省の「2025年の崖」。要約させていただくと、「既存のレガシー・システムをモダナイズして、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を行いやすくしていくための仕組みづくりが非常に重要になってくる」という内容のレポートです。

今までのITは、どちらかというとビジネスを支えるためにあったわけですが、DXとはITそのものを使ってビジネスを生み出していく、ということなのだと思います。そして、DXを実行して、市場で勝ち残るためのスピードとイノベーションを生み出すために、クラウドで生まれた「変化への対応力を実現する新しいテクノロジー」を使うことが多い。新しいテクノロジー無しではDXへの挑戦は難しくなりますし、DXがうまくいかなかったお客様は競争に負けてしまうかもしれない。ビジネスと最新のテクノロジーが表裏一体の時代になってきたのではないかな、と思います。

実は、DXが進んでいるのは、進歩をとげたAIの活用が進んでいるスポーツ・エンタテインメント分野です。ただ、スポーツ・エンタテインメントはコンテンツが非常に大きく、映像を中心とした大容量のデータを取り扱わなくてはいけない。また、エンタテインメントの世界ですから、セキュリティーを どう担保するのか、そして、数多くの方が視聴および利用されることになりますから性能も担保しなくてはいけない。つまり、スポーツ・エンタテインメントの世界も、企業の皆様がITで重視されているものと、ほぼ同じ課題をお持ちになられていたのです。

例えば、バックエンドの仕組みをIBMが全面的にご支援している全米オープンテニスでは、短期間にコンピューティング・リソースが集中的に必要になります。試合によっては極端に高いピーク・アクセスが発生しますし、多種多様で膨大なデータを取り扱わなければいけません。しかも、同時に脅威への対応が必要となります。

全米オープンテニスにおけるITの課題を説明する画像

全米オープンテニスにおけるITの課題

スポーツ・エンタテインメントとAI

全米オープンテニスにとって、より良い顧客体験を生み出して多くの方々にテニスのファンになっていただく、ということも重要なポイントです。US Open Appというアプリは、「Slam Tracker」によってリアルタイムのニュース配信と12年分の過去の試合データを提供しますし、AIを活用して映像のハイライトを検出する「コグニティブ・ハイライト」によって試合のハイライト・ビデオをリアルタイムに作成および公開しています。つまり、IBM Watsonが深い顧客体験を作り出すお手伝いをしているのです。

IBMは、コンテナ化のテクノロジーを活用して、IBM Watsonを様々なプラットフォームで利用可能とする「Watson Anywhere」という戦略をとっています。つまり、持ち出したくないデータが存在する皆さんのオンプレミスや、コンテナをサポートするIBM以外のパブリック・クラウドでも、IBM Watsonを利用できるのです。

Watson Anywhereの説明図

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Watson Anywhereは、場所を選ばずに、ベンダーロックインを起こさずに、皆様が作られたAIアプリケーションを活用できるようにします。

そして、DX時代には、AIがビジネスの中に入ってきます。AIを活用するアプリケーションが、説明責任が求められるミッションクリティカルなアプリケーションになるため、AIの信頼性と透明性を、どう担保していくかが重要になります。

IBMは、IBM Watsonを含む様々なAIから生み出されてくるモデルを管理、監視して、AIの信頼性と透明性を上げていく管理ツール Watson OpenScaleを提供しています。

スポーツ・エンタテインメントとクラウド、そしてセキュリティー

スポーツ・エンタテインメントのもう1つの事例としてご紹介するのがFOX Sportsです。2018年にロシアで開催されたFIFAワールドカップについて、FOX Sportsは320時間のオリジナルの放送コンテンツと1,100時間を超えるオリジナル・コンテンツを編集して、HDとUHDの両解像度で放送されたのだそうです。どのようにしてDXを成し遂げ、大量の映像データを編集して、より良い視聴体験を作り出し、視聴率を上げたのか。

人が現地に設備を持ち込んで編集するというのが一般的なのですけれど、FOX Sportsが取った戦略は、人や設備を移動させずにデータを移動させる、というものでした。

FOX SportsがIBM Asperaで実現した内容

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具体的には、IBMが提供しているIBM Asperaと呼ばれる大量データ転送をサポートするための仕組みを利用して、データをロシアから人と設備があるロサンゼルスに送り、様々な加工を行ったわけです。IBM Asperaを利用した結果、FIFAワールドカップ期間中に2PB以上の映像データが転送され、ロシアからの映像配信開始後、ほとんどタイムロスがなくロサンゼルスで編集が開始されました。

IBM Aspera on Cloudは一般的なデータ転送テクノロジーの5倍以上のスピードで転送が行なえることが特徴です。しかも、この仕組みはSaaSで提供されるクラウドのテクノロジーなので、サーバーの構築や運用が不要で、使いたいときにお使いいただけます。

スポーツ・エンタテインメントの場合、色々な方が全世界からアクセスしてくる。そのときに重要になってくるのがセキュリティー、信頼性ということになります。

インターネット上でアプリケーションを公開する場合、何が怖いかというと「DDoS(分散型サービス妨害)」ですね。世界中のどこから攻撃されるともわからないDDoSの防御と、WAFと呼ばれるWebアプリケーションを保護するFirewallによる安全性の担保が不可欠です。同時に、ユーザーに最も近いデータセンターから効率的かつ高速にWebを配信するContent Delivery Network(CDN)を用いた性能の担保も非常に重要になります。

安全性を担保しながら、かつ、性能を担保する仕組みとしてIBMが提供しているのが、Cloud Internet Services(CIS)です。

このCISは、スケーラビリティのために必要となるCDN、証明書、DDoS防御、WAF、負荷分散といった機能を1つのパッケージにして、皆様のFirewallの外で利用していただけるものです。CISがなぜ速いかといいますと、全世界で180以上の拠点があり、それぞれの拠点にある巨大なキャッシュ・エンジンに静的コンテンツを格納しておけます。

CISは、一日あたり3,000億リクエストをさばいているCloudflare社のサービスのIBM Cloud版です。しかも、大量のリクエストを処理する中で得られた知見を、Cloudflare社はDDoS防御やWAFとして提供しています。これらがCISが安心である理由となります。

ビジネスのためのクラウド

IBM Cloudは「ビジネスのためのクラウド」ということを標榜しています。これは、皆様のミッションクリティカルな仕組みのクラウド化もお手伝いできるようになっていきたい、ということを意味しています。

具体的な例をあげますと、東京を含む6つのリージョンに、新しいアーキテクチャーのデータセンターを用いてスーパー・ハイアベイラビリティーを実現するアベイラビリティー・ゾーンを設置しています。アベイラビリティー・ゾーンは複数のデータセンターで構成されており、東京リージョンでは豊洲、大宮、川崎に新しいデータセンターを建てております。これらの3つのデータセンター間は、2ms(ミリセカンド)以下のスピードを実現する太い線のネットワークで結ばれています。

IBM Cloud Availability Zone 東京リージョンの説明図

IBM Cloud Availability Zone

なぜ、スーパー・ハイアベイラビリティーのために、3つのデータセンターを関東近郊に置くのかと言いますと、例えば、メンテナンスなどで1つのデータセンターが停止する場合に、瞬時に他のデータセンターに切り替わる必要があるからなのです。

次世代のコンピューティングは、マイクロサービスやコンテナ・コンピューティングが一般化される。アプリケーションの中にはAIが埋め込まれるようになってきている。DXを進めていく上で不可欠な「変化への対応力を実現する新しいテクノロジー」を提供し、有事の際には瞬時に他のデータセンターに切り替わって、皆様のミッションクリティカルなアプリケーションを止めない。

IBM Cloudは「ビジネスのためのクラウド」として進化を続けています。さらに、西日本地域からIBM Cloudのグローバル・データセンター・ネットワークに接続できる大阪POPを開設するなど、IBMは引き続きクラウドへの投資を続けてまいります。

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