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隠れ資産「Notes 業務アプリ」のフル活用でデジタル変革を実現する方法

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「デジタル変革」へ取り組みは企業の喫緊の課題だ。そのため、基幹システムやトランザクションデータから、ビッグデータ、AIを使って新たなビジネスのチャンスを掴む、といったことに注目が集まる。しかし、日本企業が数十年蓄積してきたノウハウやナレッジが、日々の業務フローと非定型情報の中に凝縮されていることを忘れている人は多い。特に、Notesに代表される業務アプリケーションはデータ分析が難しく、機能の追加やクラウドなどの新しいプラットフォームへの変更の費用対効果が見えにくく、デジタル変革の議論の対象から外れがちである。しかし、業務アプリにはトランザクションデータにはないナレッジと活用の価値がある。本稿では、特に Notes/Domino について、システムを刷新しながら、データやナレッジから新たな価値を生み出すための秘策を紹介する。

 

デジタル変革の「隠れ資産」?業務アプリケーションを活用できるか(© yoshitaka – Fotolia)

 

「Notesからの移行に失敗する」のは珍しくない

メールやグループウェア、業務アプリケーション基盤の代表格とされる「IBM Notes/Domino(以下、Notes/Domino)」には、企業のノウハウやナレッジが凝縮されているが、1989年の発売以来長らく企業で使われIT戦略での優先順位は低く見られがちである。オンプレミス環境で、PCクライアントのみを前提とした利用を続けてきた結果「Notes/Dominoを刷新せよ」と言われているIT部門担当者も多いだろう。 この場合に、Notes/Domino 以外のプラットフォームが検討される場合もあるだろう。

メールに限ればクラウドサービスへの移行はイメージしやすく、移行先のクラウドサービスの料金としての費用がわかりやすいため、トップからの指示で移行の決定や検討が進むことが多い。しかし、業務アプリケーション基盤として「Notes/Dominoが果たしている役割」を十分に検討しないで移行に向けて動いてしまうと、失敗したり、頓挫したりして、Notesは併用という形の「塩漬け」となってしまうケースは少なくない。

ここで恐ろしいのは、「塩漬けのNotes」が「二重投資」状態を生むだけでなく、新しい活用方法も限られてしまう「レガシー化」の原因となることだ。

 

「塩漬けのNotes」が「二重投資」と「レガシー化」を生むメカニズム

Notes/Dominoは、PC/モバイルを問わず、アプリケーションの開発から展開に必要な機能がオールインワンで統合されている。アクセス制御、検索、リンクなどの機能が統合された「文書型データベース」を利用して企業や組織で固有の業務アプリケーションを作ることができる。 また、ライセンスの観点でも、標準的なライセンスはユーザー単位のライセンスとなっており、端末の種類や数、利用する業務アプリケーションを増やしても追加のライセンスが発生しない。

Notesから移行してほかのソフトウェアで同様のことをしようとする人もいるが、文書の見かけを再現するだけにとどまり、移行後に内容の更新や共有範囲の変更(アクセス制御)ができなかったり、データが検索できなかったりすることもある。ナレッジとして継続して利用できる状態で移行することは難しい。また、各機能を別々のシステムとして開発/組み合わせる必要があり、サーバや機能、開発ツール、開発環境が混在かつ増大しコストや期間がかさむうえ、運用管理の負荷やライセンス費用も非常に大きくなってしまう。

その結果、とりあえずメールとスケジューラーはクラウドに移行したものの、そのほかの業務アプリは移行を断念してしまい、新しいシステムを使いながら、業務アプリは Notes/Dominoを使い続け、ライセンスも機能もバージョンアップせずに放置され、メールだけの「新しいシステム」と従来の機能のまま「塩漬けのNotes」の並存に陥る企業は多い。現場のユーザーはやむをえず放置状態の古いバージョンのNotes/Dominoを使い続けることになる。

こうした状況では、仮にNotes/Domino の保守ライセンスは停止したとしても、IT部門の機器や運用の作業は存在しており、コストの面からも効率性の面からも望ましくない。さらに、Notes/Domino の新しい機能の利用はできなくなっているために「業務を通じて得られたデータを活用し、ビジネス変革を進めていく」こともできないわけである。つまり、業務アプリケーション基盤としての Notes の役割を十分に認識できていなかったことが「二重投資」と「レガシー化」の原因になるのである。

 

「Notes/Domino」の有効活用という選択肢

そこで考えたいのが単なるバージョンアップにとどまらない「Notes/Dominoの有効活用」だ。Notes/Dominoは文書型データベースという特性から、たとえば、サポート業務を通じて得られた障害対応データなど、複数部門の業務を通じて得られたさまざまな知見やノウハウ、ワークフローを非構造化データとして保管している。CRMなどの基幹システムに記録された構造化データとは異なる、企業にとってデジタル変革に有用な「ナレッジ(非定型情報)」を豊富に格納しているのだ。

「IBMではNotes/Dominoを通してメールだけでなく、業務アプリケーション基盤として、クラウド化、モバイル対応など、多様なニーズに応える取り組みを本格的に行っています」と語るのは、日本アイ・ビー・エム(以下、IBM)でコラボレーション&タレント・ソリューション事業部 事業部長を務める中島治氏だ。

中島治氏の写真

日本IBM コラボレーション&タレント・ソリューション事業部 事業部長
中島治氏

 

2013年3月にリリースされた「Notes/Domino バージョン9.0」から5年。その間、Notes/Dominoはバージョン・アップという形は取らずFP(フィーチャーパック)として新機能を提供してきた。5年ぶりのメジャー・バージョンとなる「バージョン10」は、2018年中にリリースが予定されている。

Notes/Domino の「9.0.1 FP」で追加された主要機能や同期間中に開始されたサービスのポイントは、「クラウド対応」「働き方改革の支援」「マルチクライアント対応」の3点だ。

1つ目は「クラウド対応」。これは、オンプレミスで利用している既存環境、アプリ資産をクラウド環境で実行可能にする「IBM Domino Application on Cloud」(DAC)が挙げられる。

2つ目は「働き方改革の支援」だ。これは、「人」を中心としたUIでメールの効率的な処理を支援する「IBM Verse」が挙げられる。

中島氏は「人を中心としたUI」の意味について、以下のように説明する。

「仕事をしていて、多すぎるメールの中にさまざまな情報が埋もれることはよくあると思います。これに対し、返信の速さややり取りの量、頻度などから、どの人がどれくらい重要なのかを読み取り、重要な人物を表示してくれるUIを作りました。これにより、メールに埋もれた情報を見つけやすくし、いつまでに、何をしなければならないかというタスク管理も容易になります」(中島氏)

3つ目の「マルチクライアント対応」では、Dominoが提供する機能をNotesクライアントに限定せず、多様なクライアントで利用可能とするアプリケーションモダナイゼーションを支援する。

たとえば、既存のアプリケーションの機能とデータを損なうことなく、Webやモバイルへ対応させる「IBM Client Application Access」(ICAA)や、Microsoft のOutlookをサポートする「IBM Mail Support for Microsoft Outlook」(IMSMO)などの機能が挙げられる。なお、PCを前提に開発されたUIをWeb化、モバイルに最適化させる「モダナイゼーション」を支援するものとしては、「XPages」という機能がある。

また、このほかに、今後Notes/Domino の持つナレッジを活用する上で「REST API」対応は見逃せない。中島氏は、「これを使うと、IBM WatsonをはじめとするAIテクノロジーと連携し、コラボレーション、コミュニケーション機能を強化することも可能です」と説明する。

 

バージョン10では、アプリのモバイル最適化が容易に

さらにこれからリリースされる「バージョン10」では、メールなどのコミュニケーション機能が強化されたほか、iOSに対応したクライアントにより、業務アプリを改修することなくモバイルに対応ができるという。

「DominoアプリのWeb化、モバイル化については、モダナイゼーションを行うのであれば、Xpagesを選択し、既存のアプリケーションをそのままモバイル環境で使えるようにしたいという場合は、バージョン10のリリースを待つという選択肢があります」(中島氏)

Web/モバイルアプリの開発&展開も可能

Web/モバイルアプリの開発&展開も可能

 

Xpagesを用いて既存のアプリをスマホのブラウザで利用できるようにする場合、これまでは、アプリケーションの改修が必要だった。これに対し、バージョン10でサポートされるのは、「iOS対応のネイティブ・クライアント」だ。つまり、Notesプロトコルで通信するため、アプリ側での改修がほとんど必要ないのである。

IBMでは、Notes/Dominoについて、2025年を見据えた開発ロードマップを引いており、継続的な開発体制に対し大規模な投資を行っている。2019年には「バージョン11」を含む新たなロードマップが発表される予定だ。「移行シナリオは、バージョン9以降は自動アップデートなど可能な限り容易に移行できるようになっている」と、中島氏は説明する。

「バージョン8.5はサポート終了が近づいているので、一旦、現行の最新バージョンであるバージョン9にアップグレードし、その後、バージョン10に移行することを推奨しています。8.5.3から10への上位互換性はほぼ100%確保されています」(中島氏)

バージョン10では、モダナイゼーションすることなく、既存のDominoアプリがそのままモバイルアプリ化される。そのため、モバイル化のコストは相当抑えられるはずだ。

 

「IBM Watson」+Notes/Dominoで最強のコラボ環境を

Notes/Dominoを使った「データ活用」の観点で注目すべきは、AIテクノロジーの活用だ。REST APIや今後拡張される Lotus Script を利用すれば、Notes/Dominoに蓄積されたナレッジがIBM Watsonでも利用できる。 また、逆に、今後増えるであろう IoT やマイクロサービスをユーザーにつなぐワークフロー基盤としても Notes/Domino は有効である。

「Notes/Dominoは巨大なデータ保管庫であり、ワークフローです。社内に蓄積されたデータをWatsonが分析し、業務の最適化を図ったり、チャットボット化してその企業だけの応答サービスを提供したりできます。また、IoTと連携すれば、過去の障害対応の履歴と、保守対象の機械に取りつけられたセンサーデータから得られた稼働状況を組み合わせて保守担当者に通知するなどの最適なメンテナンス時期を検知する『予防保守』につなげることも可能となります」(中島氏)

さらに、共同作業を行うチーム向けに構築されたソリューション「IBM Watson Workspace」とNotes/Dominoが連携することで、あらゆる業態、業種、ユーザー部門のニーズに応じた最適なコミュニケーション、コラボレーションのあり方を提案できるというのがIBMの独自価値だ。インターネット上の口コミを自動的に収集し分析した内容が、マーケティング担当者のディスカッション・スペースに自動的に通知され、新製品の企画を促す、といったことも当たり前になってくるだろう。

「お客さまの課題を解決するにはどうしたらよいか、お客さまと議論をして、“塩漬け”からの脱却を支援する取り組みを行っていきたい」と、中島氏は抱負を述べる。

IBMでは「panagenda ApplicationInsight」という分析ツールを用い、使用頻度の高いアプリを棚卸しし、Web対応やクラウド化の優先順位づけを行うコンサルティングサービスも提供している。業務ニーズやコストの観点から、社内に眠るNotes/Domino資産に光を当て、新たなバージョンにアップデートする再構築の機会として、こうしたサービスを利用することも1つの選択肢だろう。また、クラウドとオンプレミスの併用を可能にする Dual Entitlement ライセンスや、アプリケーションのみの利用に適用できる Domino Utility Server ライセンスなども提供しているので、いまの環境に応じたライセンス体型も検討できるだろう。

 


本記事は、2018年に「ビジネス+IT」に掲載された記事を一部編集しています。肩書きや製品名、情報は取材当時のものです。

 

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