Open for Data フォーラム

みずほフィナンシャルグループ事例発表:FinTechを活用したオープン・イノベーションで 新規ビジネスの創出を目指す

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事例発表の1社目として登壇したのは、株式会社みずほフィナンシャルグループ/みずほフィナンシャルグループ/インキュベーションPT 調査役 白河 龍弥 氏です。

One MIZUHO戦略の一環として組織横断でFinTechへの取り組みを開始

銀行、信託銀行、証券を傘下に持つみずほフィナンシャルグループは、2016年度からの3年間の中期経営計画において「進化するOne MIZUHO」というスローガンを掲げ、総合金融コンサルティンググループへの飛躍を目指しています。

白河氏の所属するインキュベーションPT(プロジェクト・チーム)も、このOne MIZUHO戦略の一環として設立されたものです。グループから組織横断で約60名(兼務者を含む)のメンバーが集まり、国内外の外部機関とのオープン・イノベーションで「新規ビジネスを創出すること」をミッションとしています。

そこでの主要テーマの1つが「FinTech」です。「弊社ではFinTechをIoT(Internet of Things)の一領域として位置づけています。さまざまな要素技術やコンセプトは共通であり、そこに金融を結び付けていくという捉え方です」と白河氏は話します。

特に注目しているのは「ビッグデータ」「AI(人工知能)」「ブロックチェーン」で、この3つの要素技術を融合した新しい金融ビジネスの創出にあたっています。なお、FinTechの活用が見込まれる主な事業領域としては、資産管理/運用・助言、金融情報、レーティング、送金/決済、その他定型業務などを想定しています。

こうした同社の取り組みは国内外で高く評価され、米国のBAI(Bank Administration Institute)、ヨーロッパのEFMA(European Financial Management Association)、日本のMCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)など、さまざまな業界団体からアワードを受賞しています。

国内外のさまざまな企業や団体と連携し多岐にわたるサービス開発や実証実験を推進

白河氏は、下記のような多岐にわたる取り組み事例を紹介しました。

  • みずほMessenger

邦銀初のチャットサービスです。みずほ銀行Webサイト内の同一ページの頻繁閲覧や長時間の閲覧を自動判定し、「何かお困りですか」と問いかけるチャット画面が開きます。「今後に向けてチャット対応を自動化するボット化にも取り組んでいます」(白河氏)

  • スマホ向けATM・店舗検索アプリ/自動音声翻訳

外出中に最寄りのみずほ銀行のATMや店舗を簡単に検索できるアプリです。GPSや拡張現実(AR)の技術を活用することで検索精度を向上。また、インバウンド対応を強化するため、株式会社NTTドコモとの共同で「自動音声翻訳技術」を新たに実装し、接客サービスを高度化しています。

  • PFM(Personal Financial Management)

複数の銀行や証券、クレジットカード、電子マネーなどの口座や残高、ポイントなどを一元的に表示し、確認できるサービスです。スマートフォン向け「みずほダイレクトアプリ」の機能を強化し、入出金明細照会の閲覧期間を拡大する「一生通帳」サービスの提供を開始しました。また、アイ・ティ・リアライズ株式会社の「CRECO」とみずほダイレクトをAPIで連携し、クレジットカードの引落予定額を事前収集して案内する金融サービスも開始しています。

  • Apple Watchの活用

これも邦銀初の取り組みで、ウェアラブルデバイス対応を開始しました。残高や振込予定日などをApple Watchで確認できます。

  • LINEでかんたん残高照会サービス

LINEで専用スタンプを送信すると、残高や入出金明細などの紹介結果が表示されます。

  • Conversational UI

Amazon EchoやFacebook Botを活用した、新しいチャネル・コミュニケーションの実証実験を開始しました。

  • SMART FOLIO(ロボ・アドバイザー)

顧客のリスク許容度なども踏まえた投資信託のポートフォリオ提案を無料で行う資産運用サービスです。みずほダイレクトのユーザーには、投資目標の達成をサポートする「ゴールアプローチ分析機能」や「貯蓄性保険の選定サポート機能」などの付加サービスも提供しています。「ポートフォリオを組んだ金融商品を、みずほダイレクトからその場で購入することも可能です」(白河氏)

  • スコア・レンディング・モデルの構築

ソフトバンク株式会社と共同し、ビッグデータやAI を活用した国内初のFinTechレンディング(貸金)サービスを開始する予定です。「みずほ銀行とソフトバンクがそれぞれ持っている取引情報を融合し、さらに思考や行動パターンなども併せ、お客様の“信用力”を分析します。これにより従来型の審査では対象外になっていたお客様も融資可能となる可能性があります。また、お客様がより多くの個人情報を提供するほど信用力が上がり、より有利な条件で融資を受けられるようにすることを目指しています」(白河氏)

  • ビッグデータ活用の実証実験

株式会社インテージ、NHN テコラス株式会社、データセクション株式会社と共同し、「データエクスチェンジコンソーシアム1(DXC)」での活動を発展させた取り組みとして、ビッグデータを活用したコンシューマー向けの新しい情報・サービスのあり方を探るべく実証実験を開始しました。「まずはソーシャルやGPSなどから得られるビッグデータを活用し、みずほ銀行の金融サービスの利用者に対する情報提供のヒット率を高めるための方法について検証を行います」(白河氏)

  • ニューロファイナンス

株式会社 NTT データ、株式会社NTTデータ経営研究所と共同し、新たなビジネス創出に向けた取り組みとして、「ニューロファイナンス」(金融分野の諸現象を人間の脳から明らかにしようとする研究分野)の知見と技術を活用した金融サービスに関する共同研究を拡大していきます。「従来とは異なる視点でセグメンテーションとその活用を目指し、『楽しいことに全力投球のやりくり上手』『お金はタンス預金で自己管理』『家族のために倹約ときどき大胆』といったペルソナ設定の成功例があります」(白河氏)

  • 法人分野での連携

株式会社マネーフォワードと連携し、法人顧客の請求・売掛金消込業務、給与支払業務などの自動化を実現します。

  • ブロックチェーン

ブロックチェーンの可能性を検証すべく国内外のベンダーと協業し、実証実験を開始しました。富士通株式会社と共同で実施した、証券のクロスボーダー取引の決済業務を効率化するための実証実験もその1つです。「ブロックチェーンを活用し、関係者全員で約定内容を共有することで、決済業務に要する期間を従来の3日間から即日に短縮するという大きな効果を上げています」(白河氏)

  • コールセンターの高度化

IBMの音声認識技術とWatsonサービスを組み合わせ、コールセンターに寄せられた問い合わせに対して、スピーディーかつ適切な回答を返します。「コールセンターには膨大なマニュアルがあり、必要な情報を人手で参照するには多大な時間を要します。Watsonはこの課題を解決してくれました。当初は10席程度で始めたのが、現在では250席へと利用を拡大しています」(白河氏)

  • ロボットの活用

ソフトバンクロボティクス株式会社と連携し、Pepperをコンシェルジュとして活用することで、新たな顧客体験を実現します。「お客様の待ち時間にエンターテインメントを提供しています。また、Watsonをつないで機械学習させることで、受け答えの精度を向上させていく実証実験も行っています」(白河氏)

さらに白河氏は、株式会社電通と三菱地所株式会社が共同で運営しているFinTechセンター「FINOLAB(フィノラボ)」内へのOpen Bank API開発環境の設置、東京大学の「先端人工知能学教育寄付講座」への協力など、みずほファイナンシャルグループが推進しているオープン・イノベーションの幅広い取り組みを紹介しました。

ブロックチェーンが本当に効果を出すのはどこか実証実験を通じて実用性を見極める

質疑応答に入り、まず「⑬コールセンターの高度化」について、株式会社グラフの丸岡 晃子氏から「どのような運用によって音声認識の精度を確保しているのでしょうか」という質問が寄せられました。

白河氏によると、電話を通した顧客の声を直接認識するのは現状ではまだ難があるようです。「オペレーターが話をまとめて、こういうことですよねと聞き返せたところを上手く拾うことがポイントです」と答えました。

大阪ガス株式会社の河本 薫氏からは「⑫ブロックチェーン」について、「コストや信頼性といった観点から、金融機関としてはその実用性レベルをどのように見極めているのでしょうか」という質問が寄せられました。

実はこの点は、インキュベーションPTのメンバーにとっても大きな悩みどころのようです。「ブロックチェーンを使えばシステムコストを下げられることは皆わかっていますが、あまりにも構えが大きくなると『誰が旗振り役を務めるのか』といったサークルづくりが非常に難しくなります。どういう分野に適用すれば本当の効果を出せるのか、いまは地道に実証実験を続けるしかありません」と白河氏は話します。

また、株式会社サイバードの宮崎 友輔からは「⑧スコア・レンディング・モデルの構築」について、「融資対象を広げるよりも、逆に融資してはだめな人を見つけるためにビッグデータを活用したほうが、より大きな効果を出せるのではないでしょうか」という質問が寄せられました。

これに対して白河氏が強調したのは、「今回のレンディング・サービスは、主に若者を対象としている」という点です。「銀行は勤続年数が長く、それなりの年収があるお客様を審査するノウハウは多く持っていますが、一方で若者に対する審査はあまり精緻にできていませんでした。まずはこの課題を克服したいと考えました」と答えました。

 

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