寄稿

エンタープライズソーシャルは過去の成功体験上にあるのか?

当記事は2013年4月にin the looopに寄稿したものですが、元記事が削除されましたので転載します。


 

先週、エンタープライズソーシャルに関する興味深い調査と考察が米国Gartnerから発表されました。

『企業のソーシャル技術導入、成功率はわずか10%――ガートナー
世界1,000企業/組織対象の調査で明らかに。「目的の欠如」が最大の原因とガートナー』

記事内容を私なりに簡単にサマライズしてみます:

  1. 世界の70%の企業がソーシャル・コラボレーション技術を社内に取り入れたものの、わずか10%しか成功していない
  2. 失敗の多くは、技術やツールを導入するだけで、「後は運を天に任せるだけ」というアプローチのせい
  3. 成功への鍵は、企業/組織/社内ユーザーのそれぞれが取り組みの目的や価値、利点を理解し、社内の繋がりを促進すること

 

私は、自社であるIBMの社内ソーシャルウェアへの取り組みをリードする立場にあり、日々社内での実践を進めています。

また、IBM社内での経験や実例を教えて欲しいとご相談いただく機会も多く、そうした活動を通じて多くの企業におけるエンタープライズソーシャルの取り組みを見聞きし、ディスカッションをする機会に恵まれています。

こうした経験を踏まえて言えば、ガートナーの「成功率はわずか10%」という発表数値も、あながち大げさ過ぎるとは思いません。ただし、調査における「導入の定義」と「成功の定義」がどのようなものかには、いくらかの疑問も感じます。
(「導入」というのが、社内の極一部の部門やメンバーに対して、「無料ソーシャルウェアを使えるようにしたのでご自由にどうぞとアナウンスをした」というレベルのものも含まれていそうな気もします。)

 

また、ちょうどこのガートナーの調査結果が発表される前日には、in the looopに『エンタープライズソーシャルに必要な3つのインセンティブ』という、とても分かりやすくて共感できるすばらしい寄稿記事が掲載されました。

 

記事内容を私なりに簡単にサマライズしてみます:

エンタープライズソーシャルを成功させるには以下の3つが重要である。

  1. 社員の望ましいソーシャルな行為を喚起する環境を設計し
  2. 行動する上での迷いや面倒クササを排除して発生しないようにし
  3. 得する出来事を繰り返し経験させる

 

3つとも、これから社内ソーシャルに取り組む企業、あるいは現在取り組みを進めている企業に役立つとても実践的な内容だと思います。

ただ、1つだけどうしても気になってしまうことがあるのです。

そしてどうしても、敢えて一言を加えておきたいのです。

これで得られる成功は、エンタープライズソーシャルのもたらす価値の本質から見れば、おまけでしかないと。

 

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著者の前田さんが記事の冒頭に書かれています:

多くの場合ただ社内にゆるい繋がりをもたらしただけで、イノベーティブな創造には至らなかったというのがその典型です。しかし、たとえそこに予期せぬ結果や使われ方があったとしても…(略)…それは間違いなく企業としては利用すべきリソースであり、変化の激しい市場のリスクを減らす有効なオプションです。

 

きっとこれは、エンタープライズソーシャルの本質的価値が、効率性アップによる小改善の積み上げではないということを深く理解されているからだと思います。

もちろん、改善の積み上げは日常業務の中で大切な要素です。疑う余地はありません。

ただ、そこにエンタープライズソーシャルの意義を置いてしまっては、企業の未来は、過去の成功体験上に築かれた「従来の延長」に縛られてしまうのではないでしょうか。

 

エンタープライズソーシャルは、社内のコミュニケーションとコラボレーションを活性化することで、企業が永続的に社会に求められる存在となるためのイノベーションを孵化させるものです。

その成功には、ときに勇敢に、ときに柔軟に従来の延長線から離れて、新しい価値の提供や創造を目指して進む必要があることを、導入者や推進者は伝え続けるべきでしょう。

 

導入者や推進者の「エンタープライズソーシャルの効果って、まあこんなものでしょ」というシニカルな諦めは、必ず周囲に波及していきます。

推進者には、こうした点を強く意識し、日々の小さな改善だけに妥協することなく、根気強く社員との対話を続けるスタンスが求められます。

そしてそこから共感が生まれ、つながりやコミュニティーへと発展していくことで、社員のコミュニケーションやコラボレーションから「まだ形になっていなかった新たなもの」が表出化してくるでしょう。

そしてその「まだ表出化していないものを創り出す力」こそがソーシャル技術の最たる所以であり、従来の検索技術やナレッジ・マネージメントとの最大の違いではないでしょうか。

 

ちょっと青臭すぎますか? きれいごと過ぎますか?

でも、新しいものは青臭いところから生まれることが多いと思いませんか。きれいごとであってもきれいな方が良いとは思いませんか。

Happy Collaboration!

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