企業のためのクラウド・コンピューティング: 第 3 回 WebSphere CloudBurst を使ってプライベート・クラウドを構築する

この連載記事の第 1 回では、クラウド・コンピューティング全般について説明しました。そこではクラウドを構成する各階層、そしてさまざまなクラウドのタイプを、それぞれの利点や欠点と併せて紹介し、またクラウド・コンピューティングを取り巻く動向がエンタープライズ開発者にとって重要である理由を説明しました。第 2 回ではパブリック・クラウドに注目し、IBM® WebSphere® sMash と IBM DB2® Express-C を使用して、パブリック・クラウドによるインフラ上にホストされた Web アプリケーションを実現する方法を説明しました。今回の記事では IBM WebSphere CloudBurst™ と IBM WebSphere Application Server Hypervisor Edition を紹介し、これらの新しい製品を使用することで、WebSphere エンタープライズ環境が、いかにプライベート・クラウド・コンピューティングの多大なメリットを享受できるようになるかを説明します。 このシリーズの他の記事を見る |

Dustin Amrhein, Staff Software Engineer, IBM

Dustin Amrhein は、WebSphere Application Server 開発チームのメンバーとして IBM に入社しました。この開発チームに在籍している間、主にWeb サービス・インフラストラクチャーと Web サービス・プログラミング・モデルに取り組んでいました。さらにJava ランタイムを対象とした RESTful なサービス・フレームワークの開発にも携わっていました。現在の任務は、技術エバンジェリストとしてIBM WebSphere ポートフォリオの新しい技術を広めることです。


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        プロフェッショナル著者レベル

Ruth Willenborg, Senior Technical Staff Member, IBM

Ruth Willenborg は IBM の WebSphere Technology Institute のシニア・テクニカル・スタッフ・メンバーです。現在 WebSphere によるクラウド・コンピューティングと仮想アプライアンス・イニシアティブに従事しており、また新しい IBM WebSphere CloudBurst アプライアンス の技術エバンジェリストでもあります。仮想化とアプライアンス・イニシアティブに従事する前には、WebSphere パフォーマンス・チームのマネージャーとして、WebSphere Application Server のパフォーマンス分析、パフォーマンス・ベンチマークおよびパフォーマンス・ツール開発を担当していました。彼女は IBM で 20 年を超えるソフトウェア開発の経験があります。「Performance Analysis for Java Web Sites」 (2002 年 Addison-Wesley 刊) の共著者でもあります。


developerWorks 貢献著者レベル

2009年 6月 24日

はじめに

データ・センターのコストは、ハードウェア、物理コスト (電力や冷却装置)、そして保守管理という 3 つの主な要素で構成されています。この 3 つの要素のうち保守管理のコストは、継続的に発生するコスト全体の中の大きな部分を占めています。そのため、人手による処理、ミス、反復作業をなくすことが IT コストの削減と制御にとって非常に重要です。

新しい IBM WebSphere CloudBurst アプライアンスIBM WebSphere Application Server Hypervisor Edition と共に、WebSphere Application Server 環境を反復可能な方法で迅速にデプロイするためのデプロイ機能と管理機能を提供します。これらの機能を利用することで、そうした作業に通常付随する保守管理のための要件を大幅に減らすことができます。また WebSphere CloudBurst は、仮想化とクラウド・コンピューティングの原理を活用することにより、共有リソース・プール (つまりプライベート・クラウド) を効率的に使用してインフラのコストを削減するための機能を備えています。

この記事では WebSphere CloudBurst と WebSphere Application Server Hypervisor Edition を紹介し、これらの新しい製品を使用することで、WebSphere エンタープライズ環境が、いかにプライベート・クラウド・コンピューティングの多大なメリットを享受できるようになるかを説明します。


プライベート・クラウド

この連載の前回までの記事で説明したように、クラウド・コンピューティングのソリューションには、パブリック・クラウド、ハイブリッド・クラウド、プライベート・クラウドなど、さまざまな形式があります。通常、クラウドのタイプは、物理的なリソースとデータがどこに存在するかという点で定義されます。プライベート・クラウドという場合には、企業のファイアウォールの内側に存在するクラウドを意味します。つまり、クラウドを構成するコンピューティング・リソースとサービスはすべて、ファイアウォールによって保護されています。

プライベート・クラウドを採用してもコンピューティング・リソースを調達したり保守したりする責任から解放されるわけではありませんが、企業がパブリック・クラウドではなくプライベート・クラウドによるソリューションを選択する理由は数多くあります。下記はその一例です。

  • セキュリティーやコンプライアンスに関する規制: データの保存方法や保存場所に関して、パブリック・クラウドで提供されるサービスよりも厳格な制御や監視が必要であることがあります。
  • パブリック・クラウドでは実現できない機能: ベンダーによる非常に特殊な技術が必要な場合や、パブリック・クラウドを使用した場合には実現できないレベルの可用性に対する保証が必要な場合があります。
  • 金融資産としてのプライベート・クラウド: データ・センターに対して現在までに膨大な投資をしている場合には、そうしたリソースの使い方を最適化した方が、パブリック・クラウド・サービスに対して料金を支払うよりも望ましいという判断に至るかもしれません。そうしたコスト投資をしていない多くの企業でさえ、企業内に設けるソリューションの方が価格的に有利と判断する場合がよくあります。これは、外部のソリューションに柔軟性を求めようとすると非常に高価になるためです (これはちょうど、車を購入せずに 1 年間レンタカーを借りる場合と似ています)。

プライベート・クラウドによるソリューションでは、パブリック・クラウドによるソリューションがもたらすメリットの多く、つまりコストの削減、ビジネスのアジリティー、高度な技術革新などを、同じように享受ことができます。主な違いは、クラウドを完全に制御できると同時に、その責任が、すべて皆さんの肩にかかってくるという点です。


WebSphere CloudBurst の紹介

WebSphere CloudBurst は IBM による新しいアプライアンスであり、企業内でプライベート・クラウドを構築および管理するためのハードウェア機能とソフトウェア機能を備えています。WebSphere CloudBurst によって、単一サーバーによるデプロイメントから複雑なクラスター・デプロイメントに至るまで、仮想化された WebSphere Application Server のさまざまな構成を、構築、デプロイ、管理することができます。

図 1. WebSphere CloudBurst
WebSphere CloudBurst

図 1 を見るとわかるように、WebSphere CloudBurst には下記の 3 つの基本部分があります。

  • アプライアンス: 実際の WebSphere CloudBurst アプライアンスには、ハードウェア、管理アプリケーション、そしてプリインストールされて構成済みの、WebSphere Application Server の一連の仮想化イメージとパターンが含まれています。WebSphere CloudBurst へのアクセスはすべて、サポートされているインターフェース (Web 2.0 ユーザー・インターフェース、コマンドライン・インターフェース (CLI)、および REST API) を介して行われます。
  • クラウド: WebSphere CloudBurst は、アプライアンスで使用できるハイパーバイザー、ネットワーク機能、およびストレージが用意された「自前のクラウド」モデルをサポートしています。デプロイされた WebSphere アプリケーションはこのクラウドで実行され、WebSphere CloudBurstアプライアンスで実行されるわけではありません。
  • 仮想システム: WebSphere CloudBurst には、IBM が提供するイメージとパターンをカスタマイズして WebSphere アプリケーションのセルフサービス・カタログを作成できるツールと、WebSphere Application Server による仮想システムをプライベート・クラウドに配布する機能が用意されています。WebSphere CloudBurst アプライアンスにはインテリジェントな配置機能があり、クラウド・リソースを効率的に利用し、高可用特性が得られるように、WebSphere Application Server のパターンをクラウドにデプロイすることができます。パターンがデプロイされた後は、環境に修正を適用するメカニズムを含めて、WebSphere CloudBurst によって管理機能と最適化機能が提供されます。

WebSphere CloudBurst アプライアンスは、サーバーやミドルウェアに関して増大する一方の保守管理コストに、いくつかの方法で対応しています。WebSphere CloudBurst には、一貫性のある反復可能な WebSphere Application Server デプロイメントを構築するためのツールが用意されています。こうしたデプロイメントは仮想化環境用に最適化されているため、管理コストを削減できる上、仮想化環境によるサーバー統合のメリットを享受することができます。しかも、WebSphere CloudBurst では、配布する構成に対し、ベストプラクティスに基づいたチューニングを行うことができます。

また WebSphere CloudBurst は、IBM の Rational® ブランドや Tivoli® ブランドの開発ツールやサービス管理ツールを使用したいくつかの統合シナリオの一部でもあります。これらの統合機能を利用することによって、エンド・ツー・エンドのワークフローをシームレスに実現し、IT の効率とアジリティーをより一層、大幅に改善することができます。


なぜアプライアンスが必要なのか

WebSphere CloudBurst アプライアンスは、その名の通り、まさにアプライアンス (電化製品) です。この新しい製品をアプライアンスの形態で提供することにより、以下のように多くのメリットが得られます。

  • 利用しやすさ: アプライアンスは非常に使い勝手のよいものです。アプライアンスを接続し、最初のライセンスを受諾すると、WebSphere CloudBurst のコンソールを即座に使用することができます。余分なインストール・ステップは必要なく、WebSphere によるプライベート・クラウドの構築をすぐに開始することができます。
  • セキュリティー: WebSphere CloudBurst アプライアンスは IBM WebSphere DataPower® SOAアプライアンスと同様、改ざん防止対応のケースに入った状態で提供されます。さらに WebSphere CloudBurst は、SSL 証明書、パスワード、仮想イメージ、アプリケーションなど、WebSphere CloudBurst に保存されるものをすべて暗号化します。ユーザーは、Web 2.0 インターフェース、コマンドライン・インターフェース、または REST API という、3 つのインターフェースのいずれかを使って WebSphere CloudBurst とやり取りします。その他に、アクセス・ポイント (コマンドライン・シェルなど) がなく、そのため悪意の攻撃を受けやすい部分が少なくなっています。
  • パフォーマンス: WebSphere CloudBurst アプライアンスは、同梱されている WebSphere Application Server 仮想イメージとパターン、そしてカスタマイズされたそれらのものの両方に対して、専用のストアとして機能します。WebSphere CloudBurst アプライアンスでは圧縮と保存のための高度な手法が採用されているため、ユーザーはこうした相当大きな仮想イメージでも大量に保存することができます。また WebSphere CloudBurst アプライアンスは、こうした仮想イメージの管理、そして WebSphere によるプライベート・クラウドの構築に必要な処理能力も備えています。

では、WebSphere CloudBurst に不可欠な、WebSphere Application Server の仮想イメージとパターンを詳細に見てみましょう。


プリロードされた仮想イメージとパターン

仮想イメージは WebSphere CloudBurst の基本要素です。特に、新しい WebSphere Application Server Hypervisor Edition は、WebSphere CloudBurst のパターンを構築する基礎となる構成ブロックです。WebSphere Application Server Hypervisor Edition (図 2) は、ハイパーバイザー上で動作する、WebSphere Application Server の特別版であり、また仮想化された環境用に最適化されています (このパッケージには WebSphere Application Server V6.1.0.x 用と V7.0.0.x 用の両方があります)。WebSphere Application Server Hypervisor Edition の最初のバージョンは、WebSphere Application Server のバイナリーとプロファイル、IBM HTTP Server、そして SLES Linux オペレーティング・システムで構成され、それらがすべてプリインストールされ、OVF (Open Virtualization Format) でパッケージングされています。

仮想イメージはプリインストールされ、構成およびチューニングが済んだ状態となっているため、WebSphere Application Server を再度インストールする必要がなく、投資額の回収を迅速に実現することができます。

図 2. WebSphere Application Server Hypervisor Edition
WebSphere Application Server Hypervisor Edition

WebSphere Application Server Hypervisor Edition は WebSphere CloudBurst とは別に購入することができ、当初は VMware ESX と ESXi 用が入手可能になる予定です。ただし、WebSphere Application Server Hypervisor Edition を WebSphere CloudBurst アプライアンスの中で使用することにより、より高い価値を実現することができます。

WebSphere CloudBurst にはパターンの概念が導入されています。この場合のパターンとは、 WebSphere Application Server Hypervisor Edition の中に含まれるコンポーネントから構築されるトポロジーを指します。これらのパターンはデプロイ可能な単位であり、そのまま VMware ESX サーバーまたは ESXi サーバー上で実行することができます。図 3 は典型的な WebSphere CloudBurst パターンを図で表現したものです。

図 3. WebSphere CloudBurst パターン
WebSphere CloudBurst パターン

WebSphere CloudBurst に同梱されているパターンは、WebSphere Application Server 環境の構築に関して 10 年間にわたり蓄積された専門知識、そしてユーザーと技術者双方からのフィードバックの結晶です。WebSphere CloudBurst はデプロイ可能なトポロジーを提供するだけではなく、最も適切で価値のあるベストプラクティスが確実に環境に反映されるように、特定のパターンに基づいて WebSphere Application Server 環境のチューニングを行います。

イメージとパターンはカスタマイズが可能

WebSphere CloudBurst では、製品をすぐに使用可能にするための機能としてパターンというものが提供される他に、カスタマイズ機能も用意されています。WebSphere CloudBurst アプライアンスによって提供される仮想イメージと WebSphere パターンの両方をカスタマイズすることによって、特定の目的を持つ、カスタマイズされたプライベート・クラウドを企業内に構築することができます。

仮想イメージの拡張

WebSphere CloudBurst に同梱されている WebSphere Application Server Hypervisor Edition の各イメージは、拡張機能によってカスタマイズすることができます。そのためには拡張するイメージを選択して、必要なカスタマイズを行い、そしてそのイメージを再度キャプチャーします。そうすると新しいイメージは他のイメージと共に WebSphere CloudBurst のカタログに保存されます。

仮想イメージの拡張機能の使い方の好例は、カスタム・ソフトウェアを含むイメージを作成する場合です。例えば、WebSphere Application Server Hypervisor Edition を拡張し、その企業で義務づけられているアンチウィルス・ソフトウェアをインストールし、そのイメージを再度キャプチャーしてから WebSphere CloudBurst のカタログに保存します。こうすることによって、新たに作成されたイメージを使ってパターンを作成すると、デプロイされるすべての仮想システムには確実に必須ソフトウェアが含まれることになります。

パターンの作成

仮想イメージの場合と同じように、WebSphere CloudBurst のパターンもカスタマイズが可能です。同梱されているパターンをカスタマイズし、そのパターンにおいて WebSphere のコンポーネントを追加または削除したり、あるいはそのパターンにスクリプト・パッケージを追加したりすることもできます。WebSphere Application Server Hypervisor Edition には、パターンの作成に使用できるコンポーネントとして以下の 6 つがあります。

  • デプロイメント・マネージャー
  • ジョブ・マネージャー
  • 管理エージェント
  • カスタム・ノード
  • IBM HTTP Server のみのノード
  • スタンドアロン・ノード

これらのコンポーネントは、ドラッグ・アンド・ドロップによる直感的な構成ビルダーを利用して追加または削除したり、数を増やしたりすることができます。新しいパターンを作成する場合には、そのパターンに含まれるコンポーネントに関連するプロパティーをロックすることができます。例えばテスト用のパターンを作成するにあたり、すべてのテスト用デプロイメントのメモリー使用量が同じになるようにしたいと考えたとします。その場合、パターンに含まれる各コンポーネントの仮想メモリーのサイズに関するプロパティーを、パターン作成時にロックすることができます。このようにしておくと、そのパターンを誰が使用しても、一貫性のある反復可能なデプロイメントが保証されます。

今回は WebSphere CloudBurst のカスタマイズ機能の紹介として非常に簡単に説明しましたが、今後の記事ではこのカスタマイズ機能を詳細に取り上げ、そうした機能をいつ、どのように使用するのかについて紹介する予定です。

パターンのカスタマイズにスクリプト・パッケージを使うこともできます。スクリプト・パッケージは実行スクリプトと必要な成果物を提供する zip バイナリー (.zip または .tgz) です。スクリプト・パッケージを使うことで、デプロイされたパターンにアプリケーションをインストールしたり、デプロイされた WebSphere Application Server インスタンスのチューニングを行ったり、あるいは他の何らかの必要なアクションを実行することができます。WebSphere CloudBurst ユーザーはスクリプト・パッケージを作成し、それらのパッケージをカタログの中にロードします。スクリプト・パッケージがパターンの中に含まれるようにするには、先ほどと同じドラッグ・アンド・ドロップによる構成ビルダーを使います。

一連のカスタム・パターンによって、プライベート・クラウドにデプロイ可能な WebSphere アプリケーションのセルフサービス・カタログを構成することができます。ただし、WebSphere CloudBurst が最初のデプロイを行う前に、システム管理者がクラウドを定義する必要があります。では次に、クラウドの構築方法を見てみましょう。


「自前のクラウド」

WebSphere CloudBurst は、仮想化環境用に最適化された WebSphere Application Server 構成を作成する機能の他に、WebSphere Application Server による仮想システムを実行するためのプライベート・クラウドを構築できる機能を持っています。これらの仮想システムは WebSphere CloudBurst アプライアンス上で実行されるわけではなく、WebSphere CloudBurst では、ユーザーが WebSphere CloudBurst アプライアンスに対してプライベート・クラウドを定義する「自前のクラウド」モデルをサポートしています。

WebSphere CloudBurst に関する限り、プライベート・クラウドは、ハイパーバイザー、ストレージ、IP アドレス、という 3 つのリソースで構成されます (図 4)。

ハイパーバイザーはソフトウェアによる仮想化プログラムであり、マシン上のオペレーティング・システムと物理リソースとの間の抽象化階層として機能します。この抽象化によって、複数のオペレーティング・システムとアプリケーション・スタックを 1 つの物理リソース上で実行させることができ、そのためリソース使用率を高めることができます。例えば、ハイパーバイザーを活用すると、3 つの別々の仮想マシン (オペレーティング・システムと WebSphere Application Server のデプロイメント・マネージャーを持つ 1 つのマシンと、オペレーティング・システムと WebSphere Application Server のカスタム・ノードを持つ 2 つのマシン) を物理的には同じサーバー上で実行することができます。

クラウドをセットアップするためには、管理者が、ハイパーバイザー (当初は VMware ESX または ESXi のいずれかとなります) の場所とログインの資格情報を定義します。これらのハイパーバイザーは WebSphere CloudBurst アプライアンスによって構築される仮想システムをホストします。WebSphere CloudBurst はハイパーバイザーに関連付けられたストレージを自動的に検出し、一連のハイパーバイザー全体にわたって WebSphere Application Server 仮想システムの配置を行います。

WebSphere CloudBurst によるプライベート・クラウドの、もう 1 つのコンポーネントは、WebSphere Application Server 仮想マシンが使用できる IP アドレスのプールです。この IP アドレスのプールを管理者が定義しておくと、新しい仮想マシンが作成された場合、それぞれに一意の値を WebSphere CloudBurst が割り当ててくれます。

管理者にとって必要なことは、ハイパーバイザーと一連の IP アドレスを WebSphere CloudBurst に対して定義することだけです。これらのリソースが定義された後は、WebSphere CloudBurst が仮想システムによるプライベート・クラウドの構築と管理を行います。

図 4. WebSphere によるプライベート・クラウド
WebSphere によるプライベート・クラウド

アプライアンスからクラウドへ

クラウドへのデプロイ

管理者によってプライベート・クラウドが定義されると、WebSphere のパターンをデプロイすることができます。デプロイは単純なプロセスであり、デプロイ時特有の情報 (ユーザー専用のパスワードなど) を提供すればよいだけです。WebSphere CloudBurst は、インテリジェントな配置機能、および WebSphere Application Server のリソース要件についての知識を活用し、物理的に複数のマシンにわたって適宜仮想システムを配置します。WebSphere CloudBurst はハイパーバイザーと通信してハイパーバイザーのキャパシティーを認識し、また高可用性に関しても考慮に入れます。例えば、WebSphere Application Server クラスター・パターンの中にあるカスタム・ノードは、物理的に複数のマシンにわたって配置されます (図 5)。こうすることによって、ある 1 台の物理的サーバーが故障した場合にも、そのマシンが Single Point of Failure (SPOF) となることを回避します。

デプロイ・プロセスは、オペレーティング・システムのインストールから WebSphere Application Server のフェデレーションや起動、そしてユーザー・アプリケーションのデプロイに至るまで、迅速に行われ、クラスター化されたアプリケーション全体が数分で使用できるようになります。アプリケーションが使用できる状態になると、ユーザーに通知されます。WebSphere CloudBurst のコンソールから、SSH または VNC を使って容易に仮想システムにログインすることも、あるいは WebSphere Application Server の管理コンソールに直接ログインすることもできます。

図 5. 仮想システムの概要
仮想システムの概要

クラウドの管理

WebSphere CloudBurst の機能は仮想システムをプライベート・クラウドにデプロイすることだけではありません。WebSphere CloudBurst によって、WebSphere Application Server のデプロイメントの監視と管理も行うことができます。

修正の適用

WebSphere CloudBurst には、仮想イメージやパターン、そして仮想システムのデプロイメントを更新するための保守機能が用意されています。最も容易な方法としては、新しいバージョンの WebSphere Application Server Hypervisor Edition (つまり WebSphere Application Server とオペレーティング・システムに関するすべての保守が適用された完全なイメージ) に移行し、その新しいイメージによってパターンをデプロイし直す方法です。これは迅速で反復可能なプロセスです。

しかし場合によっては、既にクラウドにデプロイされた仮想システムに直接修正を適用しなければならない可能性もあります。そうした場合には、WebSphere CloudBurst のコンソールを使用してサービス・パックや iFix をカタログの中に直接アップロードすることができます。ユーザーが仮想システムを選択すると、WebSphere CloudBurst が修正の適用を処理し、その際には修正適用前の仮想システムのスナップショットまで作成してくれます。修正が適用された後は、単純にボタンをクリックするだけで、いつでも修正前の仮想システムの状態にロールバックすることができます。

クラウドの使用状況の監視

クラウド・コンピューティングは使用量に応じて課金を行います。それを実現するためには当然ながら、クラウド・リソースの使用状況を追跡してレポートする必要があります。WebSphere CloudBurst にはクラウドの使用状況に関する統計機能があり、企業における課金体制をサポートします。管理者は WebSphere CloudBurst 内の各ユーザーについて、仮想マシンの使用状況、そして CPU、メモリー、IP の使用率の情報を取得することができます。これらの情報はすべて WebSphere CloudBurst のコンソールに表示することも (図 6)、あるいはスプレッドシートにダウンロードすることもできます。

図 6. ユーザーによる使用状況のレポート
ユーザーによる使用状況のレポート

ユーザーごとのリソース使用状況の他に、WebSphere CloudBurst はクラウドのリソースの使用状況に関する情報も提供します。物理CPU と仮想 CPU の使用率、物理メモリーと仮想メモリーの使用率、IP やストレージの使用状況などはすべて、WebSphere CloudBurst のコンソールで確認することができます。


まとめ

企業はプライベート・クラウドによって、パブリック・クラウドにおけるメリットの大部分を同じように享受することができます。しかも、プライベート・クラウドの方が、熟知している既存のリソースを活用できるため、クラウド・コンピューティングの出発点として容易であるとさえ言えます。WebSphere CloudBurst アプライアンスは WebSphere Application Server によるプライベート・クラウドを実現する革命的な新製品であり、オペレーティング・システムからユーザーのカスタム・スクリプトやアプリケーョンに至るまでの、仮想化された反復可能なデプロイメントの作成を実現します。ボタンをクリックするだけで、こうした反復可能なデプロイメントをプライベート・クラウドに容易に移行することができます。WebSphere Application Server の仮想システムをクラウドに移行すると、その仮想システムは通常の WebSphere Application Server デプロイメントとまったく同じように利用することができます。WebSphere CloudBurst では、サービス・パックや iFix の適用による保守が可能となっており、WebSphere によるクラウド環境を、そのライフサイクル全体をとおして完全に管理することができます。こうした機能はすべて、使いやすい Web 2.0 インターフェースを介して利用できる他、ドキュメントの整備された REST API、またはコマンドライン・インターフェースからも利用することができます。

参考文献

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