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2050年…「怒っている顔のない社会」が見たい(最高技術責任者(CTO) 久世 和資)

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Watson IoTチームメンバー・インタビュー #27

久世 和資 最高技術責任者(CTO)

 

IoTやAIに代表されるテクノロジーと、自身、IBM、そして社会がどのように関わってきたのか、そしてこれからどのように関わっていくのか。
そんな観点でWatson IoTチームのメンバーに語っていただくインタビューシリーズの第27弾。今回ご登場いただいたのは、日本IBMのCTO(チーフテクノロジーオフィサー)、久世 和資さんです。

(インタビュアー 八木橋パチ)

 

–対談やインタビューをたくさん受けられている久世さんですが、「知らない」という方もいらっしゃるかと思います。まずは簡単に経歴を教えてください。

そんなにたくさんインタビューを受けてないですし、私のことを知っている人なんてほとんどいないんじゃないかなあ?

よろしくお願いします。IBMに入社してもう32年になります。1年間だけ「未来価値創造事業」という営業系の部門に所属したことがありましたけど、それ以外はずっと研究所や開発部門に所属してきました。

最近3年間は、CTOという役職で、技術の推進や技術者の育成に勤めています。

 

— CTOというと、一般的には「R&D(研究開発)部門のトップ」というイメージがありますが、日本IBMのCTOも同じでしょうか?

同じところもありますけど、日本IBMの場合はR&Dだけに閉じているわけではないので、その観点からは一般企業のCTOとは相当違うでしょうねぇ。日本IBMにはR&Dを含めて数千人規模という非常に多くの技術者がいますが、その方たちを技術の観点から支援していくのが私の役割です。

 

— さらに、久世さんの場合は社内を見るのと同じくらい、社外に向けてIBMのテクノロジーを発信していく役割をお持ちになられています。それも一般のCTOとは大きく違いそうです。

そうですね。パチさんが言うように自社技術を社外に向けて積極的に発信していくというのも、一般的なCTOのイメージとは異なるのかもしれませんね。

でも昔と違って、最近では化学メーカーなども「言われたもの、注文されたものを作って納品する」だけではなくて、自社の強みを見極めて作るものを絞り込み、それを売り込みに行くというビジネスを推進していらっしゃるでしょう。だから、そういう企業のCTOの方たちとは近いんじゃないかなと思いますよ。

 

— なるほど。では、CTO就任後の3年間でそういう企業が増えていると感じられますか? 社会は変化していますか?

企業内でテクノロジーの重要性が増し続けているのは、どんな業種のお客さまとお話させていただいても感じますし、CTOに限らずどんな役職の方とご一緒させていただく際にも感じています。デジタル・トランスフォーメーション(DX)への注力が、企業の根幹を支えるための活動になっていますよね。

 

— 久世さんって、いつお見かけしても常ににこやかで穏やかですよね。社外からも「人格者」という声をしょっちゅう耳にしているんです。

人格者はちょっと照れちゃうなあ。もちろん嬉しいけど(笑)。

子どもの頃からおっとりした子だったんですよね。めったに怒りを感じることもなかったし…。

 

— 最後に怒ったのはいつですか?

そうだなあ。うーん……思い出せないなあ。

あ、そうだ! 先日、とある場で「IBM社員があるプロジェクトで関係者に尊大な態度を取っていた」という話を聞いて、そのときは怒りを感じたし、同時に悲しくもあったなあ。「どうしてなんだ」って。

…怒るときはね、いつもたいてい同じ理由ですよ。人としての常識や人間性に欠ける言動してしまう人を目にしたときですね。

 

— すごく分かります。私もときどきそういう場面を目にして、悲しくなります。

寂しいことですよね。とは言え、そういう場面を目にする機会も少なくなってきている気がしますね。

でもそれは、私が歳をとってそういう場に居合わせることが、たまたま減っているだけなのかもしれませんね。

 

— 久世さんはケンカしたことってありますか?

取っ組み合いの? うーん、人生で1度だけ。学生時代の親友と。

でもそれも「怒りに任せて」ってものじゃなかったけどね。うん。

 

— 失礼ですが、久世さんは育ちの良い、おっとり暮らせる「お坊ちゃん」だったんですか?

どうかなあ。たしかに中高生の頃は生徒会長をやったり、大学入試も面接と小論文だけで合格できるところを選んだり、あんまり競争意識の高い方ではなかったかもしれませんね。

ただ、大学生の頃は家庭の事情もあって本当にお金がなくて、いろんなアルバイトに明け暮れてどうにか暮らしていましたね。授業料滞納で学校を除籍になりかけたり…。

 

— 勝手ながら苦労知らずのイメージで久世さんを捉えていました。失礼しました。

 

— CTOとしてIBMのテクノロジーを紹介する機会が多いと思うんですが、ぶっちゃけ「この技術は好きじゃないな」とかありません?

好き嫌いは…うーん、ないかなあ。ただやっぱり、表からは分かりづらいけれど、裏にはIBMならではの考えや目指している世界観のようなものが流れている技術を伝えるときには、力が入りますよね。

最近だとAIに信頼性と透明性をもたらす「Watson OpenScale」だとか、データサイエンティストを支援する「Watson AutoAI」だとか。

 

— 久世さんがワクワクするのってどんなものなのでしょうか?

ちょっと話が脱線しちゃって申し訳ないんですけどね、ワクワクするっていうとすぐに「霧の摩周湖」のことを思い出すんです。

10年くらい前かな、当時釧路公立大学の学長だった小磯修二さんに「世界有数の透明度を誇る摩周湖が濁ってきた謎を解き明かそう」って話を聞き、翌日にはチームのみんなで現地に向かっていました。そうういう「チームで解決に向け取り掛かる」のにはワクワクしますよね。

 

— 原因は解明したんですか?

いや、残念ながら今もはっきりと分かっていないと思います。当時もセンサーを使って水温や水流、霧の酸性度などのデータを取得して調べたんですけどね。でもひょっとしたら現在のIoTとAIの力をもってすれば、謎を解明できるかもしれませんね。

話をさらに脱線させてしまうんですけど、私が現地に行って感銘を受けたのが、摩周湖周辺の環境を守るために弟子屈町(てしかがちょう)自治体が、期間限定でマイカー乗り入れに規制をかけて実験をしていたんです。有料のシャトルバスを用意して、やってきた人びとに「全員それに乗り換えて向かってください」って。

 

— 最近だとオーバーツーリズムも社会問題になっています。弟子屈町は環境を守るための活動を当時から実践されていたんですね。

「わざわざ来ていただく方たちに不便な思いをさせるなんて」って、実施前は地元住民の反対もあったらしいんです。でも、実際に実施してみたら、「静かで神秘的。本当の摩周湖を味わえました」って観光客の評価はとても高かったそうです。今はまた、マイカーで入れるそうですが。

これって、テクノロジーもデジタルも関係していないけど、強い意志と取り組みで人びとの意識を変えるという話であり、弟子屈町のこの先見性の高い取り組みは、DXではないけれどとても素晴らしいUX(ユーザー体験)デザインだったんじゃないでしょうか。

 

— 聞いているだけでもグッときます。すごくワクワクするし引き込まれるストーリーです!

もう1つ、最近のでグッとくる話があって。IBMのR&Dが行なっている「VolCat(ボルキャット)」の話をしますね。ボルキャットは「揮発性の触媒」で、「Volatile Catalist(ボラタイル・カタリスト)」の略で、洗浄や分別不要で不純物ゼロの高品質ポリエチレンプレフタート(PET)、いわゆるペットボトルなんかの素材をリサイクルする技術なんです。

「今後5年間で実現しそうなビジネスと社会を変えるイノベーション」として春に発表されました。

 

参考: TECHABLE – IBMの研究チームが開発した新時代のリサイクル技術!洗浄・分別不要でPET再生を可能にする「VolCat」が話題に

参考: Think2019現地レポート #1 “5 in 5” by Watson IoT

 

— すごい技術ですね。でもちょっと私的には「ワクワク感」とは違うかな。

それがね、今すごいことになっているんです。ただ、これはここだけの話なんで記事には書かないでくださいねパチさん。

実は…Xxxxxxx、Xxxxxxxxxxxxx、Xxxxxxxxxxxxxxxxxxx。Xxxxxxx、Xxxxxxx、Xxxxxxx、Xxxxxxx。

Xxxxxxx、Xxxxxxx、Xxxxxxx、Xxxxxxx、Xxxxxxx。XxxxxxxXxxxxxx、Xxxxxxxxxxxxxxxxxxxです。

 

— それはすごい!! めっちゃワクワクします。実現したらたくさんの社会課題が同時解決するじゃないですか!!

そうでしょう。数年前に世界経済フォーラムが「2050年には、海には魚よりもプラスチックの方が多くなる」と発表しましたが、これがうまく進めばそれも回避できるでしょう。

今、カリフォルニアにあるIBMアルマデン研究所が、一生懸命この研究を進めています。

 

— 久世さんと話をしていたら、未来が明るく見えてきました。

(笑)。でも実際には、ご存知のように世界にも日本にも、解決すべき問題が厳しい現実として目の前に横たわっています。

例えば日本の農業は後継者不足に直面しています。そして日本では大量に食料が廃棄されているのに、世界では飢餓に苦しむ人びとがたくさん残されています。

 

— どうしたらいいでしょうか? 私たちはどこからどんなアプローチを取ればよいでしょう?

私も答えを持っていません。でも「満員電車で会社に到着する前にヘトヘトになってしまう」「テレビをつければ、暗いニュースで埋め尽くされている」– こんな「幸せを感じられない」日常の中では、大きな問題に取り組めないんじゃないでしょうかね。

今、世の中で行われているような「働き方改革」だとか「暮らし方改革」だけじゃなくて、もっと大掛かりで根本的な取り組みが必要なんじゃないかって気がしています。それがどんなものなのか、私も毎日考え続けています。

 

— 最後の質問です。久世さんが2050年に見たいものはなんですか?

うーん、2050年…「怒っている顔のない社会」が見たいですね。楽しく笑顔が溢れていて、緑や自然が溢れている社会です。

そのときも僕はCTOをやっているかも。でもそのTはテクノロジーのTじゃなくて「楽しい」、チーフ楽しいオフィサーになっていたいな。ハハハハ(笑)。

 

インタビュアーから一言

博士課程に進み学生結婚をし、IBMへの就職が決まったときには、育英制度や奨学金で返済しなきゃいけないお金が600万円はあったという久世さん。でもそんな時代の話ですら、とてもにこやかに話をされるんです…。そこには、「この人は強く信じるものを、明確に意識されているんだろうな」と感じさせる何かがありました。すごかった。

これまで、私は久世さんのその朗らかさや大らかさに惹かれていたのですが、今回のインタビューを通じてその強さにすっかりファンになってしまいました。

(取材日 2019年12月19日)

 

 

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