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レジリテック(Resili-Tech) – 最新ITテクノロジーが変革する事業継続の近未来 – 第4回 最近ブームとなっているオートメーション技術を俯瞰してみる

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向田 隆(むかいだ たかし)が解説します!
日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス レジリエンシー事業部 アソシエイト・パートナー

1. オートメーション – それはレジリテックを実現するキーテクノロジー

最近、ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation:RPA)という言葉が聞かれるようになりました。オフィスにおいて作業者がパソコン上で実施している様々な定型業務を、ソフトウェアツールを活用して自動実行し、処理スピードの改善、作業負荷の軽減、および業務の正確性を向上することが狙いです。最近ではRPAにAIの技術も組み合わせて、非定型業務などの複雑な処理も自動化していくことを目指しています。

オフィス業務のオートメーション化の流れは、同様にIT運用業務にも、さらにはレジリテックの主題である事業継続/災害復旧の運用でも適用が試みられています。この連載の記事(*1)でもご紹介しましたが、最近の事業継続は「想定外」への事態へも対応し、何か起きても速やかに回復できるIT運用体制が求められています。オートメーションはResili-Tech(レジリテック)のフレーム上では、「③適切なアクションが取れるのか」を実現するためのコアテクノロジーです。

それではレジリテックを支えるオートメーションとは具体的にどう実現するのでしょうか?
この記事では、まず、IT運用業務全般におけるオートメーションについて整理します。そして、レジリテックにおけるオートメーションの位置づけを明確にした上で、その実現例についてご紹介致します。

2. IT運用業務のオートメーション化を鳥瞰する

IT運用業務は下図のとおり、「実行機能の高さ」と、「実行の頻度」の2つの観点より整理できます。

「実行機能の高さ」は、IT運用業務の難易度を表します。難易度が高くなると、オートメーションの実現もより難しくなります。最も単純な「定型業務」から、処理中にある程度の判断が必要となる「非定型業務」、そして業務の依頼者との会話により処理内容を確認する必要がある「インタラクティブ」の順序で、その難易度は高くなります。最近では、さらに高い難易度として、例えばITの障害対応などの傾向を把握し、同じ問題が発生することを未然に予防する「自動対応、予測/予知」も話題となっています。

「実行の頻度」は、そのIT運用業務がどれくらい頻繁に実施するのかを表し、その度合いによりオートメーションで期待する効果は異なります。
頻度が高い業務(日時業務など)では、作業者の処理負荷の軽減や作業正確性の向上など、短期でのオートメーションの導入効果が享受できます。一方で頻度が低い業務(年次処理や非定期業務など)では、組織でのスキルトランスファーの負担軽減やノウハウ維持を実現して、中長期での作業品質の向上が主目的になります。

さて、様々なITベンダーより提供されているIT運用業務のオートメーション製品やサービスは、主に3つの領域に分類できます。

領域1:処理の効率化
定型、かつ実行頻度が高いIT運用手順の自動処理を実現する領域です。単純作業の実施負荷改善や作業正確性の向上を狙い、短期間での導入効果を期待します。多くのRPA製品やサービスは、主にこの領域の実現を目指しており、現在、最も着目度が高いホットな領域です。

領域2:中長期での運用品質の改善
領域1と同じくIT運用手順の自動処理が目的ですが、対象となるIT運用業務を広げています。この領域に該当するIT運用業務では、締め日処理やシステム保守などの厳密な期日が設定されている場合や、不測のイベントへの速やかな対応するものが含まれ、目標とする期限までに確実にIT運用手順が完了することが求められます。
従って、この領域ではIT運用手順の実効性の担保が重要であり、例えば業務担当者が交代した場合にもスキルトランスファーやノウハウ維持が確実におこなえ、かつ、その負担を軽減できることが求められます。
また、それを支える製品やサービスには、確実な処理実行を監視する管理機能や、処理手順を可視化して組織内で共有できる機能などが必要となります。
レジリテックで着目される事業継続や災害復旧に伴うIT運用業務は、この領域に含まれます。

領域3:多様なリクエストへの対応
オートメーションの新たな試みとして着目されている領域です。領域1,2との大きな違いは、実行するIT運用業務の内容が予めは決まっておらず、リクエストの内容をダイナミックに判断する必要があることです。そのために、自動処理機能にコグニティブやAI技術を組み合わせた意思決定機能なども試行されており、今後、広く普及が期待されています。

 

3. 事業継続/災対復旧におけるオートメーションに求められること – 特化型RPAという選択肢

先にご紹介したとおり、事業継続/災害復旧におけるIT運用業務は領域2に該当します。
対応するIT運用業務は、災害発生時において重要な業務を支えるITシステムを、間違いなく確実に復旧することが求められます。オートメーション化は単純な運用手順の登録や実行機能だけではなく、処理が目標時間までに確実に完了するための監視/管理機能が必須となります。加えて、不測の事態に備えて長期間でのスキルの維持が求められるために、スキルトランスファー教育や訓練に必要となる処理のシミュレーション機能が必要となります。また、オートメーション化の生産性の向上のため、様々な環境に対応できる代表的な復旧手順(主要なOSやミドルウェアの復旧手順など)はライブラリーとして提供されることも期待されます。

これらの機能要件は、例えば汎用的なPRA製品やサービスで実現を試みるとカバーできない部分が多く、かなりのボリュームの追加プログラム開発が必要でした。ところが最近は、様々なITベンダーから事業継続/災害復旧のIT運用業務に特化したRPAソリューションが提供されはじめています。

IBMでは、2016年11月にSanovi Technologies(以下、Sanovi社)を買収しました。Sanovi社はインドのバンガロールに本社を持ち、事業継続/災害復旧のIT運用業務のオートメーション化のフォーカスした特化型RPAソリューションです。既に全世界の370社以上の企業で採用されています。

Sanoviは事業継続/災害復旧におけるIT運用手順の登録/実行機能に加え、様々な管理機能や教育/訓練機能、および汎用ライブラリーをワンパッケージで提供します。以下にその機能概要を紹介します。

 

提供機能 機能の概要
プロビジョニング
(復旧手順の定義と実行)
・復旧手順をワークルフローとして定義、登録をおこなうGUIベースのツールを提供します
・復旧手順の定義には、実績のある450以上のワークフローテンプレートを活用できます
・災対IT資源の稼働状況を踏まえて、定義した復旧手順がビジネス上の目標復旧時間(RTO)や目標復旧時点(RTO)の遵守できるのかを自動算出します
モニター
(災対IT資源の監視)
・災対IT資源の稼働状況や、データレプリケーションの成否などをリアルタイムで把握できるダッシュボード機能を提供します
バリデーション
(構成, 定義の確認)
・災対IT資源(サーバー、レプリケーションSW、DB, NW等)の構成の整合性を確認できます
テスト
(災対訓練の実施)
・実機を用いた災対訓練がおこなえます
・シミュレーション環境の提供により本番サービスに影響を与えることなく、復旧手順が実行できます
フェイルオーバー&
フェイルバック
(サイトの自動切替)
・本番サイトがダウンした場合に、ワークフローに従い自動的にリカバリーサイトに切り替えることができます
・同様にワークフローに従って本番サイトに切り戻すことができます
レポート
(訓練結果の文書化)
目標復旧時間(RTO)に対し、ボトルネックとなるステップが明確とし、是正するためのレポートが出力できます

 

今回はRPAに代表されるIT運用業務のオートメーションについて俯瞰的に整理し、レジリテックにおける適用例についてご紹介しました。事業継続/災害復旧に着目した特化型RPA製品を採用することにより、迅速でかつ長期で維持可能なIT運用環境が実現できます。是非、ご検討頂ければと思います。

 

(*1) レジリテック(Resili-Tech) – 最新ITテクノロジーが変革する事業継続の近未来–1

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