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LGBTQ+とニューロダイバーシティ当事者による連携イベント振り返り | インサイド・PwDA+3

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6月はプライド月間(プライドマンス)と呼ばれ、LGBTQ+*の権利啓発イベントが世界各地で開催される月です。日本IBMでも、10数年前から社内外で多くのイベントを開催していますが、2022年はある1つの新しい試みが行われました。

今回はその新たな試みに「マイノリティー当事者」として参加されたお2人に、イベントを振り返っていただきます。

* LGBTQ+は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字4文字に、さらに多様な性的指向や性自認を包摂する意味でプラス記号「+」が加えられた呼び名。
参考: IBMのLGBTQ+を支援する取り組み

もくじ


濱尾 裕梨

小学生時代に精神疾患を発症し、大学在学時に障がい者手帳を取得。2021年にIBMに入社し、IBMコンサルティング事業にて保険業界のシステム保守プロジェクトに参画中。

亀居 代助(仮名です)

IT EngineerとしてIBM関連会社にて勤務。IBM社内限定イベントではLGBTQ+当事者(ゲイ)であることをカミングアウトしている。

−− 「目に見えないマイノリティー 〜ダブルマイノリティーを知っていますか?」というタイトルで、LGBTQ+以外のマイノリティーとの連帯も呼びかけるオンライン・イベントにご登壇いただき1カ月少々経ちました。まずは率直に、今振り返ってどうでしたか?

 

亀居: オンラインとは言え、直接知らない人に自分のプライベートな話をするのは初めての体験でしたので、めちゃくちゃ緊張しました。でも、本当にやって良かったと思っています。

 

濱尾: 私もやって良かったなぁと思っています。先日、社内限定で公開中のリプレイ動画も見てみたのですが、亀居さんはじめスピーカーの皆さんが私のフワッとした話をとても温かく受け止めてくれていて、優しい気持ちになれました。

 

−− お2人ともイベント前は不安は感じられていたのでしょうか?

 

濱尾: 不安でしたね。プライドマンスの一環としてのイベントですし、LGBTQ+当事者やアライの方たちに失礼がないようにしなくてはと、社内のeラーニング・サイトで予習というか、事前学習をしました。

それで「LGBTQ+ アライ宣言*」もしようと思っていたのですが、宣言するためのページを見つけられなくて、まだ出来ていません。

 

亀居: 私もニューロダイバーシティ*についてはほとんど知識がなかったんで調べました。それから自分自身の話をすることについてですが、社内限定で任意参加のイベントですし、LGBTQ+に不寛容な人はいないだろうとは思っていたものの、それでもやっぱり勇気が必要でした。

* アライ宣言とは、当事者たちに共感し支援することを宣言する、日本IBM社内の取り組み。現在はLGBTQ+とPwDA(障がい当事者)を対象とした2つのアライ宣言が存在している。

* ニューロダイバーシティとは、脳や神経に由来する個人の特性や違いを「個性」と捉える概念のこと。「神経多様性」や「脳の多様性」と訳されることが多い。

 

−− 亀居さんは今回のイベントを通じてゲイであることを初めて社内に広く公表されたわけですが、登壇はどういった経緯だったのでしょうか?

 

亀居: 日本IBMには、LGBTQ+の活動を長年にわたりリードし続けてきた川田さんがいます。その川田さんから打診いただいたのが直接の理由です。

ただ、打診いただいたのには経緯があって、私はこれまでもLGBTQ+のイベントを裏方としてお手伝いしていまして、そんな中で川田さんには「いずれは当事者として発信できたら…」という思いもあることをお伝えしていたんです。

−− そうだったんですね。ところで今回、社内イベントで当事者としてお話しいただいたことで、お2人はLGBTQとニューロダイバーシティそれぞれの「当事者代表」的な見方をされているのではないかと思うのですが、それについてはどう感じられていますか?

 

亀居: そうですね。これまでリーダーであり代表者である川田さんの活動を近くで見てきているので、「自分があんなに立派な代表者に成れるとは到底思えない」というのが正直な気持ちです。

ただ、年齢的なことなども含め川田さんもずっとIBMにいらっしゃるわけではないので、自分がいつか社外にもカミングアウトをして、川田さんの跡を継げればいいなとは思っています。とは言え、そもそも私が「継ぎたいです」と言って継げるものでもないですけれど。

 

濱尾: 障がい者やその家族の間では、IBMは「当事者が活躍している企業」として有名なんですが、私が入社2年目で感じているのは、「その割には社内でニューロダイバーシティの先輩社員の話を見聞きすることが少ないなぁ」ということです。

それであれば、多くの後輩にもっと希望を与えられるように、私がその役割を担えればと思っています。「ロールモデル」と言ったらおこがましいですけれど。

 

−− お2人ともすごく前向きでいいですね! ただ今回のイベントでは、ゲストとしてご登壇いただいた、LGBTQ+の子ども・若者を支援する認定NPO法人ReBit(リビット)の創設者であり代表の藥師さんが、以前ご自身が経験された「LGBTQ+の代表者」として社内で扱われる辛さ・しんどさについて語ってくれましたよね。その辺りはいかがですか?

 

濱尾: 正直、私も今すごくそのプレッシャーを感じているところです。…最近ちょっと悩んでいて…。私がしくじってしまうと「やっぱり精神疾患がある人はダメだ」と受け取られかねませんから。

 

亀居: 私もプレッシャーは感じます。繰り返しになりますが、川田さんの後任のように見られてしまったら、あんなに立派には振る舞えないですから。

 

−− どうすればお2人のプレッシャーを和らげることができるでしょうか? 社内にアライコミュニティー*はあるものの、「当事者」として参加される方はあまり増えていない印象です。

 

濱尾: そうなんですよね。やっぱり私だけが注目されるのはちょっと…。私だけじゃなくて、一緒に活動してくれる当事者が3人、5人といればいろいろ役割分担もできると思うし、本当は10人くらい、オープンにニューロダイバーシティ当事者として活動してくれる仲間がいたらいいなって思っています。

 

亀居: 濱尾さんのその言葉は私もすごくよく分かります。LGBTQ+も、当事者は実際にはたくさんいると思うんですよね。ただ、社内とは言えオープンにするのが難しいことは、私自身とてもよく分かります。

でも、私にとって、アライコミュニティーの存在はすごく大きいです。啓蒙活動や毎月のコミュニティー・イベントなど、熱心に当事者を支援してくれるアライの方たちがたくさんいて本当に助かっていますし、安心感がすごいです。

 

−− 嬉しいです! 「熱心」とは言えないけれど、私自身LGBTQ+アライコミュニティーのメンバーとして長年活動を続けてきているので、「ちゃんと意味があるんだ」って感じられてとっても嬉しいです!

* アライコミュニティーとは、当事者社員と、当事者を理解・支援するアライ宣言をした社員が一緒に活動をするコミュニティー。

−−イベントの中でお互いの話で印象的だったものがあれば教えてください。

 

亀居: 濱尾さんの「周囲の方たちに理解していただけるよう、自分の特性を説明できるように準備している」という話が印象的でした。すごくちゃんとしているなと思いましたし、同時に自分自身を省みました。

「ゲイって言えば分かるでしょ。知ってますよね。」という感じで、自分に少し傲慢なところがあったなと感じました。相手が知識を持っていることを前提にしていたというか…。これからは、私もちゃんと説明できるようになっていないとなと思いました。

 

濱尾: 私は、亀居さんの職場の近しい人へのカミングアウトのきっかけとなった「お前もいい歳した男なんだから、そろそろ結婚しろよと何度も言われ、交わしきれなくなった」という話を聞いて「私だったらどうするだろう?」って思いました。

居酒屋のような雑然とした場所で、そんな風にパーソナルな部分に踏み込んでこられたら…その場しのぎですら辛そうだなぁって。恐怖ですね。多分私はストレートだという性自認ですが、それでも…。

 

−− もちろん、相手との関係性によるところではありますが、マイノリティー性に関係なく「うっとうしいな!」って話ですよね。それでは、イベントに参加いただいた方からの感想や言葉で強く記憶に残っているものはありますか?

 

亀居: 私は参加者へのアンケート・コメントに書かれていた「すばらしい内容であなたを誇らしく思っています。何かあればいつでも力になるからすぐ言ってほしい」という、自社の社長からのメッセージがとても嬉しかったです。

ちなみに、社長もアライ宣言をしてくれています。

 

−− 亀井さんは数年前の東京レインボープライドで、パレードで偶然一緒になった日本IBM社長就任前の山口さんに、同性パートナーを配偶者と見做す「IBMパートナー登録制度」の拡大を訴えて、その後すぐに実現されたという話をイベントでもされていましたよね。濱尾さんはいかがですか?

 

濱尾: 私はイベントの途中に参加者の方が送ってくれたチャットに強く共感しました。「小中高など、学生時代にもっとLGBTQ+や精神疾患などのマイノリティーについて学べる時間があったらよかったのに。」というものです。

本当に、もっと早いタイミングで広くみんなが学べる場があれば、当事者だけじゃなく多くの人がもっと暮らしやすくなると思うんです。

−− たしかにそうですよね。それでは、他にも社会に対して「もっとこんな支援をして欲しい」とか「これじゃ全然足りていません」とか、そういうリクエストはありますか?

 

亀居: 私は不満はないですね。もちろん、すべてが上手く行っているなんて思えませんが、それでも社会は着実に前に進んでいると思うし、LGBTQ+への差別も確実に減ってきていると思っています。

たとえば、私が住んでいる地区も同性婚を支援してくれていますし、国が同性婚を認めるのも時間の問題であり、そう遠くないだろうと見ています。

 

濱尾: 私は「これまでは大変だったろうけど、IBMに就職できたのだから安心だしもういいじゃない」って見られてしまうのが嫌ですね。

 

−− どういうことでしょう? ちょっと詳しく聞きたいです。

 

濱尾: 私は力の振り分けが上手くできなくて、脳が疲れやすいという特性を持っています。そのせいで、最近では朝支度をして仕事をスタートしたら、夜7時くらいには疲れきって倒れるように寝てしまい、掃除や料理などの家事に割り振る力が一切残っていない感じです。

昔からそうだったので大学も自宅の近くの学校を選びましたし、これまでずっと実家暮らしを続けています。本当は一人暮らしをしたいのですが、就職してお給料をいただいているので「必要ならヘルパーさんを自分で頼めばいいじゃない」という感じで扱われてしまいます…。実際にそうするには、行政からの支援などがないと厳しいのですが…。

 

−− なるほどそういうことですね。ただ、以前そうした状況でも行政支援が受けられると聞いたこともあるので、しっかりと相談しに行ってもいいかもしれませんね。それではIBMに対してはどうですか? 最近は理由を問わず週休3日や4日という働き方も選択できるようになっていますが。

 

濱尾: あの人事施策*はすばらしいですよね。自社ながらさすがIBMと思いました。ただ、実際にこの制度を利用できる職種やプロジェクトがどれくらいあるのかな? とも思いました。たとえば、私がこれまで参画してきたプロジェクトで果たして適用できるのかなぁって。

参考: 短時間勤務制度の対象事由撤廃で、「誰もが短時間勤務が可能」に(これまでの常識や思い込みにとらわれず、 多様な人財がより輝く環境づくりを推進する新しい人事施策)

−− そうですね。その制度の活用が新たなマイノリティーへの偏見を生みだすようなことがあってはならないし、周囲の理解など含めた啓蒙と、制度を十分活用できる職場環境づくりも大切ですよね。それでは最後に、お互いに対するメッセージをお願いします。

 

濱尾: 亀居さんがとても穏やかで優しい方で、すごく心地よかったし嬉しかったです。ありがとうございました。私、LGBTQ+当事者の方とやりとりするのは初めての経験で、すごく個性的な方だったらどうしよう。ちゃんとやりとりできるかなって不安を感じていたんです。

なんだか、LGBTQ+の方って我が強い方が多いっていうイメージがあって…。ごめんなさい。

 

亀居: いやいや、そんな。こちらこそ多くの新しい気づきや学びをいただけて嬉しかったです。ありがとうございました。今後もいろんな形でマイノリティー当事者として協力しあっていきたいので引き続き仲良くしてください。

でも、LGBTQ+の人が我が強そうとか個性的っていうのはやっぱりイメージでしかないと思います。そういう人が選ばれてメディアに登場しているからでしょうけど。私が自分の周囲を見渡してLGBTQ+当事者に感じるのは、とても穏やかな人が多いということです。おそらく、当事者として難しい状況に長く置かれていることが関係しているのではないかと思いますが、差別的なゲイの人とか、私はこれまで会ったことがない気がします。

 

濱尾: そうなんですね。私も、もっと先入観を持ちすぎないようにしなくちゃと思います。

イベントでもお話しさせてもらったように、障がい者と言っても一人ひとり異なりますし、精神障害にもいろんなタイプがあります。「こういう人」と決めつけることなく、それぞれの個人に興味を向けて貰いたいなぁと改めて思いました。

「不得意や苦手が他の方たちよりも少し行き過ぎているだけ」って、そんなふうに思って貰えれば、お互いが今よりもっと生きやすくなると思うので。

 

−− 今日はありがとうございました。私たち人間は、誰もがなんらかのマイノリティー性を持っている当事者だと思います。お2人は私たちみんなの代表者でもあり、お2人の活躍はそのまま私たち全員の生きやすさや働きやすさにつながると思いますので、今後も引き続き応援させてください。今日はありがとうございました。

 

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TEXT 八木橋パチ

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