Watson IoT Blog

[事例] SilverHookパワーボート社 (ギネス世界記録樹立 & エンジン寿命を3倍に)

記事をシェアする:

 

SilverHookパワーボート社(パワーボートレーシング界を代表する企業/チーム)事例

 

時速240キロを超えるスピードで強風や高波の中を進むパワーボートレース。過酷な環境で勝利を掴むには、今やIoT(モノのインターネット)テクノロジーが欠かせません。

ボートレーサーの安全とレース審判団の正確な判定を確固たるものとするために、SilverHookレースチームはIBMのイノベーションを用いてスマートテレメトリー(次世代遠隔測定)ソリューションを構築し、瞬時の判断が勝敗を決める海上レースへと挑んでいます。

 

■ 導入事例のポイント

・  ビジネス課題

SilverHookレースチームは、危険で判定の難しい高速水上パワーボートレースを、より安全で判定精度の高いものへと変化させようとしていました。

・ 課題への取り組み

SilverHookレースチームは、IBM CloudとWatson IoTソリューションを用いて、リアルタイムでボートのさまざまな挙動をモニタリングする「t3lemetry」というソリューションを構築しました。

t3lemetryを通じ、公認審判団に船体の正確な情報を提供しつつ、チームのポールポジション獲得を支援します。

・ 導入結果

  • ボートレーサーを勝利に近づけつつ、安全性を向上
  • エンジン寿命を3倍に伸ばし、保守および運用コストを削減
  • 客観的データによりレース審判団の正確な判断を支援するツールの提供

 

 

■ ビジネス課題の背景 – 変化の波

パワーボートのスピードは、時速240キロ以上にも達します。この水上最速のレースを安全に行うには、レースの参加チームにも運営側にも、乗り越えるべき技術的、機械的な問題がありました。

SilverHook社の社長で、パワーボートレーサーでもありギネス世界記録保持者でもあるナイジェル・フック氏は、次のように説明しています。

「水上パワーボートレースはとても刺激的ですが、同時に危険を伴うものです。強い波や水流という環境の変化、あるいはわずかな操縦ミスが、レーサーの命を危険にさらすスピンやクラッシュにつながるのですから。

そしてスピードの速さは、審判団にも想像を絶する判定の難しさを与えてきました。」

 

チームとボートレーサーは、レースの厳格なルールを遵守しなければなりません。

たとえばパワーボートレースでは、カウントダウン方式で行われるスタート直前の1周を、時速約130キロ以上で走らせられなければレース参加資格が得られません。そして参加資格を得た後、レーサーは追い越しをかけるとき以外には、他の競技ボートと7艇身以上の間隔を保たなければなりません。そうしなければ、航跡が他の競技ボートを転覆させてしまう可能性があるからです。

 

「レース中およびレース終了後、審判団は艇身距離をビデオ映像でチェックしますが、この方法では不正確な判定が下される場合があります。」

フック氏は続けます。「チームにとっても、リアルタイムにボートの速度、エンジン回転数、船体位置、エンジン圧力を正確に把握することはとても難しいものです。でもそこにこそ、レーサーに危険やマシントラブルの可能性を伝え、チームを勝利に導くために必要な貴重なデータが詰まっているのです。」

 

それまでの無線によるチームメンバーとのやり取りに不満を感じていたフック氏は、SilverHook社のエンジニアと協力してより良い効率的な方法を検討しました。そして、近年のIoTとAI技術の発展が、大きなチャンスの波であることを発見したのです。フック氏は言います。

「テレマティクス技術を使用しリアルタイムでデータを収集して分析できれば、ボートレースに変革を起こせると気づいたのです。船体の位置、速度、エンジンの状態、これらをタイムリーに掴めるとなれば、レースは新たな次元へと向かうことでしょう。」

 


IBM Watson IoTが潜在的な危険を予測してくれるおかげで、

私たちはレーサーが安全でかつ勝利を手にするためのコース取りを支援できるのです。

— SilverHook Powerboats社社長  ナイジェル・フック


 

■ 課題への取り組み – 分析と洞察にスーパーチャージャーを

SilverHookレースチームは新たなテクノロジーが起こす潮目の変化を捉えました。

各種センサーから船体の向きや角度、速度、エンジンパフォーマンスのデータを取得し、モバイルネットワークを介してWatson IoTプラットフォームに送り、ほぼリアルタイムに分析するモニタリングソリューション「t3lemetry」を、IBM Cloud上に構築したのです。

 

t3lemetryがまず最初に用いられたのは、77ルーカスオイル・SilverHookレースボートです。

ボードのスピードや位置、エンジンの回転数と圧力のデータを収集し、情報を分析しました。そしてそこから生まれた独自のアルゴリズムを通じて、ボートのパフォーマンスからパターンを見つけ出しました。

次に、アルゴリズムとWatson IoTプラットフォームを掛け合わせて、船体から送られてくるリアルタイムデータを元に潜在的な危険やマシントラブルを予見し、ボートレーサーにアラートを送る機能を搭載しました。

 

「私たちはIBMがIoTソリューションの開発を始めたときから、IBMクラウドを使いはじめました。開発、テスト、実装に必要な柔軟性、豊富な機能、そして拡張性がありましたからね。

逆に言えば、私たちには独自のデータセンターを立ち上げたり維持したりするリソースはありませんでしたから、IBMクラウドがなければ、t3lemetryに取り組むこともなかったでしょうね。」フック氏はさらに、次のように述べました。

 

「IBM Watson IoTは万能ソリューションです。高速でパワフルな分析機能に加え、他のテクノロジーとの融合性も非常に高くすばらしいです。

たとえば、フロリダのキーウェストとキューバのハバナ間での世界最速航海記録を計画したときは、陸上側のチームからの無線信号が届かない距離だったので、Watson IoTからのテキスト情報を音声情報に変換する方法を探しました。結果、私たちは分析から得た洞察を直接ヘッドセットに読み上げる小型コンピューターを、Watson IoTソリューションに接続することができたのです。」

 

今後、SilverHookは世界最大の水上飛行機トーナメントで、t3lemetryをテストする予定です。このトライアルでは、より正確かつ公正な判断ができるように、IBM CloudとWatson IoTソリューションが審判団に洞察を提供する予定となっています。

「現時点では、実際に用いられたデータセットは77ルーカスオイル・SilverHookレースボートのものだけです。今後、私たちはもっと広大なデータを用いて、t3lemetryを磨き上げたいと思っています。」

 

フック氏はさらにこう続けました。

「より正確にWatson IoTが危険とエンジン状態を予知できるよう、より荒れた海におけるパワーボートのデータセットを用いて、t3lemetryを完璧なソリューションへと近づけたいのです。

IBM Watson IoTが提供してくれる洞察を、私たちは本当に楽しみにしています。IBMの多彩なソリューションと優れた技術サポートがあれば、t3lemetryを海洋技術分野のさまざまなユースケースに適用できるだろうと考えています。

 


IBMのテクノロジーと専門知識が、勝利への道のりの各段階で私たちをサポートしてくれます。

そしてさらなる成長と開発のための新しい海路を開いてくれるのです。

— SilverHook Powerboats社社長  ナイジェル・フック


 

■ 導入結果 – ギネス世界記録樹立と人命保護

Watson IoTとIBM Cloudソリューションを活用したt3lemetryは、パワーボートレースをより安全にし、SilverHookを新たな世界記録へと近づけています。

そして実際に、Watson IoTのテクノロジーは、SilverHookレーシングチームがキーウェストとハバナ間でのギネス世界最速航海記録を樹立した際に、人命を守る判断を下す支援をしました。

 

フック氏はそのときのことをこう説明しています。

「航海中、IBM Watson IoTが、センサー情報から左舷側の推進システムにある問題が起きていることを発見しました。私たちはその洞察を受け、左舷側の推力を突然失った場合でもボートが転覆したりコースを外れることがないよう油圧制御を調整しました。それで、世界最速記録を打ち立てることができたのです。

このようにパワーボートレースをより安全でより正確なものとすることは、より多くの人がこのスポーツを楽しむことを、そして参加機会を増やすこととなるでしょう。」

 

Watson IoTが提供する洞察により、77ルーカスオイル・SilverHookレースボートが搭載しているマーキュリー・レーシングのエンジン寿命が大幅に伸び、結果メンテナンス費用は大幅に下がっています。そしてSilverHook社は、その効果を高速水上飛行機にも用いる計画を建てています。

フック氏の言葉を見てみましょう。

 

「IBM Watson IoTは、問題が発生する前にその可能性を伝えてくれるんです。これは当然大助かりですよ、エンジンへの負担を大幅に下げることができますからね。

おかげで、エンジン寿命が3倍もの長さになりました。新しいエンジンは約15.5万米ドルするんですから、どれだけのコスト削減になるか、分かるでしょう。

私たちは削減した分をさらにt3lemetryの開発に再投資できるんです。」

 

「IBM Watson IoTとIBM Cloudがもたらしてくれたt3lemetryの水上パワーボートでの成功を、私たちは高速水上飛行機にも持ち込みます。きっとすばらしいことが起きますよ。

それから、レース審判団にもこのテクノロジーを紹介することを考えています。安全性を高め、正確性や透明性を通じレースの品位を高めてくれますからね。

さらに、今後数カ月の間にt3lemetryソリューションを改善して、何が今レースで起きているかを視覚的にリアルタイムに観客にも提供することで、よりエキサイティングにレースを楽しんでもらえるようにする予定です。」

 

フック氏は最後にこう言いました。

「私たちはこの海原の先に、t3lemetryが海洋技術分野のさまざまな活動に用いられる未来を見ています。IBMのテクノロジーと専門知識が各段階をサポートしてくれているので、私たちは勝利の道を歩み続け、さらなる成長と発展のための新しい海路を探ることができます。」

 

 

SilverHook パワーボートについて

マイケル・シルヴェルベリとナイジェル・フックが史上最速、かつ最も効率的な単胴船を作り上げて以降、SilverHook社はパワーボートレーシング界を代表する企業となりました。

同社は世界記録の樹立に加え、スピードと安全性における新たな海路を切り開いています。

 

 

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、IBM Watson IoT事業部 にご連絡ください。

 

関連ソリューション: IBM Watson IoT Platform

 

関連記事: [事例] エネルギーの無駄を50%カット。同時に費用とCO2排出量も大幅削減

関連記事: 本番志向!Watson IoT を活用してPoC貧乏からの脱出

関連記事: クラフトビールがIoTとAIに出会ったら(シュガークリークブリューイング事例)

 


土屋 敦 | Technical Lead, Watson IoT

 

当記事は、 Case Study: SilverHook Powerboats を抄訳し、日本向けにリライトしたものです。

 

More Watson IoT Blog stories

[事例] IoTで高齢者ケアを変革するKarantis360社

Watson IoT Blog

Karantis360社(高齢者介護ソリューション)事例   高齢化と核家族化が一層進む中で、高齢者 ...続きを読む


AIとIoTで、設備資産管理を「周期基準対応」から「状態基準対応」へ

Watson IoT Blog

  安価なセンサー、低コストの通信、そしてクラウドコンピューティングの普及により、さまざまなモノ(T ...続きを読む


【11月20日開催】CASE時代の 自動車開発プロセス変革セミナー

Watson IoT Blog, イベント・セミナー

  11月20日(水)に自動車製造業のお客様を対象に、「CASE時代の自動車開発プロセス変革セミナー ...続きを読む