WebSphere MQ File Transfer Edition (FTE) は、堅牢な管理ファイル転送ソリューションを実現します。例えば、ファイル移動に対する信頼性の高い制御、転送の監査証跡の取得、および自動化されたスケジュール済み転送などを行うことができます。この記事では、既に WebSphere MQ を理解している読者に FTE を紹介し、また AIX と Windows 上に単純な FTE アーキテクチャーを作成する方法を、エージェント・キュー・マネージャー、コマンド・キュー・マネージャー、調整キュー・マネージャーの使い方を含めて説明します。

Wayne Toh, Application Integration & Middleware Solutions Specialist, IBM Sales & Distribution, IBM

Wayne Toh はシンガポールにある IBM Sales & Distribution の Application Integration & Middleware Solutions Specialist です。



2009年 5月 06日

はじめに

IBM® WebSphere® MQ File Transfer Edition (以下、FTE と呼びます) は、実績のある、WebSphere MQ のトランスポート・バックボーンを活用します。FTE によって、堅牢な管理ファイル転送ソリューションを実現することができます。例えば、ファイル移動に対する信頼性の高い制御、転送の監査証跡の取得、および自動化されたスケジュール済み転送などを行うことができます。FTE は主要な分散プラットフォームで利用することができます。この記事では、既に WebSphere MQ と、MQ における各種の概念 (キュー・マネージャー、チャネル、チャネル・リスナー、メッセージ・チャンネル・エージェントなど) を理解している読者を対象として FTE を紹介します。またこの記事では、AIX® と Microsoft® Windows® 上に単純な FTE アーキテクチャーを作成する方法も説明します。

FTE アーキテクチャー

FTE アーキテクチャーの主なコンポーネントを以下で説明します。

エージェント

FTE エージェントはファイル転送操作のエンドポイントを構成するプロセスです。ファイルの転送先または転送元のシステム上に、エージェントが存在している必要があります。エージェントは WebSphere MQ V6.0 以降のキュー・マネージャーに接続する必要があります。各エージェントは、そのエージェントに関連付けられたキュー・マネージャー上に、専用の一連のキューを持っています。そのため、キュー・マネージャーは 1 つまたは複数のエージェントをホストすることができます。エージェントは、コマンド・キュー・マネージャーやエージェント・キュー・マネージャーと同じホスト上にある必要はありません。

エージェント・キュー・マネージャー

各エージェントは MQ キュー・マネージャー上に一連のキューを持つ必要があります。これらのキューは FTE の内部キュー・システムであり、エンド・ユーザーがその存在を意識することはありません。エージェントに関連付けられたキュー・マネージャーはエージェント・キュー・マネージャーと呼ばれ、ローカルとリモートのどちらにすることもできます。

コマンド・キュー・マネージャー

コマンドライン、あるいはWebSphere FTE MQ Explorer プラグイン・ツールの使用により、FTE エージェントにコマンドを送信することができます。コマンドを送信する際、このプラグイン・ツールの接続先となるキュー・マネージャーは、コマンド・キュー・マネージャーと呼ばれます。コマンド・キュー・マネージャーはエージェント・キュー・マネージャーとは異なる場合もあります。各コマンドによって、一時動的キューがキュー・マネージャー (WebSphere MQ V6.0 以降) 上に作成されます。エージェントは同じコマンド・キュー・マネージャーに接続されている必要はなく、このキュー・マネージャーはローカルとリモートのどちらにすることもできます。

調整キュー・マネージャー

調整キュー・マネージャーはパブリッシュ/サブスクライブ機能を必要とするため、WebSphere MQ V7.0 以降のキュー・マネージャーでなければなりません。セットアップの際に、SYSTEM.FTE というトピックが調整キュー・マネージャー上に作成されます。エージェントはファイル転送の進行状況に関する情報をこのトピックに送信し、サブスクライバーがある場合にはその情報が WebSphere MQ のキューに保存されます。WebSphere FTE MQ Explorer プラグインは、インストール後、このトピックのサブスクライバーとなります (図 1)。

図 1. トピック MQ FTE に対するサブスクリプション
トピック MQ FTE に対するサブスクリプション

こうすることで、ファイル転送の進行状況が WebSphere MQ Explorer の 転送ログ・ビューと 現在の転送進行状況 ビューに表示されるようになります。WebSphere FTE MQ Explorer プラグインがインストールされると、下記のように ファイル転送管理ノードが左側の列に表示されます。

図 2. MQ Explorer プラグイン
MQ Explorer プラグイン

ファイル転送のシナリオ

このシナリオでは、SAP をホストするシステムから WebSphere Message Broker をホストするシステムへ、FTE を使ってファイルを転送します。WebSphere Message Broker はメッセージを変換してから FTE を介してレガシー・システムにメッセージを送信します。このトポロジーでは、SAP ホスト上の FTEAG02 と WebSphere Message Broker ホスト上の FTEAG01 という 2 つの FTE エージェントがデプロイされています。2 つの FTE エージェントは、FTEQM01 という同じエージェント・キュー・マネージャーを共有しています。調整キュー・マネージャー CRQM01 は Windows 2003 Server ホスト上に作成されています。また調整キュー・マネージャーはコマンド・キュー・マネージャーとしても動作します。次のセクションでは、デプロイメントについて説明します (レガシー・システムへの接続に関しては説明を省略します)。

図 3. 分散 FTE ネットワークのコンポーネント
分散 FTE ネットワークのコンポーネント

FTE は以下の 3 枚の CD で構成されています。

クライアント CD
エージェント・キュー・マネージャーとクライアント・トランスポート・モードでのみ通信する、FTE エージェントを作成するために使用します。
サーバー CD
クライアント・トランスポート・モードとバインディング・トランスポート・モードの両方でエージェント・キュー・マネージャーと通信する、FTE エージェントを作成するために使用します。
ツール CD
リモート管理のためのコマンド群と、WebSphere MQ Explorer 用の FTE プラグインを含んでいます。

Windows に調整マネージャーをインストールして作成する

  1. WebSphere MQ Server V7.0 と WebSphere MQ Explorer をインストールします。
  2. ローカルの mqm グループに mqadmin というユーザーを作成します。このユーザーがメッセージ・キューを管理します。デフォルトで、WebSphere MQ がインストールされると、MQ サービス・プロセス (AMQSVC.exe) と、このプロセスによって起動される DCOM オブジェクト (AMQMSRVN.exe) が、MUSR_MQADMIN という ID で実行されるようにセットアップされます。この ID には適切な権限がすべて設定されています。この ID、またはそのパスワードが変更されると、DCOM は実行されず、MQ サービスを起動することができなくなります。AMQMSRVN を実行するためのユーザーを mqadmin に変更するには、DCOMCNFG.exe というアプリケーションを使います。
  3. キュー・マネージャーを、調整キュー・マネージャー CRQM01 として作成します。
  4. FTE には、ファイル転送をモニターするための、WebSphere MQ Explorer 用のプラグインが用意されています。ツール CD の \Disk1\InstData\Windows\VM ディレクトリーにある install.exe をクリックします。

WebSphere Message Broker ホストに WebSphere MQ サーバーをインストールし、エージェント・キュー・マネージャーを作成する

エージェント・キュー・マネージャーは、WebSphere MQ V6 または V7 でホストすることができます。分散プラットフォームの場合、FTE を扱うためには WebSphere MQ V6.0 を V6.0.2.4 以降にアップグレードする必要があります。

  1. WebSphere MQ サーバーをインストールします。
  2. エージェント・キュー・マネージャー FTEQM01 を作成します。

エージェント・キュー・マネージャーと調整キュー・マネージャーとの間に通信チャネルを作成する

以下の手順で通信用の WebSphere MQ チャネルを作成します。

  1. エージェント・キュー・マネージャーから調整キュー・マネージャーへのチャネルを作成します。
  2. エージェント・キュー・マネージャーからコマンド・キュー・マネージャーへのチャネルを作成します。調整キュー・マネージャーと同じキュー・マネージャーである場合は、このステップをスキップします。
  3. コマンド・キュー・マネージャーから調整キュー・マネージャーへのチャネルを作成します。両者が同じキュー・マネージャーである場合は、このステップをスキップします。
  4. エージェント・キュー・マネージャーから、FTE ネットワーク上の他のすべてのエージェント・キュー・マネージャーへのチャネルを作成します。

WebSphere Message Broker ホストと SAP ホスト上に MQ FTE エージェントを作成する

次に、それぞれの AIX サーバーに FTE エージェント FTEAG01 と FTEAG02 をインストールします。サーバー CD の /Disk1/InstData/AIX/VM ディレクトリーにある install.bin を実行します。

インストールが終わると、構成ディレクトリーに <調整キュー・マネージャー名>.mqsc ファイルが作成されます。このファイルには、調整マネージャーの FTE に必要な MQ オブジェクトを作成するためのコマンド群が含まれています。このファイルのあるディレクトリーは、<構成ファイル用ディレクトリー>/<調整キュー・マネージャー名>/<調整キュー・マネージャー名>.mqsc です。

このファイルを、調整キュー・マネージャーが作成されているサーバーに転送し、調整キュー・マネージャーに対して実行します。これを実行する必要があるのは 1 度だけです。このコマンドを実行するには、MQSC スクリプト・ファイルがあるディレクトリーに移動し、コマンド runmqsc CRQM01 < CRQM01.mqsc を実行します。

これにより作成されるオブジェクトの 1 つが SYSTEM.FTE トピックです (図 4)。

図 4. SYSTEM.FTE トピック
SYSTEM.FTE トピック

インストール後に作成されるもう 1 つのファイルが <エージェント名>_create.mqsc です。この <エージェント名>_create.mqsc ファイルをエージェントのキュー・マネージャーに対して実行し、作成したすべての FTE エージェントに対して内部システム・キューを作成します。このファイルのあるディレクトリーは、<構成ファイル用ディレクトリー>/<調整キュー・マネージャー名>/agents/<エージェント名>/<エージェント名>_create.mqsc です。

このコマンドを実行するには、MQSC スクリプト・ファイルがあるディレクトリーに移動し、コマンド runmqsc FTEQM01< FTEAG01_create.mqsc を実行します。

フォルダーのアクセス権を割り当てる

次に、FTE エージェント・プロセスを実行する、root 以外の選択されたユーザーに、フォルダーのアクセス権と所有権を割り当てます。例えば、root ユーザーではない fteagent というユーザーを作成します。フォルダーのアクセス権の詳細に関しては、「 WebSphere MQ File Transfer Edition V7 をセキュアにする」を参照してください。

ファイル転送をテストする

いよいよ、両方のエージェントをそれぞれのサーバーで起動します。そのためには WMQFTE/bin ディレクトリーから下記のように fteStartAgent コマンドを実行します。

./fteStartAgent FTEAG01
./fteStartAgent FTEAG02

テストとして、test.txt というテキスト・ファイルをエージェント FTEAG01 からエージェント FTEAG02 に転送します。調整キュー・マネージャーをホストするマシンの WMQFTE\tools ディレクトリーから下記のコマンドを実行します。

fteCreateTransfer -w -sa FTEAG01 -sm FTEQM01 -da FTEAG02 -dm FTEQM01 
-df /transfer/in/test.txt /transfer/out/test.txt

また、MQ Explorer で FTE プラグインを使ってファイルを転送することもできます。ファイル転送管理 の下にある任意のアイコンを右クリックし、ファイル転送のパラメーターを入力します。MQ Explorer で転送ログを表示することができます。下記は転送のパラメーターを示しています。

図 5. ファイル転送のパラメーター
ファイル転送のパラメーター

監査情報

WebSphere MQ Explorer はファイル転送のログをバイナリー・ファイルに保存します。SYSTEM.FTE トピックにサブスクライブするアプリケーションを作成することができます。このアプリケーションの中で、Message Queue Interface (MQI) または WebSphere MQ JMS を使ってキューにあるメッセージを取得し、それらのメッセージをデータベースに保存するようにします。

MQ のセキュリティー

FTE には、エージェントがアクセスできるディレクトリーを指定する sandbox など、セキュリティー用のツールが用意されています。また、ベースとなる MQ についてもアクセス制御や認証によりセキュリティー強化を図り、ファイル・ディレクトリーのアクセス権も適切に設定する必要があります。詳細については「WebSphere MQ File Transfer Edition V7 をセキュアにする」を参照してください。

まとめ

既存の MQ ネットワークを使って FTE によるファイル転送を行うことで、2 つの別々なインフラを維持するために必要であったコストとリソースを節約することができます。ユーザーは中央の場所から、MQ Explorer プラグインのインスタンスを 1 つまたは複数使って、ファイル転送を監視および管理することができます。この記事で説明したタスク・リストを使って単純な FTE ネットワークを作成し、FTE の入門として役立ててください。

参考文献

  • WebSphere MQ 開発者リソースのページ
    WebSphere MQ を使用してメッセージング・ミドルウェアを設計、開発、デプロイするのに役立つ技術リソースが用意されています。WebSphere MQ により、ほとんどすべてのプラットフォームの、アプリケーション、Web サービス、トランザクションなどの統合が可能となります。
  • WebSphere MQ 製品のページ
    製品の説明、製品に関するニュース、トレーニング情報、サポート情報その他が用意されています。
  • WebSphere MQ V6 インフォメーション・センター
    WebSphere MQ V6 に関するすべての資料に 1 ヵ所からアクセスできる Web ポータルであり、WebSphere MQ 環境のインストール、構成、使用のための概念的な情報、タスク情報、参考情報などが用意されています。
  • WebSphere MQ V7 インフォメーション・センター
    WebSphere MQ V7 に関するすべて資料に 1 ヵ所からアクセスできる Web ポータルであり、WebSphere MQ 環境のインストール、構成、使用のための概念的な情報、タスク情報、参考情報などが用意されています。
  • WebSphere MQ FTE 製品のページ
    製品の説明、製品に関するニュース、トレーニング情報、サポート情報その他が用意されています。
  • WebSphere MQ FTE インフォメーション・センター
    WebSphere MQ FTE に関するすべての資料に 1 カ所からアクセスできる Web ポータルであり、WebSphere MQ FTE 環境のインストール、構成、使用のための概念的な情報、タスク情報、参考情報などが用意されています。
  • WebSphere MQ ドキュメント・ライブラリー
    WebSphere MQ の製品マニュアルが用意されています。
  • WebSphere MQ サポート・ページ
    サポートに関する問題やその解決方法のための検索可能なデータベースであり、他にもダウンロードや修正情報、問題追跡などの資料があります。
  • WebSphere MQ 公開ニュースグループ
    IBM が運営するフォーラムではありませんが、WebSphere MQ に関する技術的な質問への答えを得ることができ、また WebSphere MQ に関する知識を他のユーザーと共有することができます。
  • WebSphere MQ SupportPacs
    WebSphere MQ ファミリー製品に関するコード、資料、パフォーマンス・レポートなどをダウンロードすることができます。
  • WebSphere SOA ソリューションの開発者リソース・ページ
    WebSphere による SOA ソリューションのための技術リソースを入手することができます。
  • developerWorks の SOA and web services ゾーン
    SOA と Web サービスに関係するソリューションの評価、計画、設計、実装のための技術リソースが用意されています。
  • developerWorks の WebSphere application connectivity ゾーン
    WebSphere application connectivity ゾーン (以前の WebSphere business integration ゾーン) にアクセスし、ハウツー記事、ダウンロード、チュートリアル、トレーニング情報、製品情報などを利用してください。
  • developerWorks の WebSphere business process management ゾーン
    WebSphere business process management ゾーンにアクセスし、ハウツー記事、ダウンロード、チュートリアル、トレーニング情報、製品情報その他のリソースを利用して、ビジネス・プロセスのモデル化、組み立て、デプロイメント、管理に役立ててください。
  • WebSphere ビジネス・プロセス管理製品のページ
    ビジネス・ユーザーと技術ユーザーのどちらも、すべてのビジネス・プロセス管理製品の概要を手軽に調べることができます。
  • WebSphere フォーラム
    製品に特化したフォーラムとして、技術的な疑問への答えを得ることができ、また皆さんの専門知識を他の WebSphere ユーザーと共有することができます。
  • 最もよく利用される、WebSphere の試用版ダウンロード
    主な WebSphere 製品の試用版を無料でダウンロードすることができます。
  • IBM ソフトウェア製品の試用版のダウンロード
    IBM® の DB2®、Lotus®、Rational®、Tivoli®、WebSphere® 製品群の一部を試用版として無料でダウンロードすることができます。
  • IBM Press から出版された技術書
    Barnes & Noble から手軽にオンラインで注文することができます。
  • developerWorks technical events and Webcasts
    IBM の専門家による無料の技術セッションとして、皆さんの学習を促進し、また皆さんの抱える最も困難なソフトウェア・プロジェクトも成功に導きます。セッションの種類は、1 時間の Web キャストから、世界中の各都市での半日や 1 日のライブ・セッションに至るまで、多種多様です。

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ArticleTitle=WebSphere MQ File Transfer Edition 入門
publish-date=05062009