IBM Sustainability Software
EAMの力 ~Maximoで勝つ~:第3回 国内保全業務に役立つ海外保全事情
2014年01月22日
カテゴリー IBM Sustainability Software | 設備保全・高度解析
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過渡期にたつ国内保全事情と保全で勝つための要因
日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 Tivoli事業部
兼 日本プラントメンテナンス協会 PE最新保全技術調査研究会 幹事 長南 剛一
はじめに
最近印象に残ったお客様がおります。現在の業務課題をお聞きしたところ典型的な国内保全の問題を抱えているためです。技術・技能継承、コスト低減、 コンプライアンスの問題などですがこれらは従来から広く言われているトラディショナルな問題です。このほか最近よく取り上げられるようになった新しい問題 点も存在します(下記参照)。トラディショナルな問題点は本編第1回の「国内製造業の一般的な課題」をご参照ください。新しい課題は激変する経済環境への 対応やグローバルコンペティションに勝つための企業全体のガバナンスを問われる内容です。貴社のお客様が貴社製品を導入する際には貴社の競合他社の見積も りは必ずといって良いほど取られているでしょう。地球が狭くなってきている現在、競合他社の範囲はより広くなっているのです。
最近の課題(新たに対応が必要な課題)
- 生産量の変化に対応できる生産保全の経営ポリシー
- 景気動向などによる生産量の調整に対して対応の基本(経営ポリシー)がない
- 生産量の変化にともなう(保全部門などの)他部門の対応が不明確
- 環境の変化に対応して最適なリソース管理基準ができていない
- Global対応
- プロダクト品質が国内と海外で全く異なる
- 国内と海外で管理粒度が異なる
- 海外の生産状況が可視化できていない、数値の裏づけが取れない
- 海外含む工場に対して本社からのガバナンスが効かない
- 企業全体のスタンダードポリシー
- 生産プロダクトが異なるため全社一元管理ができない
- 標準化ルールが規定されていない
企業全体標準、各プロダクトの生産標準、各工場・ラインのローカルルール
1. 技術継承・技能継承に見る国内保全の根本課題
下記の1から4は第1回で述べた代表的な国内保全業務の課題です。
- 設備の老朽化による保全業務の難しさ拡大
- 不適切なコスト管理(可視化できていない)
- 人材の退職に伴う保全ノウハウの消失(2007~2010年問題)
- 更なる規制強化への対応
先のお客様は3、4の課題を抱えておりました。長く年功序列・終身雇用型の企業で国内のベテランが職務を全うして大量退職されることはご承知の通りです。一方、海外の保全業務にかかわる人材の問題は国内に比べて以下の相違点があります。
- 作業を覚えたら新しい会社へ上位職責で転職するジョブホップが多い
- 教育のレベル格差が国内に比較して格段に大きい
ベテランが大量退職する国内とジョブホップが多い海外、という中に共通的な課題として「技術継承・技能継承」に行き当たります。それでは海外ではどのような施策でこの問題をクリアしているのでしょうか。
以下のような施策が思い当たります。
2.海外保全事情
【施策1】ドキュメントの整備:国内に関してドキュメント類は整備されている。国内では「どこにあるのかわからない」「最新バージョンがわからない」「この部屋のダンボールのどこかにある」と聞くことが少なくありません。また、大量のドキュメントを電子化したい、というご要望もよくお聞きします。
【施策2】作業指示が明確:国内の3PM業者間との契約に際して「○○作業一式」という言葉が今でもよく使用されますが、保全部門内でもこ れに近い内容がよく見受けられます。明確な作業指示では「いつまでに」「どのような作業手順(工程/工順)で」「どのような専門資格を持った人が」「何を いくつ使用資材(部材)として」「どのような工具(ツール)を使用して」「作業の潜在危険は何があり」「危険に対する安全防御策をとり」作業するかが明記 されています。図1はIBM Maximoで作業を管理するサンプルです。
「○○作業一式」ではもう一つの問題点があります。作業評価、コンプライアンスの問題です。
一式作業では全体のスケジュールと全体の作業の状態(着手・作業中・完了)はわかるのですが、作業手順による「作業の安全性・信頼性といった保全品質」が 可視化されません。業者の評価、作業者の評価もこれだけでは見えてきません。可視化されないために「施策を打てない」悪循環に陥ります。
たとえば具体的にはある作業を時間内に完了する割合を作業者別に集計します。
パターン1:ある作業員は100%完了し、別の作業員は80%、また別の作業員は65%だった。
パターン2:作業員全員が100%完了
パターン3:誰も100%完了しなかった。
100%完了した作業員の作業品質が完全であったことを前提条件として、パターン1では作業手順の比較から作業標準や作業のコツを導き出せるでしょう。パ ターン3は「該当作業に対して全体的な保全レベルを引き上げるための施策が必要」であるのか「そもそも作業計画に無理がなかったか」、検証の上で適格な施 策を講じることができます。特に作業者が3PMであるときには「保全作業の品質保証」「適正な発注金額」に直結するためこのような作業指示や保全プロセス の評価は重要な問題です。IBM Maximoではこのような評価指標をKPI(主要評価指標)としてユーザーが自由に設定することができます。図2に日本・米国・欧州の保全業務に対する 考え方の違いを取りまとめています。
残念なことに国内保全の特徴として結果を重視するあまりにプロセスを軽視する傾向があります。保全文化の問題といえますが、結果を出すために個々が現場で 創意工夫してもさほど評価されないということです。原因として長らく国内の作業者レベルが高い時代が続いたため信用しきっている、とも言えそうですが、 「産業事故の増加」、「年功序列・終身雇用制度の崩壊」、「ジョブホップの増加」、「教育格差の拡大」など現在の国内保全現場は海外化してきているといえ るのではないでしょうか。
【施策3】フェールセーフの考え方:国内保全が「人間性善説」とすれば、海外保全方式は「フェースセーフ」をベースとしています。フェールセーフとは誰が保全作業を行っても最低限の保全品質を確保できる方法、とも言い換えることができます。具体的に「人」と「システム」を考えて見ましょう。
<人>:一人、または複数の優秀な管理者が作業全体(作業案件全体と作業フェーズ全体)を管理する。
<システム>:国産保全管理パッケージではベテランを潤沢活用することができたため、人がPDCAをキックする「設備台帳」ベースのシステムであり、作業進捗などが見えにくい。まず作業員ありきで部門内作業員を個別支援することに発祥しているためなのでしょう。
海外ベースの保全管理パッケージではベースに「設備はいつか故障する」「人間はヒューマンエラーの可能性をいつも持っている」の2点をベースに設計されています。(図:2)
図:2エリアによる保全の考え方の違い
その結果「ワークベンチ」(※1)ベースでシステムが設計され、たとえば作業員が予防保全の準備を忘れてもシステムが確認させる設計になっています。興味深いことに国産・海外の代表的な保全管理パッケージはきれいにこの2種類にあてはまります。
比較項目 | (国内営業) 海外ベンダー |
国産ベンダー | 備 考 |
保全管理システムの根底にある考え方 | ワークベンチベース
|
機器台帳・設備台帳ベース
|
機器台帳ベースは熟練工が多くいたときは有効。ワークベンチには優秀な管理者が必要で定期保全では周期に応じてシステムが自動発行 |
想定する保全業務指揮系統 | 企業全体をカバーする全社トップダウン型の指揮命令系統 | 優秀な保全担当者が部門内指示
|
海外方式での保全マネージャーの作業は国内方式に比べて非常に多忙 |
想定する保全作業のワークフロー | 入退出多いためワークフローと作業工程・保全資源から指示を出す | ベテラン退職に伴い、経営問題としてワークフロー見直しの時期 | ワークフローは業務や環境に対応して修正できなければならない |
作業に伴う危険管理・防止ポリシー | 標準装備は少。テンプレートで工程ごとに顕在化させるモノあり | 標準機能ではなく改造や帳票に組込み都度入力が大半 | 都度入力ではノウハウを共有、テンプレート化できない |
想定する保全作業者業務 | 保全担当者レベルの格差を前提としたシステム設計思想 格差を作業品質に影響させない仕組み |
設備・保全業務に精通した優秀なエンジニアが自部門内で活用する設計思想。優秀な作業者が前提 | 熟練工の激減した国内現場では欧米の現場レベル差があっても保全品質影響を最小限にする思想が参考になる |
想定するオペレーター | 経験レベル格差は国内同様、「明確な作業指示」「添付手順書整備」などが保全品質を画一化する | 経験値の違いが作業品質に大きな差が出る。国内では作業評価方法も重要な課題 | 国内ではオペレーター作業を可視化できていないところがまだまだ多い。作業評価は3PM に対しても同様 |
システム形態 | 殆どがWebベースのためブラウザがあれば使用可能。WebはサブシステムごとにURLで横飛びできる | Webベースでも利点を活かしきれず(WaterFall型)。PDCAの承認・指示 はシステム外(紙)が多い | PDCAサイクルに則したワークフローベースのシステムが望ましい |
周辺業務との連携 | 担当業務が明確なのでスタンドアロンでも困りにくい | スタンドアロンから他部門各業務と連携されつつある | 保全技術・保全技能継承に退職者再雇用など多種多様なトライアル実践中 |
セキュリティなど一般的なシステム要件 | 海外の国内営業ベンダーの殆どはセキュリティ機能を標準装備 | システムベンダーによって取扱いやシステム機能は千差万別 | 国内では一般的なシステム要件がまだまだ浸透し切れていない |
また、国内では考えられないことに海外の保全業務マネージャーはしばしば安全上の理由でプラントを止めます。このあたりは連続運転期間の上限を決めている国内法規と海外の自己責任の違いに起因してきます。
3. 国内保全の長所と短所
かつての国内保全現場ではレベルの高い技術や技能を持った作業員が潤沢にいましたが、現在ではどうでしょうか。生産部門にて「派遣切り」という言葉 が一般化する時代です。まして不況時には真っ先にターゲットにされる保全業務です。作業現場の効率化が限界をとっくに過ぎている指摘がある通りです。
ここで国内保全現場を考察してみますと以下の問題(短所)が見えてきます。
- 前述の[施策2]のパターンに見られるような可視化がまだまだ改善の余地がある。
- 可視化がなされていないために施策が打てない、というコントロールの問題。
- 作業員のワークを劇的に減少させる状態監視技術に気づいていない自動化の問題。
新しい設備の導入の余裕がない、と国内保全現場からよく聞きますが「導入効果をLCC(※2)の視点で評価を可能にするのがEAMであり、全体的に見て投資効果の大きいところから順に行うべきですが、一部を除いて考え方のみの普及であることが残念です。
逆に長所もたくさんあり
- 明確な指示を出せば確実な作業を行うことができる。
- 自部門内、自チーム内での自己啓発、創意工夫の努力と導出結果のレベルが非常に高い。
- 法令順守意識が高い。
- 卓越したプロジェクトマネジメント技術。
- チームワーク(個々人の明確な職責の定義がなされていなくてもチームで責任を全うしうる)
などを代表例としてあげることができます。
これらから現場の作業員は自部門内では高い意識を持っていることがわかるのですが、全体的な視点、すなわち経営の参加度合いが不足しているのではないで しょうか。設備保全業務の比較を以下の表に挙げます。国内保全業務は大きな曲がり角に来ている、との認識から「日本国内の変化の傾向」の列を入れていま す。
比較項目 | 欧米 | 日本 | 日本国内の変化の傾向 |
ステークホルダー | 株主・消費者・従業員など | 消費者・従業員 | 株主・社会風潮を重視する傾向 |
企業への社会的評価 | フェアな競争で利益を上げる姿勢 | 千差万別 | 社会の監視度合いが高まる傾向 |
経営層の保全意識 | 企業全体のLCC管理 | 部門任せで管理しきれていない | 組立系製造から欧米型にシフト傾向 |
経営層の保全費用意識 | 管理可能な大きな戦略投資 | 一律削減対象になりやすい | TopDown・BottomUp併用増加傾向 |
保全業務位置付け | 保全は生産と同様に重要 | 費用や人員削減ターゲット傾向 | 戦略資産の考え方にシフト傾向 |
保全業務管理者 | 絶対権限、時々プラントを止める | 年功とともにスタッフ部門へ | 千差万別 |
周辺業務連携 | 1企業として利益最大化 | 工務調達の難しさから共同化 | 組立系から欧米化傾向、今後正念場 |
従業員雇用形態と現在の問題点 | 権限と責任が明確化。入退社多く誰でも間違いなくできる環境構築 | 年功序列・終身雇用であったため属人ノウハウとして共有できない | 保全技術・保全技能継承に退職者再雇用など多種多様なトライアル実践中 |
保全理論バックボーン | APIなど企業ワク超えた情報共有 | RCM再評価、情報収集体制完成 | 収集情報の分析・活用が課題 |
3PM保全 | 米は自社保全、欧は3PM傾向 | 3PM中心だが体制多様化 | 3PM業者階層化、管理できない問題 |
企業制約条件 | 経済法は多いが保全は自己責任 | 保全に各種法規あり | エビデンスとワークフローが重要になる |
制約への対応 | 機器が壊れるまで使う | SDMなど法定点検制約あり | 周期延長で現場経験が減少している |
保全業務考え方ベース | 機器はいつか壊れる 人間にはヒューマンエラーがある |
機器は正常に稼働して当たり前 徒弟制度による熟練工育成 |
欧米化によりBM・ヒューマンエラーを管理対象として最小化させる考え台頭 |
機器の経年劣化 | 国内に比べ新しい | 主力は経年40年前後の設備 | 設備のROAから改築すべきだが・・・ |
基本的な違い | 保全への経営参加度 | 役割と責任の明確化 | 年度・サイトを越えた可視化 |
社団法人 日本プラントメンテナンス協会 最新保全技術研究会 第2部会「設備保全手法・管理システムの国内と海外の違い」発表資料(2007年5月 長南剛一)より抜粋
4. 海外から学ぶべきこと
国内ではトラディショナルや新しい課題などが山積していますが、現場の意識は高いことがわかります。しかしながら、彼らは保全のプロであっても経営 のプロではありません。企業の取り巻く環境を読みながら全体の経営方向性の舵は経営層によって切られるものです。また現場の意識は高いのですがうまく共有 する仕組みが部門内、サイト内に限定しているのが実情です。事業環境はといえばグ小さくなった地球上でローバル競争を行うときに、国内産業の不利な点は 多々あります。新規工場用地がアジア圏では国策として無償提供または廉価に提供されること、人件費に大きな格差があること、原材料資源が近く、輸送コスト も合わせて廉価であること、などです。このような製品原価の低いプロダクトが原価の非常に高い国内工場プロダクトと並べて売られていたら販売価格も異なっ て当然でしょう。このようなことがあって一時、国内企業は多くの国内工場を海外にシフトさせました。中には国内へ戻ってきた工場もあります。
工場を取り巻くこのような環境で技術・技能といった宝物を特定部門や特定サイトに眠らせておくことは企業として大きなロスになります。グローバル企業は経営層によるグローバル統制が必須で必要になります。
海外から学べることとしては
- 人的リソースを含めたリソース最適化を実現する経営管理術
- 経営の保全業務への参加
ベーシックな考えは、保全費用は単なるコストではなく生産を担保するための戦略投資であること。 - コストダウンのための仕組みの構築
仕組みの対象としては設備保全管理の仕組みも含まれます。現場だけの最適化ではなく企業全体として全てのサイトで、LCCを考慮した複数年度の最適化を行うEAM的な仕組みが、現場最適に比べ効果が大きく異なることは既にわかっています。
5. 現在の国内に必要な仕組み
ここまでの内容から海外または国内が全て良い(または悪い)というものでは決してないことが理解いただけたことと思います。国内保全手法の優れた点もあるため、海外の良い点を国内業務に取り入れることが最も現実的で現場にも受け入れられやすい方法になります。
具体的には
- 技術や技能を共有できるシステム環境
国内複数サイトでどこででも使用されるモーターやポンプなどのトラブル情報と保全履歴を国内全体で共有できたとすれば、突発保全が発生しても「正しく修繕できる」「作業時間が短縮される」「結果的に低いコストで対応できる」といった効果を期待することができます。 - 保全作業の全社優先度によるコスト優先配分
- プラント全体のLCCを考慮した保全費用の戦略投資としての評価
このように国内保全業務に適合した全サイト情報を共有できる設備保全管理システムを構築することは「保全手法/コンプライアンス」「保全周期最適化 によるコストとリスクの同時削減」「保全コストの低減」定性効果、定量効果ともに期待することができます。保全業務はサイクルの長い業務ですから、長期に わたる積み重ね効果は云うまでもありません。そしてこのような考え方を理解している経営層は実行を指示することが責務です。
ここで化学や石油化学などの業種の方は「生産しているものがプロセス系であったりアセンブリー系であったり、その中間であったりするから一元管理な んて到底無理」「うちの会社では電気/計装と機械の保全を別システムで管理している」ということがあるかもしれません。この点は次のグローバル企業のビジ ネスモデルに酷似しているため次章で考えたいと思います。
6. グローバル企業に必要な仕組み
国内企業の海外進出により、現実として「グローバル一元管理を行いたいができない」「必要な評価指標が見えない」「現地から本社へ人員増加の要望が あるが不足しているのがスキルなのか作業者なのかわからない」「各種レポートは現地から得るが信憑性に問題がある、またエビデンスを取れない」といったグ ローバル企業ならではの課題もお聞きします。
このような言葉には2つの問題が潜在しています。
第1は可視化の問題:人員増加依頼が「作業量に比べて人員が不足していることに起因するのか」「人員数は足りているがスキル不足による経験者を増加させた いのか」または、他に理由があるのか見えていない可視化の問題です。レポートの信頼性も同様で作業内容が可視化されていないことに起因します。
第2は一元管理の問題点:「生産プロダクトの種類が異なる」、「電気/計装と機械の説明管理粒度の違い」などから一元管理ができないという正しくない思い込みの問題。
第1の課題は保全作業を可視化することで解消される問題です。保全管理システムを活用した保全履歴を原データとして[担当者別稼働率][グループ別 稼働率]、[予定内に完了する割合(前述、2.海外保全事情 施策2 参照)]などのKPI情報を容易に導出することができれば、遠隔地の本社であっても現地作業の可視化を行うことができます。その結果、国内保全の長所であ る「卓越したプロジェクトマネジメント」による適格な管理を実現することができるのです。
第2の課題は突き詰めると「組織の問題」に行き当たります。すなわち、「まったく異なる製品を製造しているので製造プロセスの違いがあるので一元管 理できない」という問題は製品Aと製品Bを製造している各プラント工場組織の上位組織が統制しきれていないことになります。「電気/計装と機械」の違いも 各チームを共通管理し切れていないのではないでしょうか。このように考えますと「生産製品種類」「地域特性」「市場特性」などの同じ基準で管理することを 阻害する要因は多々存在していることに気づきます。従来の部門最適化の考えからは基準の異なる組織では保全管理システムを別システムで運用されることが多 かったようです。部門の作業支援を目的とした現場最適化の考えから「当該部門の業務をそのまま支援するシステム」という意味合いで CMMS(Computerized Maintenance Management System)といわれます。CMMSは過去においては現場を支援する一定の役割は十分に果たし、成果も出ていることが確認されています。しかしながら地 球規模での競合する時代では全社の最適化、またはグループ会社を含む大きなサプライチェーンの最適化が企業生き残りの必須条件となります。その結果必然的 に、同一基準で単純に管理できなかった資産や生産設備を同一基準で管理する手法またはシステムとしてEAM(Enterprise Asset Management)という考え方が生み出され、CMMSに比較して桁違いに大きな効果を実現しています。そのための条件として基準の異なる条件の「共 通項を明確にした上で相違点に関しては基準を明確に定義する」ことが必要になります。図3は俯瞰的な概念図、図4はIBM Maximoで具体的に適用する場合のサンプルになります。
図:3Your Way(国内・グローバル)
図:4Maximo国際化機能(マルチサイト機能)の図
基本となるのは企業ポリシー(理念)です。「IBM Way」のように企業名とwayを続けたような名称がよく見られます。この企業ポリシーをベースに地域別制約条件(国・地域による法的規制の違い)といっ た相違点を加味しながら製品Aを製造している複数の国に存在する工場の標準化を行うことで「統制の取れた、同じ基準で評価できる保全評価の仕組み」を構築 することができます。この第2の問題は組織構造の縦系列と横系列を網羅しますから特定現場部門だけではなく経営層によるリーダーシップが不可欠です。
このようなグローバルネットワークを活用したグローバルサイトの可視化がKPI情報を通じて各職責に必要な情報を、必要な書式で、リアルタイムに参 照できるような仕組みがIBM Maximoなのです。さらに詳細な内容をご希望であればお気軽に個別にお問い合わせください。
次回は既存の仕組みを活かしつつこのようなグローバルの仕組みを実現する方法を紹介しながら組立加工系製造業について考えてみたいと思います。
※1 ワークベンチ:作業要求(work request)/作業指示(work order)/作業許可(work permission)の総称
※2 LCC:ライフサイクルコスト(Lifecycle Cost)の略称。導入から廃棄までのコストを対象にする考え方
一口メモ
経営者の想いと現場の考え
製造環境の変化は激しく、現在では原価の低い競合製品が地球上のあらゆる場所で生産される時代です。経営トップが強いリーダーシップを発揮して企業 一丸となって・・・、とうことはよく聞かれるのですが実際のところはどうでしょうか。経営層、中間管理層、海外生産拠点、オペレーター層といった各職責で 目標に対する温度差がないでしょうか。経営ポリシーを掲げている企業は多いのですが全社への浸透度合いはどうでしょう。
今回は国内保全業務の問題点を解決するために海外保全との違いを参考として引き合いに出し、さらに多国籍の生産拠点を持つ「国際一元管理」と言うべき考え 方をご紹介いたしました。国や地域による保全文化の違いなどの国際一元管理の壁は厚いのですが、その前に国内の各職責へのポリシーの浸透が急務でないかと 思われる多くのお客様からお話をお聞きすることができました。
経営の保全業務への参画度合いが正しいコスト削減につながります。可視化はまたコンプライアンス遵守にも良い影響を与えます。上級テクニックです が、IBM Maximoは本社から現地KPIを瞬時に参照、適格な指示を現地に伝える、といった保全情報をコミュニケーションツール的に使うこともできます。国内で も海外でも経営層が保全業務への参加度合いを深くすることでコスト削減の実現につながります。それ以上に全社への企業経営ポリシーの浸透が将来必ず有形無 形の大きな利益につながることと信じています。
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