モバイル・アプリケーションの開発を迅速化する IBM Worklight の主要な機能と能力

IBM Worklight はモバイル・エンタープライズ・アプリケーションの開発、デプロイメント、ホスティング、管理のための完全なプラットフォームです。Worklight はモバイル・アプリケーションを開発する上でのあらゆる要件に対応し、開発プロセスやデプロイメント・プロセスのすべてのフェーズで、そのプロセスを支援するためのツールを提供し、効率性をもたらします。この記事では IBM Worklight V5 の概要について説明するとともに、その新しい機能や主要な機能を紹介します。これらの機能は、皆さんがモバイル・アプリケーションの開発に着手して、その開発の目的を実現する上で役に立ちます。この記事の内容は IBM WebSphere 開発者向け技術ジャーナルから引用したものです。

Harish Shenoy, IT Architect, IBM

Harish Shenoy は IBM 認定の SOA ソリューション・デザイナーです。現在は IBM India Software Lab の BPTSE チームで、アプリケーション接続性とアプリケーション・インフラストラクチャーにおける技術ソリューション・アーキテクチャーを提供しています。彼の専門は、IBM Worklight、WebSphere Application Server、WebSphere eXtreme Scale、WebSphere Process Server、WebSphere Message Broker、BPM などです。また彼は WebSphere Process Server、WMQ、WebSphere Message Broker、WebSphere Application Server の認定技術者でもあります。



2012年 9月 20日

はじめに

IBM Worklight V5 はスマートフォンやタブレット用のモバイル・エンタープライズ・アプリケーションを開発するための、オープンで包括的かつ高度なプラットフォームです。Worklight は、HTML5、CSS3、Apache Cordova などの技術を活用したオープンスタンダード・ベースの完全なプラットフォームとして、あらゆる規模の組織が HTML5 によるモバイル・アプリケーションやハイブリッド・モバイル・アプリケーション、ネイティブ・モバイル・アプリケーションを効率的に開発、接続、実行、管理するのを支援します。

Worklight は、アプリケーションのビルド、デプロイメント、実行、管理など、モバイル・アプリケーションの開発ライフサイクルのあらゆるフェーズをサポートしており、また各フェーズではそのプロセスを支援するツールを提供しています。

標準ベースの技術とツールを活用した Worklight には、包括的な開発環境、モバイル用に最適化されたミドルウェア、管理や分析用の統合コンソールが含まれ、それらが多様なセキュリティー・メカニズムによってサポートされています。Worklight を使用することで、コード変換や独自のインタープリター、さらにはあまり使われないスクリプト言語などを使用することなく、リッチなクロスプラットフォームのアプリケーションを作成することができます。また、市場導入までの時間の短縮、開発コストの削減、全体的な複雑さの軽減につながるとともに、多種多様なモバイル・デバイスに対して優れたユーザー・エクスペリエンスを実現できるようになります。

IBM Worklight は、ビジネスの中でモバイル・アプリケーションの開発、デプロイメント、管理を完全な形で行う上で不可欠な要素を提供する IBM Mobile Foundation 製品ファミリーの一部です。

Worklight を使用することにより、最適化されたさまざまなバージョンのモバイル・アプリケーションの開発および保守を効率的に管理することができます。また、異なるモバイル・オペレーティング・システム (Android や iOS、その他) を対象としたモバイル・アプリケーションを共通の方法で構築することができます。共通のコード・ベースの大部分が複数のオペレーティング・システムの間で共有されるため、作成済みコンポーネントを利用することや、デバイスに依存しないコード部分を共有することも可能になり、開発時間を大幅に削減することができます。Worklight を使用して配布されたモバイル・アプリケーションは多種多様なデバイスに共通の Web 技術を活用しており、しかもネイティブ技術やネイティブ・ツール (Objective-C、xCode、Android など) の強力さを活用した機能を犠牲にすることはありません。そのため、必要な場合には、特定のオペレーティング・システムを対象とするアプリケーションにネイティブ・コードを追加することもできます。共有される共通のコード・ベースと Apache Cordova やネイティブ API とを組み合わせて使用することで、アプリケーションから特定のモバイル・デバイスの機能にアクセスすることができます。

この記事では、Worklight の最新の主要な機能を概要レベルで紹介することで、読者の皆さんが Worklight の能力を理解する手助けをすると同時に、皆さんがモバイル・アプリケーションの開発に着手し、迅速かつ効果的な開発ができるようにする上で Worklight がどのように役立つかを理解する手助けもします。


Worklight の概要

Worklight プラットフォームは以下の 4 つの主要なコンポーネントで構成されています。

  • IBM Worklight Studio: Eclipse ベースの IDE (Integrated Development Environment: 統合開発環境) です。この環境を使用すると、さまざまなモバイル・オペレーティング・システムで完全に動作するモバイル・アプリケーションを開発するために必要な、あらゆるコーディング作業と統合作業を行えます。Worklight Studio にはコード開発支援機能があるおかげで、Eclipse ユーザーが Worklight Studio を使ってモバイル・アプリケーションを開発する際に、追加で学習しなければならないことは、ほとんどあるいはまったくなく、Eclipse ユーザーにとって Worklight Studio は使いやすいはずです。
  • IBM Worklight Server: アプリケーション、外部サービス、エンタープライズ・バックエンド・インフラストラクチャーなどとの間のスケーラブルなゲートウェイとして機能する Java ベースのサーバーです。このサーバーには、接続、マルチソースのデータ抽出およびデータ操作、認証、Web アプリケーションやハイブリッド・アプリケーションの直接更新 (Direct Update)、分析、運用管理などを実現するためのセキュリティー機能があります。Worklight Server は Worklight アプリケーションを実行するための IBM WebSphere Application Server ランタイム環境と Apache Tomcat ランタイム環境をサポートしています。
  • IBM Worklight Device Runtime コンポーネント: デプロイされたアプリケーションのターゲット環境にサーバー機能を組み込むためのクライアント・サイドのランタイム・コードで構成されるコンポーネントです。
  • IBM Worklight Console: Worklight Server、Worklight Server にデプロイされたアプリケーションに加え、アダプター、プッシュ通知などを対象とした継続的な監視と管理をサポートするための Web ベースの管理コンソールです。このコンソールを使用することで、さまざまなバージョンのモバイル・アプリケーションを管理したり、アプリケーションのユーザーに任意の通知を送信したりすることもできます。

Worklight はこれらのコンポーネントを通じて多種多様な機能と能力を提供します。その一部を以降で紹介します。

  • クロスプラットフォームのアプリケーションを構築するための統合開発支援環境

    Worklight Studio はサポート対象となるすべてのモバイル・プラットフォームに対し、モバイル・アプリケーションの開発環境を提供します。アプリケーションはモバイル Web アプリケーションとして開発することもできますが、特定のオペレーティング・システム (Android、iOS、BlackBerry、Windows など) を対象に開発することもできます。図 1 は Worklight Studio 開発環境の画面です。

    図 1. Worklight Studio IDE
    Worklight Studio IDE
  • オープンな手法でサードパーティーのライブラリーと統合

    サードパーティーの JavaScript ライブラリー (jQuery Mobile、Sencha Touch、Dojo Toolkit など) を Worklight Studio 開発環境にシームレスに統合することができます。そのため、これらのライブラリーを使用して構築された既存のアセットを再利用することができます。Worklight には、任意のアプリケーションに使用できる Dojo ライブラリーが含まれています。jQuery ライブラリーや Sencha ライブラリーを使用するには、モバイル・アプリケーションの作成時にこれらのライブラリーを構成する必要があります。新しいモバイル・アプリケーションを開発する際に既存のアセットを利用できると、モバイル・アプリケーションの開発サイクルを短縮できる可能性があります。図 2 に示すのは Worklight アプリケーション作成ウィザードであり、さまざまなライブラリーを統合するためのオプションが表示されています。

    図 2. アプリケーション作成ウィザード
    アプリケーション作成ウィザード
  • 強力な認証フレームワーク

    Worklight には認証フレームワークが組み込まれており、このフレームワークはほとんど手間をかけずに構成して使用することができます。認証はフォーム・ベースで行うこともできますし、クッキー・ベース、HTTP ヘッダー・ベース、アダプター・ベースで行うこともできます。Worklight Studio にはエディターが用意されており、あらゆるアプリケーションに関する認証の構成を表示、編集することができます。また Worklight では、カスタムの認証フレームワークを作成することもできます。図 3 は Worklight Studio の「Authentication Configuration Editor (認証構成エディター)」を示しています。

    図 3. Authentication Configuration Editor (認証構成エディター)
    Authentication Configuration Editor (認証構成エディター)
  • オペレーティング・システム間で共通コード・ベースを共有

    Worklight の主要な能力の 1 つは、サポートしているすべてのモバイル・オペレーティング・システム間で共通のコード・ベースを共有できることです。Worklight でアプリケーションを作成する場合、Worklight はアプリケーション・コード・ベースのデフォルトの場所として、common というフォルダーを作成します。クロスプラットフォームの共通機能に必要なアプリケーション・コードの大部分を、この共通コード・ベースを使用してコーディングおよびテストすることができます。いったん共通の機能が完成すると、アプリケーションに対するプラットフォーム固有の要件は、そのプラットフォーム専用のコード・ベースに追加することができます。そのため、たとえ複数のオペレーティング・システムを対象とするアプリケーションを開発する場合でも、共通のコードを最大限に再利用することができ、冗長なコーディングを防ぐことができます。また、Worklight を使用すると、コードの管理やサポートが簡単かつ便利な方法で行えるようになります。図 4 は Worklight アプリケーションのファイル構造を示しており、common フォルダーのアプリケーション・コードはどのプラットフォーム環境を対象とするアプリケーションの間でも共有することができます。

    図 4. Worklight アプリケーションの構造
    Worklight アプリケーションの構造
  • エンタープライズ・バックエンドとの接続が可能

    Worklight アダプターを使用すると、Worklight を使って開発されたアプリケーションとバックエンド・システムを統合することができます。データベース、Web サービス、または Cast Iron を使用するエンタープライズ・バックエンド・システムへの接続に、デフォルトのままのアダプターを使用することができます。また、アダプターは Worklight Studio の中でも容易に作成することができます。作成できるアダプターのタイプは以下の 3 種類です。

    • SQL アダプター
    • HTTP アダプター
    • Cast Iron アダプター

    Worklight Studio では、アダプターをクライアント・アプリケーションが使用する前に、アダプターの機能をテストすることもできます。図 5 に Worklight Studio のアダプター作成ウィザードを示します。ウィザードを使用してアダプターを作成すれば、モバイル・アプリケーションをエンタープライズ・バックエンドに接続して、既存のサービスを再利用するのが容易になります。

    図 5. アダプター作成ウィザード
    アダプター作成ウィザード
  • すべてのアプリケーションを管理できる管理コンソール

    Worklight にはブラウザー・ベースの管理コンソールがあり、このコンソールを使用して、すべてのアプリケーションやアダプターを 1 つのインターフェースでデプロイ、管理することができます。 この管理コンソールを使用することで、サポートしているすべてのモバイル・オペレーティング・システム用のアプリケーションを管理することができます。また、アプリケーションの複数のバージョンの管理や、プッシュ通知の構成、アクティブ・ユーザー・レポートの作成などもすることもできます。図 6 に Worklight Console のアプリケーション管理画面を示します。

    図 6. Worklight Console
    Worklight Console
  • 統一的なプッシュ通知

    プッシュ通知は、Worklight アプリケーションがインストールされているデバイスに通知を送信することができるメカニズムです。アプリケーションがデバイスのフォアグラウンドで実行されているか否かにかかわらず、デバイスへ通知が送信されるようにプッシュ通知を構成することができます。構成の設定により、Android または iOS を使用するデバイスに対し、それぞれ Android C2DM または Apple APNS を使用して通知を送信することができます。Worklight では、すべてのデバイスに通知を送信することも、一部のデバイスのみに通知を送信することも、1 つのデバイスのみに通知を送信することもできます。

  • データを暗号化してオフラインで利用できる機能

    Worklight は、暗号化してデバイスに格納する必要のあるデータを暗号化する機能を備えています。オフラインの場合にアプリケーションが適切な動作をするように、Worklight の API フレームワークはアプリケーションの接続状態を検出します。オフラインの場合には、Worklight の暗号化キャッシュ・メカニズムを使用して機密データを暗号化フォーマットでデバイスに格納することができます。そのため、デバイスに格納する必要のある情報のデータ・セキュリティー要件に対応することができます。こうした組み込みの機能を使用すると、オフラインでアプリケーションを利用することができ、またオフラインで認証を行うことができます。この機能により、ネットワークとの接続状況を考慮したセキュアなモバイル・アプリケーションを開発するという要件に対応することができます。

  • 直接更新機能 (Direct Update) とリモートからの無効化機能

    いったん Worklight アプリケーションがデバイスにインストールされると、Worklight Server にデプロイされたアプリケーションに変更があった場合にはアプリケーションの更新を直接適用することができます。この機能は直接更新 (Direct Update) と呼ばれます。Worklight アプリケーションがデバイスのフォアグラウンドで起動されると、そのアプリケーションは Worklight Server に更新情報がないかどうかをチェックします。更新がある場合には、Worklight Server はアプリケーションの更新をそのデバイスにプッシュし、そのデバイスは最新バージョンのアプリケーションを実行するようになります。この機能により、アプリケーションの更新版をデバイスにリリースするために通常費やされる時間と手間を大幅に減らすことができます。また Worklight Console では、何らかの理由でアプリケーションの使用を一時的に停止する必要がある場合、そのアプリケーションを無効化することもできます。無効化する場合には、アプリケーションが利用可能であるか否かの状況をユーザーが認識できるように、そのアプリケーションを無効化するという通知がアプリケーションのユーザーにプッシュされます。図 7 に示す画面では、アプリケーションをリモートから無効化すること、そしてユーザーに送信される通知メッセージおよびダウンロード・リンクを指定することができます。この機能により、変更された機能や修正についての情報をアプリケーションに通知するという要件に対応することができます。

    図 7. Worklight Console のアプリケーション管理用画面
    Worklight Console のアプリケーション管理用画面
  • アプリケーションのセキュリティー

    Worklight には、アプリケーションのセキュリティーをサポートするための機能が多数用意されています。Worklight Server に接続されるすべてのアプリケーションの真正性を構成することができるため、配布後に変更されたアプリケーションは Worklight Server にアクセスできないように構成することができます。この機能は、どのアプリケーションにおいても、アプリケーション記述子構成ファイルの中で testAppAuthenticity プロパティーを使用して構成することができます。万一、変更が加えられたために真正でない可能性のある Worklight アプリケーションの再配布が試みられた場合でも、この機能を使用すると、再配布を防ぐことができるため、アプリケーションをセキュアに維持することができます。承認されていない変更を伴うアプリケーションが再配布されるのを防ぐために、コードを難読化することもできます。図 8 に Worklight アプリケーションの構成ファイルでセキュリティー構成のオプションを指定する部分のスナップショットを示します。

    図 8. Worklight の構成ファイルでアプリケーションのセキュリティーを設定する部分のスナップショット
    Worklight の構成ファイルでアプリケーションのセキュリティーを設定する部分のスナップショット
  • 分析のためのデータ収集

    Worklight には分析用のデータを収集するための機能が用意されています。データはサーバー・レベルとデバイス・レベルの両方で収集することができ、収集したデータは、さまざまなレポート・ツールを使用して、各種の要件に応じた分析データを得られるように構成することができます。Worklight のレポートを作成できる能力は、アクティブなユーザーを管理コンソールから見つける上で役に立ちます。基本的な分析レポート (新規ダウンロード、アプリケーションへのアクセス・パターン、日々の訪問状況やヒット状況などに基づいた、そのアプリケーションに固有のレポートなど) は BIRT (Business Intelligence Reporting Tool) Eclipse プラグインを使用して構成することができ、この分析データをエンタープライズ・レポート・システムにエクスポートすることができます。この機能により、分析やレポートを企業全体で行うという要件に対応することができます。図 9 に、この 30 日間にログインしたユーザーを示す Worklight Console のアクティブ・ユーザー・レポートの画面を示します。

    図 9. Worklight Console のアクティブ・ユーザー・レポート
    Worklight Console のアクティブ・ユーザー・レポート

まとめ

この記事では IBM Worklight の主要な機能と能力について概要レベルで説明しました。Worklight の詳細について学ぶための資料については以下の「参考文献」を参照してください。これらの資料を読むことで Worklight の利点を活用し、皆さんのモバイル・エンタープライズ・アプリケーションの競争力を高めてください。

参考文献

学ぶために

製品や技術を入手するために

議論するために

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