読書メモ

勝手要約『限界費用ゼロ社会』

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ひと月ほど前に「シェアリング・エコノミーまずは実践するよっ」って書いたら、「この本読んでみれば」とご紹介いただきました。

限界費用ゼロ社会

発売から2年弱経ったベストセラーですが、内容的には古さは感じませんでした。

むしろ、こうした「未来予測系」の本の場合、発売当初よりも少し経った今くらいの方が理解しやすかったりするのかもしれませんね。

 

ただ、正直決して読みやすいタイプの本ではないです。

その理由は、サブタイトルにもなっている『 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭』、つまり「IoTとシェアリング・エコノミーの台頭」の理由とそれが導く未来について、著者が考える必然性を「これでもかこれでもか」と対象範囲をどんどん広げながら論じていくスタイルのせいにあります(それから約500ページという長さも)。

一冊の本で取り扱うにはあまりに範囲が広い…。

 

おそらく著者には、未来から現在、さらには過去までバックキャスティングした一本の道がくっきりと見えているのでしょう。そして、未来を論じるのには足場は固ければ固いほどいいのでしょう。

ただそれにしても、論じるテーマを半分に絞り、それぞれについてもう少し他の「ありそうな未来」の可能性についても検討していく方が、むしろ読者に必然性を強く感じさせることができるのではないでしょうか。

 

と、ネガティブな要素を書きましたが、内容的には自分が思ったり感じたりしているけれどうまく言語化できないままでいたことや、「循環型経済」や「価値共創」への社会の一連の流れが、根底ではすべて結びついている大きなうねりであることを、(長いしクドいところはあったけど)分かりやすく上手に説明してもらった感じです。

「3行でまとめよ」と言われれば、以下となります。

 

 

以下、章別に「勝手要約とキーワード」を書いておきます。

 


 

第1章 市場資本主義から協働型コモンズへの一大パラダイムシフト

新しいコミュニケーション/エネルギー/輸送マトリックスへの転換が、新たな経済パラダイムへの転換をどのように引き起こし、人間社会の大半で世界観を根本から変えたかを理解すれば、経済の歩みを先導し、私たちを現在へと導いた発展の仕組みがより把握しやすくなる

「水平型のピア・プロダクション」 – 対等な人同士の共同作業。

 

第2章 ヨーロッパにおける囲い込みと市場経済の誕生

ヨーロッパは17世紀、風力・水力による動力と印刷革命による識字の大衆化、そして道路や川による輸送の着実な改善により、それまで商業生活に対してギルドが振るっていた揺るぎない支配力を確実に切り崩し市場経済への道をつけた

「ギルド」 – 市場経済の決定的に重要な特徴である自由労働市場徒競走価格を避け、自らの材の代価として「公正価格」と呼ぶものを請求した職業別組合。

 

第3章 資本主義と垂直統合の蜜月

垂直統合型の巨大企業は、大量生産される財とサービスの生産と流通を構成するのに最も効率的な手段だった。サプライチェーンと生産過程と流通経路を、集中管理の下で垂直統合型の企業にまとめると、劇的に取引コストを減らし、効率と生産性を上げ、生産と流通の限界費用を削り、消費者に対する財とサービスの価格をおおむね引き下げ、経済を繁栄させることができた

「第二次産業革命」 – 新しいコミュニケーション(電話)/エネルギー(石油)/輸送マトリックス(内燃機関)。

 

第4章 資本主義のレンズを通して眺めた人間の本性

資本主義と社会主義の体制は、所有権や利益の分配のパターンこそ異なるものの、どちらも垂直統合型の事業体という形で生産過程を構成する。効率が向上するから

「ナラティブ(物語)」 – ある経済バラダイムを正当化するために、そのパラダイムに見合った壮大な宇宙観のナラティブ(物語)を創出するということが昔から行われてきた。

 

第5章 極限生産性とモノのインターネットと無料のエネルギー

維持管理費が膨らむ一方の中央集中型の電気通信や、化石燃料エネルギー生産、内燃機関を用いた輸送に依存する、古い第二次産業革命のメトリックスト、劇的にコストが減っている第三次産業革命のコミュニケーション/エネルギー/輸送マトリックスとを比較すれば、後者の方が将来性があることは明らかだ

「資本主義の究極の矛盾」 – 最高の効率により生産性が頂点に達すると限界費用はほぼゼロになる。その目標に行き着くと財やサービスはほぼ無料になり利益は枯渇し、財産の交換は停止して資本主義体制は最後を迎える。

 

第6章 3Dプリンティング

3Dプリンティングが従来の中央集中型の製造と異なる: 人間による関与が少ない/オープンソース志向/原材料の無駄が少ない/移動性が高い/エネルギーの地産地消/

「エコロジカル・フットプリント」 – 自然生態を踏みつけた足跡。人類が地球環境に与えている「負荷」の大きさを、面積として示した指標。

 

第7章 MOOCと限界費用ゼロ教育

オンラインで教える限界費用がほぼゼロに下がり、講座がほぼ無料になると、一流大学が何億もの学生に無料で教育を提供することになって、ロングテールからどれだけ「限界価値」を得られるにせよ、その額は、従来型の高等教育体制全体の収入に比べれば、微々たるものでしかない

「サービス・ラーニング」 – 奉仕と学習を統合させた学習方法。教室での学びを地域社会でのボランティア活動で実践。

 

第8章 最後の労働者

蒸気機関によって人間は封建時代の農奴制から解き放たれ、資本主義市場で物質的な私利を追求できるようになったとすれば、IoTによって人間は市場経済から解放され、協働型コモンズにおいて非物質的でシェアされた利益を追求できるようになった。
希少性ではなく潤沢さを中心とした経済では、インテリジェント・テクノロジーが重労働の大部分を担う

「協働型コモンズでのディープ・プレイ」 – 市場ではなくシビル・ソサエティで人々が才能や技能をシェアし、社会関係資本を生み出すこと。

 

第9章 生産消費者の台頭とスマート経済の構築

協働型コモンズでは、売り手と買い手に代わってプロシューマーが登場し、所有権はオープンソースのシェアにその座を譲り、所有はアクセスほど重要ではなく、市場はネットワークに取って代わられ、情報を作成したり、エネルギーを生産したり、商品を製造したり、学生に教えたりする限界費用はほぼゼロとなる

「生産消費者(プロシューマー)」 – 生産者(プロデューサー)と消費者(コンシューマー)を一体化させた言葉で、つくる側でもあり提供する側でもある消費者のこと。

 

第10章 コモンズの喜劇

片や、中央集権化され、ときに人間味に欠ける官僚的な政府による管理、片や、収入減や利益の源泉に、生活に関わるあらゆる面を取り込もうとしている、操作巧みで締まり屋の巨大な民間部門という両極端に対して人々は幻滅し、経済生活を構成するもっと民主的で協働型の方法を見込めるような統治モデルを探し始めたのだ。そして彼らコモンズを再発見した

「コモンズ(共有地)の悲劇」 – 多くの人が利用できる共有資源が乱獲されることにより、資源の枯渇を招いてしまうという経済学における法則で、1698年もギャレット・ハーディンという生物学者が論文で発表した。

 

第11章 協働主義者は闘いに備える

生産消費者(プロシューマー)は、資本主義市場の機能を混乱に陥れている。協働主義者と資本主義者の間で展開する「囲い込み」対「あらゆるものの大衆化」という文化的対立、そして経済的衝突は、今後の人類の経済バラダイムが立脚する文化のナラティブ(物語)を形づくっていく

「グローバル化」 – 地球上の資源を数百の営利企業の手で私有化すること、ではない。

 

第12章 インテリジェント・インフラの規定と支配をめぐる争い

資本主義市場における自己利益の自主的追求を良しとする旧体制に比べ、第三次産業革命における新体制は金融資本をそれほど必要とせず、より多くの社会関係資本を必要とする。資本主義的な市場の仕組みよりむしろコモンズ方式の管理で最もうまく機能する。資本主義市場がこのまま生き残れるかどうかは、そうした社会体制に新たな効率性や生産性が見つかる世界で、価値を見出せるか否かにかかっている

「インテリジェント・インフラ」 – コミュニケーション・インターネット、エネルギー・インターネット、ロジスティクス・インターネットの三つが連動して結びつき相互に左右する一つのシステム。IoT(モノのインターネット)の基盤。

 

第13章 所有からアクセスへの転換

人々は日々、協働型消費を実践している–テクノロジーとピア・コミュニティを通して新たに定義し直された伝統的な共有や物々交換、貸与、売買、交換などがこれに当たる。こうした協働型消費によって、製品やサービスを所有するよりも、それにアクセスできるほうがはるかに利点が大きいことに人々は気づき、同時にお金や空間や時間を節約して、新しい友人を作り、再び活動的な市民となることも可能だと悟った。……こうしたシステムは、利用効率を向上させ、無駄を省き、よりよい製品の開発を促し、過剰な生産と消費から生まれる余剰を一層することによって、環境にも著しい利益をもたらす(『シェア』著者のレイチェル・ボッツマンの言葉)

「10パーセント効果」 – 協働型経済は多くの経済部門ですでに危険なまでに小さい利益率をさらに削る力を備えているため、消費者が消費を10パーセント減らし、仲間との共有を10パーセント増やしただけで、巨大な資本主義企業に「破壊的」インパクトを与えるだろうという考え。

 

第14章 社会関係資本のクラウドファンディング、民主化する通貨、人間味ある起業家精神、労働の再考

新たな協働型コモンズも、社会関係資本を確保して協働の精神を築くために必要な社会的信頼を高いレベルで維持しようと、フリーライダーや妨害をする人々を罰し、さらには排除さえするような制裁を含め、さまざまな規約を試してきた。主要な協働型のソーシャルネットワークではほぼ例外なく、会員の信頼性を格付けする評価制度を設けている。市場経済における各人の支払い能力を格付けする従来の信用格付け制度とは異なり、評価制度はコモンズにおける各人の社会関係資本を格付けすることを目的とする。

「ソーシャル・レンディング」 – お金を借りたい人や組織とお金を借したい人や組織を、ネット上で直接つなぐサービス。

 

第15章 持続可能な「豊穣の角」

モノの交換価値やステイタスよりも、使用価値や経験価値にはるかに大きな関心を向ける
ミレニアルズ世代が増え続けている。この世代で物質主義的価値観が衰退してきているのは明らかで、さらに潤沢さが稀少性を凌駕していけば、明日への不安から少しでも多くのモノを手に入れようとする執拗なまでの衝動から、人間の気質のかなりの部分が解放される可能性が高い

「快楽の踏み車」 – どんなに富を手に入れても、人間はその状況に慣れてしまい、 願望を引き上げてもっともっととさらなる満足を求めてしまうという現象。

 

第16章 生物圏のライフスタイル

人類は、自己の枠を超えて社会的枠組みに後押しされ、社会関係資本を生み出してきた。ここで歩みを止めず、協働の精神を生物圏全体へと広げよう。生物はみな、生物圏全体の各生態系において、無数の共生関係や協働関係に深く根ざしており、そのシステム全体が適切に機能するためには、それぞれの部分が持続可能な関係を保つ必要がある

「共感するヒト(ホモ・エンパチクス)」 – 人類は、共感の意識こそが繁栄と幸福をもたらすことを本能的に理解している。今こそ、共感の対象や範囲を大きく変えるべきときではないか。

 

 

いかがですか。ものすごく壮大なスケールです。

全部を読むには難しさを感じる人は、全国の図書館に置かれている一冊だと思うので、気になった章だけを読んでみるのも良いかもしれません。

あるいは、ウェブで公開されている日本向けに巻末に加えられた特別章『岐路に立つ日本』をまず読んでみて、それから判断してもいいかもしれませんね。

 

 日本人は「限界費用ゼロ社会」を知らなすぎる – 文明評論家リフキンが描く衝撃の未来 

http://toyokeizai.net/articles/-/89717

 

Happy Collaboration!

 

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