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データ活用のハードルはSPSSで乗り越える! JAL流 データ分析担当者の育て方

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日本航空株式会社 Web販売部 1to1マーケティンググループ アシスタントマネジャー 渋谷 直正氏

日本航空株式会社 Web販売部 1to1マーケティンググループ アシスタントマネジャー 渋谷 直正氏

SPSS Modeler は文系の人でも半年もあれば、問題なく使いこなせます。R や Python も個人では使っていますが、企業で使うのであれば SPSS Modeler が向いています。

1995年6月にいち早くWebサイトを立ち上げ、1996年に国内線、1997年に国際線のインターネット予約を開始し、航空券のWeb販売をリードし続けてきた日本航空 (JAL)。JAL マイレージバンク (JMB) 会員数は3000万人を越え、同社サイトへの訪問者も1日約55万人、月間ページビューは約2億に達しています。2010年にはWeb上でお客様一人一人に応じた情報提供や接客を行うことを目的に「1 to 1 マーケティンググループ」を立ち上げ、2011年10月にログデータ収集システムを構築。2011年12月には IBM SPSS Modeler (以下、SPSS Modeler) を導入し、データ分析による商品レコメンドの最適化を推進しています。

JALがSPSSを採用した理由は、大きく4点あります。月間2億ページビューに上るアクセスログと各種関連データを組み合わせた、複雑なデータ分析を高速に処理できること。操作が容易で、分析の手順を「ストリーム」として可視化できること。多種多様な分析手法が標準で搭載されており、オプションとして追加する必要がほとんどないこと。そして採用実績が高く、活用方法に関する知識やノウハウを入手しやすいことです。

「航空券は購入単価が比較的高いこともあり、購入プロセスの中で迷われるお客様が少なくありません。」と語るのは、JAL 1 to 1 マーケティンググループでアシスタントマネジャーを務める渋谷 直正氏。Web サイト内でのお客様の行動を分析し、その結果を活用してレコメンド方法を変えていくことで、売上を高めていくことが可能になると言います。「1つの施策で数千万円の効果が上がるケースも少なくありません。最近ではプライベート DMP* の導入により社外のデータも活用し、JALサイト内だけではわからないお客さまの行動も分析することで、精度を高めています」。

*Data Management Platform

効果の上がる分析に必要なのはビジネスへの理解と共感

それではJALにおけるデータ分析の成功の秘訣は何なのでしょうか。それは「売りたい商品から発起して分析するのではなく、お客さまの気持ちを理解するための分析を行うことです」と渋谷氏は説明します。

「例えば来年ハワイ旅行に行きそうなお客さまかどうかは、過去のデータを見ればある程度は予想できます。しかしこのお客さまにハワイ便の航空券をレコメンドするだけでは、お客さまの心は動かすことはできません。何のためにハワイに行くのか、お客さま一人一人の文脈を理解しなければ、的はずれな提案になってしまいます。JALサイト内だけではなく、外部データもSPSS Modelerで分析しているのは、お客さまをより深く理解するためなのです」。

このような分析を行うには、データ分析者にはビジネスへの深い理解と共感が必要になるとも指摘。ビジネスに対する問題意識が低い人が分析を担当しても、いい結果は得られないと語ります。

「できれば実際の業務を経験し、未経験でわからないことは業務現場から積極的に聞き出すという姿勢が求められます。分析スキルはその次です。統計学の知識もあるといいとは思いますが、これをメンバー全員が習得するのは難しく、特に文系出身の社員にとっては高いハードルになることが多くあります。そこで当社では統計理論は後回しにし、まずはツールを使って分析に慣れてもらうことで、分析者を育てていくというアプローチを取っています」。

渋谷 直正氏の写真

統計理論習得の壁を簡単に乗り越えられるSPSS Modeler、データ加工・分析も容易

そのためのツールとして重要な役割を担っているのがSPSS Modelerです。

「SPSS Modelerは数多くの分析手法をGUIで操作でき、モデリングによる検証を簡単に行なえるため、文系出身の社員でも半年もあれば問題なく使いこなせるようになっています。RやPythonも個人では使っていますが、他人が書いたプログラムを読むのは手間がかかるため、チームで使っていくのにはあまり向いていません。SPSS ModelerならGUIでできることを、習得に時間がかかるコマンドラインで行う必然性もないと感じています。企業で活用するのであれば、SPSS Modelerが向いています」。

またマーケターがデータ分析を行う場合には、統計理論の理解だけではなく、データ加工や集計をどのように行うのかというハードルもありますが、これにもSPSS Modelerは有効だと指摘します。

「統計理論のハードルを超えられるツールは他にもありますが、データの加工・集計まで行えるものはほとんどありません。しかしSPSS ModelerならGUIでデータ加工・集計から分析まで、一気通貫で行うことが可能になります」。

SPSS Modelerで分析テンプレートを共有し、データドリブンな会社へ

他の部署からデータ分析の相談を受けることも、最近は増えていると渋谷氏。これまでにも、女性をはじめとする多様な人財の活躍を推進プロジェクト「JALなでしこラボ」や、コールセンターからの相談に対応したことがあると振り返ります。「ここで感じたのが、SPSS Modelerならストリームを共有できるため、テンプレートを作成して配布すれば、他の部署でも簡単に利用できるだろうということです。SPSS Modelerならどのような分析を行おうと考えているのか、ストリーム作成者の意図も的確に伝わります。このようなかたちで草の根的に広がっていけば、データを活用して意思決定するという文化も浸透しやすくなるはずです」。

その一方で、今後はマーケティングオートメーション (MA) ツールとの連携を進めていくことも検討されています。データ加工・集計から分析、さらにその実行までをつなげていくことで、考えたことを確実に実行できる環境を整備しようというものです。

「MAツールが有能な手足だとすれば、SPSS Modelerはそれを動かす頭脳の役割を果たすことになります。将来はさらに実行結果を機械学習にフィードバックし、モデル作成を支援するクローズドループの実現を目指したいと思っています」。

渋谷 直正氏の写真

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