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ESG開示フレームワークの選び方と今後の動向(その1)

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この記事の概要

ESG開示フレームワークとは、企業が、事業の詳細な環境・社会・ガバナンス(ESG)指標を、公に開示・報告する目的で使用されるものです。

当記事「ESG開示フレームワークの選び方と今後の動向(その1)」では、ESG開示フレームワークがどのようなものか、そして自社に適したフレームワークをどのように選べばよいかを中心に解説します(その2はこちら)。

 

 

ESG開示フレームワークとは?

ESG開示フレームワークは、企業が、事業運営に関連する機会やリスクを網羅するデータと、環境・社会・ガバナンス(ESG)側面に関連する機会やリスクを網羅するデータを開示するために使用されます。

開示フレームワークは、NGO、証券取引所、企業グループ、非営利団体、シンクタンク、政府などさまざまな組織により作成されています。社会には数百ものESG開示フレームワークが存在していますが、主要なものとみなされているものは10前後といえるでしょう。

各フレームワークは通常、企業が開示すべき指標や定性要素、形式や報告頻度を定めています。自主的なフレームワークもあれば、政府によって義務付けられているものもあります。

 

ESG開示フレームワークが重要な理由

ESG開示フレームワークの社会浸透スピードは驚異的です。

投資家や地域社会の関心の高まりを受け、今や大多数の企業がサステナビリティ・パフォーマンスの向上を目標として、ESGゴールの設定とそのパフォーマンス報告を行うようになっています。

その結果、ステークホルダーは企業を判断する際にESGを主要基準とするようになり、ESGパフォーマンスの社外向けの報告はもはや当然のものとして期待されるようになっています。

 

ESGリスクに真剣に取り組まなければ、年次総会での株主代表訴訟から資産運用会社による投資売却まで、企業は多くの困難に見舞われる可能性があります。

ESGの重要性が増し続けているこの状況に応え、自社の目標に則した適切なESG開示フレームワークを選ぶことの重要性も、増し続けています。

 

ESG開示フレームワークの選択

ESG開示フレームワークの現状を一言で言えば「乱立」と言っても過言ではないでしょう。

さまざまなフレームワークを評価・分類して選択肢を理解し、自社に則した適切なESG開示フレームワークを選択するためには、いくつかの「レンズ」を用いることが有用です。

 

■ レンズ1: 影響の可能性

どのESGフレームワークを使用して報告するかを決定する際には、自社がどの分野において最も変化をもたらすことができるかを検討する「マテリアリティ特定」に基づいて始めるのがよいでしょう。

 

ESGにおけるマテリアリティ

マテリアリティとは、企業にとっての「重要課題」であり、自社事業に測定可能な影響を与えるESG課題を示します。

マテリアリティを決定するためには、まず自社のESGリスクを特定し、その脆弱性がもたらす影響を評価する必要があります。

「リスクマトリックス」のアプローチを用いることで、企業は自社のリスクプロファイルに基づき、どのESG関連リスクに優先順位をつけるべきか、また、組織に重大な悪影響を及ぼす可能性を持つのがどの想定結果かを判断することができます。

 

大手eコマース企業を例に考えてみましょう。

「環境への影響」から包装資材や廃棄物について、株主や消費者による「社会的信頼」の面からサプライチェーンの労働基準について、「ガバナンス」の側面から企業倫理に最大のリスクがあると判断し、マテリアリティ特定においてこれらに焦点を当てています。

このeコマース企業の場合、3つのESGカテゴリーすべてをカバーするESG開示フレームワークを採用すべきでしょう。

 

ダブルマテリアリティ

ダブルマテリアリティとは、環境・社会が企業に与える財務的な影響(財務的マテリアリティ)と、企業活動が環境・社会に与える影響(環境・社会マテリアリティ)という、2つの視点から重要性を検討することを企業に求める考え方です。

企業は、自社内部に目を向け、自らの財務リスクを管理する責任があることを認識する必要があります。そして同時に、外部に目を向け、自社の業務や意思決定が人々や環境に影響を与えることを認識する必要があります。

ダブルマテリアリティの概念を適用することで、企業は自社事業が財務と非財務の両方に与える影響を特定し、より総合的なESG戦略を策定できます。

 

影響と影響力

マテリアリティのもう一つの側面は、影響と影響力です。ESG報告アプローチの評価・導入を行う企業は、直接的かつ迅速に最も大きな影響を与えることができる環境的・社会的要因がなんであるかを検討することも必要でしょう。

行動優先順位や取り組み影響力の優先順位付けマトリクスを使用することで、企業はどこに初期の取り組みを集中させるべきかを素早く特定することができます。

そして実現可能な目標の検討とそのパフォーマンス測定に役立つESGフレームワークの検討・判断を行うことができます。

 

日曜消費財や小売セクターの企業を例に考えてみましょう。

これらの企業は、サプライチェーン内で影響力を行使することができます。このセクターでは、調達の選択がサプライチェーン内の企業のESGパフォーマンスに大きな影響を与え、その結果ESGインパクトが拡大する可能性を有しています。

 

■ レンズ2: ステークホルダーの期待

ESG開示フレームワークを検討する際には、特有の期待を持つステークホルダーについてや、さまざまなステークホルダーがどのようにESG開示情報を利用するのかについて考慮する必要があります。

 

外部ステークホルダーは何を求めているのか?

企業は、ステークホルダーが何を求めているのかを、また、ステークホルダーが自社にどのESGフレームワークの利用を期待しているのかを検討しましょう。

例えば、投資家、取締役会、保険会社、債権者は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)やサステナビリティ会計基準審議会(SASB)のESG開示フレームワークを用いることを好むかもしれません。

従業員や消費者は、国連の持続可能な開発目標(UN SDGs)に基づいた開示報告を期待するかもしれません。

一方、英国のSECR(Streamlined Energy and Carbon Reporting)や、豪州のNGER(National Greenhouse and Energy Reporting)など、地域によって政府や規制当局が求めるものが変わる場合もあります。

 

社内ステークホルダーはどのように情報を利用するのか?

ESG開示情報をどのように利用するかは、ステークホルダーによりさまざまに異なります。それは社内も同様です。従って、企業はESG開示戦略を策定する際に十分に利用方法を考慮すべきでしょう。

リスク、コンプライアンス、人事の各チームはDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)に関する戦略的意思決定を推進する取り組みを示すデータに投資する一方で、電力や水道などを管理する部門は、組織全体のエネルギー消費や支出を綿密に調査するはずです。

そして調達チームは、収集したデータを使って、サプライチェーン・オペレーションやサプライヤーのリスクプロファイル評価に開示された情報を用いるでしょう。

このように、担当分野や関連事業により、ESG開示情報の利用目的は異なります。

 

■ レンズ3: 地理

ESG開示フレームワークの中には特定地域にのみ関連するものもあります。一部の管轄区では、企業規模や特定の業界に属する企業に対し、開示が法律で義務付けられている場合もあります。

また、北米およびその他一部の国における「ENERGY STAR®」、英国における「SECR」、豪州における「NGER」など、国や地域特有のESGフレームワークが制定されている場合もあります。

 

■ レンズ4: セクターにおける優先順位

セクターによっては、そのセクター特有のESG開示フレームワークを選択することを当然とみなされる場合もあります。

分かりやすい例が不動産セクターでしょう。「GRESB(グレスビー: Global Real Estate Sustainability Benchmark)」は、不動産セクターの企業やファンドを対象に、サステナビリティ・パフォーマンスをベンチマーク評価するフレームワークです。

 

同業他社がどのようなESGフレームワークを使用しているかに関心のある企業は、開示フレームワークのオリジナル・ウェブサイトを確認することを推奨します。

多くの場合、各ESGフレームワークのウェブサイトは、業種ごとに表示するフィルター機能を備えています。それらのウェブサイトを活用することで、各ESGフレームワークと自社の関連性を確認できます。

 

■ レンズ5: フレームワークの適用範囲

主要ESG開示フレームワークは、環境、社会、ガバナンス、CO2排出、エネルギー、廃棄物、水資源など、ESGパフォーマンス指標へのフォーカス度合いがそれぞれ異なります。

どのESGフレームワークがどのパフォーマンス指標に重点を置いているかを理解することは、自社が採用するESGフレームワークの選択に役立ちます。

また、既存データを活用することで、複数のESGフレームワークに報告できる可能性があるかを確認することもできます。

こちらの「ESG開示フレームワーク 指標カバレッジシート(英語)」の活用もご検討ください。

 


当記事は『What are ESG frameworks?』を日本の読者向けに編集したものです。

 


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