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EAMの勘所:第12回 RCMの評価とリビングプログラム(7)

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全体的な設備保全改革への保全計画の取組み

EAMの勘所とは

企業資産管理を円滑に行うために「EAMの勘所」と題して定期的にコラムを掲載していきます。
第12回目は「RCMの評価とリビングプログラム」に関して、全体的な設備保全改革への保全計画の取組みについてご紹介いたします。


 RCMの評価方法

これまで、RCMの適用とその活動に関して説明をしてきました。今回はRCMシリーズの最終回として、RCMの評価と日ごろの活動であるリビングプログラムを説明し、本ミニシリーズは終了とします。

すべての活動はその活動に投下した資源(予算、人員、時間)と活動から得られる結果を評価し、現在のプロセスの問題点を把握し、改善を行う評価プロセスを導入する必要があります。この評価を的確に行うためには詳細な保全活動の記録が必要になります。
通常、保全管理での性能を評価する場合は、保全活動に投下されている金額を評価方法がありますが、これでは不十分です。すべての機器は劣化を起こすため、 保全活動に必要な予算は常に増加する方向にあります。したがって金額だけでの評価ではRCMの導入後のその活動にどのような成果があったかを正確に認識す ることは出来ません。たとえば、社内の保全員の作業時間が削減されても社員の給与は削減されません。また外注企業が保全活動を行っている場合は委託契約に より、保全費用が契約で縛られるために、即費用低減の効果を検証することは難しいと考えられます。ただし、長期間で考えると、保全の活動内容が変化すため に費用の低減を行うことは可能です。
一般的にRCMの活動により改善された作業内容、活動時間を別の作業に割り当てることにより、経年劣化を起因とする保全作業の増加に対して保全作業員の増員を抑制し、また保全の作業範囲を拡大することによるプラント全体の故障低減を目指します。

このような検証活動を行うためには、保全管理システムは以下のような詳細な情報を記録する必要があります。

記録すべき情報 説明
作業員の作業時間 作業単位ごとの作業員の作業時間を把握・記録します。また同時に作業原価も把握します。作業時間は保全部門の全体的な保全能力を示す指標で、保全部門にどれくらいの作業余裕度が存在するかを評価できます。
保全バックログ 計画に対して遅れている作業(計画作業、故障修理作業の両方を含む)の数を評価します。この作業遅れをバックログと読みます。バックログはその保 全部門における保全の管理能力を現す指標であるともに、RCMの活動によって作業全体が効率化されるため、バックログ数が減少していなければなりません。
作業種別 作業単位に行っている作業分類コード。様々な作業がどのように改善されているかを調査するキー値になります。
部品交換状況 交換部品などがある場合、その部品の交換周期を的確に捉え、次回の保全計画の作成を行います。このため部品交換履歴は非常に重要な情報になります。

以下の米軍における航空機(EA-6 イントルーダー)のRCM活動に関する活動結果を示します。この表ではイントルーダーのインスペクション作業 に関して集計したものでRCM活動前と活動後の時間を表しています。またTotal Around Timeは運用部門への引渡し時間を表したものと考えられます。この表ではRCM活動の前後で赤枠で示した作業時間が大幅に削減されていることがわかりま す。 (14日周期の作業については、点検項目が定型的で標準化されているために作業時間に大きな変化はありませんが、28日単位、56日単位の作業については 作業項目を整理して、大幅に削減されていることがわかります)

図1:EA-6B イントルーダー4機2年間のインスペクション活動
図1:EA-6B イントルーダー4機2年間のインスペクション活動(クリックして拡大)

このように、RCM活動では、故障モードを詳細に分析することで、従来行ってきたオーバーホールメンテナンスの作業項目やインスペクションの対象部位を整理し、また不要なメンテナンス項目を年間メンテナンスなどへ移行することで、保全活動の効率を向上させます。

RCM活動による詳細な改善状況を的確に把握するためには、保全管理システムが収集する情報が必要で、保全管理システムでどのようなデータを収集で きるかが重要になります。一般的にRCM活動では機器の分類や業界標準などの情報から保全計画を作成するために用いられるRCMツールに主眼が置かれがち ですが、RCMツールは一般的に設備分類を行う時点の1回の使用のみで、その後は保全管理システムに登録・記録される情報を中心として機器の信頼性や状態 を管理していきます。


 リビングプログラム

通常、RCMにとって、設備の状態の変化の記録は保全管理システムが担うものと仮定します。また保全計画の作成は保全管理システムが自動的に行うた め、RCMも活動結果を現行の保全管理システムに的確に反映する必要があります。機器の状態は常に変化しているため、その変化を見逃さず、適切な判断に基 づいた対応を行うことは非常に重要です。またこの活動自身、保全活動にあたります。

RCMではこのようは日々の情報収集、信頼性評価、保全パラメータ(例:周期、実行タスクなど)を管理・維持・変更する活動をリビングプログラムと呼びます。
リビングプログラムは保全管理活動そのものなので、現在の保全管理プロセスにRCMの考え方や評価を載せることで実現します。また新たなプロセスを構築するものではありません。
以下、原子力発電所で行われている設備信頼性の考え方をモデル化したINPO AP-913のプロセスを示します。

 図2:設備信頼性管理のモデル(INPO-AP913より)
図2:設備信頼性管理のモデル(INPO-AP913より)(クリックして拡大)

このモデルでは以下の活動を行います。

活動 内容
(1)保全対象の識別 設備台帳を中心として、RCM活動に従った故障モードの分類、優先度の設定、保全計画(周期、活動内容など)を定義します。
(2)予防保全の適用 保全計画を適用して、設備にサーベイランスや、定期点検などの保全作業を計画し、実施します。
(3)性能モニタリング 通常の運転によって得られる機器性能情報、保全計画に従って計画される設備のサーベイランスなどの情報をもとに設備状態を統合的な状態を把握します。
(4)問題是正措置 発見された問題点を解決します。この中には部品交換、故障修理など一般的な保全作業活動が行われます。ただし、ここで得られた情報は次の継続改善や保全パラメータの再設定などの情報として利用されます。
(5)継続的設備信頼性の改善 定期的また特定の事象が発生した時点で、設備の信頼性を改善するための分析や改善活動を行います。
(6)ライフサイクル管理 長期間にわたり設備のライフサイクルを把握し、設備の置換えや除去などのライフサイクルを管理します。

 まとめ

本シリーズでは幾度か「RCMは通常の保全活動と変わらない」と説明してきました。これは新しい管理プロセスを導入すると考えると、「非常に大きな 負荷が新たに必要」という事前のイメージを持ってしまうことを防止するためです。確かに、機器台帳の管理粒度を標準化し、故障モード分析や保全パラメータ を分析に基づき再度設定する作業はエンジニアの皆様しかできず、今でも人員不足の状態にある保全部門では大きな負荷になります。しかし、一度分析が終了す ると、その後は現在の保全管理のプロセスとは大きく変わらず、また期待した効果を得られる可能性があります。

すべての機器に対してRCMを適用することは難しくとも、部分的に重要な機器に対して適用を行うなど、工夫してRCM活動を実行しきるよう、努力をすることも重要です。
またRCM活動を行うのに際してRCMコンサルタントの方々のアドバイスやリーダーシップを得ることも非常に重要です。保全活動ではRCM活動が必ずしも効果をあげる分野でない対象物もあります。従って経験を持つRCMコンサルタントの強力は非常に大きな力になります。

本シリーズがRCM活動をされる初心者の方の参考になれば幸いです。

 

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