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資産管理・設備保全の統合プラットフォーム IBM Maximo 前編(月刊誌「食品機械装置」より)

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株式会社ビジネスセンター社発行の月刊誌「食品機械装置」2021年11月号に、『資産管理・設備保全の統合プラットフォーム』という、コグニティブ・アプリケーションズの野ヶ山尊秀の寄稿記事が掲載されました。
その内容を2回に分けて転載します(今回は第1回目です)。

なお、寄稿全文をPDFファイルとしてダウンロードしていただくことも可能です。印刷して読みたい方や社内で回覧したいという以下よりダウンロードしてご利用ください。

PDFファイル: 資産管理・設備保全の統合プラットフォーム


 

1. はじめに

日本の設備保全業務は,人手不足,設備の老朽化・複雑化,作業品質の低下,新型コロナウィルス感染症(以下,コロナ)によるパンデミック,などの要因により,大幅な改善・変革を迫られている。
これらの課題を解決するIBM® Maximo Manage は,設備保全業務をデジタル化し,資産や作業や調達など,周辺業務も含めて統合して管理できる。

IBM® Maximo Application Suite は,IBM Maximo Manage を含めた複数のアプリケーションの集合で,AI や IoT を活用してより先進的な保全業務を実現できる。

複数のアプリケーションを簡単に追加・削除して試用できるようにシステム的にもライセンス的にも作られており,業界や企業によってさまざまなバリエーションがある設備保全業務において,試行錯誤して徐々に改善・変革を進めていけるようになっている。

 

本記事では IBM Maximo Manage による資産管理を紹介し,IBM Maximo Application Suite の各種アプリケーションによるIoT・AI 活用による予知保全や遠隔支援などについて事例を交えて紹介する。

 

2. 日本の設備保全業務を取り巻く状況

日本の設備保全業務は,大幅な改善・変革を迫られている。その原因はいくつも考えられるが,この章では 1. 人手不足,2. 設備の老朽化・複雑化,3. 作業品質の低下,について取り上げる。

 

1. 人手不足

日本は少子高齢化が進み,保全業務の現場では人手不足となっている。特に地方の拠点ではさらに深刻で,少ない人数で今までと同じあるいは今まで以上の仕事をこなさなければならない状況にある。

今まで以上の仕事とは,老朽化した設備の保全,熟練者不足状態での作業,複雑化する設備・製造プロセス,などが挙げられる。

2. 設備の老朽化・複雑化

日本の製造業の現場では,40年50年稼働しているような設備が現役で稼働していることが多い。そうした長期間使用した設備は,過去40年間にはなかったような大きなトラブルや意外なトラブルが発生し,これが生産停止などの大きなインパクトにつながってしまうこともある。

また,設備が複雑化することで新たな製品の製造が可能になる一方で,修理に高度なスキルが必要になる。こうした複雑な設備はほかで代替できないことが多く,ひとたび故障すると業務そのものが長時間停止する。

3. 作業品質の低下

人手不足に加えて,保全員全体の平均スキルレベルも低下していく。熟練者の退職は,高度なスキルを持つ人材の流出だけでなく,熟練者だけが持つ知識も喪失することになる。

日本の労働人口の減少に伴い,新たな技術者として採用する外国籍人材が増えており,業務に加えて日本語や日本での考え方についても教育しなければならないため,教育はますます困難になっていく。

 

さらにコロナによるパンデミック以後,密接や密集を防ぐためにこれまでよりも少ない人数での作業が求められる場合が増えた。これまでトラブル時に遠方の現場に駆けつけていたような場合も,行政や自社の要請により移動が制限されて現場に行くことができないこともある。

 

こうした困難を乗り越えるためには,「人手不足」には点検・補修作業の省力化,「設備の老朽化・複雑化」には適切なタイミングでの予防保全や初動のマニュアル化,「作業品質の低下」には,ナレッジの蓄積を共有する仕組みや,気軽に過去の作業を照会できる仕組み,リモートでの熟練者からのサポート体制作りが有効な対策となる。

ところが多くの保全現場では,紙で情報を管理したり,資産ごとに別々のエクセルファイルに情報を保存していたりして,有効な対策を取ることすら難しい状況に置かれている。

そのため,まずは紙で管理していた情報は デジタル化し,データベースシステムに格納してシステム化する必要がある。

 

設備保全業務はその設備の購入計画から始まり,設置後は保全に加えて人,資材,提供サービスなどと密接な関わりを持つ。そのため一部の業務だけをシステム化しても,大きな効果を生む改善効果が得られない。

そのため,単一のシステムの集まりではなく,周辺の業務を含めた統合的なシステムが必要となる。それにより全体を一元管理することで一貫性を持った運営が可能となる。また全体を俯瞰できることにより,保全計画の最適化や生産ライン全体のダウンタイムの大きな削減などが見込める。

 

3. 資産管理プラットフォーム IBM Maximo Manage 

IBM Maximo Manage(旧IBM Maximo EAM)は,企業レベルでの資産管理(Enterprise Asset Management[EAM])*2), 設備保全管理(Computerized Maintenance Management System[CMMS])*1)を可能とする,業界屈指の完全に統合された資産管理プラットフォームである *4)。

設備・機器管理と保全プロセスを最適化し,運用パフォーマンスを改善することで,ダウンタイムとコストを削減できる。

IBM Maximo Manage は資産台帳を通じて,関連する予備部品や仕様,モニタリングしている計測値といった情報を集約して確認することができる。またこの対象の資産に対して過去にどのような作業が計画されてきたかといった資産の保全履歴を容易に取得することを可能にする。

*1)IBM,“CMMS とは”, https://www.ibm.com/jp-ja/topics/what-is-a-cmms
*2)IBM,“EAM とは”, https://www.ibm.com/jp-ja/topics/enterprise-asset-management
*4)IBM“,IBMMaximoApplicationSuite:資産管理”, https://www.ibm.com/jp-ja/products/maximo/asset-management

 

IBM Maximo は世界中の多くの業界で使われ,エネルギー・電力・ガス,官公庁・自治体,製造,石油・ガス,運輸・旅行業,食品・飲料,など多岐にわたる*3)*5)*7)。

各業界の世界的なリーダー企業の多く(水道業上位 10 社中 7 社, 電力業上位 15 社中 6 社,公益事業上位 10 社中 9 社,オイル・ガス上位 10 社中 7 社,自動車産業上位 20 社中 15 社,利用者数上位 11 空港中 8 空港)が IBM Maximo を選んでおり,世界 99 カ国,6 大陸すべてで使われている*8)。

40 年以上にもおよぶ長い歴史を持つ IBM Maximo は,業界の固有ニーズに対応するためのベスト・プラクティスとして業界ソリューションと拡張機能を提供している。

こうした点が評価され, IBM Maximo は 2020 年 11 月に発行された IDC のレポート「IDC MarketScape: SaaS およびクラウド対応アセット集約型 EAM アプリケーション分野」にて,その業界専門知識,構成可能性,柔軟性,パートナーのエコシステムが評価され,最高のリーダーに選出された *9)。

*3)IBM,“IBM Maximo Application Suite”, https://www.ibm.com/jp-ja/products/maximo
*5)IBM,“IBM Maximo Application Suite: エ ネ ル ギ ー・ 電 力・ガス”, https://www.ibm.com/jp-ja/products/maximo/energy-utilities
*7)IBM,“IBM Maximo Application Suite: 業界”, https://www.ibm.com/jp-ja/products/maximo/industries
*8)IBM,“IBM Maximo helps infrastructure leaders optimize assets and operations around the world”, https://www.ibm.com/downloads/cas/OZJGZRD9
*9)IBM Cognitive Application Blog,“IBM Maximo,今回も IDC MarketScape の SaaS およびクラウド対応アセット集約 型 EAM アプリケーション分野のリーダーに”(2021), https://www.ibm.com/blogs/solutions/jp-ja/iot-saas_no1/

 

IBM Maximo Manage は,大きく 6 つの機能(資産管理,作業管理,調達管理,資材管理,契約管理,サービス管理)を持つ。これらの管理対象の資産や作業は ID や名称を持つ点は共通であるため,共通の管理台帳を用いて管理を行う。

そのため,IBM Maximo Manage ではすべての資産データが共通の構造を持つため理解しやすい。一方でそれぞれの管理機能ごとに異なる点はテーラリングによってカスタマイズされて実現されている(図 1)。

こうして整備された設備台帳に,設備のデータ,保全作業内容,不具合の内容,などの情報を集約化し,統合して管理していく。

図1 IBM Maximo Manage が管理する複数の台帳は共通の基本的な機能により実現している

 

前述したテーラリング機能は,IBM Maximo が支持されている理由の 1 つである。画面やデータベース設計,ワークフロー設計など,多くの機能やデータをテーラリングによって実際の業務に適合するように変更可能である。こうした変更は GUI で行え,プログラミングは不要である。

通常顧客側でのカスタマイズは製品の範疇を超えるためサポート対象外となることが多いが,テーラリング機能は製品機能の範囲内であるため,サポートが得られ,またバージョンアップにも追随される(図 2)。

図2 IBM Maximo Manage のテーラリングとカスタマイズの違い

 

保全対象となる設備は設置場所が移動したり,別の設備の一部品であったり,交換されたりする。そのため,IBM Maximo Manage では設備を「ロケーション(location)」「資産(asset)」というカテゴリ付けをして管理することができる。

また,点検作業で使用する消耗品などは,「部品(item)」として管理する。ロケーションは工場において機能(サービス)を提供する場所で,資産は特定の物を指す。

例えば,図 3 のように,ポンプ場は工場内で冷却水を提供する機能を有する場所で,その中に「xx社製 遠心ポンプ」などが資産として登録される。

図3 IBM Maximo Manage では設備をロケーション,資産,部品,として分類する

 

設備保全業務で重要なことは周辺の作業も含めて統合されて一貫性を持って管理されていることである。例えば,図 3 の冷却水ポンプ A のポンプユニット #1001 が故障したとする。当然予備倉庫のポンプユニットとの交換作業が実施される。

そのとき,作業実績を IBM Maximo Manage を通じて報告すれば,作業台帳に作業実績が登録されるのはもちろんのこと,資産台帳から冷却水ポンプ A に付属するポンプユニットは #1002 に変更され,予備倉庫に所属していたポンプは移動したため予備品在庫が 1 つ減る(図 4)。

図4 作業報告に連動して設備台帳,資材台帳も自動的に更新される

一方,棚卸しなどで冷却水ポンプ A に属する資産を詳細に検査したとき,ポンプユニットがいつ,だれによって,#1002 に変更されたのか?といった情報を参照できる。

 

A. 事例:設備保全の統合管理を実現する サントリー食品の新工場での IBM Maximo 活用 

サントリー食品インターナショナル株式会社 (以下サントリー食品)は「水と生きる」を 「Promise/社会との約束」に掲げ,「自然環境の保全・再生」,「環境負荷低減」に加え,次世代に向けた環境教育「水育」などを長年展開してきた。

近年,健康志向や備蓄意識などの高まりによってミネラルウォーター市場は伸長しており,「サントリー天然水」のさらなる安定供給を図るため,第4の水源として新工場「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場(以下 北アルプス信濃の森工場)を 2021 年春に稼働させる予定である。

サントリー食品は「北アルプス信濃の森工場」を他工場の先頭をゆく最先端のスマートファクトリーと位置付け複数のソリューションを導入予定であり,設備保全管理についても効率的で質の高い業務を実現し,より高品質かつ高効率の製品製造につなげることを目指している *12)。

 

そのため,設備保全統合管理システム IBM Maximo が北アルプス信濃の森工場に導入される *14)。

IBM Maximo は保全対象の選定,保全計画の策定,作業管理,購買管理,在庫管理といった設備保全管理業務に必要な機能を提供する統合パッケージである。「北アルプス信濃の森工場」の設備資産すべてが管理対象となる。

これにより,設備,業務量,人員,スキルの見える化や,合理的かつ効率的な設備状況の監視ができるようになり,安定した稼働によるより高品質かつ高効率な製品製造を実現できる。

一般に,設備保全は PDCA サイクルを実施しながら少しずつ安定させていく。IoT 化やスマート化や AI 活用を取り入れてもこのサイクルがなくなるわけではなく,IBM Maximo は既存の PDCA の各場面を,より安全に,より簡易に,より効率よくなるように支援していく(図 5 )。

図5 設備保全PDCAの各場面で活用できるIBM Maximo Manage。作業や管理や分析が容易になる。

 

また,IBM Maximo は設備保全に関するデータを蓄積できるため,デジタルトランスフォーメーションを推進するための基盤となる。

サントリー食品は「北アルプス信濃の森工場」の設備保全業務を他工場へも展開することを想定しており,データとして蓄積された各工場の設備保全業務の知見を全社的に活用しながら,工場のデジタルトランスフォーメーションを推進し,スマートファクトリーを展開していく予定である。

*12)サントリー食品 “サントリー天然水」新工場の名称は 「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」”, https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF0920.html
*14)日本 IBM “設備保全統合管理システム「IBM Maximo」 を「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」へ導入”, https://jp.newsroom.ibm.com/2021-01-06-Equipment-maintenance-integrated-management-system-IBM-Maximo

 

後編では寄稿『資産管理・設備保全の統合プラットフォーム』から「統合プラットフォーム IBM Maximo Application Suite」をご紹介します。

 

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