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「サステナビリティー経営、不可避の現実」 | from IBVレポート

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当記事は、IBM Institute for Business Value(IBV)のレポート『サステナビリティー経営、不可避の現実: 消費財・小売業界の経営層に突きつけられた、事業継続への課題とは』を一部抜粋し再編集したものです。
全編は下記よりダウンロードしてご覧いただけます。
https://ibm.biz/LastCallSusJ


 

サステナビリティーへの最新の生活者心理 

生活者の多くは、環境サステナビリティーに向けた要求と自分が果たすべき社会的責任とを結びつけて考えている

世界の生活者の93%は、コロナ禍によって、環境サステナビリティーのみならず社会的責任に対する個人的な見解も変化したと回答している。また67%以上が、環境問題は個人的にも非常に重要な問題であると考えている。

社会的責任についても同程度の割合の人々が注目しており、約75%の生活は、教育へのアクセスや、健康・福祉の確保は自分にとって非常に重要であると答えた。また72%は、貧困と飢餓をなくすことについても同様に重要だと答えている。

全般的に生活者の多くは、環境サステナビリティーと人道的な社会的責任を分かち難い問題として捉えているようだ。よって、真の意味でサステナブルでありたいと標榜とする企業は、その両方に同時に取り組まなければならない。

 

われわれは環境的・社会的な目標への取り組みの中で直面するさまざまな現実において、この不可分な、分かち難い関係性を見いだすことが多い。例えば、清潔な水がなければ健康は維持できない。

自然を守る取り組みは、自然環境だけでなく、そこに住む人々のニーズや貧困にも対処しなければ効果を得られないなど、枚挙にいとまがない。IBMの調査「サステナブル企業の幕開け – デジタル技術で深刻化する環境問題に対処する」によると、生活者の多くもこの点は理解しているようだ。

 

そして、企業もこのことに気づき始めている。IKEA社は、サステナビリティーへの取り組みとして、気候変動や持続不可能な消費行動などを環境問題として取り上げているが、同様に貧困と不平等を自社が解決すべき課題として挙げている。*1

*1 “People and Planet Positive.” IKEA Sustainability Strategy. June 2018. Updated August 2020.
https://www.ikea.com/jp/en/files/pdf/b9/71/b9719683/ikea-sustainability-strategy-en-202008.pdf

またブロックチェーン技術を用いて農家とサプライチェーンをつなぐソフトウェア企業である Farmer Connect 社は、生活者に自分が購入するコーヒーがどこから来ているのか、またコーヒー豆を栽培した農家が十分な生計を得られているのかを伝えるモバイル・アプリをリリースしている。*2

*2 “Farmer Connect Uses IBM Blockchain to Bridge the Gap Between Consumers and Smallholder Coffee Farmers.” IBM Newsroom. January 6, 2020.
https://newsroom.ibm.com/2020-01-06-Farmer-Connect-Uses-IBM-Blockchain-to-Bridge-the-Gap-Between-Consumers-and-Smallholder-Coffee-Farmers

参考記事: 小規模コーヒー農家と消費者の距離を近づける

持続可能かつ倫理的な生産と調達を | 小規模コーヒー農家をブロックチェーンで支援

 

生活者はブランドを信頼している。でも、企業情報は下調べをしてから判断したいと思っている

生活者は、自分の価値観に合ったブランドを主体的に求めている。今回の調査では、生活者の48% が企業の環境サステナビリティーに関する発表内容を信頼すると回答。一方で、そのうち4分の3 以上の人が、最終的には自分で下調べをしてから判断すると回答していることが分かった。

では生活者は調べる際に、何を使って、どのような情報をチェックしているのだろうか。最も一般的なのは、オンラインの検索エンジンやソーシャル・メディア・プラットフォームを使う方法だ。次に、製品やブランドのホームページを直接チェックしている。

図3 信頼する調査の結果 生活者が購入する前にチェックするもの

 

ほとんどの生活者は、製品や個人としての健康、ウェルネス効果などの情報を求めているが、企業がこれまで実施した環境サステナビリティーの実績を調べる人も少なくない。具体的には、企業の環境に関する評価基準、重視する施策やその進捗状況などに注目している様子がうかがえた。

 

未来に向けたヒント1: 環境についてのラベリングの重要性*3

クリーンなリサイクルが可能だが、輸送の際に支障となる重いガラス容器入りの液体を購入するのと、軽量でもリサイクル性に劣るプラスチック容器入りの液体を購入するのと、どちらが環境に優しいだろうか。

生活者だけでなく、生活者に製品を販売する企業も、同じような葛藤に幾度となく直面するだろう。適切な判断を下すためのシンプルな方法を見つけることは容易ではない。複数の情報源から相反する情報が寄せられている場合はなおさらである。

食品業界は、シンプルさと透明性を追求することで、この問題に対処している。欧州ではNestle社や Tyson Foods社、英国のM&S社とSainsbury’s社、そしてスペインのスーパーマーケットEroski社が共同で、食品用の環境ラベルを開発している。

2021年後半に開始予定の試験運用では、カーボン・フットプリント、使用水量、水質汚染、および生物多様性の4つの指標を色分けして、シンプルなテキスト情報として表記することが検討されている。

このようなシステムが成功すれば、生活者は判断しやすくなるだけでなく、環境にとってより良い判断を下したという確信を持てるようになる。

 

また、一方で企業が取り扱う環境データには、センサーや衛星画像、市民や地域社会から提供される写真や報告書など、さまざまなソースがあり、データの信頼性を包括的に検証するためには、プロセスや基準を定める必要がある。

また分析を行う前に、そもそものデータの出所についても検証しなくてはならない。ここではより高度で、複雑なラベリングが必要になる。

 

AIやアナリティクスは、そのデータの正確性と信頼性を検証することに役立つ。例えば、極めて膨大なデータの中から何らかの有効なナラティブが導き出された場合、個々のデータ・ポイントの品質管理や、データ間から厳密に意味をくみ取ることなどは、さほど重要でなくなるかもしれない。

なぜなら AI が、データの一致と整合性が生み出すナラティブを引き出す際、すでに有効に機能している可能性があるからだ。

 

さらに、異なるソースからのデータを分析結果としてまとめるためには、組織やシステムをまたいだ相互運用が必要で、これにはオープンな規格が求められる。そのため、クラウド・コンピューティングが最適解となる。

クラウド・コンピューティングには、環境データが保存され、モデル化される方法が多岐にわたることで生じる問題もあるが、一方でこうした問題を緩和するテクノロジー・インフラも同時に提供されている。

具体的には、オープンソース・ソフトウェアをベースにしたハイブリッドクラウド・アーキテクチャーがある。これにより関係者や組織の間で、データやワークロードの移動が容易になり、多くの人がデータにアクセスしやすくなるという利点が生じる。

*3 Morrison, Oliver. “Europe-wide eco-label scheme set for launch in 2022 as industry joins forces to launch pilot.” Food Navigator.com. June 28, 2021.
https://www.foodnavigator.com/Article/2021/06/28/Europe-wide-eco-label-scheme-set-for-launch-in-2022-as-industry-joins-forces-to-launch-pilot

図5 サステナビリティーの割増金 生活者は価格が高くてもよいと考えている

 

未来に向けたヒント2: クラウド上のAIで、水中の命を守る

国連は持続可能な17の開発目標を掲げているが、目標14は「海の豊かさを守ろう:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」である。*4

 

しかし、「言うは易く、行うは難し」である。

今世界中で魚介類への需要がますます高まっている。一方、海水の酸性化が進み、魚介資源は枯渇状態にある。その解決策とされてきた水産養殖は、環境悪化の一因として厳しい批判を受けるようになっている。

 

しかし、IoT、AI、クラウドの登場により、希望の光も見えてきた。

水産養殖は、複雑な環境で行われており、課題も多い。例えば大量の魚の排泄物は水中で酸素を奪い、有害な藻類の発生を促す。あるいは養殖場から逃げ出した魚が、繊細な自然の生態系を乱し、魚病や海シラミなどを蔓延させる。

しかしIoTセンサーを使って適切にデータを収集し、その結果をAIで分析させれば、魚の健康状態を把握し、給餌量を適切に保つことができるようになる。

 

環境センサー、水中ビデオ・モニタリング、水中音響技術、ドローン画像などから、魚の動きや酸素濃度、水量といった多くのデータを得て、それらを衛星データや地理空間データ・セットと組み合わせて活用することができる。

さらにデータをクラウド・プラットフォームに送信すれば、AIが有用な提案や、相関関係の分析、潜在的なリスクの早期警告などを行うこともできる。

 

こうした予測分析を行うことができるプラットフォームがAquaCloud だ。AquaCloudはThe Seafood Innovation ClusterとIBMが共同で開発したプラットフォームで、ノルウェー全土のサーモン養殖場からデータを収集し、データの匿名化と集約を行っている。

具体的には海シラミの数を分析し、実用的なデータを毎日養殖業者に提供している。これにより、海シラミの発生が予測できるようになり、養殖業者による予防対策に一役買っている。

 

このアプローチをより大規模に運用しているのが、EUが資金を提供するプロジェクト「Green Aquaculture Intensification in Europe(GAIN)」だ。現在、9カ国の養魚場がこのプロジェクトから、センサーと機械学習技術の提供を受けている。*5

*4 United Nations Department of Economic and Social Affairs, Sustainable Development.
https://sdgs.un.org/goals/goal14

*5 O’Donncha, Fearghal. “Sustainable Fish Farming? Prove It.” World Economic Forum. October 15, 2020.
https://www.weforum.org/agenda/2020/10/this-is-how-data-and-ai-will-save-the-fish-supper

参考記事: 水産養殖漁業に革命が起きているのをご存知ですか?

SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」 | 水産養殖漁業をブロックチェーンで支援


 

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