S
Smarter Business

従業員のエンゲージメント低下、ニューノーマル時代の新たな人事課題への解決法

post_thumb

市川幹人 氏

市川幹人 氏

SAPグループ クアルトリクス合同会社

ディレクター

住友銀行(現・株式会社三井住友銀行)、株式会社三菱総合研究所を経て、ヘイコンサルティンググループ(現・コーン・フェリー・ジャパン株式会社)およびウイリス・タワーズワトソンにおいて、従業員意識調査チームの統轄責任者を歴任。さまざまな業界のリーディング企業に対し、調査設計、実査準備・運営、集計分析、結果報告、アクションプラン策定のためのワークショップ運営まで、豊富な経験を有する。クアルトリクスでは、従業員エクスペリエンス分野推進のディレクターを務める。

 

久保田勇輝 氏

久保田勇輝 氏

日本アイ・ビー・エム株式会社

Talent&Transformation

アソシエイトパートナー

2002年アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービス株式会社 人事コンサルティング部門に入社、人事ソリューション導入に従事する。その後、国産人事パッケージベンダーを経由して、2011年日本アイ・ビー・エム株式会社に入社、現職。ERPパッケージ導入に関する適合性検証から設計・開発・導入フェーズのコンサルティング、タレントマネジメント構想、アウトソーシング検討や、業務改革プロジェクト等幅広いコンサルティング実績を有する

新型コロナウイルス感染症(COVID−19/以下、新型コロナウイルス)の影響により、多くの企業でリモートワークの導入が進んだ。それに伴い、組織として、一体感の維持や社内コミュニケーションの活性化といった新たな検討課題が浮上するようになった。

この課題解決を提言すべく、2020年12月9日、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、IBM)とSAPジャパン株式会社(以下、SAP)の共催によるオンラインセミナー「人事部がエンゲージメント低下期を乗り超えるための手法徹底解説!」が開催された。

第1部は、IBM Talent&Transformation アソシエイトパートナーの久保田勇輝氏による講演「“ちょっといい?”ができなくなる世界。企業がエンゲージメント低下期を乗り越えるための5つの手法」。第2部は、SAPグループ クアルトリクス合同会社(以下、クアルトリクス)ディレクターの市川幹人氏による講演「従業員向け調査のいろいろ〜従業員の声はアクションのためのヒントの宝庫」。最後に「試行錯誤から脱却!」と題し、視聴者の質問に2人が回答するという3部構成で行われ、人事領域のエンゲージメントを向上させる最新の知見とシステムを紹介した。

 

「ちょっといい?」がない事態において、ケアするべき

 

 

リモートワークが中心となり、当初危惧された生産性の低下が解決に向かう中、次に懸念されるのはメンタルの不調だという。従来は過重労働や過度のプレッシャーによるところが大きかったメンタル不調が、画面越しでしか接しないコミュニケーションによる、いわゆる「コロナ疲れ」によって生じると予想されているのだ。並行して、仕事の意欲や会社への帰属意識の希薄化といった、エンゲージメントの低下も懸念されるだろう。第1部の講演を行った久保田氏は次のように現状を分析した。

「人が視覚から得る情報は、聴覚から得られる情報の10倍近くになると言われています。そのため、従来の出社をベースとする勤務形態では、上司は実際に部下を見て会話することによって『表情が重いな、疲れていそうだな』といった不調や悩みに気付き、声がけができていました。つまり『ちょっといい?』という言葉をかけることによって、実質的な1on1を実現していたのです。一方、リモートワークでは会話の目的が明確になり、会話自体の生産性が上がる反面、目的があやふやなコミュニケーションの機会は減りました。さらに、多くのことを、見ることなく聞くのみで判断せねばならないため、上司が部下の本音や状態を把握しづらくなっています」(久保田氏)

では、そのような状況を踏まえてどのような対策を打てばいいのだろうか。久保田氏は5つのポイントにフォーカスを当てて説明した。

1)労務管理:離職意識について

「ちょっといい?」ができない環境において、どう部下の離職意向を把握し、いかに早めのケアをしていくのか。IBMでは、過去に離職した従業員の人事データからAIを用いて統計解析を行い、離職モデルとも言うべき人事モデルを作成。そこから類似した傾向の従業員をピックアップする「離職予測」を行い、その結果をもとに上司のアクションを促進しているという。

「四半期もしくは半期に1回、人事から離職予測の結果を受けて、『部下とコミュニケーションをしてください』とアクションを促すメールが上司に送られます。重要なのは、これにより、離職の可能性がある従業員とプッシュ型のコミュニケーションを起こせるということです。つまり、離職の意志がまだ火種の段階にあるうちにコミュニケーションを取って解決に導く、というプロセスを回すのです」(久保田氏)

2)評価:結果だけでなく結果に至るプロセスの評価について

リモートワークが主体になると、「いつも頑張っているな」といった日頃の様子からの評価が難しくなる。こうした場合、結果だけでなく、そこに至るプロセスをどう評価すればいいのだろうか。

「IBMではランク付けで評価しない“ノーレイティング”の評価制度を取り入れています。従来の年間目標ではなく、優先順位を付けた短期目標に対する進捗を、継続的な1on1のコミュニケーションによってフィードバックしていく評価制度です。これにより、短期目標の進捗が可視化され、結果としてプロセスの評価につながります」(久保田氏)

一方、エンゲージメントサーベイを行うことで、そのフィードバックが組織的にきちんと行われているか、フィードバックが部下のビジネスのサポートとなっているのか、についても人事が確認する。さらに、その結果を上司にフィードバックすることで、上司は1on1の質を客観的に把握することができるのだ。久保田氏は、「このような組織的な360度評価により、結果だけでなくプロセスの評価が正しくできるようになるのです」と言う。

3)育成:増えすぎたeラーニングを自己学習に結びつけるために

新型コロナウイルス拡大防止の観点から集合研修が行えなくなり、eラーニングコンテンツを活用している企業も多いだろう。その結果、「eラーニングコンテンツ事業者から提供される1000、2000もあるコンテンツを、どう各従業員の自己学習に結びつけるのか」という課題が生じている。「ちょっといい?」ができる環境ならば、「この研修を受けたらいいよ」というアドバイスやOJTが簡単にできるが、現状はそれが難しいのである。

「IBMでは、必要なスキルを習得するためのeラーニングコンテンツを、ラーニングシステムから、職種や個々人の保有スキルに応じてレコメンデーションする仕掛けがあります。その際のもととなる『従業員の保有スキル』『今後必要なスキル』などの選出には、目標や職務内容、プロジェクト実績などの人事データをAIが解析することで導出する『スキル推論』が使われています。さらに、『年間40時間学習しなければ評価に関わる』という指標を設け、制度面からも補助しているのです」(久保田氏)

また、スキル保有度や実績を「バッチ制度」で認定し証明することで、本人のやる気や対外的な活動を促す制度も取り入れている。職種転向やスキル転用に対しては、当該職種に必要なスキルや学ぶべきコンテンツを明確化することで、eラーニングシステム上で完結できる仕組みが整えられているという。

4)方針理解:会社の方向性や戦略をどうやって浸透させるのか

自社の方向性や戦略、ビジョンなどをどのように各従業員に浸透させるのか。かつてなら、トップや経営陣のメッセージを踏まえ、会議の前後やちょっとした雑談の中、場合によっては飲み会などで共有することができていた。しかし、今の状況では難しい。

「IBMでは、経営層から従業員に向けて、ビデオメッセージを送ったりオンラインカンファレンスを行ったりして、会社の戦略やビジョンを伝えています。ただ、これは新型コロナウイルスの影響拡大以前から取り組んでいることで、このような上位層から発信するコンテンツは変わりません。重要なのは、その効果がどうだったのか、施策への意見はどうなのかといったことを知るためにエンゲージメントサーベイを行っていることです。結果を踏まえ、メッセージや方針、説明がきちんと伝わっているかどうかを上司にフィードバックし、上司と部下のコミュニケーションを促しています」(久保田氏)

5)メンタルヘルス:従業員のメンタル不調をどうやって見つけるのか

リモートワークにおいては、画面越しでしか接することのできない従業員のメンタル不調を、どう気付いてケアすることができるのだろうか。

「これはIBMではなく他社事例になりますが、人事データや勤怠データによる休職予測を行おうとしています。データは、過去の休職歴はもちろん、結婚や引っ越しなどのライフイベント、異動や昇格などの業務イベント、過去の評価や残業などの業務負荷といったデータをモデル化して、過去に休職した人のデータと比較・解析して予測します。この予測をもとに、早めに上司に対して1on1のコミュニケーションの実施を促すのです」(久保田氏)

 

視覚が使えない世界では、データが口ほどにものを言う

「ちょっといい?」ができない状況においては、リモートによるコミュニケーションの回数を増やすなどのほか、データをAIにより分析・活用することで効果的なケアやアクションを促進することが必要である。そのために人事システムは、オペレーションだけでなく次のアクションを取るダッシュボードにしていく必要があるだろう。

久保田氏は、データを活用することで、「ちょっといい?」ができない部分を補っていくことが今後進むべき方向性だが、その取り組みを進めるに当たり、現状としては「まだまだ課題がある」とも言う。課題と対応策を以下にまとめた。

出典:IBM

「たとえば、データ分析したけれども、人事データの鮮度が悪い、欠損データがある、テキストデータが使えないというお客様がけっこういらっしゃいます。そういった場合は、既存データをもとに、AIによってデータの鮮度を上げていく方法や、テキストマイニングによって使えるデータを増やしていく方法などが考えられます。『壁がある』と簡単に諦めることなく対応していくことが大切です」(久保田氏)

 

エクスペリエンスマネジメントが組織を発展させる

 

第2部は、クアルトリクスの市川氏が、「従業員向け調査のいろいろ〜従業員の声はアクションのためのヒントの宝庫」というタイトルで、従業員の声をアクションのヒントに役立てる方法を紹介した。

クアルトリクスの本社は米国ユタ州。2019年にSAPグループの一員となり、「エクスペリエンスマネジメント」のパイオニアとして業界をリードしている。

エクスペリエンスマネジメントとは、企業にとって欠かせない「顧客、従業員、ブランド、プロダクト」の4つの分野におけるそれぞれの体験をより良いものにし、組織の発展につなげていくもの。その実現のためにクアルトリクスが提供するシステムは、単なるアンケート調査のツールではなく、それを分析してアクションにつなげるプラットフォームとなっている。

 

従業員エクスペリエンスを高めることで業績アップ

 

まず市川氏は、「従業員エクスペリエンス(以下、EX)の重要性を説明する。

「職場での体験は、当然ですが、従業員の行動パターンや貢献意欲につながっていきます。その体験が自分にとって有益だった場合、エンゲージメントも高まり、もっと頑張ろうとかもっと工夫してみたいといった想いが生まれるでしょう。そのために、従業員のエクスペリエンスをマネジメントすることが大切なのです」(市川氏)

それを踏まえて、市川氏の講演テーマは以下の4つが軸となる。

 

1)EXの重要性

EXの向上を企業レベルで見ると、生産性や革新性、業績の高まりなどにつながる。そのためにも、「顧客第一」ではなく「従業員第一」で捉える必要があるという。

「EXの改善に伴ってエンゲージメントが向上することで、生産性や革新性も高まり、サービスや製品の質に反映されます。それは必然的に、お客様の体験の向上を通して顧客ロイヤリティの強化や口コミの拡大にもつながっていく。その結果、高い業績として会社に還元されるのです。さらに、業績アップにより会社が発展することで、従業員エンゲージメントがさらに強化され、離職率も下がるといった好循環が期待できます。ですから、従業員エクスペリエンスを出発点に、お客様、業績につながっていくという一連の流れ『エクスペリエンス・サイクル』で捉えることが重要なのです」(市川氏)

中には「従業員の意識やエクスペリエンスくらい把握している」と言う経営陣もいるだろう。とはいえ、経営陣と従業員の意識にギャップが生じているという調査結果は珍しくないため、「従業員の声を集めて検証していくことが必要」と市川氏は強調する。

 

2)従業員向け調査から見える企業動向(トレンド)

リモートワークが拡大・浸透し始めた直後、2020年4月と5月の調査結果では、4〜5割の回答者が自分の生産性が落ちたのではないかと危惧していた。現在はだいぶ改善されてきているが、従来の「ちょっといい?」ができない環境においては、チームワークや個人に対するケア、ITなどの業務環境といった課題が浮き彫りになった。

「2020年は多くの企業が『新型コロナウイルス対策』を真剣に考え、何とか業務が遂行できる環境の整備を実現できたものの、新たに発生した懸念材料を中長期的に放置すると、いずれエンゲージメントの低下につながっていく可能性があります。リモートワークが主流になりつつあった2020年のエンプロイーサーベイの取り組みにおいては、3つのトレンドが見出せます」(市川氏)

・従業員の声に耳を傾けること
従業員の意見を聞かなければダメだと考える会社が増えた。環境の急変に伴って、「会社として何をすれば良いのかわからない」とならないよう、従業員の声を集めることに対して関心が高まっている。
・調査実施頻度の上昇
調査の実施を年単位ではなく、半期か、四半期か、毎月かと考え直すケースが増えている。タイムリーなアクションが求められる課題に対して、調査頻度が低ければ、手遅れになってしまうと感じる企業が増えたと考えられる。
・調査テーマの絞り込み、具体化
調査頻度を上げるに伴って、1回につき50問や100問といった設問を調査するのでは、実施する方も受ける方も疲れてしまう。調査テーマを絞り込む、具体的なものにするなど設問数を絞る一方で、調査頻度を上げようとする考え方が目立ってきている。

 

3)これまでとはちょっと違う調査の活用

トレンドから見えるのは、従来主流だった「全社レベル」の調査だけでなく、第1部で久保田氏が述べていたような「ちょっといい?」に近い——たとえば、10〜20に絞った設問数で組織単位の調査を行い、特徴的な結果を抽出して、迅速に効率的なアクションを起こすといったことの有効性である。

「過去行った調査では、フィードバック機会がない企業より、ある企業の方が従業員のエンゲージメントは高くなっています。実施頻度についても、高い方がエンゲージメントが高い。さらに、フィードバックに対して会社がアクションを取っているグループは、そうでないグループよりもエンゲージメントが圧倒的に高くなっています。従業員は会社に対して言いたいことがある、そして何らかのアクションを求めていることを示しています」(市川氏)

また、調査テーマや方法も多様化し、たとえば、入社から退職に至るまで節目になる体験ごとに実施する調査、いつでも従業員の意識を収集できるよう常時オープンしている「目安箱」のような調査も活用されつつあるという。

「従業員の意識を網羅的に捉えようとするエンゲージメント調査だけではなく、たとえば1on1ミーティング実施後に、それが有意義なコミュニケーションだったのか、テーマ設定や実施状況などを従業員がマネージャーにフィードバックしたり、人事部が各組織単位で把握するような活用も行われています」(市川氏)

 

4)調査結果を有効活用するために

せっかくの調査データも、アクションにつながらなければ意味がない。クアルトリクスを使ったデータの活用に関して4つの論点を説明した。

・調査データと外部データの連携
人事関連のデータや業務関連の実績などオペレーショナルなデータ(以下、Oデータ)と調査で集めて分析するエクスペリエンスのデータ(以下、Xデータ)を掛け合わす。つまり、Oデータで事実・実態を把握し、その背景にある理由や従業員の気持ちはXデータで分析すると、課題の背景をしっかりと把握できる。

・調査内容(設問項目)の設計方法
どのような設問設計が適切なのかがよくわからないときには、クアルトリクスのテンプレート設問を土台にして調査票を作成することができる。一方で、各企業のニーズに応じて柔軟に内容を調整することも可能である。

・調査結果の表示方法(ダッシュボード設計)
どの項目の結果をどのようなグラフで表現するのか、どういう順番で並べるとわかりやすいのか、クアルトルクスの結果表示のページ(ダッシュボード)はユーザー側で自由に設計できる仕組みになっている。

・課題の特定、アクションプランの管理
エンゲージメント調査のゴールは、社員一人ひとりのエンゲージメントレベルを上げていくこと。クアルトリクスには、エンゲージメントを左右する要素を相関分析で特定するツールがあるという。エンゲージメントに対して影響があり、かつ現在あまり良好な状況にない項目(優先改善課題)に対しては、一般的に想定されるアクションプランのヒントを示すことができる。

有効活用できる調査結果を得るために

 

市川氏は最後に、「従業員の意識調査を有効活用するための条件」として、そのポイントを解説した。

1)目的を明確にして、従業員が答えたくなるような調査

目的が明確で、従業員が答えたくなるような調査になっているか。同じような長い調査を繰り返していながら、具体的なアクションが取れていなければ “調査疲れ”が起きてしまう。調査の目的を明確に示し、それを活用していることを従業員に見せることで「自分の声が伝わるんだ」と実感を持ってもらうことが重要である。

2)調査準備〜実施をコンパクトに

準備から実施までで時間と労力を使い切ってしまい、アクションの検討・分析ができないままになってしまうパターンは珍しくはない。調査対象者をデータベースから自動的に選択したり、調査結果が回答収集と同時に集計されるなど、手間のかかる作業を効率的にこなすことができるプラットフォームの活用が効果的である。

3)集計・分析〜アクションまでを短期間で展開

集計・分析からアクションまで短期間で展開しないとせっかく収集した情報の鮮度が薄れてしまう。簡単なアクションでもいいので、調査がクローズしてから迅速に次のステップに進むことが重要である。

4)全社のみならず各組織・現場を巻き込んだ活動

全社のみならず各組織や現場を巻き込む。全社レベルで改善活動に取り組みももちろん必要だが、それぞれの組織で「自分たちの課題はこれだ」と当事者意識を持って地道にアクションを取ることが、こうしたプロジェクトを社内に根付かせる秘訣である。

5)調査をマンネリ化させない工夫

調査をマンネリ化させないこと。何年も続けていくと「またか」となりがちだが、先述のXデータ、Oデータをうまく組み合せるなど、分析に一味違うものを入れていく。あるいはカスタマーエクスペリエンスを組み合わせて従業員の意識を分析するなど、新しいインサイトを得るための工夫も有効である。

 

ツールを活用することで、エクスペリエンスマネジメントが適切に行える

 

第3部では、久保田氏と市川氏が、視聴者からの2つの質問に回答した。

1)従業員の声に真摯に耳を傾けたうえで、情報分析とアクションが必要であることはよくわかりました。では、システム上でどのようにアクションを管理するのでしょうか?

「クアルトリクスでは、調査結果の分析を踏まえ、その後行うべきアクションを登録することで、誰が・どのような・いつまでに、といった進捗管理を現場で行うことができます。もちろん、事務局側からもその進捗状況を見ることができます」(市川氏)

また、推奨されるアクションプランの表示機能については、クアルトリクス独自のアクション例のほか、自社のHRや各組織がカスタマイズしたアクションを事前にシステムに登録しておくこともできる。さらに、部署の責任者のみならず、所属員の意見を集約してその組織のアクションプランを設定するような機能もある。

2)具体的なお客様の事例があれば教えください。

「たとえば、人事異動において、異動前はパフォーマンスが高かった従業員が、異動後にパフォーマンスが低くなってしまうことがあります。従来は、その理由をスキルのギャップやアンマッチと捉えることが多かったのですが、実は、上司と部下の組み合わせや部門ごとの文化など、スキル以外の噛み合わせの悪さの影響も大きいのです。そのため、人事データのほかに調査結果を異動に役立てる会社も出てきています」(久保田氏)

「多くの企業では、たとえば人事異動を検討する際に参照するデータは、すでに蓄積されている人事データが一般的でした。しかし今は『ちょっといい?』ができないからこそ、従業員の気持ちに寄り添ったデータ分析に基づいて各種施策を実行することが大切なのです」(市川氏)

 

ニューノーマルの時代に新しく生じる可能性がある「従業員のエンゲージメント低下」という課題。そこを乗り越えるためには、従業員の声を聞き、その結果と従来蓄えてきた多くのデータを連動させ、分析・活用していくことが大切である。そのために、人事データなどの外部データとの連携を得意とするクアルトリクスはプラットフォームとして活用できるだろう。IBMは、クアルトリクスから、EX領域で日本初のプロフェッショナルサービスパートナーとして認定されている。

ニューノーマルの時代に合わせた働き方、コミュニケーションの取り方が求められるようになった今、AIやクアルトリクスを活用して従業員のエンゲージメントを向上させ、ピンチをチャンスに変えてほしい。