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Workplace Forms 技術概説

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レベル: 初級

新田 達也, WPLC & PvC ソリューション開発 Workplaceプロジェクト/ソフトウェア開発研究所 , IBM

2006年 6月 16日

現在フォームは、紙ベース、電子ベースを問わず多くのビジネスプロセスにおいて必要不可欠な要素になってきています。なぜならフォームはユーザーに一番近い部分にあるインターフェースにあたる部分であり、ユーザーから様々な情報を収集するのに用いられているからです。例えば購買申請のフォームを例にとると、「誰が」、「何を」、「いくつ」、「いつまでに」購入したいと考えていて「承認者は誰か」などといった情報が含まれることになります。これらの情報を基にして購買申請というビジネスプロセスが開始されることになります。つまりフォームは多くのビジネスプロセスの出発点ともいえるのです。そしてビジネスプロセスを効率的に回すには、出発点となるフォームが非常に重要な要素となります。

このようなフォームをベースとしたビジネスプロセスのフロントエンドのプレゼンテーション基盤として「IBM Workplace Forms」という製品が新たにIBM Workplace製品群に加わることになりました。2006年6月14日に国内でも発表された最新バージョンである 2.6 では初めて日本語に対応したほか、XFormsという標準仕様に基づいたXMLベースのフォームの作成、入力、設計、および配布を可能にします。さらにフォーム自身がXMLをベースとしているため、Webサービスなどを経由して他システムと連携するのも容易になっています。例えばWorkplace Forms で作成したフォームをサーバー側で必要な部分だけ抽出してワークフローエンジンに渡して連携する、といった一連の処理を自動的に行うことが可能になります。

本稿では初めに IBM Workplace Forms 2.6 の位置付けと製品を構成するコンポーネントおよび機能の概要を紹介し、次にWorkplace Formsで採用されているフォームの構造およびXFormsやXFDL といった技術、あるいは他システムとの連携に関して解説します。

IBM Workplace Forms の位置づけ

IBM は 2005年7月にカナダのPureEdge 社を買収しました。PureEdge は もともとWorkplace Forms の前身となる電子フォーム製品を開発・販売していましたが、IBM によって買収されたことによって 製品もIBM Workplace Forms と名前を変え、標準技術への対応や機能拡張、マルチプラットフォーム対応や多言語対応など数多くの機能拡張が行われました。日本語にも今回発表されたバージョン2.6 から対応しています。

ところで、紙ベースのフォームが使われている企業はまだ多いと思いますが、Workplace Forms を採用し、それらの紙のフォームを電子化すると様々なメリットがあります。例えば、Workplace Formsには複雑なフォームの入力を支援する各種機能が提供されているので、誤入力をフォーム記入時に検出することで、紙ベースのものよりも効率的な承認処理ができるようになるでしょう。しかしフォームの入力や作成を簡単にするためだけに電子化するというのでは、Workplace Forms を適用するメリットの半分も享受していません。Workplace Forms が真価を発揮するのは、そのフォームのフォーマットが標準規格に準拠したXMLである、という点に着目したときです。XMLであれば、Webサービスなどとの親和性も高いので、様々なバックエンドシステムとの連携が容易になります。また提供されている API を用いることで、XMLのフォーム内から必要な部分だけを切り出して、ワークフローエンジンに渡すといったデータの加工も容易に実現できます。このようにWorkplace Forms は既存のシステム、製品、ソリューションと連携して適用することで、より高い価値を生み出す可能性を秘めた製品なのです。




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IBM Workplace Forms を構成するコンポーネントと機能概要

Workplace Forms は3つの独立した製品として提供されるコンポーネントから構成されています。ここではWorkplace Forms を構成する3つのコンポーネントについて紹介します。またそれぞれのコンポーネントに関して機能の概要を説明します。

Workplace Forms Viewer

XML ベースの電子帳票である Workplace Forms のフォームの表現、管理、データの入力、統合、電子署名、送信などを行うためのクライアントです(図1)。Windows 上のスタンドアローンアプリケーションと、Web ブラウザベースのアプリケーションの2種類が提供され、業務プロセスのフロントエンドを担います。フォームを表示してデータを入力可能にするのはもちろんですが、数値しか入力できないフィールドに数値以外のものを入れたときに警告するなどといったデータの妥当性チェック、またあるフィールドに値が入力されるまで別の特定のフィールドを入力不可にするというような条件判定による表示の制御、入力項目が多くて複雑な場合に手順を追って入力を促すウィザードによる入力支援機能など、リッチなユーザーインターフェースを提供します。


図1. Workplace Forms Viewer の画面
図1. Workplace Forms Viewer の画面

Workplace Forms Designer

XML ベースの電子帳票を既存の紙ベースのものと同じレイアウトにするなど1ピクセル単位の正確なレイアウトも容易な操作で実現する WYSIWYG デザイン環境、ウィザード形式の入力支援画面の作成、入力値のチェックなどのビジネスロジックの実装といった電子帳票を実装する上で必要となる強力な機能を提供するデザインツールです(図2)。いままでフォームをデザインする際には、JSPやJavaScriptなどを駆使しても思いどおりのデザインを実現するのは困難でした。しかし、Forms Designerを使えば、ドラッグ&ドロップによる部品の配置はもちろんのこと、ピクセル単位のフィールドの位置調整をも行うことができるので、直感的に思いどおりのデザインを行うことが可能です。また、既存の紙ベースのフォームをスキャナで取り込んで背景画像として使用することもできますので、その上にトレースするようにフィールドを配置することで、従来のフォームを容易に電子化することもできます。このようにForms Designer はより柔軟で使い勝手のよいフォームのデザイン環境を提供しています。なお、Forms Designer はバージョン2.6からEclipse 3.1上のアプリケーションとして実装されています。


図2. Workplace Forms Designer の画面
図2. Workplace Forms Designer の画面

Workplace Forms Server

Workplace Forms Serverはサーバーサイドで利用される3つのサブコンポーネントで構成されていて、これらをまとめてWorkplace Forms Server と呼んでいます。

  • API

    電子帳票アプリケーションを開発する際に必要となる API を提供します。API にはフォームのデータをサーバーサイドのアプリケーションと連携可能にするためのオープンなインターフェースも含まれています。API を使うことで、XMLパーサーなどを使用せずに容易に、フォーム内のデータインスタンスだけを取得するというようなことが可能になります。

  • WebForms Server

    XML ベースの電子帳票である Workplace Forms のフォームをリアルタイムで HTML や JavaScript に変換し、標準的な Web ブラウザ上に フォームとして表現することを可能とするサーバーサイドのコンポーネントです。専用の Forms Viewer をインストールしなくても、フォームのデータを Web ブラウザから参照して、値を入力することを可能にします。

  • Deployment Server

    Workplace Forms を使って業務を行う際に必要となる Forms Viewer や実際のフォームのデータをユーザーに動的に配布するための仕組みを提供するサーバーコンポーネントです。




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フォームの構造と XForms/XFDL

Workplace Forms のフォームでは、電子フォームに必要とされる様々な機能を一つのフォーム内で実現しています。ここではそれらを5つのレイヤーに分けて説明します。

  1. プレゼンテーションレイヤー

    プレゼンテーションレイヤーは、フォームの表示や入力に関する部分に相当します。従来のフォーム設計では難しかったピクセル単位でのレイアウト調整を可能にしています。また、最終的に表示する画面とデータ入力時の画面を別のレイアウトにしたり、ウィザード形式での入力支援機能を提供したり、入力値に応じてダイナミックに表示を切り替えたりすることで、効率的なデータ入力と表示を行うことを可能としています。

  2. ビジネスロジック

    ビジネスロジックは、フォームの内部にプロセスを実装することを可能にします。例えば、入力された値やユーザーの属性、連携先のビジネスプロセスから参照した値などに応じてフォームの表示や動作を制御したりすることが可能です。またWebサービスから参照した値をフォームへのインプットとして使うこともできますので、他のビジネスプロセスやシステムとの連携も容易に実現できます。

  3. データインスタンス

    W3Cで定義されている標準規格である XForms 1.0に準拠した形でデータを保管します。また、複数のXMLが統合可能なほか、外部のXML スキーマをデータインスタンスとして採用することもできます。

  4. ファイル添付

    フォームに関連する外部ファイルを添付することが可能です。添付できるファイルの種類としてはMicrosoft Office 書類をはじめ、画像、動画、PDF書類など多岐にわたります。この部分は後述するXFDL というXForms を拡張したスキーマで実装しています。

  5. 電子署名

    フォームに電子署名を付加することが可能です。これによってフォーム内の値の改ざん防止を実現し、対監査性を確保しています。またフォーム全体への署名だけでなく、フォームの一部の領域への署名や、一つのフォームに対して複数の署名を挿入することもできます。これによって、例えばワークフローと組み合わせた場合に、ある申請書に対して複数の承認者がいた場合、それぞれが電子署名を挿入する、ということが実現できます。さらに電子署名には認証局が発行した証明書を使用することも可能です。

ところで、XForms はオープンスタンダードな Web 上でフォームを表現するための規格であり、XML のデータスキーマの上に帳票に必要となるルールやユーザーインターフェースのアブストラクションだけを提供し、さらに帳票データを扱うために必要となるモデルを定義したものです。ここで述べている「ユーザーインターフェースのアブストラクションだけを提供し」というところに注目してみると、実はXForms 単体では動くようにはできていないということが読み取れます。つまり、「XForms には表示のためのコンポーネントは用意されておらず、アブストラクションだけを標準として定義するから、あとはそれぞれ拡張して表示の部分を担ってくださいね」ということなのです。Workplace Forms では、その表示の部分を担うのと、ファイル添付、電子署名といった機能を実現するために、XFDL という XForms を拡張したスキーマを定義しています。こうすることで、XForms 自体は他のシステムとの互換性に優れ、高い柔軟性をもつ仕組みを提供しているのです。

ではXForms を採用することで得られるユーザーにとってのバリューは何なのでしょうか?

1点目として異なるアプリケーション間での互換性が挙げられます。ビジネスプロセスにおいては、役割や権限に応じて帳票を扱う際のデバイスや言語、プロセスなどが異なりますが、そういった環境でもデータの互換性を実現することができます。

2点目として、業界ごとの標準的なトランザクションにも対応可能というバリューです。XForms は業界に特化したスキーマやルール、ユーザーインターフェースなどに柔軟に対応できます。

次に3点目として、帳票開発のコスト削減があります。XForms では帳票を開発する際に、再利用可能な帳票のコンポーネントを提供することができるので、それらを組み合わせることで一から開発するよりもコストを抑えて開発することができます。

そして最後に4点目として、SOAのシステムとの高い親和性があげられます。XForms ではデータプロセッシングモデルと定義済みのルールやWebサービスによってコンテンツを動的に提供することが可能です。




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他システムとの連携

ここではXForms を他のシステムと連携させる例を二つ紹介します。冒頭で述べたように、Workplace Forms の真価は他のシステムやソリューションと組み合わせたときに発揮されます。

まず一つ目は、Workplace Forms と ワークフローシステム、およびRDBMSを組み合わせた承認システムの例です(図3)。まず、専用クライアントやブラウザクライアント上で入力されたフォームがサーバーに送信されます。アプリケーションサーバー側にはサーブレットが用意されており、送信されたフォームを受け取ります。次に、サーブレット内でフォームの中から必要となるデータインスタンスだけを Workplace Forms Server API で取得し、XMLという形でワークフローエンジンに渡します。同時にフォーム自体に関しては、RDBMS にそのまま保存するようにします。

このシステムでのWorkplace Forms適用のメリットは、ワークフローエンジンにもRDBMSにも同じXMLフォームデータを使い回すことができるということです。ワークフローエンジンに渡すときには、APIを使って若干加工していますが、大きな手間はかかりません。


図3. Workplace Forms とワークフローおよびRDBMS との連携
図3. Workplace Forms とワークフローおよびRDBMS との連携

二つ目は、Workplace Forms と メールサーバーを使った購買システムの例です(図4)。クライアントは最初にWorkplace Forms Deployment Server にアクセスして、Forms Viewer を配布してもらいます。さらにメールで送られてきた購入申込書を Forms Viewer で開いて入力して、メールサーバーに送信します。メールサーバーでは、受け取ったメールからXMLフォームの必要な部分だけを取り出してXMLとして受付システムに渡します。同時にまた別の必要な部分を取り出して購買システムに渡します。

このシステムでは、Deployment サーバーを利用することで必要なユーザーに動的にForms Viewer を配布することができるという点や、受付システムと購買システムで使用されるXMLデータの元はやはり一つのXMLフォームであるという点がメリットとしてあげられます。


図4. Workplace Forms とメールサーバーを連携した購買システム
図4. Workplace Forms とメールサーバーを連携した購買システム



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まとめ

本稿ではWorkplace Forms の位置付けから、構成するコンポーネントと機能概要、使用されている技術と他システムとの連携までを解説してきました。

Workplace Forms を適用することによって享受できるバリューを一言でいうと、「フォームを XML のオブジェクトとして扱うことが可能になる」ことだといえると思います。具体的な価値をまとめてみると以下のようになります。

  • プレゼンテーション、ロジックおよびデータを 単一のXMLファイルとして扱うことが可能
  • フォームの保存やオフラインでの使用が可能
  • フォームを様々なプロトコルで転送することが可能 (例: workflow、web、email、FTP)
  • フォームをデータベースやコンテンツ管理アプリケーションでアーカイブ可能
  • フォームに初期データの入力が可能、またフォームからデータのみの抽出が可能
  • 入力データの信頼性を保障するためにフォームに電子署名の挿入が可能
  • Notes/Domino といった他のテクノロジーとの統合
  • フォームのライフサイクルに応じて必要な部分のみをパースすることが可能

W3C 標準のXForms に準拠したWorkplace Forms を適用することで、互換性や柔軟性を保ったまま、すでに運用されている様々なバックエンドシステムと容易につながり、新たな価値を創出することが可能になります。フォームに多少でも関係するソリューションやアプリケーションを開発あるいはお使いの皆様は、是非Workplace Forms を組み合わせていただき、その価値をわかっていただけたらと思います。



参考文献



著者について

新田 達也はソフトウェア開発研究所、WPLC & PvC ソリューション開発、Workplaceチームに属し、IBM Workplace 製品群に対応したアプリケーションの開発に取り組んでいる ISV/BP様に対する技術支援を行っています。以前は、WindowsおよびMac OS のNotes/Domino日本語版の開発、Domino Web Access開発、Domino Webアプリケーションの開発、Workplaceアプリケーション開発を行っていました。最近のマイブームは通勤中に脳トレで老いた脳を鍛えることと、「Prison Break」を見ることです。今はワールドカップで寝不足ですが、秋は24 Season5 でまた寝不足の予感です。




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