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スコープ3温室効果ガスに対するIBMの考え方

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スコープ3の温室効果ガス(GHG)排出は、企業の実際の排出を表すものではなく、企業活動に関連する多くの他事業体や関係者による直接的なGHG排出を表すものです。

その範囲は、事業活動に関係する世界中のあらゆる階層(例えば、事業活動の上流における原材料の調達から最終製品まで)のサプライヤーの、顧客の、そして従業員の職場への通勤手段などさまざまな活動が含まれています。これらを総称して、企業の“バリューチェーン”と呼ばれています。


  •  スコープ1: 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
  •  スコープ2: 他社から供給された電気・熱・蒸気などの使用に伴う間接排出
  •  スコープ3: Scope2 以外の間接排出(事業者の活動に関連する他者の排出)

 

GHGの排出量算定と報告の枠組みを定めた自主的な会計基準である「GHGプロトコル」においては、上記の全ての事業体や関係者の直接排出量を関連企業に割り当てたものを、企業の間接排出量であるスコープ3排出量としています。

そしてそれらのスコープ3排出量は、サプライチェーン上の中間企業に、同じ排出量が何回も繰り返し割り当てられてしまうことがあります。そのため、スコープ3排出量が二重、三重、四重計上され、実態よりも多くの排出量として算定されてしまうのです。

 

これら企業のバリューチェーン全体におけるスコープ3排出量を、事実に即した信頼できる方法で算出することは不可能に近く、非常に困難です。

複数の企業にわたる一次ソースデータがなく、個々の関連を信頼性の高い形で示すことができないからです。そのため、企業が引用しているスコープ3排出量の多くが、信頼性や網羅性がまちまちな一般化された一次データの代替値を用いて、何重もの仮定をおいて算出した、いわば「推定値」となっています。たとえ実際値の様に発表されていたとしても、これが実情なのです。

 

こうした試算であっても、バリューチェーン全体を構成する多くの関係者からのスコープ1直接排出が発生していることをマクロ的に把握するのには役立ちますが、事実に基づく根拠、信頼性、信憑性がないため、実際に進捗管理をする必要がある数値目標に用いるのには、多くの場合において適していません。同様に、製品、サービス、性能の比較にも適していないと言わざるを得ません。なぜなら、必要とされる数値の算定には多くの仮定が必要であり、推定値を操作する方法も少なからず存在しているからです。

 

IBMは、「GHGプロトコル 企業のバリューチェーン(スコープ3)算定・報告基準」によって定義された15のスコープ3排出カテゴリーのうち、カテゴリー1の「購入した製品・サービス」における、ある特定の状況における排出量を確定的に算定することができています。

これは、IBMが契約して使用している第三者運営の「マルチテナント(コロケーション)データセンター」における電力消費に関わる排出部分で、実際の電力消費量を自社把握しているため、算定可能となっています。それだけでなく、IBMはこれらマルチテナントデータセンターでの電力消費を自ら管理しているので、これらの電力消費に関連する排出量を、自社のエネルギーと気候に関する目標の管理対象にも含めています。

 

上記以外では、IBMの活動に関わる排出量を、確実に測定できるサプライヤーは現状存在していません。現在、IBMビジネスに特化した製造業者はなく、通常どのサプライヤーにおいてもIBMビジネスの収益割合はわずかに過ぎず、私たちは彼らの業務を管理することはできません。

 

しかし私たちも、間接排出であるスコープ3排出量の全体的な考え方への社会の高い関心を認識し、スコープ3のその他4つのカテゴリーの一部で、排出量の大まかな概算を試みています。

ただし、これらのカテゴリー内でIBMに割り当てられたスコープ3排出量のすべてを表しているわけではなく、自らが何らかの関連情報を持っているものだけに限られています。それ以外のカテゴリーにおけるスコープ3排出量は、多くの仮定が必要であり信頼性に欠けるため、推定していません。

 

IBMは、排出量の真の削減は、排出している組織自身がその削減のための行動を起こすことによって、直接的かつ実証的に達成されると考えています。

そのためには、IBMとの取引の有無にかかわらず、各社が長期的に成功するために独自の能力を築いていくことが必要です。社会全体で気候変動に取り組むためには、この個々の能力向上が不可欠なのです。

 

IBMは、これを念頭に置きサプライヤーと協働しています。2010年以降、IBMはすべての一次サプライヤーに対して、環境マネジメントシステムの導入、GHG排出量の測定と削減目標の設定、そして結果の公表を要求しました。

これらの要件を踏まえ、2021年4月、IBMは新しい目標として、排出量の多い事業分野の主要サプライヤーに対して、地球気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃以内に抑える国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の科学的勧告に沿ったスコープ1およびスコープ2排出量の削減目標を設定することを要求し、サプライヤー提携を強化しました。

 

IBMは長年にわたり、倫理的、環境的、社会的責任において高い基準で行動する世界中のサプライヤーと、その活動場所を問わずビジネスを行うことをコミットしてきました。

私たちは、具体的な環境要件を設定するだけでなく、サプライヤーとパートナーシップを結び、継続的な改善の促進を通じてこのコミットメントをサポートしています。算定可能な成果を出すために最も適した立場にあるのは、自社のビジネス、業務、その環境影響、改善の機会を熟知している個々の当事者企業です。

この観点から、IBMがサプライヤーの目標達成を自社の功績とすることは決してありません。功績を認められ評価されるべきは、IBMではなくサプライヤー自身であると私たちは考えています。

 


当記事は『Position on Scope 3 GHG emissions』を日本の読者向けに再構成したものです。

 

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