IBM Cognos 8 Go! Mobile によるスマートフォンからの情報活用

営業担当者が移動先や外出先から最新のビジネス・レポートやダッシュボードを利用してお客様に応対する場合、これまではノートPCから社内LANにアクセスするか、ハンドヘルドデバイスに特化した簡易版レポートの利用が一般的でした。IBM Cognos 8 Go! Mobileソリューションを使用するとWindows MobileやBlackBerryなどのスマートフォンから効率的に企業内情報にアクセスできます。

本稿ではIBM Cognos 8 Go! Mobileの特長とインストール、レポートの実行と参照について紹介します。

善家 直己, ソフトウェア開発研究所 IM開発, 日本アイ・ビー・エム株式会社

善家 直己の顔写真善家 直己(ぜんげ なおみ)はソフトウェア開発研究所のエンジニアです。FileNet製品、Cognos製品における日本市場向けテスト(JMAT)のテクニカルリードを務めています。



中山 恭與, ソフトウェア開発研究所 IM開発, 日本アイ・ビー・エム株式会社

中山 恭與の顔写真中山 恭與(なかやま やすとも)はソフトウェア開発研究所のエンジニアです。Cognos製品、Optim製品における日本市場向けテスト(JMAT)に携わっています。



冨永 康之, ソフトウェア開発研究所 IM開発, 日本アイ・ビー・エム株式会社

冨永 康之の顔写真冨永 康之(とみなが やすゆき)はソフトウェア開発研究所のエンジニアです。Cognos製品における日本市場向けテスト(JMAT)に携わっています。



2009年 11月 06日

ビジネス・インテリジェンス・ソリューションとスマートフォン

ビジネス・インテリジェンスとは企業内の膨大なデータを分析、加工して迅速な意思決定に活用する手法です。その背後では基幹系や業務系などのリアルタイム性が重視されるアプリケーション用データベースから非同期にデータを取得し、加工してデータウェアハウスやOLAPなどの専用のデータベースに保存、分析しています。一方、一般のユーザーから見た場合のビジネス・インテリジェンスは、グラフィックスを多用した分かり易い方法で現在の企業の状態や、業績予測を伝える意思決定支援の「道具」です。

膨大なデータを分かりやすく整理して伝えるため、ビジネス・インテリジェンスのクライアント画面では複数のビジュアル・コンポーネントの組み合わせや、ドラッグ・アンド・ドロップによる視点の切り替えが求められます。これには高度な操作性をサポートする専用のクライアント・アプリケーションや、フル機能のWebブラウザが必要です。このため、移動や外出の多い営業担当者が、大量の企業内情報を基にしたビジネス・インテリジェンス・ソリューションを利用してお客様に応対する場合、これまでは無線LANやデータ通信カードを利用したノートPCからの利用が一般的でした。

たとえば製薬メーカーの営業担当員は、病院や医院との販売交渉において、薬の在庫状況に応じた値引きを行う場合があります。このとき営業担当員は訪問先の病院から、ほぼリアルタイムの在庫状況を照会し、価格と納品時期を決定する必要があります。恐らく営業担当員はノートPCを持参し、事前に最新の情報を確認しながら、病院を訪問することでしょう。

一方、最新のスマートフォンは Webブラウザや高度なUIを搭載し、携帯性に優れるため、ビジネスでの利用も増えてきました。日報やコールメモ等であればスマートフォンのメール機能でも十分に対応できます。ただしスマートフォンから企業内のビジネス・インテリジェンス・ソリューションにアクセスするにはいくつかの課題があります。

画面の問題

スマートフォンの画面はPCに比べて極端に狭いため、グラフやレポートを多用したクライアント画面をそのまま表示すると画面からはみ出すか、つぶれて見えなくなります。PC用に作成された画面をスマートフォン用に改修する場合も開発コスト、管理コストがかかる上、配信用のアプリケーションを準備する必要もあります。またスマートフォン用のPDFやHTMLでは、静的で限られた表現の定型レポートの配信となり条件変更を行えません。

操作性の問題

ビジネス・インテリジェンスのクライアント画面では、マウス操作によってドリルスルー操作や軸の切り替えを行いますが、スマートフォンにはマウスは付属しません。GUI の操作方法全般もPCとは異なります。

また常時接続か否かの問題もあります。PCの場合、ほぼ常時、社内ネットワークに接続した状態で使用されますが、スマートフォンの接続はしばしば切断されますし、オフライン時にレポート照会が必要な場合もあります。

セキュリティの問題

スマートフォンはノートPC以上に紛失の可能性があります。内部に企業内情報を保管したまま盗難に遭えばビジネス上の損失だけでなく、コンプライアンス上の問題にもなり得ます。


IBM Cognos 8 Go! Mobile

IBM Cognos 8 Go! Mobileは、スマートフォンからIBM Cognos 8 BIを使用して作成されたビジネス・インテリジェンス・ソリューション上のコンテンツへと、安全かつ快適にアクセスする機能を提供します。

IBM Cognos 8 BI は、単一のサービス指向アーキテクチャー (SOA) プラットフォーム上で、最適な意思決定を行うために必要となる様々なビジネス・インテリジェンス機能を提供する製品です。レポート、分析、ダッシュボードによって、ビジネスのパフォーマンス監視、傾向の分析、結果の測定を行います。すべての機能で共通のメタデータモデル(DBアクセスのための辞書)を使用できる特長があり、情報のメンテナンス性や統制の観点でも優れています。

IBM Cognos 8 Go! Mobileは、既存のIBM Cognos 8 BI環境に追加インストールの形でインストールされ、新たな環境構築や保守の手間を最小限に抑えます。図 1 にIBM Cognos 8 Go! Mobile と IBM Cognos 8 BI の関連について示します。ここで「RIM BlackBerry® Enterprise Server」はスマートフォンがBlackBerryの場合に必要なミドルウエアです。スマートフォンがWindows Mobileの場合は不要です。

図 1. IBM Congos 8 Go! Mobile全体のアーキテクチャー
IBM Congos 8 Go! Mobile全体のアーキテクチャー

IBM Cognos 8 Go! Mobileには次のような特長があります。

既存アプリケーションの改修不要

スマートフォンのために特別な開発を行う必要はありません。IBM Cognos 8 Go! MobileではIBM Cognos 8 BIで作成したレポートをそのまま使用できます。スマートフォンに合わせた画面の自動レンダリングや圧縮機能、高度な操作性は専用クライアント「Go! Mobileクライアント」により提供されます。

スマートフォンの操作性を活かすインターフェース

スマートフォンにインストールされる「Go! Mobileクライアント」は、プラットフォームのネイティブ・アプリケーションとして最適化されています。サーバーとの通信を暗号化することが可能であり、画面スクロール、タッチスクリーン、クリック操作によるレポートやメニューへの移動など、スマートフォン特有の機能をサポートします。

オフライン操作のサポート

IBM Cognos 8 Go! Mobileはオフライン時にもレポートを表示できます。スマートフォン内部でコンテンツは圧縮、暗号化された状態で保存され、他のアプリケーションが不正にアクセスすることはできません。

セキュリティ機能

IBM Cognos 8 Go! Mobileの認証、認可は、IBM Cognos 8 BIと統合されています。またLease Key技術により、長時間オフライン状態が続くと、レポートへのアクセスが遮断されます。またスマートフォン側の機能を利用して無効化することもできます。

日本語対応

表示されるレポートだけでなく、スマートフォン上のメニュー等も日本語化されています。

IBM Cognos 8 Go! Mobile はスマートフォンの特徴を活かしながら、既存のビジネス・インテリジェンスの価値を広げるソリューションです。

以降の節では、IBM Cognos 8 BIを使用して構築されたビジネス・インテリジェンス環境に、IBM Cognos 8 Go! Mobile をインストールして、起動、レポートを参照します。なお本稿ではスマートフォンに Windows Mobile を使用します。


インストール

IBM Cognos 8 Go! Mobileのインストールでは、IBM Cognos 8 BIサーバー環境へ追加コンポーネント「Go! Mobile サービス」をインストールし、スマートフォン側に「Go! Mobile クライアント」をインストールします。

Go! Mobile サービスのインストール

Go! Mobileサービスは、IBM Cognos 8 BI環境への追加コンポーネントとしてインストールされます。手順は次の通りです。

  1. IBM Cognos 8 BIサービスを停止する。
  2. Go! Mobileサービスのインストーラーを起動し、指示に従う。コンポーネントの選択では以下の二つを選択する。
    • アプリケーション層コンポーネント
    • ゲートウェイおよびMobileクライアント
  3. 修正モジュールが提供されている場合は、インストールし、最新の状態に更新する。
  4. 導入後、Cognos Configurationを起動し、「ローカル設定」->「IBM Cognos 8 サービス」をクリックして「Mobileサービス有効」が有効なことを確認する。
  5. Content StoreにDB2を使用している場合は「ローカル設定」->「データアクセス」->「Content Manager」のContent Store DBをクリックして「データベースサーバーとポート番号」が正しく設定されていることを確認する。
  6. 設定を保存し、Cognos8サービスを再起動する。

次にスマートフォン側で、Go! Mobileクライアントをインストールします。

Go! Mobile クライアントのインストール

Go! Mobileクライアントのインストールは、ネットワーク接続されたIBM Cognos 8 BIサーバー経由で行います。サーバーから自動でインストールする「プッシュ方式」とユーザーがインストールする「OTA方式」がありますが、ここでは「OTA方式」を使用します。

  1. スマートフォン、ここではWindows Mobileデバイスでネットワーク接続を構成する。
  2. Windows Mobileデバイス上でInternet Explorerを起動し、以下のURLにアクセスする。
      http://<Cognos 8 BIサーバーのアドレス>/cognos8/mobile/index.html
    Go! Mobileクライアントのインストール画面が表示される。
  3. Windows Mobile版クライアントのリンクをタップする。

ファイルがダウンロードされ、インストールが始まります。


起動とログイン

Go! Mobile クライアントのインストール終了後、IBM Cognos 8 Go! Mobileアイコン (図 2参照) をタップするとクライアントが起動します。

図 2. インストールされたIBM Cogons 8 Go! Mobile.
インストールされたIBM Cogons 8 Go! Mobile.

最初の起動時には、以下のURLを指定してログインします。
  http://<Cognos 8 BI サーバーのアドレス>/congos8


レポートの実行

Go! Mobileクライアント上でレポートを参照するには、まずレポートを実行します。レポートの実行には二つの方法があります。

  • スマートフォンから実行する
  • PC上のWebブラウザから実行する

いずれの場合も、レポートはサーバー上でIBM Cognos 8 Go! Mobile形式に変換され、サーバー上のデータベースに保存されます。保存されたレポートは、スマートフォンがサーバーに接続したタイミングで、スマートフォン側にダウンロードされます。 ここではスマートフォンからレポートを実行します(図 3参照)。

図 3. レポートの実行と参照
レポートの実行と参照

クライアントからサーバーにログインすると「受信トレイ」が開かれます。受信トレイにはサーバーからダウンロードされたレポートが表示されます。メニューから「参照」を選択するとサーバー上のフォルダやレポートを参照できます。

ここで「レポートを実行」を選択すると、選択されたレポートがサーバー上で実行された後、スマートフォン側にダウンロードされて表示されます。一度実行したレポートは受信トレイに表示され、次回からは素早く開くことができます。ただし、表示されるデータは実行時のものです。最新のデータに基づいたレポートを参照する場合は「レポートの再実行」を選択します。

管理者はあらかじめサーバー上のCognos Administrationで、定期的なレポートの実行、および配付を設定できます。これによりユーザーは常に最新の情報を素早く参照することができます。

プロンプトを含むレポートの実行の際には、パラメータを指定して条件で絞り込んだデータを表示させることができます(図 4参照)。

図 4. プロンプトからの条件指定
プロンプトからの条件指定

レポートの参照

IBM Cognos 8 Go! MobileではIBM Cognos 8 BI上のレポートをほぼそのまま表示できます。また、スマートフォンの狭いディスプレイ上でも快適に表やグラフを見られるよう、さまざまな機能が用意されています。

ズーム機能とスクロール機能

ズーム機能を使うと、レポートを拡大、縮小して表示できます。
10%から300%までの範囲で倍率を指定できるほか、「幅にあわせる」や「ページに合わせる」オプションにより適切な倍率で表示できます。また、レポートの一部のみが表示されている場合は、任意の方向にドラッグして、スクロールできます(図 5参照)。

図 5. ズーム機能
ズーム機能

フォーカス機能

レポート内に埋め込まれたグラフや表などのアイテムは「フォーカス」する事で、単体で表示できます。さらにフォーカスした状態では、アイテムを見やすくする機能を使用できます。たとえば、表をフォーカスした状態でタブでスクロールすると、列見出しを固定して中身だけをスクロールできます。また任意のセルをマークして、そのセルを含む表や列だけを表示できます(図 6参照)。

図 6. 表のフォーカス機能
表のフォーカス機能

またグラフをフォーカスした状態でグラフ内のアイテムをタップすると、詳細なデータが表示され正確な値を読みとることができます(図 7参照)。

図 7. グラフのフォーカス機能
グラフのフォーカス機能

まとめ

本稿では、IBM Cognos 8 Go! Mobileを使用してスマートフォンからビジネス・インテリジェンス・ソリューションを利用する利点と、インストール、レポートの利用方法を紹介しました。

IBM Cognos 8 Go! Mobileを使用したソリューションの構築にあたっては既存のビジネス・インテリジェンス・アプリケーションを修正する必要はなく、「Go! Mobileサービス」によってクライアント側のスマートフォンに合わせた形で情報は自動的に加工されます。また、「Go! Mobileクライアント」はタッチスクリーン技術やクリック操作による画面の移動、拡張などスマートフォン固有の機能を活かした操作性を実現します。

IBM Cognos 8 Go! Mobileは、ビジネス・インテリジェンスの価値をPCの世界からスマートフォンの世界に広げるソリューション・プラットフォームです。

参考文献

コメント

developerWorks: サイン・イン

必須フィールドは(*)で示されます。


IBM ID が必要ですか?
IBM IDをお忘れですか?


パスワードをお忘れですか?
パスワードの変更

「送信する」をクリックすることにより、お客様は developerWorks のご使用条件に同意したことになります。 ご使用条件を読む

 


お客様が developerWorks に初めてサインインすると、お客様のプロフィールが作成されます。会社名を非表示とする選択を行わない限り、プロフィール内の情報(名前、国/地域や会社名)は公開され、投稿するコンテンツと一緒に表示されますが、いつでもこれらの情報を更新できます。

送信されたすべての情報は安全です。

ディスプレイ・ネームを選択してください



developerWorks に初めてサインインするとプロフィールが作成されますので、その際にディスプレイ・ネームを選択する必要があります。ディスプレイ・ネームは、お客様が developerWorks に投稿するコンテンツと一緒に表示されます。

ディスプレイ・ネームは、3文字から31文字の範囲で指定し、かつ developerWorks コミュニティーでユニークである必要があります。また、プライバシー上の理由でお客様の電子メール・アドレスは使用しないでください。

必須フィールドは(*)で示されます。

3文字から31文字の範囲で指定し

「送信する」をクリックすることにより、お客様は developerWorks のご使用条件に同意したことになります。 ご使用条件を読む

 


送信されたすべての情報は安全です。


static.content.url=http://www.ibm.com/developerworks/js/artrating/
SITE_ID=60
Zone=Information Management
ArticleID=442139
ArticleTitle=IBM Cognos 8 Go! Mobile によるスマートフォンからの情報活用
publish-date=11062009