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持続可能な自動車への道のり(前編)

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環境に優しい自動車へのトランスフォーメーション

ソフトウェア定義の自動車とクロスドメイン・エンジニアリング

持続可能な地球環境への貢献に、あらゆる産業が取り組みをはじめています。

特に大きな変革が求められている自動車産業においては、「環境に優しい自動車」へのトランスフォーメーションは、およそ100年前にフォード社が世界初の組立ラインを立ち上げて以来の最大級のインパクトを持つ変革と言えるでしょう。

 

その取り組みの発端が顧客からの要望だったのか、あるいは競合他社との競争か政府の規制だったのか。もはやそれは関係ありません。

自動車業界に必要なのは、これを最高の機会と捉え、車両だけではなく自動車開発や業界自体までをも再発明しようという意気込みで取り組みをスタートすることではないでしょうか。

シリーズ『持続可能な自動車への道のり』の前編となる今回は、新技術がどのようにデジタル変革を支えるのか、そしてより持続可能な自動車業界をどのように実現することができるのかを説明します。

 

成功のために。あるいは生き残るために

「デジタルにより自らを再発明しなければならない」

技術の進歩と大胆な起業家精神が組み合わさった結果、内燃機関(ICE: Internal Combustion Engine)に代わり電気モーターにより走行する、よりサステナブルで環境に優しい電気自動車(EV: Electric Vehicle)がより消費者に好まれるものとなってきています。効率性向上を続ける電気モーターとリチウムイオン電池は、電気自動車の魅力に一層磨きをかけていくことでしょう。

さらには、水素燃料電池技術も成熟度を増してきており、近い将来燃料電池車(FCV: Fuel Cell Vehicle)も選択肢の1つとなるはずです。

 

こうした自動車技術の大変動は、間違いなくサプライヤー/パートナーからなるエコシステム全体を大きく揺るがすものとなります。すでに自動車メーカーや「ティア1」「ティア2」と呼ばれるサプライヤーは大金を投じ、大きな変革を進めています。また門戸は開かれており、新たなイノベーターの参入も望まれています。

こうした中、IBMの調査によると自動車会社の幹部の半数が、成功のためあるいは生き残るためには「デジタルにより自らを再発明しなければならない」と答えているのです。

 

変革をリードするソフトウェア定義アーキテクチャ

今後5年から10年で、コンピューティングユニットは1つか2つに

ここ数年、電気/電子(E/E)システムアーキテクチャは発展を続けていました。

車両にはそれぞれの機能に対応する独立したハードウェアやソフトウェアが加え続けられ、現在では1台の車両に複数の独自配線ネットワークにまたがるスマートセンサーとアクチュエーターを備えた、100〜150個のマイクロプロセッサーまたは電子制御ユニット(ECU)が組み込まれています(図1)。

 

今日、自動車はさらなるソフトウェア定義化を進めており、すでに1億行以上のコードが使用されています。このような中で、既存のコンポーネントと機能を統合しまとめていくことでECUの数を減らそうという取り組みが進んでいます。

そして同時に、配線をワイヤレスにしてECUの配置を最適化し、デジタルトランスフォーメーションへの対応性を高めようという取り組みも進められています。

図1. 車両配線ネットワークのワイヤー(実線)からワイヤレスセンサーへの進化

この取り組みは、一見アーキテクチャや開発の複雑さを軽減するように見えるかもしれませんが、それはあくまでもメカニカルな点においてのみで、実態はその反対です。

その複雑さは、桁違いに増加しているのです。

 

どれほど桁違いの複雑さは、従来のアーキテクチャのシンプルさと比較して考えれば想像がつきやすいでしょう。

以前のアーキテクチャにおいては、ソフトウェアは、ECUからセンサーに専用線で送られるシグナルと、アクチュエーターに専用線で送られるシグナルだけを管理していればよかったのです。

新しいアーキテクチャでは、統合されたソフトウェアは複数のシグナルを同時に管理する必要があります。同時に送られてくるそれぞれのシグナルを正しく識別して分離する必要があるのです。

 

この新しいアーキテクチャは、ゾーンベースとなる可能性が高く、単一ネットワークプロトコルを活用したイーサネットや、リングベース・アーキテクチャのタイムセンシティブ・ネットワーク(TSN: Time-Sensitive Networking)が活用されるでしょう。

この新たなアーキテクチャは、コンピューティングユニットを大幅に減少させます。業界アナリストの中には、今後5年から10年で、車両一台あたりのコンピューティングユニットは1つか2つになるだろうと示唆する者もいます。

 

自動車のイノベーションの90%はソフトウェアから

ソフトウェア定義車両が必要とする次世代エンジニアリング

業界のデジタル化をさらに推進するこの次世代自動車アーキテクチャは、従来のメカニカル定義車両からソフトウェア定義車両への変革を一層加速するものです。

2030年までには、自動車のイノベーションの90%はソフトウェアによりもたらされるでしょう。そしてコード行数は現在の100倍になると予測されています。

 

自動車業界従事者にとっては、これは多くの新しいスキルが必要になることをも意味しています。専門家の予測では、2030年までに従業員のスキル再教育に330億米ドル以上が費やされるだろうと考えられています。

純粋な機械工学スキルを使用する業務は激減するため、エンジニア、とりわけシステムエンジニアは再トレーニングが必要となるでしょう。

焦点が当てられるエンジニアリング分野は以下が考えられます。

 

・ 既存車両における技術・ノウハウ・投資のサステナブルな自動車への転換および再利用。

・ 既存車両における単一目的ECUの機能とソフトウェアの、ゾーンベース・アーキテクチャのセントラル・コンピューティングユニットへの転換および再構成。並びにリングベース・アーキテクチャへの転換および再構成。

 

この転換は、あるECUのソフトウェアを別のECUソフトにコピー&ペーストするといったレベルの話ではありません。ECUの数を減らすとは、信号IDの重複や新たな遅延の問題など、新たに生まれる課題への大きなチャレンジを意味しているのです。

 

必要なのは、クロス・ドメイン・エンジニアリングソリューション

より費用効果の高い方法で、次世代へとつながる製品開発を行なうために

より持続可能な車両への転換の成功の鍵は、メカ・ソフト・エレキのエンジニアリングの結びつきの複雑さを、しっかりと舵取りできるかどうかにかかっています。この3分野のそれぞれをしっかり管理しつつ緻密に結びつける、そのプロセスとツールの統合が必要です。

実際、ほとんどのASPICEアセッサーが、ASPICEアセスメントにおいて悪い評定を受けてしまう最も顕著なポイントがこの3つの接点であると言っています。

この状況を打破するために、私たちIBMは自動車業界のリーダーたちと協力して、真正面から複雑さに取り組んでいます。

システムとソフトウェア設計を支援する可能な限り最高の電気工学ソリューションを提供することで、自動車エンジニアリングの変革を支援しているのです。

 

自動車業界の誰もが、より効率的に製品を作りたいと思っています。

私たちのお客様は皆、自社特有の創意工夫を活かせる業界特化型のソフトウェアとサービスを活用して、この競争の激しい市場で革新、差別化、成功を追い求めています。

お客様がコンプライアンスを確保しながらプロセスを改善できるよう、私たちは包括的エンジニアリング・ソリューションであるIBM Engineering Lifecycle Management(ELMを提供しています。

ELMをご活用いただくことで、企業はよりスマートで、より安全で、より費用効果の高い方法で次世代へとつながる製品開発を行なっていただけます。

 

シリーズ『持続可能な自動車への道のり』の後編では、自動車のコンプライアンスとトレーサビリティの重要性について、そしてシームレスな製品開発ライフサイクルを達成する方法についてご紹介します。

 

複雑な製品開発とソフトウェア開発を牽引するプラットフォーム

 

問い合わせ情報

 

著者について

ブレット・ヒルハウス(Brett Hillhouse)は、IBM のグローバル・オートモーティブ・リーダーであり、全世界の自動車業界のお客様の成功に対して責任を負っています。25年以上に及ぶ業界経験において、IBMおよびSiemens(旧SDRC)にてリーダーを担ってきました。

世界的な自動車メーカーおよび航空宇宙業界のリーダー企業や一次サプライヤーの変革エンゲージメントなどにおいて結果を残してきており、それらの中には製品開発の変革、再利用戦略とその実施、業界コンプライアンス、およびAIの応用などが含まれています。

コーネル大学 機械・航空宇宙工学 理学士号 取得。

 

当記事は、『Driving towards sustainable and electric vehicles』を日本のお客様向けにリライトしたものです。

 

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