Lotus Sametime 7.5 でのVoice ChatとClick-to-Call
IBM Lotus Sametime 7.5ではリアルタイム・コラボレーションのプラットフォームとして、チャットや電子会議で音声でのコミュニケーションを行う音声統合の機能が大幅に強化されました。 もともとSametimeには Web会議で音声と動画を使用できるオーディオ・ビジュアル (AV) 機能がありました。しかし、AV機能はSametimeのWeb会議内での使用に限定され、Sametime Connectクライアントのチャットなどとの併用はできませんでした。また構内交換機などの電話システムや電話会議との連携もできませんでした。
Sametime 7.5では、Sametime Connectクライアント同士で気軽に音声での会話を行うVoice Chatが追加されました。またSametime 7.0で追加された、Click-to-Call(電話連携)も強化され、チャットやWeb会議を電話会議システムと連携させることが可能になっています。
図1と図2はVoice ChatとClick-to-Callの機能を有効にした Sametime Connectクライアントです。ツールバーにVoice Chat (図3)とClick-to-Call (図4)のボタンが追加されています。図1の連絡先画面 (Contacts) で1人または複数の相手を選択し、Voice ChatやClick-to-Callアイコンボタンで音声コミュニケーションを開始します。
図2はチャットを行っている画面です。テキストによるチャットをしている途中でその相手とすぐに音声コミュニケーションを開始できます。
図1 連絡先画面
図2 チャット画面
図3 Voice Chatのアイコンボタン
図4 Click-to-Callのアイコンボタン
Voice Chatはあたかもテキストでのチャットのように、クライアント同士で音声による会話を行う機能です。PCにマイクとスピーカーさえあれば、Sametime Connectクライアントですぐに使用できます。電話機や特別なソフトウェアのダウンロードは必要ありません。Peer-to-peer (P2P)の音声エンジンがSametime製品にプラグインとして組み込まれています。
Click-to-CallはSametimeからの簡単な操作で電話会議を開催する機能です。Sametime Connectクライアントで会話をしたい相手を選択し、Click-to-Callボタンを押すことで、電話会議のシステムを通じて手元の電話機で、選択した相手との会話を始められます。
Voice ChatやClick-to-Callが開始されると、図5のような複数メンバーでのチャット(N-Way チャット)と音声制御の画面が表示されます。この画面で参加者の確認をしたり、自分のマイクのミュート設定をしたりします。図5はClick-to-Callの画面の例ですが、Voice Chatでも電話番号が表示されないだけで同じような画面になります。
図 5 マルチユーザーでのClick-to-Callの画面
Click-to-CallはSametimeのWeb会議とも連携できます。SametimeのWeb会議を行う際に電話会議も自動的に開催し、Web会議の参加者と電話会議の参加者を関連つけて管理することができます。電話会議の参加者を Web 会議で表示させ、電話発信やミュートなどのコントロールが行えます。Click-to-CallとWeb会議の連携の様子は本稿の最後に紹介します。
Sametime 7.5 ConnectクライアントのVoice Chat機能はSametime Connectクライアントのプラグインとして提供されています。クライアント・ベースの音声コミュニケーションの機能で、VoIPの信号はSametime Connectクライアント同士のP2Pの接続によって交換されます。
Voice ChatのVoIP通信には、グローバルIPサウンド社(GIPS)のiSACコーデックのボイスエンジンを採用しています。GIPS社のボイスエンジンはSkypeにも採用されています。Sametime 7.5 Connectクライアントの連絡先一覧で相手のプレゼンスを確認し、その同じ画面でVoice Chatアイコンボタンを押して、最大5人までの会話ができます。Sametime 以外にはソフトウェアは必要ありません。マイクとスピーカー以外のハードウェアも要りません。たとえば会社でも、家でも、またはホットスポットでも、Sametimeにアクセスできる場所であれば、電話と同じように会話ができます。
なお、Sametime 7.5 ConnectクライアントにはSkypeと同じボイスエンジンが組み込まれていますが、これはSametimeがSkypeにつながるということではありません。SkypeOutのような外線発信機能も提供していません。しかし、同じようなプラグインを作成するための開発キットをSametime Connect Toolkitとして提供しています。Sametimeのユーザーが使っているお好みの VoIPシステムがあれば、そのVoIPシステムを呼び出すプラグインを作成し、製品に含まれるVoice Chatと入れ替えることができます。
たとえば、すでに利用しているIP電話のクライアントの機能をプラグインとしてSametimeに組み込み、リアルタイム・コラボレーションの基盤をSametimeで統一することができます。
Click-to-Call はSametimeサーバーを経由して電話会議システムと連携する機能です。Sametime ConnectクライアントやWeb会議などから、Sametimeサーバーを通して電話会議システムに接続し、電話会議の制御を行います。Click-to-Callを使用することで、Sametime Connectクライアントから臨時の電話会議を開催したり、予約したWeb会議とともに自動的に電話会議を開始して連携させたりできます。Web会議の音声のコミュニケーションに外部の電話会議を利用することで、ネットワーク帯域の狭い環境でも電話機を併用してWeb会議に参加できます。もちろん電話だけでの参加も可能です。
Click-to-Call では音声通話を提供する電話会議システムを必要とします。またその電話会議システムとSametimeをつなぐコネクター・プラグインであるService Providerというモジュールが必要となります。そのためSametime製品だけではClick-to-Call の機能は使用できません。Sametimeサーバーでは電話会議システムと接続するためのインターフェースとして、Telephony Conferencing Service Provider Interface (TCSPI)を公開し、その開発キットとしてTCSPI Toolkitを用意しています。この開発キットにより電話会議サービスに接続するService Providerを実装することができます。
Click-to-Call機能は、Sametime 7.5 Connectクライアントばかりではなく、Sametime 7.0 ConnectクライアントやSametime 7.0以降のWeb会議、Notes クライアント(7.0.1以降または6.5.6以降)でも使用できます。
Voice ChatとClick-to-Call はどちらもSametimeに音声コミュニケーションを追加するプラグインです。Sametimeではこれらを開発するための開発キット(Toolkit)を用意し、ユーザーやシステム・インテグレーターが独自の音声システムと連携するプラグインを開発し、既存の音声統合機能を置き換えることを可能にしています。Voice ChatとClick-to-Callのどちらを使用してSametimeと音声を連携させるかは、対象となる音声システムや、使用するクライアント・アプリケーションによって決まります。
Voice Chat とClick-to-Callの違いを、図6のSametime音声統合のアーキテクチャーで説明しましょう。
図 6 Sametime 7.5 の音声統合のアーキテクチャー
左側はSametime 7.5 Connectクライアントです。Voice ChatとClick-to-CallはそれぞれVoice ChatプラグインとRemote TCSPIプラグインとして、Sametime Connectの製品の一部として提供されています。これらのプラグインはSametime Connect Toolkitで規定されているClient Telephony SPIに対応しています。Sametime 7.5の製品に含まれるVoice ChatプラグインはGIPS社の音声エンジンを含んでおり、Sametime Connect クライアント同士のP2Pの音声コミュニケーションを提供します。一方、Remote TCSPI は電話会議のリクエストをサーバーに送り、TCSPIに対応したサーバー側のプラグインであるService Providerを呼び出します。
Client Telephony SPI はSametime Connect クライアントでの音声制御のプラグインで用いられるインターフェースを定義したAPIです。CallServiceProvider というJavaインターフェース・クラスが定義され、たとえば電話発信という操作に対応する startCall()というメソッドを持っています。プラグイン開発者はこのCallServiceProvider を実装したクラスで、startCall()などのメソッドに実際の音声制御の機能を実装してプラグインを開発します。このプラグインを既存のVoice Chatと置き換えることで独自の音声連携の機能をSametimeに組み込むこととなります。
新たにVoice Chatプラグインを作るにあたり、利用する音声システムはP2Pコミュニケーションである必要はありません。サーバーで音声の制御を行う電話システムであっても、クライアントPCで電話の発信と切断、ミュートなどの操作ができるAPIライブラリが提供されていれば、それを利用した独自のVoice Chatプラグインを作成することができます。たとえば、PC上で動作する電話端末ソフトウェア(ソフトフォン)が制御用のAPIを公開していれば、Voice Chatプラグインから呼び出すことが可能です。
Client Telephony SPIに対応するプラグインを作成するときには、開発者は音声制御の処理を実装するだけで十分です。Sametime Connect クライアントに表示されるUIを実装する必要はありません。Client Telephony SPI を実装したプラグインでは、すでに紹介したアイコンボタン(図3、図4)やN-Wayチャットの音声制御画面(図5)などSametime Connectクライアントの持っているUIが自動的に利用されます。図6の左側のクライアント・アーキテクチャーの上位にある「Voice Chat, Click-to-Call and other Telephony UI Elements」と書かれた部分がそのユーザー・インターフェース (UI) です。プラグイン開発者は VoIPコミュニケーションの確立や通話の開始などの機能の開発に集中するだけで、ほかの機能と統一された操作性のUIを持つプラグインを提供することができます。
一方、UI側からVoice ChatとClick-to-Callを利用するためのAPI をClient Telephony APIとして公開しています。Sametime ConnectクライアントのUIを拡張するプラグインを作成するときに、Sametimeの提供するVoice Chatを呼び出すなどして、音声統合機能をプラグインに含めることができます。このときプラグインの開発者は音声機能のエンジンの仕組みを気にすることなくClient Telephony APIを使用してUI側の機能拡張をすることができます。
Voice ChatプラグインはEclipse RCPのフレームワークで作られているため、Sametime 7.5 Connectクライアントでしか利用できません。しかし今後リリースを予定しているEclipse RCP上で動作するNotes 8クライアント(Hannover)では、プレゼンスやチャットといった リアルタイム・コラボレーションの機能とともにVoice Charプラグインが利用可能になる予定です。
次にClick-to-Callの音声制御について説明します。Click-to-Callの音声制御はサーバー側のプラグインで処理をされます。図6の右側はSametime 7.5サーバーのアーキテクチャーを示しています。Sametime Connectクライアントからの音声制御リクエストは、Remote TCSPIからSametimeのプロトコルによってサーバーに送られます。サーバーではTCSPIのインターフェースからService Providerとよばれるプラグインを通じて音声制御リクエストを構内交換機などの電話システムに伝えます。図6でTelephony Plug-inとして記述されている部分がService Providerプラグインです。
電話システムが制御用インターフェースをサーバー側でのみ提供している場合や、クライアント側でのソフトフォンとの連携ができないシステムではこの実装方法をとることになります。Click-to-Call は電話システムのサーバーでの連携なので、物理的な電話機には依存しません。Sametime ConnectクライアントからのClick-to-Callの操作で、手元の固定電話機や携帯電話から誰かに電話をかけることも可能となります。またClick-to-Callの機能はSametimeサーバーの提供する機能で、Sametime Connect クライアントだけではなく、Web会議からの電話会議連携や、Notes クライアントからのClick-to-Callのリクエストも処理します。
サーバー側のTCSPIのアーキテクチャーを図7に示します。
図 7 TCSPI のアーキテクチャー
Sametimeサーバーでは電話会議システムとの連携を行うためのインターフェースであるTCSPIを公開しています。Click-to-Callや電話会議連携を利用するには、使用する電話システムに応じてTCSPIに接続するService Providerを用意する必要があります。Service ProviderはTCSPIでSametimeサーバーと、電話システムの提供するAPIによって電話システムと接続します。そして電話発信などのSametimeからの音声制御リクエストを電話システムに送信すると共に、電話機の状態などを電話システムからSametimeサーバーに伝える機能を提供します。
電話機システムではService Providerを実装するためのAPIを公開している必要があります。しかし、そのAPIの仕様はSametimeでは規定していません。TCSPI側はJavaのライブラリーとして提供されているため、Javaプログラムとして実装されるService Providerからアクセスできるインターフェースであれば十分です。たとえばJava Telephony API (JTAPI)やSIPによるインターフェースが考えられます。
Click-to-Callを使用するときのシステム構成を図8に示します。
Service Providerの機能は接続する電話サーバーに依存するため、Sametime の製品では提供しません。Service Providerは電話機サーバーごとに実装され、電話機システムの提供者によって提供されることとなります。このモジュールはSametime サーバーにインストールされ、アドイン・サービスとして実行されます。
図 8 Click-to-Callのシステム構成
Click-to-Call はSametimeサーバーが提供する電話会議との連携機能です。Click-to-CallはSametime 7.5 Connectクライアントのほか、Sametime 7.0 Connectクライアント、Sametime Web会議、Notesクライアントでも使用できます。それぞれのクライアントでのClick-to-Call の機能とUIをご紹介します。
図9はNotes クライアントからClick-to-Callを使用している画面です。Notesクライアントのロケーション文書でSametime サーバーの設定を行うことで、メールなどの送信者名などにプレゼンスが表示され、チャットを開始できます。さらにSametimeサーバーにClick-to-Callの機能を提供するService Providerをインストールし、Notes クライアントでClick-to-Callの機能を有効にすることで、メニューにチャットの開始(図9および図10では「Chat with …」)と共に電話発信(図9および図10では「Call」)のメニュー項目が表示されます。
Service Provider開発の詳細情報やNotesクライアントでClick-to-Callの機能を有効にする方法はTCSPI Toolkitに含まれるTCSPI Implementer’s Guideに記載されています。
図9 NotesメールのビューでのClick-to-Callメニュー
図10 NotesメールのヘッダーでのClick-to-Call メニュー
Notes上で相手を選択し、電話発信メニューを選択することでSametimeのClick-to-Callダイアログ (図11) が表示され、電話会議の制御ができるようになります。ユーザーはこの画面で電話の発信や切断、ミュートの設定をします。さらに電話の接続状態は右側のアイコンで表示され、誰が今この会話に参加しているかが一目でわかるようになっています。
図11 Click-to-Callダイアログ
SametimeのWeb会議を電話会議と連携させることで、図12の左上のようにWeb会議の参加者リストに電話会議の参加状況とそれらを制御するツールが表示されます。
図12 Web会議画面での電話会議連携
図13はそのWeb会議の参加者リスト (Participants) を拡大したものです。参加者リストの右側にある電話機のマークで、その参加者が電話機などで電話会議に参加しているかどうかがわかります。議長は必要に応じて各ユーザーの音量を調節したり、雑音を出している電話をミュートしたりといった制御をします。
また他の参加者も、Web会議の画面から自分の電話に対して電話発信するなどの操作ができます。
図13 Web会議画面での電話会議連携(拡大図)
Sametime 7.5 ConnectクライアントでのClick-to-Call機能
SametimeのClick-to-Call の機能を最大限に利用できるのはSametime 7.5 Connectクライアントです。ユーザーはSametimeにログインしている相手にも、そうでない相手にもClick-to-Callで電話をかけることができます。その操作方法は本稿の冒頭で説明しました。
もし相手がSametime 7.5 Connect クライアントにログインしていれば、Sametimeはいきなり電話をかけることはせず、図14のようなダイアログを相手のPC画面に表示します。この画面を表示することで、相手に最適な電話番号を選択してもらい、確実に電話を取ってもらうことができます。
図14Click-to-Callでの発信先に表示されるダイアログ
Sametime 7.5ではリアルタイム・コラボレーションのためのプラットフォームとしての機能強化が行われました。その中でも、音声統合は重要な機能強化のひとつです。
Sametime 7.5 の提供する音声統合機能を以下にまとめます。
- Sametime7.5は、クライアント・ベースとサーバーベースの拡張用インターフェースをもち、VoIPや構内交換機と柔軟に連携するコラボレーション・プラットフォームを提供します。
- Sametime 7.5 Connectクライアントには音声会話のためのVoice Chatが搭載され、オフィス・コミュニケーションの幅を広げました。
- Web会議やNotesなどから利用できる電話会議連携機能であるClick-to-Callにより、コラボレーションの選択肢が広がりました。
これらの特徴を活かし、ユニークなリアルタイム・コラボレーションを実現可能にする Sametime 7.5をぜひご体験ください。
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IBM Lotus Sametime 製品紹介 (US | 日本語)
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developerWorks - Lotus Sametime (US)
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A tour of the IBM Lotus Sametime V7.5 toolkits (US)
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Integrate Audio with Your Lotus Collaboration Tools (US)
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Sametime 7.5 Development Kit ダウンロード URL (US)
- Development Kit に含まれる以下の資料が参考となります。
- IBM Lotus Sametime Connect 7.5 Integration Guide
- IBM Lotus Sametime Connect Telephony API Guide
- IBM Lotus Sametime Telephony Conferencing Service Provider Interface (TCSPI) Implementer’s Guide