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EAMの勘所:第18回 企業ワイドの保全管理の仕組みづくり(2)

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管理対象の選定

EAMの勘所とは

企業資産管理を円滑に行うために「EAMの勘所」と題して定期的にコラムを掲載していきます。
第 18 回目は、「企業ワイドの保全管理の仕組みづくり(2) – 管理対象の選定 -」についてご説明いたします。

(※EAMとは、IBM Enterprise Asset Management の略です。)


 EAM の目的の再認識

 EAM 導入のプロジェクトが承認されたら、実際の活動を行います。

コンピューターを用いた保全管理システムの構築は 1960 年代のメインフレームの使用から始まり、1980 年代のパーソナルコンピューターの使用など、長い歴史を持っています。

時代背景にも影響されますが、当初メインフレームを使用していた時代は、保全管理の全社的な取り組みが行われてきました。
特に製鉄所や石油化学プラント、発電所などの大規模プラントでの保全作業を確実に実行する目的でシステムが構築され、また調達などの社内システムとも連携した、文字通り「企業ワイド」のシステム形態をとっていました。

その最も大きな理由は、メインフレーム・コンピューターは非常に高価で、かつ誰でも使用できるシステムではなかったために、システムの導入・管理・運用の効率を考えると、全社的なシステムであることが求められたからです。

時代は進み、技術の進歩に伴い 1980 年代にパーソナル・コンピューターが登場すると、保全管理システムも全社システムの位置づけから、部門システムの位置づけへと変化してきます。
パーソナルコンピューターはメインフレームと比較して価格的に非常に優位で、部門単位で扱うデータ処理量に対し、最適なコストパフォーマンスを提供しました。
これにより多くの企業やプラント・工場などで、パソコンを中心とした保全管理システムが急速に普及しました。

しかしこの反面、大きな問題を抱えることになりました。
部門単位での情報管理を行ったことで、情報の管理対象範囲が小さくなり、またコード体系、管理プロセスなどを各部門が決定するようになりました。この結果 として、標準化されない情報が企業の様々な部門に散在し、導入コストが安価であるために、多くのシステムが部門単独で導入・管理・運用されることになりま す。この時代の問題点を以下に示します。

表 1 個別最適時代の保全管理システムの問題点

問題点 説明
製品品質 個別最適では、各部門が最も効率の良い管理プロセスを採用しています。これは非常に優位な点ですが、一方管理漏れ、他部門との関係での 2 重管理なども発生している可能性があります。また企業全体としてのリスク管理の視点が必要になります。
データの非標準化 個別最適では、各部門がそれぞれの管理体系のコードや名称を決めている場合が多く、全社システムを導入する場合、その情報の整理に非常に多くの時間と工数が必要になる場合があります。 また、すべての情報を分析し、改善を行うためのデータ集計に大きな無駄が出てきます。
IT投資の不透明化 各部門が小さな金額でシステム開発やシステム改修、運用を行っているため、IT投資金額が各部門単位の管轄となり、企業全体でどれくらい使用され ているかの把握が難しくなります。特に大企業の場合、保全管理システムの数は相当数に達し、全体としては非常に大きな金額を投資している可能性がありま す。

したがって、プロジェクトの開始時点では、常に最適化を行うか、それとも企業全体の取り組みとして IBM Enterprise Asset Management システムを導入するのかの目的に立ち返ることが必要です。
この目的に認識の違いによりプロジェクトのスコープが大きく変わるためです。


 プロジェクトチームの編成

 構想フェーズの稟議が承認されたら、実際に構想フェーズに関する作業を行うプロジェクトチームを編成する必要があります。以下に必要な担当者の職責を説明いたします。

(1)プロジェクトスポンサー

プロジェクトチーム編成の初めで最も重要な作業はプロジェクトスポンサーをきちんと割り当てることです。プロジェクトスポンサーには、企業の取締役クラスの役員を割り当てることが一般的で、以下の職責を担います。

  • プロジェクトチーム全体のまとめ役。各工場、部門間の調整を行うために、協力なイニシアティブを発揮していただきます。特にプロジェクトメンバー の意識やモチベーションなどを変革する必要があることから、プロジェクトの先頭に立ち、指揮・指導をしていただける方が適任です。
  • 予算の確保。プロジェクトに係わる予算を取締役会へ上申し、確保します。
  • プロジェクトに関係する外注企業との関係構築。
  • プロジェクトが及ぼす、影響に関する経営陣への説明とプロジェクトの全体責任の所管。

(2)プロジェクトマネージャー

プロジェクトマネージャーは EAM の導入プロジェクトの実質上の指揮官です。
一般的にプロジェクトマネージャーは、EAM の分野では保全部門の管理職の方が割り当てられます。プロジェクトマネージャーには「保全の知識」よりも、「大規模なプロジェクトの経験者」を割り当てる ことが望ましいと考えられます。これは EAM 導入プロジェクトでは以下の特徴があるためです。

  • 1 年~2 年程度の導入期間が必要となり、長期間のプロジェクト管理を経験していることが重要なスキルです。
  • 複数のプラント・工場、部門間の調整を行う必要があり、利害関係者の調整が必要です。
  • プロジェクトに関係する外注企業との関係構築。
  • プロジェクトで発生する様々な問題点をハンドリングし、解決をしてゆく必要があり、問題解決能力に長けた部門長が最適です。
  • プロジェクトに関係する担当者は社内・社外を含めて数10人規模になるため、中規模以上の組織マネージメントを経験された方が適任です。

プロジェクトマネージャーは、専任が望ましいため、ある意味では「1つの新しい部門を創設する」という意識で職務に当たる必要があります。

(3)プロジェクトメンバー

プロジェクトメンバーは EAM の導入の成功に必要な様々な社内の担当者が割り当てられます。
保全管理システムに関するプロジェクトでは「保全担当者のみが参加する」傾向がありますが、この考え方は誤りです。EAM の導入では経理部門、調達部門、人事部門など様々な管理部門の参画も重要です。これは EAM では保全管理の作業に最適化だけではなく、企業全体としての効率改善を目的とするためです。

企業の設備は固定資産であり、また保全に関する作業や物品の調達は調達管理部門と強く結びついています。従って経理や資材部門の協力は欠かせません。また 作業の実行には作業員のスキル、教育、免許などの人事的な管理も必要であるため人事部門の協力も必要です。さらには企業の長期的な展望や変革を考えると経 営企画などの担当者とも連携する必要があります。

最後に情報部門の担当者との連携は必須条件です。 これは EAM ではある程度の規模のシステム導入となり、大型のサーバーの導入・運用・保守、IT 標準の遵守、他システム(特に経理、人事、調達システムなど)との連携を視野に入れる必要があるためです。 「EAM の導入は保全部門のシステムの変更」ではなく、「社内の新しい管理基盤の構築」として位置づけ、プロジェクトメンバーを人選する必要があります。

以下プロジェクトメンバーとしての参画に必要な部門を示します。

表 2 EAM導入プロジェクトの必要メンバー(初期段階)

部門 必要メンバー
保全部門管理職 機械設備、電機設備、施設管理など「保全」業務を担当している部門の部門長または主任クラスの担当者をメンバーとします。
経理部門担当者 固定資産管理、支払い管理(請求書管理)を行っている担当者を参画させます。また在庫資産管理に関する管理についてもカバーします。
資材担当者 プラントや工場で発生する大部分の調達件数は保全を起因とするものです。従って調達管理部門の協力は改善のための大きなエリアになります。
人事担当者 工場やプラントにおける作業では作業員のスキル、資格、教育状況などと関連付けて管理する必要があるため、人事担当者の協力を得ます。
安全管理者 保全作業には様々な危険が伴うため、安全管理上の視点での改善を検討していただきます。
情報部門 全社システムの導入となるために、情報部門の担当者の参画を要請します。

(4)外部コンサルタント

外部コンサルタントは EAM 導入に関する水先案内人の役目を負います。今まで通常情報システムの導入ではユーザー部門の要求事項に耳を傾け、システム構築を行ってきましたが、企業全体の改革を行うためには様々な知見が必要です。

  • 特に EAM の導入では保全関連の知識ばかりでは不足で、経理、資材、人事、安全、情報システムなど様々な検知から検討を行う必要があります。そこで外部コンサルタントはその検討の方向性を示唆し、EAM の導入範囲、内容、方向性に関するアドバイスを作成します。
  • 実行稟議作成に向けて、概算費用の算定、スケジュールマイルストーンなど様々な情報を提供します。

EAM 導入プロジェクトの初期段階では、上記のようなメンバーを中心にプロジェクトの発足に関する構想、稟議の作成を、数ヶ月をかけて行っていくのが一般的です。

 

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

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