IBM Service Delivery Manager(以下ISDM)は、ビジネス・サービスの提供を自動化すると共に、クラウドにおけるリソース・モニター機能とコスト管理機能を提供するクラウド・コンピューティングで必要な管理基盤ソリューションです。Tivoli Service Automation ManagerやIBM Tivoli Monitoringをはじめとするソフトウェア製品をプリパッケージしているため、複雑な導入構成手順を踏まずにクラウド・サービスを実現することができます。
ここでは、ISDMのパッケージ内容や導入構成手順の概要について紹介します。
IBM Service Delivery Manager(ISDM)とは
ISDMは、仮想化環境の管理を自動化したクラウド・ソリューションの環境構築とライフサイクル管理を実現すべく、Tivoli製品群を中心に構成済みソフトウェアをパッケージ化したサービス管理のための基盤製品です。デプロイメントを容易にするために仮想マシンをセットとしたソフトウェア・アプライアンスとして提供されています。一方、IBM CloudBurst (ICB) はISDM と同じ基本ソフトウェア機能で構成されていますが、ハードウェアからさらに導入サービスまでを一つのパッケージ・ソリューションとして提供するハードウェア・アプライアンスであるという点が異なります。ISDMは、ハードウェア・プラットフォームを自由に選択できるため、既存環境を活かした導入によって、ハードウェア資産を効率化することが可能です。
ISDMやICBのクラウド・サービスの自動化の中核を担う製品として位置付けられているのは、Tivoli Service Automation Manager(以下、TivSAM)です。ISDMやICBでは、仮想VMであるSuSE Linux環境でTivSAMを稼動させますが、TivSAMはRedHat LinuxやAIXなど、複数のオペレーティングシステムをサポートし、またVM環境だけでなく実機上への導入も可能です。
図1にあるように、ICB,ISDM,TivSAMはいずれも包含関係にあり、ICB V2.1はISDM V7.2.1の提供するソフトウェア機能を兼ね備え、ISDM V7.2.1は導入、構成済みのTivSAM V7.2.1.1をパッケージしているため、TivSAMが提供するすべての機能を使用することができます。そのため、TivSAMを中心としたクラウド・サービスを採用する際、ハードウェアを含む全ての環境を新規に構築する場合にはICB、オペレーティングシステムを含む全てのソフトウェア部分を新規に構築する場合にはISDM、分散システム環境など、ISDMやICBとは異なるシステム構成を使用する場合にはTivSAMを利用することが推奨されます。
図 1. TivSAM/ISDM/ICBの関係
ISDM V7.2.1では、クラウド・サービスとして仮想化リソースを管理、提供するだけではなく、サービスのライフサイクルを管理するために、システムの可視化、コントロール化、そして自動化を実現するため、SUSE Linux上で稼動する自動化サービス、ファイルリポジトリ、リソース・プロセス、使用量・課金制度レポートの4種類の機能を提供しています。各仮想イメージが構成するソフトウェア製品、およびサービスコンポーネントは図2のようになっています。
図 2. ISDMパッケージ内容詳細
自動化サービスを行う仮想イメージの中心となるのはTivSAMで、クラウド・ユーザの管理や、使用するシステムやソフトウェアの自動的な環境セットアップ、解除等をITILの概念に基づいて一元管理することができます。自動化や管理の対象となるのはハードウェア、ネットワーク、OS、ミドルウェア、アプリケーションレベルのソフトウェアなどです。
ISDMではTivSAM本体が稼動する環境はVMWare上のSuSE Linuxの環境に限られますが、管理対象となるリソース・プールはVMWareに限定されず、zLPAR, KVM, pLPAR等、TivSAMでサポートされる他のハイパーバイザーによる仮想化も可能です。詳しくは、TivSAMの製品マニュアルをご参照ください。
ISDMで提供するクラウド環境のリソースやプロセスの監視は、IBM Tivoli Monitoring(以下、ITM)を用いて行っています。ITMはOSやアプリケーションの監視を行うソフトウェアで、性能管理・予測からアラート発信なども行います。また、リアルタイムデータや性能履歴データを可視化することで、リソースの確認やレポート作成を容易に行うことができます。
ユーザのリソース使用量に応じた課金制度などはTivoli Usage and Accounting Manager(以下、TUAM) によって実現しています。TUAMはIT システム・リソースの使用量に基づいた課金機能を提供するコスト管理ソフトウェアです。 TivSAMを中心に提供しているリソースの使用率とコストを正確に計測、分析、レポート作成、および請求を行うことができるため、ITインフラストラクチャのコストを決定することができます。 収集された使用量に関するデータからレポートを作成し、サービスの請求書作成発行なども行うことができます。
NFSサーバとSAMBA サーバを使用し、自動化サービスのファイル・リポジトリとして機能します。また、メールサーバによって自動化サービスの通知機能を実現します。さらにWebサーバによって、同一アドレスへのアクセスに対して自動化サービスのサービス要求・管理・レポート機能のWebインタフェースへのリダイレクトを行い、他の仮想イメージのアドレスをマスキングし、ユーザからのアクセスを容易にします。
ISDMでは、4種類6個の仮想イメージを提供し、図3に示すような相互作用によってクラウド・サービスを実現しています。図示された相互関係性は出荷時に構成され、搭載されているため、導入後にユーザが構成を行う必要はありません。また、各仮想イメージはそれぞれ独立しているため、全てのイメージを必ずしも使用する必要はなく、用途に応じて個別に導入、使用することもできます。
さらに、ISDMではTivSAMとNFSに対してスタンバイ用のイメージを合わせて提供しているため、Tivoli Service Automation(TSA)によるデュアル・ノードの高可用性を実現することができます。
図 3. 各機能の関係性
- TUAM_image は TivSAM_image から使用量算出に必要なデータをインポートし、TivSAM_image はレポート作成時にTUAM_imageに接続します。
- TivSAM_image上の ITM エージェントはITM_image上のITM サーバに監視データを送ります。
- TivSAM_image上のTivSAMはプロビジョニング実行時にNFS_image上のファイル・リポジトリのソフトウェアやバイナリを使い、NFS_imageはTivSAMのセルフサービス・ポータルのインタフェースとプロビジョニング管理者のインタフェースをリダイレクトします。
- TUAM_image上のITM エージェントはITM_image上のITM サーバに監視データを送ります。
- NFS_imageはTUAM_image上のTUAMのユーザーインタフェースをリダイレクトします。
- NFS-HA_image上のITM エージェントはITM_image上のITMサーバに監視データを送ります。
- NFS_image上のITM エージェントはITM_image上のITMサーバに監視データを送ります。
- 高可用性構成では、TSAが常時 NFS_image と NFS-HA_image 間で情報を交換し故障時に備えます。
- TivSAM-HA_image上のITMエージェントはITM_image上のITMサーバに監視データを送ります。
- 高可用性構成では、TSAが常時TivSAM_imageとTivSAM-HA_image間で情報を交換し故障時に備えます。
- TivSAM_image はハイパーバイザーにより仮想化されたクラウド環境のサーバのリソースを管理します。
- 仮想化されたクラウド環境のサーバ上の ITM エージェントは ITM_image上のITM サーバに監視データを送ります。
ISDM V7.2.1の導入にあたって必要なシステム要件は以下の通りです。
ハードウェア
- x86 サーバ (64ビット)
- FC SAN & イーサネット・スイッチング・ネットワーク
- FC、SAS、SATAなどからなるストレージ
ハイパーバイザー
- VMWare vSphere 4.0 Update1 または4.1
また、それぞれの仮想イメージの導入には下記のリソース容量が必要です。
表 1. 各仮想イメージが必要とするリソース容量
| 仮想イメージ | プロセッサー数 | ディスク空間 (GB) | メモリー (GB) |
|---|---|---|---|
| TivSAM_image | 4 | 125 | 12 |
| TivSAM-HA_image(注) | 4 | 125 | 12 |
| ITM_image | 2 | 20 | 4 |
| TUAM_image | 2 | 14 | 4 |
| NFS_image | 2 | 19 | 2 |
| NFS-HA_image(注) | 2 | 19 | 2 |
(注) デュアル・ノードの高可用性を実現する際には、RAWデバイスディスク用にストレージ内の2つのLUN(一方は最小5GB 、もう一方は最小100 GB)を予約する必要があります。
ISDMを活動化し、クラウド・システムを使用可能にするためには、図4に示す手順で提供された仮想イメージをVMWare上に構成し、サービスを始動させる必要があります。
図 4. ISDMの構成イメージ
- 提供されたランチパッドを用いてホスト名やIPアドレス、ユーザーパスワード、VMWare Virtual Centerのアクセス情報など、必要なパラメーターを設定し、各仮想イメージに対する構成ファイルを作成します。(ovf-env.xml)
- 構成ファイルとVMWareのSSL証明書を含むISOファイルを作成し、提供された仮想イメージとともに同一のVMWare上にインポートした後、各仮想イメージにISOファイルをマウントし、起動します。
- 各仮想イメージ上のService Connection Engineが相互に情報を交換し、各仮想イメージが連携して稼動するように自動的に構成します。構成後、各仮想イメージを起動し、TivSAMの管理対象となるクラウド・リソースの設定を行うことで、自動化サービスを開始することができます。
このように、各仮想イメージ内のソフトウェアの連携に必要な詳細設定を個別に行うことなく、仮想イメージの活動化の一連の作業のみによって、クラウド管理・運用のための機能を使用することができるようになります。各仮想イメージ間の機能の接続を自動的に構成するService Connection Engineは、仮想イメージの最初の起動の際自動で動き出すように設定されていますが、vEngine.shコマンドによって後から呼び出すことも可能です。コマンドの詳細については、ISDMの製品マニュアルをご参照ください。
各仮想イメージの初期構成は英語環境ですが、稼動OSであるSuSE Linuxには各国語環境が含まれており、システム環境やブラウザの言語環境を日本語に変更することも可能です。また、各仮想イメージを活動化した後、必要に応じてtsamLanguage.shというスクリプトを実行することにより、図5のようにTivSAMを日本語に切り替えることができ、ユーザごとに日本語、英語、中国語などといった複数言語対応の多言語システムにすることも可能です。
図 5. 日本語版TivSAM 画面例
今回は、IBM Service Delivery Manager(ISDM)を使用してクラウド・システムを構築するために、パッケージ内容とその概要、そして導入、構成手順について紹介しました。ISDMとICB、TivSAMはいずれもクラウドに必要なサービス・マネージメント機能を提供しますが、製品の特徴を踏まえて、お客様の環境に最も適したソリューションを選択することができます。初期設定は英語環境になっていますが、日本語環境に切り替えて使用することも可能です。ISDMは、すでに統合、構成済みのソフトウェアを利用し、迅速にクラウド・システムの構築を希望するお客様に適したソリューションです。
- ISDM V7.2.1マニュアル
- TivSAM V7.2.1.1マニュアル
- IBM Cloud Burst (ICB)
- IBM Tivoli Monitoring(ITM)
- Tivoli Usage and Accounting Manager(TUAM)
- IBM Http Server (IHS)
- Tivoli System Automation for Multiplatforms (TSA)
- XEN Server
- Red Hat Enterprise Linux 5.4 with KVM
- VMWare Vspher Hypervisor
藤原 弥生(ふじわら やよい)
日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア開発研究所 Tivoliテクノロジー開発部門所属。
システム管理を中心とするTivoli製品のサービスやソリューション開発、国際化検証テストなどに従事し、現在、ISDMなど、サービス・マネジメント製品の品質検証を担当。