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Automotive 2030:2030年 自動車業界の将来展望

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自動車業界の今後の方向性を表す「CASE」という言葉をご存知でしょうか。CASEは、Connected(コネクテッド。ネットワークに常時接続する「つながるクルマ」)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス)、Electric(電動化)の頭文字をとった造語です。

また、自動車も関係する言葉である「MaaS」を、ニュースなどで見聞きした方は多いと思います。MaaSの正確な表記は”Mobility as a Service”。様々な交通機関をデータで結びつけることで、移動のためのチケット手配や決済を簡単に実行可能とするサービスです。日本国内では、2019年に国土交通省が「MaaS元年」として、19の事業を「先行モデル」に認定するなど、様々なMaaSの実証実験が行われています。

100年に一度と言われる大変革を迎えて、自動車業界がCASE を意識したビジネス・モデルへの再構築を図るということは、今後の自動車業界は「車両の設計、生産、販売、サービスというビジネス・モデルによる運営」から大きく変化していくことを意味します。そして、MaaSの事業化と普及によって、自動車を移動手段の1つとして使用する人々の生活は、デジタル技術の恩恵を享受できるようになるでしょう。

では、10年後の2030年、私たちの朝の通勤はどのように変化している可能性があるのでしょうか。

2030年の朝の通勤風景

ある晴れた月曜日の朝、あなたが仕事に向かう準備が整いました。

予定時刻に、日曜日の夜に注文した、ACES(Autonomous, Connected, Electrified and Shared)と呼ばれる車両が到着します。

ACESは、まず最初に「お誕生日おめでとう」とあなたに話しかけます。次に、「Happy Birthday to You」の音楽を再生します。そして、インフォテインメント・システムから、ソーシャルメディアに寄せられた家族や友人からのお祝いのメッセージをあなたに伝えます。

あなたがメッセージを楽しんでいる間に、ACESがあなたの目的地までの運転を開始するとともに、通勤に影響を及ぼす事故の情報をあなたに伝えます。ACESは、代替ルートを提案するとともに、途中でドライクリーニングをピックアップするかどうかを尋ねます。

このやりとりが行われている間に、ACESはあなたの健康に関する主要な要素をすばやくスキャンし、フィットネス・アプリと連携します。そして、ACESはあなたの家のテレビやその他の機器の電源が入ったままであることを確認するとともに、あなたが先程まで聞いていたオーディオブックをダウンロードします。その上で、ACESはあなたに最後の1マイルを歩くことを推奨します。何故ならば、あなたは先週のエクササイズの目標を達成できなかったからです。

さらに、ACESは、あなたの承認済みリストにある地元企業と情報連携をします。そして、あなたの配偶者が参加したいコンサートが開催される施設を通過する際に、ACESは、スケジュール、チケット価格、空席状況を確認して、チケットを購入するかどうかを尋ねます。ACESは、チケット購入処理を実行するとともに、あなたと配偶者のそれぞれのスケジュールにコンサートを登録し、コンサート当日に、あなたと配偶者が施設に向かうための車両を手配します。

あなたの目的地の近くに到着すると、ACESは停止します。あなたは、その場所から目的地までの最後の1マイルを歩くのです。ACESはあなたに「良い一日を」と告げる前に、新たな学習結果や個人の好みを、あなたのモビリティー・プロファイルに保存します。

あなたを送り終えたACESは、予定されている次の顧客のピックアップに向かいます。そして、ピックアップする地点に到着するまでに、ACESは次の顧客にパーソナライズされた体験を提供する準備を行います。

さて、このストーリーは、少々難解でしたでしょうか?

デジタル・テクノロジーの進化によって、このストーリーで紹介した機能やモビリティー・サービスは、2030年までに利用可能になると予想されています。

このビジョンを裏付ける2030年の自動車産業に関する多くの予測

  • 15台のインターネットにつながるデバイスを、すべての人が所有します。¹
  • 2030年までに、販売される新車の最大15%が、完全に自動運転化される可能性があります。²
  • 車両の革新の90%をソフトウェアが占めるようになり、プログラム規模(コード行数)は現在の100倍になります。³
  • カーシェアリングは、世界の走行距離の26%を占める可能性があります。⁴

今後10年間、技術の進歩とユーザーの期待は車両に変化をもたらし続けます。持続可能性(サステナビリティー)で注視される電気自動車の開発は、新たなタイプのスキルが必要とされることから人手不足を引き起こすでしょう。シェアリングエコノミーが成長を遂げ、超小型モビリティーやパーソナル・モビリティーが与える影響も大きくなるでしょう。新たな価値を車両に提供する企業の参入も増えるでしょう。

このような未来が実現するタイミングが早いか遅いかに関わらず、以下の2つは確実に起きるでしょう。

  1. デジタル・テクノロジーは、シームレスな顧客接点を拡大する新しい方法を生み出し、日常生活におけるユーザーの様々な側面と車両の統合で得られた洞察を用いて、パーソナライズされたサービスを提供します。
  2. ユーザーは、車両が提供するデジタル体験に対して、他のスマートデバイスから得られるデジタル体験と同等またはそれ以上を期待するでしょう。

劇的な変化への途上において為すべきこととは?

  • 100年に一度と言われる大変革に対応するために、自動車業界はどのような行動をとるべきなのでしょうか
  • デジタルとデータが中心の事業モデルへと企業運営を変革するために、自動車産業はどのような進化を遂げれば良いのでしょうか
  • 競合他社より「速く」「柔軟に」「大規模に」開発を実行する能力をアピールすることで、自動車企業は自社ブランドを差別化できるのでしょうか

自動車業界の未来を垣間見るために、IBM Institute for Business Value(IBV)は、11,566人のユーザーを回答者とするAutomotive 2030 Consumer Surveyと、1,500人の自動車業界の幹部を回答者とするAutomotive 2030 Executive Surveyを実施しました。

IBVの調査に対して、自動車業界の幹部の半数は「成功」および「生き残る」ために、デジタル・テクノロジーで組織を改革する必要があると答えています。そして、今後のモビリティーの世界では、サービス事業者が提供するデジタル体験でユーザーのロイヤルティーを獲得することが重要になるため、自動車業界の幹部の42%は強い危機感を抱いています。調査結果の詳細と提言は、『Automotive 2030:2030年 自動車業界の将来展望』をダウンロードしてご確認ください。


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¹ Heslop, Brent. “By 2030, Each Person Will Own 15 Connected Devices—Here’s What That Means for Your Business and Content.” Martech Advisor. March 4, 2019.

² “Automotive revolution—perspective towards 2030: How the convergence of disruptive technology-driven trends could transform the auto industry.” McKinsey & Company. January 2016.

³ “VW CEO expects software to make up 90 percent of auto industry innovation.” Reuters. Auto.com. From The Economic Times. March 13, 2019.

⁴ “Shared Mobility on the Road of the Future.” Morgan Stanley. June 15, 2016.

* すべて英語、IBM外部のサイトへ


*本記事は、Automotive 2030: Racing toward a digital future(英語)の抄訳に、日本国内のMaaSに関する情報を加筆したものです。(Text by : Takumi Kurosawa)

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