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エネルギーと公益事業 | デジタルトランスフォーメーションがもたらすもの

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エネルギー会社と公益事業が私たちの暮らしの根幹となっていることに、疑問の余地はありません。しかし、自然環境破壊と気候危機、そしてCovid-19に襲われているこの時代においては、電力・ガス・エネルギー業界にも、これまでとは違った「暮らしの支え方」が求められています。

今回、エネルギーおよび公益事業部門において20年以上の経験を持つ専門家であり、IBMグローバルの同事業部門を率いるリーダーのテリー・サンダースに、新しいテクノロジーとデジタル変革が暮らしとビジネスにどのようなインパクトをもたらすのか、そして今後の業界の行方と事業運営について質問しました。

 

Q: これからの数年間でどのようなことが起きるのでしょうか?

エネルギーと公益事業は、今まさに歴史的な転換点の真っただ中にいます。

LED照明、高効率のHVAC(暖房、換気、空調)システムと電化製品、屋上ソーラーおよび電気自動車(EV)。私たちはもっとエネルギーを効率的に使用しなければなりません。そして電力だけではなく、シャワーヘッド、トイレ、農地、および都市のデザインを見直し、より少ない水の供給量で暮らせるようにすることも重要です。

電力・ガス・エネルギー事業者は、エネルギーの観点においてより効率的な生活を消費者に届けなければなりません。そこで必要になるのは教育であり、その生活を実現するためのテクノロジーです。

社会は、サステナビリティー向上脱炭素によるゼロカーボン達成を求めています。ガス、水、電気を非効率に使用していては、その実現は不可能です。

自分たちの家、自分たちのビジネスが持続可能性と回復力向上を支援できるよう、私たちは脱炭素化と電化にしっかりと目を向け、自分たちの生活環境と暮らしを見つめ直さなければならないのです。

 

Q: エネルギーと公益事業者は具体的に何をすべきでしょうか?

インフラストラクチャには一定のコストがかかります。これは、そのインフラがどのようなものであっても同じです。

そして現在、インフラ老朽化に伴い、多くの電力・ガス・エネルギー事業の収益は横ばいまたは減少しています。残念ながら、老朽化だけではなく異常気象も増えている中では、より頻繁かつ規模の大きなサービス停止が発生する可能性が高い状況は続くでしょう。

また、電力市場は民間に開かれたものとなりました。グーグル、アップル、アマゾン、その他多くの組織や個人が風力や太陽光による独自の発電所を設営し、生成した余剰電力を販売しています。

従来のビジネスモデルは崩壊の最中にあると言うことができ、公益事業者にとって厳しい状況は続きます。エネルギーと公益事業者は、ビジネスを続けるための収益を生みださなければなりません。

 

Q: クリーン電力への転換にはどのような問題がありますか?

これからのエネルギーの主役は「電力」で間違いありません。なぜなら、電力は風力、太陽光、水力などの再生可能エネルギーにより供給できるからです。

これは、公益事業への投資の大きな変化を意味します。そして現在、公益事業に圧倒的に不足しているのが「熟練した技術者」です。

遠隔地のエキスパートによるARを活用したリモート支援や、AIアシストなどの技術が注目されているのはそのためであり、AIやAR、機械学習、視覚や聴力、コグニティブな能力を基とする検査など、技術者を代替・あるいはサポートするテクノロジーが採用され続けているのも、当然と言えるでしょう。

 

Q: 従来の発電システムからの脱却に必要なテクノロジーとは?

信頼できる安全な電力供給がなければ、経済は成長しません。そして今、需要家に近いところで発電を行ない、送電による損失を最小化しようという、エネルギー効率性のイノベーションが起きています。長年エネルギー・公益事業に従事していますが、今ほどエキサイティングな時期はありません。

そして同時に、CO2が地球の天候に大きな影響を与えています。実のところ、今この場でカーボンニュートラルが達成されたとしても、異常気象が減ることはありません。依然として、私たちは異常気象から逃れられないのです。

ですから、エネルギー・公益事業には、高度な気象データを活用するためのテクノロジー・プラットフォームが必要なのです。雷雨、暴風、火災、雹、吹雪、超巨大低気圧などの気候災害や異常気象を予測し、それに対応してよりよい意思決定を素早く行えるよう、IBM Environmental Intelligence Suiteのようなソリューションが必要なのです。

そしてまた、太陽光と風力による電力生成を最適化するためには、非常にピンポイントで正確な天候予測が欠かせないのです。

 

IBMは、公益事業の鍵となる資産管理と需要予測の支援の両面において、重要な役割を果たしています。

化石燃料に依存した発電所からの脱却に向け、私たちにできることはまだまだたくさんあります。まずは、使用量の管理と制御、そして需要の平準化からのスタートとなりますが、この先には大規模なバッテリーストレージによる需要ピーク対応が待ち構えていることでしょう。

エネルギーデータ大手「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」は、2040年までに、世界の乗用車販売の58%が電気自動車となるだろうと予測している。

 

Q: 電力グリッドの肝となるのはなんでしょうか?

私の車は非常に燃費が良く、リッター約25キロ走りますが、それでもこの車は私が最後に買った内燃エンジン車となるでしょう。次に買うのは間違いなく電気自動車です。

私たちは皆、もっと電気自動車や電気輸送手段の使用を検討すべきです。将来的には、電気自動車は車両の「電力ストレージ」を用いて、電力グリッドにて電力需要供給の両方の役割を果たすのですから。

なお、私がカーバッテリーという言葉の代わりに電力ストレージという言葉を使うのは、バッテリーという言葉の「蓄電池」という意味が、近い将来当てはまらないものとなる可能性が高そうだと思っているからです。

電力グリッドの肝となるのは、電力ストレージです。日中は太陽光が、夜間は風力が発電で活躍してくれるでしょう。しかし需要が少ない時間帯にいかにそれを上手に蓄電しておくかが成否を握っているのです。

 

Q: 最後に、DX検討中のエネルギー会社へアドバイスをお願いします

システムを統合し、余分なものを排除してください。従業員の変化に対する適応力と吸収力をしっかりと見てあげてください。そして彼らにどんどん機械と会話させてください。

私たちは、変化に適応する人々の能力を過小評価してしまうのです。

思い出してください。私たちは皆、最初はAlexaやSiriに話しかけることに躊躇していたはずです。でも、今やどうでしょう。私の息子はタイピングをしません。つねにケータイに話しかけ音声入力を行っています。

 

また、変化に適応する能力だけではなく、新しいテクノロジーの捉え方や採用方法についても、そのスタンスを変化させていくべきでしょう。過去30年間の携帯電話の変化を考えてみてください。

みんなが手にしているスマートフォンは、今や非常に優秀なコンピューターです。Chrome、Firefox、Safariなどのウェブブラウザーも、Alexa、Siri、WatsonなどのAIも、いつでも質問に答えてくれるようになりました。

テクノロジーを歓迎し積極的に活用することが重要です。なぜなら、早くスタートすればするほど、ビジネスの適応力も競争力も加速させることができるのですから。

 

そしてPoCで概念を実証するのではなく、ビジネス価値の実証にもっと力を入れるべきではないでしょうか。まずは特定ユースケースの価値実証を行い、その次、その次、またその次…未来に向けて屈強なレンガの壁を構築していくやり方が、ビジネスの持続性向上に効果的です。

まずはあなた自身が変化を受け入れてください。そして従業員にもどんどんと変化を取り入れてもらおうじゃありませんか。あなた自身がぜひ、未来志向の革新的なリーダーのロールモデルとなってください。

 

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当記事は『An E&U conversation: what’s next, what’s exciting and what about digital transformation?』を、日本の読者向けにリライトしたものです。

 

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