このシリーズの最初の記事では、学習コンテンツの作成と供給のためのXMLコンテンツ・モデルの開発フレームワークとなるDITAトピック・タイプとその他の拡張のセットを定義しました。学習コンテンツの開発と配信のためのDITAのエンドツーエンドなプロセス・モデルに含まれる次のような主要段階について述べました。
- 学習目標と目的を識別し、モデル化する。
- 目標をレッスンとモジュールに編成する。
- 目標をサポートする既存のトピックを識別し、新しいトピック・ベースのコンテンツを開発する。
- 必要に応じて、演習問題、練習問題、および評価のためのトピック・コンテンツを開発する。
- 各目標とコース全体の概要と要約を書く。
- 特定のコースで配信するトピックをマップで構造化する。
- XSLTを使用して、特定の成果物のマップとトピックを処理する。
この記事では、IBM DB2 Query Monitorに関する既存のコースの内容を使用して、この学習用DITAプロセス・モデルをケース・スタディーのコースにどのように適用したか説明します。このコースは、もともと、インストラクター主導型トレーニング(ILT)として提供するために開発され、内容はインストラクター・ノート、インストラクター・ガイド(印刷PDF)、および受講生用ガイド(印刷PDF)の形式になっています。
このケース・スタディーで使用するパイロット・コースは、短いものですが(所要時間4時間)、演習と練習問題、学習目標、レッスンの要約など、教室でのインストラクター主導型トレーニング・コースに共通の構造を備えた完全なコースです。
Query Monitorコースの既存の受講生ガイド(印刷本)には、次の内容が含まれています。
- 前付
- コースの紹介
- 第1章 - Query Monitorの使用
- 第2章 - フィルターとプロファイルの使用
- コースの要約
- 付録A - Query Monitorのインストール
付属ファイル(ダウンロード参照)には、学習コンテンツの作成と供給をサポートするDITAトピック特殊化セットの提案を概念実証する実装が含まれています。また、IBM DB2 Query Monitorに関するパイロット・コースの内容のサンプル・トピックおよびマップのセットも含まれています。
このパイロットの主な目的は、本来は1つの大きなコースとして考えられていた内容をどのようにしてトピック・ベースのコンテンツ・セグメントに分割できるか、また、自己充足型のコース・モジュールとして提供する再利用可能なラーニング・オブジェクト(RLO)として再編成できるかを探ることでした。これが可能であれば、このコンテンツを、後で配信するe-learningコースとして位置づけることができます。
Query Monitorコースを加工する際、われわれは、次のように学習向けに対応させたDITAプロセス・モデルを適用しました。
1および2. 学習目標を識別して、モジュール(章)に編成する
まず、Query Monitorコースのモジュール・レベルの学習目標として、次の2つを識別しました。
- Query Monitorの使用
- フィルターとプロパティーの使用
次に、これらモジュール・レベルの各目標の中のレッスン・レベルの学習目標をサポートするために必要なタスク、コンセプト、およびリファレンス情報を識別しました。
- Query Monitorの使用
- Query Monitor ISPFインターフェースを使用する。
- ISPFコマンドを使用する。
- フィルターとプロパティーの使用
- フィルターを使用して、表示されるクエリーの詳細レベルを調整する。
- モニタリング、アプリケーション、および例外プロファイルを作成することによって、モニターするタスクを定義する。
- モニターしたクエリー・セッションの結果を分析し、説明する。
元のコースのソース・マテリアルには、演習問題も評価も含まれていませんでした。全体設計の中にこれらのトピックの場所を確保しておいて、パイロットの次の段階でe-learing教材を作成するときにテストすることにしました。
モジュール・レベルの2つの目標のそれぞれについて、概要および要約コンテンツのためのトピックを作成し、また、コース全体の概要および要約トピックのセットを作成しました。より大きなコースであれば、コースの階層構造の各レベル、たとえば、レッスン・レベル、モジュール・レベル、ユニット・レベルのそれぞれとコース全体での概要および要約トピックが含まれるでしょう。
学習の概要
リスト1は、パイロット・コースのサンプルの学習の概要です。このトピックは、mainpointsコンテンツ(学習目標)、所要時間などの概要情報を示しています。
リスト1. 学習の概要トピック
<?xml version='1.0' encoding='utf-8'?> <learningoverbody> <mainpoints> <p>At the end of this module, you will be able to:</p><ul> <li>Navigate through the Query Monitor ISPF interface</li> <li>Use the various ISPF commands</li></ul> </mainpoints> <duration><title>Duration</title><p>2 hours</p></duration> <objectives> <title>Objectives</title><ul> <li>Navigate through the Query Monitor ISPF interface</li> <li>Use the various ISPF commands</li></ul> </objectives> <prerequisites><title>Course prerequisites</title> <ul><li>Basic SQL and DB2 skills</li></ul> </prerequisites> </learningoverbody> </learningover> |
学習の要約
リスト2は、サンプルの学習の要約トピックです。この例では、要約全体がmainpointsコンテンツとして示されています。
リスト2. 学習の要約トピック
<?xml version='1.0' encoding='utf-8'?> <learningsummary id="DB2QM238_SUM"> <title>Summary</title> <learningsummarybody> <mainpoints> <p>You should now be able to:</p> <ul> <li>Navigate through the Query Monitor ISPF interface</li> <li>Use the various ISPF commands</li> </ul> </mainpoints> </learningsummarybody> </learningsummary> |
学習モジュールのトピックのマップを作成するために、われわれはユニットに入れたいトピックを選択して、学習順序に従って並べました。各学習モジュールのトピックをグループ化するには、topichead要素を使用しました。
リスト3は、パイロット・コースの「第2章 - Query Monitorの使用」のDITAマップの一部です。
リスト3. 学習マップ
<map title="DB2 Query Monitor Course"> <topichead navtitle="Module 2: Using the Query Monitor"> <topicref href="querymonitor_over.xml"/> <topicref href="ispf_nav_ref.xml"/> <topicref href="main_panel_ref.xml"/> <topicref href="qm_discovery_task.xml"/> . . . <topicref href="planview_concept.xml"/> <topicref href="dbrmview_concept.xml"/> <topicref href="activate_task.xml"/> <topicref href="deactivate_task.xml"/> <topicref href="DB2QM238_Summary.xml"/> <topicref href="DB2QMLAB201_practice.xml"/> </topichead> </map> |
以下は、マップに含まれているトピックのリストです。入れ子になったトピック・タイプとタイトルが示されています。
- 概要:Query Monitorの使用
- リファレンス:ISPFナビゲーション
- リファレンス:メイン・パネル
- タスク:DB2 QMサブシステムの発見
- . . .
- コンセプト:操作の要約を表示する:プラン
- コンセプト:操作の要約を表示する:DBRM/パッケージ
- タスク:モニタリング・エージェントの有効化
- タスク:モニタリング・エージェントの無効化
- 要約:要約
- 練習問題:練習問題1 - Query Monitorインターフェースの使用
Dita Open Toolkit(参考文献参照)で使用可能なXSLT、Ant、およびFO処理を使用して、マップとトピックを処理し、ILTコースで使用されるPDF教材を作成しました。図1は、この処理の出力例を示しています。
図1. 「メイン・パネル」トピックのPDF出力例
最初のプロジェクト設計段階とパイロット実装段階で、われわれはトピック・ベースの情報タイプ・コンテンツ開発への移行に関連するいくつかの課題に直面しました。
まず、オリジナル・コースを開発した過去の経験から、われわれは、1つの情報が次の情報へスムーズにつながる物語風なコンテンツ開発アプローチをとりました。このアプローチでは、コース開発者は、コンテンツをコンテンツ・タイプに分類することには、あまり注意を払いません。たとえば、コンセプト情報には、コンセプトのサポートに必要なリファレンス情報やタスク情報が混ざっていることが少なくありません。
パイロット・コンテンツをトピック・ベースのDITAとして加工する際にわれわれが直面した大きな課題は、コンテンツを1つの長い物語ではなく、一つ一つの情報の集まりとして考えるように、頭を切り替えることでした。
第二に、コンテンツをトピック・ベースの単位にどのように分割するかということに加えて、どのコンテンツにどのトピック・タイプを割り当てるかというルールを適用する必要がありました。このためには、以前は1つの段落に詰め込まれていた情報や1つのページにまとめられていた情報を、コンセプト、タスク、またはリファレンス・タイプという個別のタイプの情報を含んだトピックに分割する必要がありました。
われわれが従わなければならない主なルールは、次のようなものであることがわかりました。すなわち、個々の情報の塊は、1つのタイプのコンテンツについての1つのまとまった見解でなければならないということです。他のトピック・ベースの塊に含まれる情報と直接重複することなく、1つの特定の情報の知識を伝えるものでなければなりません。
最後に、われわれは、情報を個々のタイプに分割すると、学習コンテンツ全体の中でのコンテンツの役割が失われる恐れがあるという困った状況に追い込まれました。この場合、最初は、このルールに従って情報をトピックとタイプに分割するのは難しいように思えるかもしれません。いつもの物語的アプローチに頼って、コンテンツをそのままにしておこうかとさえ思いました。そうすれば、本来の思考の完全さが保たれるからです。
ここでの課題は、合意されたトピック・タイプの1つ(コンセプト、タスク、またはリファレンス)にコンテンツを割り当てるだけでなく、学習目標全体の文脈を考慮することでした。基本的な文脈はDITAマップで定義されているとしても、各トピックが学習目標の中でどのような位置を占めるかを考えるのは重要なことです。個々のDITAトピック自体には、固有の文脈はありませんが、マップの中での役割に応じて文脈を獲得します。
一言で言えば、トピックと情報タイプを使用してコンテンツを作成し提供するには、コンテンツへの適用方法を学ぶ時間と経験が必要です。
まとめと次のステップ:e-learning、SCORM、さらにその先へ
このパイロット・プロジェクトは、学習コンテンツの開発と供給におけるベスト・プラクティスをサポートするためのDITA XMLの使用の最初の基準点となるものです。これは、出発点にすぎません。ここで概説した設計とプロセスのフレームワークをさらに検証し、調整し、拡張するために、より機能豊富で、より多様な学習コンテンツに対して詳細な作業を行う必要があります。
具体的には、次のような基本路線に沿って調査を進めていく予定です。
- チーム内とチーム間の両方について、また、職能の境界を越えて、教育用コンテンツの再利用と再目的にさらに注目する。
- より本格的なコースをDITAに変換する。
- インストラクター主導型トレーニングに必要な教材に固有の目的別出力変換を開発する。
- 受講生ガイド
- インストラクター・ガイド
- スライド
- DITAマップ特殊化を拡張して、コース・レベルのマッピングとユニット・レベルのマッピングを含める。
- SCORM準拠のマニフェストおよびコンテンツ・パッケージへの供給をサポートするマップ処理を開発する。
- 実際のコース・コンテンツで発生する具体的なコンテンツ要件に応じて、ラーニング・トピック・タイプをさらに洗練させていく。特に、e-learningとSCORMに必要な評価および練習問題トピック・タイプのコンテンツ・デザイン、成果物、および処理要件について理解を深めることに焦点を置く。
これらのイニシアチブに参加してください。また、DITA OASIS技術委員会の活動を通じてDITA標準を拡張するための議論に参加し、それを支援してください。
ダウンロード用のスキーマとサンプル・トピックの作成に力を貸してくれたIBMの同僚、Eric SiroisとDon Dayに感謝します。
| 内容 | ファイル名 | サイズ | ダウンロード形式 |
|---|---|---|---|
| Sample DITA topics for this article | x-dita9b-learning.zip | 660KB | HTTP |
学ぶために
- このシリーズの第1回、「An XML-based information architecture for learning content, Part 1」(developerWorks, 2005年8月)を読んでください。
- developerWorksにある下記の記事も読んで、さらにDITAを学んでください。
- Darwin Information Typing Architectureの紹介(2003年10月)
- Darwin Information Typing Architectureでの特殊化(2003年10月)
- The DITA FAQ(2004年11月)
- DITAにおけるドメインの特殊化(2003年10月)
- Why use DITA to produce HTML deliverables?(2003年10月)
- Design patterns for information architecture with DITA map domains(2004年9月)
- 「HTMLからDITAへの移行 第1部: HTMLからDITAへの簡単な移行手順」(2005年1月)、「第2部: より堅牢な結果を得るための移行の拡張」(2005年2月)
- その他に、OASIS Cover PagesにもDITAに関する情報があります。
- DB2ファミリー製品に関して詳しく知りたい方は、developerWorksの「New to DB2」のページをご覧ください。
- 学習オブジェクトとSCORMの背景について知るための資料として、下記があります。
- Cisco Systems Reusable Information Object Strategy(Cisco Systems, 1999年)
- Reusable Learning Objects -- What does the future hold?(Peder Jacobsen著、2001年LTI Magazine)
- The Sharable Content Object Reference Model (SCORM)(2005年、Advanced Distributed Learning)
-
OASIS Darwin Information Typing Architecture (DITA) Technical Committeeに参加してください。
-
developerWorksのXMLゾーンには、XMLに関する資料が他にも豊富に用意されています。
- XMLおよび関連技術においてIBM認証開発者になる方法については こちらを参照してください。
製品や技術を入手するために
-
DITA Open Toolkit (SourceForge.net, 2005)のコピーを入手してください。
