Maximo シリーズ: Part 3 - Maximo Query

Maximo が持つクエリー・検索機能について紹介します

Maximo Base Service (以下 Maximo) *1 は Maximo Asset Management だけでなく、2008 年 5 月にリリースされた IBM Tivoli ブランド IBM Service Management (以下 ISM) 製品群の基礎となるフレームワークです。

Maximo がフレームワークとして提供する機能の一つに、Maximo 上で作成されたさまざまなビジネス・オブジェクトを、クエリーを用いて自由に検索する機能があります。Maximo Asset Management 等の資産管理製品や ISM 製品群では製品が利用される場面は大きく異なりますが、このクエリー機能はどの場合でも共通して使用されます。クエリーは検索だけでなくその他の様々な機能でも使用され、ユーザーが業務を効率的に進めていく上で必須の機能です。

赤松 猛, Tivoli 開発 / ソフトウェア開発研究所, IBM

赤松 猛(あかまつ たけし) 日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア開発研究所 Tivoli開発 Tivoli AC & 先進技術推進
2003年4月入社。Maximo Enterprise Asset Managementを担当するセールスエンジニアとしてソフトウェア開発研究所からTivoli事業部へ出向し、Maximo関連のビジネスの立ち上げに従事した後、 WW Tivoli SWAT Teamの一員としてMaximo関連製品をはじめとしてISM製品群を担当している。IBMではこの他に、Tivoli Application Dependency Discovery Manager(TADDM)の国際化、Discovery Library Adapter(DLA)開発、Tivoli製品全般の国際化検証テスト・マルチバイト文字環境での統合テストを担当してきた。趣味はスキーで、SAJ公認正指導員の資格を持ち、シーズン中はIBM SKI部にて強化指定選手および講師として活動している。また、最近はウィンドサーフィンを始め毎週末海に通っている。



西村 康孝, Tivoli 開発 / ソフトウェア開発研究所, IBM

西村 康孝(にしむら やすたか)
日本アイ・ビー・エム、ソフトウェア開発研究所に所属。2006年,日本IBM入社。以来,ソフトウェア開発研究所にてシステム管理製品のソリューション開発に従事。現在はTivoli第一開発にてサービス・マネジメント製品とアセット・マネジメント製品の品質検証を担当。



青山 希, Tivoli 開発 / ソフトウェア開発研究所, IBM

青山 希(あおやま のぞむ) 日本アイ・ビー・エムのソフトウェア開発研究所に勤務。
オートノミック・コンピューティング関連のソリューション開発、Tivoli製品の品質検証などに従事。現在は、ワールドワイドの開発拠点と協業で、Maximo関連製品の品質検証を行っている。2006年から慶應義塾大学総合政策学部にて非常勤講師としてコンピューター・シミュレーションに関する講義を担当している。



2009年 1月 30日

はじめに

Maximo は Maximo Asset Management/Tivoli Asset Management for IT/Tivoli Service Request Manager/その他各種 ISM 製品の基本となるフレームワークです。このフレームワークに組み込まれ、様々な業務アプリケーションから使用される機能の 1 つにクエリー機能があります。

ユーザーは自由にクエリーを作成することができます。一度作成したクエリーを保存し、クエリーを切り替えることによりユーザーは自分の見たい情報をすぐに得ることが可能になります。図 1 は一覧画面での詳細検索画面と検索結果の例です。

図 1. 一覧画面

また、クエリーは検索機能に用いられるだけでなく、Maximo の様々な場面で使用されます。今後紹介する KPI (Key Performance Indicator : 主要業績評価指標) やスタートセンターの結果セット、クロスオーバードメイン・データベースの関連やビュー・セキュリティー等で使用される条件式、ワークフローなどといったようにいろいろな用途で使用されます。ここでは検索機能に主眼をおいてクエリーを紹介しますが、使用できる機能はどこでも同じです。検索を通して Maximo のクエリーを学ぶことで、その他の場面でのクエリーの使用に役立ててください。


検索機能

Maximo シリーズ Part1 – Maximo Basic で紹介したようにテーブルの各項目はそれぞれフィルター機能を持たすことが可能です。テーブルに配置されている殆どの項目はフィルター機能を備えています。検索したい項目を使用してデータを自由に絞り込むことができます。このフィルター機能は、一覧画面のテーブルだけでなく、Maximo のテーブルの共通機能です。アプリケーションの他の画面やセクション、ダイアログ等テーブルが表示されている場所では共通に使用することができます。

図 2 にてテーブルでの項目毎の絞り込みの様子が確認できます。

図 2. 項目による絞り込み

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図 2. 項目による絞り込み

フィルター機能が使用できるのはテーブルに表示されている項目に限定されます。テーブルをテーラリング*2 にて作成する場合は項目の選択を配慮しておくことが必要です。テーブルに表示されていない項目は表示できないだけでなく、テーブル単体としてはフィルター条件に加えることもできません。

テーブルでは、フィルターによる絞り込みだけでなく、フィルターに使用されている各項目をクリックすることにより昇順・降順のソートを行うことができます。


クエリー機能

Maximo 上のアプリケーションはほとんど一覧画面を持っています。一覧画面はテーブルが配置されており、このテーブルは前述の通りフィルターやソートの機能を持っています。一覧画面では、テーブルの機能であるフィルターの結果をクエリーとして保存することが可能です。保存されたクエリーは再度呼び出すことができます。図 3 は一覧画面でのクエリーの様子です。

図 3. クエリー

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図 3. クエリー

クエリーは SQL の Where 文節として保存されていますので、ここを編集してさらに高度な検索を実行させることもできます。

図 4. クエリーの編集

保存されたクエリーは各アプリケーションで使用できるだけでなく、スタートセンターの結果セットで使用できます。スタートセンターでの結果セット・クエリーの使用に関しては、このシリーズにて今後紹介していきます。


クエリーの作成

一覧画面のテーブルは、Maximo のアプリケーションに存在する他のテーブルと一見同じですが、大きく異なる点があります。それが詳細検索やクエリーの保存です。

一覧画面ではフィルター以外の項目で検索を行う場合は、詳細検索ダイアログを使用することができます。詳細検索ダイアログでは、一覧画面で表示されていない項目を使用して検索を行うことができます。こちらも一覧画面やテーブルと同様でテーラリングを使用して作成・変更する場合は、どの項目を使用するか十分な設計が必要です。図 5 は資産アプリケーション標準の詳細検索画面です。

図 5. 詳細検索

クエリーの確認

フィルターや詳細検索機能を使用する事により、ユーザーはデータを大きな自由度を持って絞り込むことができます。絞り込みに使用した条件は、SQL 分の Where 節として確認することができます。

図 6. 詳細検索

この Where 節では、クエリーがどのように Maximo 上で表現されているのか確認することができます。

図 6 の Where 節を見ると、絞り込みの条件は通常は部分一致となり、’=’をつけると完全一致での検索になることがわかります。この他、’%’を前後につけることにより前方一致や後方一致で検索できます。例えば、”%AAA”とすれば AAA の後方一致検索になります。”BBB%”とすれば、これは BBB の前方一致検索になります。つまり、’%’が n 文字のワイルドカードとして機能します。’%’の他に、’*’も n 文字のワイルドカードとして機能します。

”A%B”とすることにより、’A’で始まり’B’でおわる文字列の検索が行えます。また、単一文字のワイルドカードは、’_’または’?’です。

”NULL”を使用する場合は、”~NULL~”とし NULL 以外を表現するときは、”!= ~NULL~”とします。

保存される Where 節では、上記の指定は部分一致・前方一致・後方一致は”like”を使って実現されていることが確認できます。”~NULL~”や”!= ~NULL~”は Where 節ではそれぞれ”is null”や”is not null”として表現されます。

コンマ’,’を使用することで複数の値を 1 つのフィールドに入力することができます。この場合、コンマは’or’演算子として機能します。

図 7. 各種の検索方法と Where 文節での表現

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図 7. 各種の検索方法と Where 文節での表現

クエリーの保存・編集

絞り込みに使用した条件はクエリーとして名前を付けて保存することが可能です。クエリーとして保存することにより、毎回条件を設定せずにリストから呼び出すことができます。

クエリーは、クエリーの保存ボタンにて保存ができます。保存する際にはクエリーをパブリックを選択して公開する設定とデフォルトとするかを選択できます。公開とした場合は、作成したユーザー以外も同じクエリーが使用できます。また、デフォルトとした場合は、一覧画面を開いた際に選択したクエリーが自動で実行されます。

図 8. クエリーの保存

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図 8. クエリーの保存

保存したクエリーは、クエリーの管理で編集や削除が行えます。フィルターや詳細検索ダイアログでは設定できない条件はクエリーの編集にて追加することができます。クエリーとして保存されている条件はすべて SQL 文の Where 節として保存されています。編集ではこの Where 節の内容を自在に追加・変更することができます。

図 9. クエリーの管理

高度なクエリーの作成

Where 文節に関数や Maximo のキーワードを使用して、フィルターや詳細検索では設定できない動的な内容を指定することができます。現在のログイン・ユーザーや現在日時を指定することによって、共通のクエリーをユーザー毎に使用可能にすることや、日時を使用して動的に範囲を絞り扱くことができます。

フィルターや詳細検索では使用できない関数を使用して作業指示書からサイトが BEDFORD でかつ作業タイプが PM で前後一ヶ月の自分の作業指示書を選択するクエリーを作成してみます。

最初に、サイトと作業タイプを詳細検索で指定します。作成したクエリーを保存します。

図 10. クエリーの作成

ここで作成したクエリーを呼び出し、Where 節を編集します。今回条件の内、フィルターや詳細検索で表現できない部分は” 前後一ヶ月の自分の作業指示書”という条件です。ここではこれを SQL で表現していきます。

自分というのは Maximo のクエリーでは、”:&personid&”で表現できます。また、現在の日付は SQL の関数が使用可能で、”CURRENT DATE” (DB2 の場合、その他の多くの DB Server では CURRENT_DATE) で表現されます。

よって、” 前後一ヶ月の自分の作業指示書”という条件は、” reportedby = : &personid& and date(targstartdate) >= (CURRENT DATE - 1 MONTH) and date(targstartdate) <= (CURRENT DATE + 1 MONTH)”となります。この Where 節では、作業指示書の項目に”reportedby”と”targstartdate”を使用する条件の対象として使用しました。”reportedby”は報告者、”targstartdate”は開始目標で、それぞれ作業指示書テーブルのカラムです。編集した結果は以下の通りです。

図 11. 編集した検索条件
図 12. クエリーの結果

ここまでで分かるように高度なクエリーの作成には Maximo のデータ構造の理解が必要不可欠です。

Maximo のデータ構造は、シリーズ Part 1 で紹介したように一般に公開されており、さらに Maximo ユーザーであれば Maximo から参照可能です。図 13 の様に項目を選択して、Alt+F1 にて項目の説明がポップアップで表示されます。また、データベースの構成アプリケーションはそれ自体がデータベースの構造・テーブル間の関連を表現しています。

図 13. フィールドヘルプ
図 13. フィールドヘルプ

クエリーで使用できる機能

今回作成したクエリーでは、:&personid&という Maximo の置換変数機能を使用しましたが、置換変数は:&personid&以外にもあります。Table 1 は Maximo で使用できる置換変数の一覧です。

Table 1 置換変数
構文表現する値説明
:yestrueデータベースに保管されている場合、論理的に true、1
:nofalseデータベースに保管されている場合、論理的に false、0
:&date&現在の日付
:&datetime&現在の日時
:&username&ログイン・ユーザー例えば、ユーザーが Smith としてサインインしている場合、:ownerid=:&user& は :ownerid='SMITH'に変換されます。
:&personid&ログインの個人 ID例えば、ユーザーが Smith としてサインインしている場合、:reportedby=:&personid& は:reportedby='SMITH' に変換されます。
:&appname&アプリケーション名例えば、作業指示書管理アプリケーションで、':&appname& = WOTRACK'は、'WOTRACK = WOTRACK' のように変換されます。この変数は、アプリケーションの異なるコピーに対して異なる動作を設定する場合に便利です。
:&mboname&現行ビジネス・オブジェクトの名前例えば、作業指示書オブジェクト内で、'object = :&mboname&'は、'object = WORKORDER' のように変換されます。
:&ownername&オーナー・ビジネス・オブジェクトの名前例えば、作業指示書管理アプリケーションで、:&owner&.jobplan.priority>&owner&.priority は、workorder.jobplan.priority>workorder.priority のように変換されます。

置換変数の他にバインド変数という機能があります。バインド変数を使用して、ビジネス・オブジェクトに関連付けられたリレーションを使用して値を得ることが可能です。Table 2 はバインド変数で使用可能な一覧です。

Table 2 バインド変数
構文表現する値
:<relationshipname>.<attrname>現行ビジネス・オブジェクトにリレーション<relationshipname>により結びつけられたビジネス・オブジェクトの属性値:location.description
:&owner&.<attrname>オーナー・ビジネス・オブジェクトの属性値作業標準を作業指示書に適用すると、システムは作業標準の優先度を下位階層の作業指示書にコピーします。条件は、以下のように設定できます。
:&owner&.jobplan.priority>:&owner&.priority
この例では、作業標準が上位階層の作業指示書より高い優先度を持っている場合、システムはこの情報をコピーします。
:&owner&.<relationship_name>.<attrname>オーナー・ビジネス・オブジェクトにリレーション<relationshipname>により結びつけられたビジネス・オブジェクトの属性値:&owner&.<attrname> の例を参照
:$old_<attrname>属性のデータベースからの初期値例えば、フィールドの値を 1 から 2 , 3 , 4 と変更した場合、古い値は 1 です。

クエリー内で現在のビジネス・オブジェクトの属性を参照できます。コロン’:’を使用して変数を定義します。例えば、次のような SQL を使用することができます。

exists (select 1 from workorder where wonum=:wonum)

最初の wonum は、workorder オブジェクトに対する wonum 属性です。実行時には、Maximo は :wonum を現在のビジネス・オブジェクトの wonum 属性の値で置き換えます。

ここで紹介した機能を使用すると、今回作成したクエリーは SQL の日付関数を使用しなくても:&date&を使用することができるかもしれないと気付くでしょう。しかし、今回指定した条件は前後 1 ヶ月という条件であるため、クエリー内で計算処理が必要になります。:&date&を使用した処理も可能でしょうが、今回は SQL の機能を使用しました。

このように Maximo のクエリーは、条件の作成に対して自由度が高くなっています。ユーザーはより使用しやすい機能を選択することで要求に応えることができます。


検索結果のダウンロード

一覧画面だけでなくいろいろな場面で使用されるテーブルですが、このテーブルはダウンロード機能を持っています。ダウンロード機能を使用することにより絞り込んだデータをそのまま使用可能状態で得ることが可能です。画面キャプチャー等の再利用不可能な形ではなく、データとして得ることができるので、その後に処理を自由に加えることができます。

それぞれのテーブルの右上にある「ダウンロード」がその機能です。ここをクリックすると現在の内容を Excel 形式で保存、または開くことができます。内容は CSV ではなく HTML 形式となっています。(図 15)

図 14. 検索結果のダウンロード

Maximo は自身でレポートや KPI として簡単な分析機能を提供していますが、それ以上の分析を行いたい場合はダウンロードしたデータを使用して、ユーザー側で編集して分析することが可能です。表計算ソフトで直接開くことが可能ですので、簡単にデータの加工・編集・分析することができます。図 15 はダウンロードされたデータの内容です。図 15 の通り、内容は HTML として表現されているので Web ブラウザーで表示させることも可能です。(図 16)

図 15. ダウンロードされたデータ
図 15. ダウンロードされたデータ

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図 15. ダウンロードされたデータ

図 15. ダウンロードされたデータ
図 16. HTML として表示
図 16. HTML として表示

まとめ

Maximo のクエリー機能について紹介しました。本稿で紹介した機能を使い、ユーザーは自由に Maximo に保存されているデータを検索し表示させることができます。テーラリングを用いることで表示させる内容もユーザーの要求に適合させることが可能です。

表示させた内容は、ダウンロード機能を使用して Excel 形式で取り出すことができ、簡単な分析は別途表計算アプリケーションを使用して行うことができます。

また、今後紹介する BIRT*3 レポートを使用することで、Maximo から簡単な分析結果を表示させることも可能です。

また、クエリー機能は検索だけでなく Maximo のいろいろな場面で使用されます。今回紹介した機能は単純な検索の一部ではありません。クエリー使用方法の習得は Maximo というシステムを操っていく上で必須の要素です。


注釈

*1 Maximo Base Service とは Maximo 関連製品の共通部分を指しています。製品、ガイド、マニュアル等にはこれ以外に Tivoli Process Automation Engine、Tivoli Process Automation Platform となっている所もあります。2008 年 10 月以降、IBM では、この Maximo 関連製品が持つ共通機能としてのフレームワークを指して Tivoli Process Automation Engine と呼んでいます。

*2 テーラリングは Maximo に対する変更・拡張を指しています。Maximo のアプリケーションデザイナーやデータベースの構成等標準機能を用いた変更をテーラリングと呼びます。これに対して Maximo に無い機能を Java 等を用いて拡張していくことをカスタマイズと呼びます。

*3 BIRT とは Business Intelligence and Reporting Tool の略です。BIRT は Eclipse Project の 1 つでレポート・帳票開発プラットフォームです。

参考文献

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Zone=Tivoli (service management)
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ArticleTitle=Maximo シリーズ: Part 3 - Maximo Query
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