WebSphere Business Services Fabricを使用した、コンポジット・ビジネス・サービスの開発: 第2回 ビジネス要件の分析

今回は、第1回で理解したコンポジット・ビジネス・サービス(CBS)の概念を元に、サンプルのビジネス・ケースを用いて、CBSをどのように開発し、どのようにビジネス上の問題を解決するのかを説明します。

Libra Huang, IT Architect, IBM SOA Solution Center

Author photoLibra HuangはIBM Software GroupのSOA Solution Center(SSC)に勤務するITアーキテクトです。J2EEを担当した経験があり、現在は主に銀行業界のコンポジット・ビジネス・サービス(CBS)資産の開発に取り組んでいます。



Hicks Lin, Software Engineer, IBM SOA Solution Center

Hicks LinHicks Linは、台北のIBM China Software Development Labに勤務する開発者です。現在は銀行業界用のコンポジット・ビジネス・サービス(CBS)アプリケーションの開発を担当しています。SOA、J2EEなど、新興のサーバー・サイド技術にも関与しています。



Jimmy Tan, Staff Software Engineer, IBM SOA Solution Center

Author photoJimmy TanはIBM Software GroupのSOA Solution Centerに勤務する上級開発者です。銀行業界用のコンポジット・ビジネス・サービス(CBS)の開発を担当しています。SOA、J2EEおよびソフトウェア・アーキテクチャーにも関与しています。



Daniel Wu, Staff Software Engineer, IBM SOA Solution Center

Daniel WuDaniel WuはIBM Software Groupにソフトウェア・エンジニアとして勤務しており、銀行業界用のコンポジット・ビジネス・サービス(CBS)アプリケーションの開発を担当しています。



Frank Wong, Staff Software Engineer, IBM SOA Solution Center

Author photoFrank Wongは台北のIBM China Software Development Labに勤務するソフトウェア・エンジニアです。現在は銀行業界のソリューション・アクセラレーターとして、コンポジット・ビジネス・サービス(CBS)の開発を担当しています。



2007年 5月 09日

IBM WebSphere Developer Technical Journal(US)より。

概要

このシリーズではIBM WebSphere Business Services Fabricバージョン6.0を使用してCBSを作成する、エンドツーエンドのプロセスについて説明します。第1回ではCBSの概念を紹介し、WebSphere Business Services Fabric がCBSの開発をどのようにサポートするかを紹介しました。第2回ではCBSの開発を綿密に行うための準備として、ビジネス上の問題に対してWebSphere Business Services Fabricがどのように問題解決を支援できるのかを説明し、次に、その時に開発プロセスのうち分析と設計の各ステップについて説明します。


ケース・スタディー:銀行の融資申込

ここでビジネス・ケースとして扱う例は、架空の銀行Internatioal Bank(INT Bank)です。INT BankはSOAにより融資申込サービスの近代化に着手しようとしています。

INT BankはInternational Bank of Texas(INT-TX)とInternational Bank of California(INT-CA)を子会社に持っており、INT Bankの主要なビジネスは融資サービスの提供です。顧客の理解を一層深め、顧客に価値のある融資商品を提供することができるように、融資担当者と融資審査者がその役割をこなすためには、役割ごとに異なる品質レベルの顧客信用情報が必要です:

  • 融資担当者はその顧客向けに適切にカスタマイズされた融資を提供するために、申込者の信用度を分析する必要があります。INT Bankは"統合融資申込管理ポータル"を持っており、そのポータルから融資情報と顧客の統合された信用情報が提供されます。
  • 融資審査者は承認の意思決定のために社内の"融資リスク評価ポータル"を使用し、指定された融資申込のリスク評価を行います。さらに、融資審査者には会社の不良債権率を減らすために、取引履歴や顧客信用情報などのより詳細な顧客情報が必要です。現在の融資審査プロセスでは、各子会社は地域ごとのマーケティング要件と州法に基づき、異なる方針とソリューションを持っています。

INT Bankは顧客の融資取引を管理し、取引履歴を追跡する"顧客信用情報システム(CCIS; Customer Credit Information System)"を持っています。リスクを低減し、基準を満たす信用評価結果を達成するため、INT-CAは融資審査者へCCISとは異なる顧客信用評価システムを提供したいと考えています。市場には様々な信用評価サービスのプロバイダーがおり、それぞれのプロバイダーは信用度の評価法と保持する情報の品質が異なります。INT-CAは高品質で有名なCredit Diggerというサービス・プロバイダーを利用することにします。Credit Diggerのサービスを利用するコストは社内のCCISを利用するよりも高いため、INT-CAのポリシーでは融資額の大きさと融資を申し込む顧客の財布シェア(注1)に基づいてCredit Diggerを利用することにします。

上記で言及したシステムに加え、さらに3つのINT Bankの内部システムが融資申込プロセスに関連しています:

  • 全社顧客管理データベース:見込み顧客と基礎顧客情報を管理する
  • 融資商品データベース:融資商品の情報を管理する
  • LDAPを使ったシングル・サインオン・システム:ユーザーの認証を行う

最後に、INT Bankの本社には融資申込サービスを管理する権限を持つ、コアIT担当者がいます。INT Bankはこの担当者をビジネスの指揮官と見ており、問題のトラブル・シューティング、システムのパフォーマンス・インジケーターのモニタリング、場合によっては様々なビジネス指標の抽出を行うところまで期待しています。


WebSphere Business Services Fabricがどのように役立つか

要件を分析する前に、このケースで使用されるWebSphere Business Services Fabricの機能を見てみましょう。

ポリシー

ポリシーは、サービスの利用者がサービスに要求するビジネス要件を定義しています。ポリシーは以下の3つに分類されます:

  • コンテキスト:サービス・リクエストの前後の文脈(状況)
  • コンテンツ:リクエスト自体に含まれるデータ
  • コントラクト:サービスに要求するビジネス要件

例えば、INT-CA(コンテキスト)は財布シェアと融資金額の大きさがある条件に合う(コンテンツ)顧客のためにCredit Digger(コントラクト)を選択します。

サービスの機能

WebSphere Business Services Fabricでは、サービスの機能はアサーションという概念で記述されます。サービスの機能は、以下の5つの観点で定義されます:

  • パフォーマンス
  • 信頼性
  • 相互運用性
  • セキュリティー
  • 管理容易性

業界オントロジー(注2)を拡張して、それぞれの企業のIT環境向けにカスタマイズした独自のアサーションを追加できます。

動的なビジネス・サービスの呼び出し

実行時に、Dynamic Assemblerはサービスのリクエストから関連するポリシーを見つけ、そのポリシーに基づいて要件に最も合うサービス・プロバイダー(エンドポイント)を選択します。


要件の分析

自明な要件だけでなく、背後に隠れたビジネス要件を分析するためにデザイン・ワークシートを使用します。WebSphere Business Services Fabricの提供する機能に基づき、ビジネス上の要件を以下のカテゴリー分けに沿って分析します:

  1. アクセス形態

    「どのユーザーがどのチャネルを使ってシステムにアクセスするのか?」という分析です。CBSは様々なアクセス形態からビジネスプロセスを実行する機能を提供します。アプリケーションの重複作成、新たなインフラの構築、技術的な追加サポートは必要ありません。そのため、様々なアクセス形態での完全な相互運用性を提供することができます。
  2. 組織の構成要素

    CBSは、システムの適応領域における様々な組織の構成要素(組織、サブ組織、組織内でのロール)を表現することが可能です。それにより、プロセスをサブスクライブしている組織の構成要素ごとに、それぞれ個別のサービスを提供できます。
  3. IT資産

    「システムの使用するIT資産は何か?」という分析です。CBSはシステムの適応領域にある様々なIT資産、例えば、レガシー・システム、サード・パーティー提供するアウトソース資産、新規に自社で作った資産、などの相互運用を可能にします。
  4. ポリシーとアサーション

    CBSの設計にはサービスレベル・アグリーメント(SLA; Service Level Agreement)の定義が含まれます。SLAはコンテキスト、コンテンツ、コントラクトに基づくポリシーとして、サービスの利用者と提供者の間で定義されます。さらに、基本になるCBSモデルがビジネス要件を十分に取り込んでいない場合には、システムの対象領域固有の拡張が必要となる場合があります。

リスト1はデザイン・ワークシートで表されたビジネス要件の分析の結果です。

リスト1.デザイン・ワークシートとINT Bankの分析結果
アクセス形態
 - 統合融資申込管理ポータル; ユーザーとの直接のやり取り
		    
 組織の構成要素
- 組織
1. International Bank (INT Bank)、本社
2. International Bank of Texas (INT-TX)
3. International Bank of California (INT-CA)
 - ロール
1. 融資担当者
2. 融資審査者
3. 顧客
4. IT管理者
		    
IT資産
- レガシー・システム
1. 融資商品データベース
2. 顧客信用情報システム(CCIS)
3. 全社顧客管理データベース
4. LDAP
5. 融資申込管理ポータル
6. 融資リスク評価ポータル
- 外部資産
1. Credit Digger
		    
ポリシーとアサーション
- 子会社(INT-CAを除く)からの融資申込みには
 信用評価サービスとしてCCISを使用する
- 特定の条件を満たすINT-CAからの融資申込みには
信用評価サービスとしてCredit Diggerを使用する
- 特定の条件を満たさないINT-CAからの融資申込みには
信用評価サービスとしてCCISを使用する
- 信用評価サービスのアサーションは顧客の財布シェアと
融資額を含んでいる

図1はチャネル、プロセス、サービスの関連を表しています。融資担当者と融資審査者は、Webチャネル経由で融資申込管理ポータルと融資リスク評価ポータルにアクセスします。融資のビジネスプロセスはWebSphere Process Server上で稼動しており、Dynamic Assemblerは、ビジネスプロセスからのリクエストを、INT Bankによって定義されたポリシーとアサーションに基づき適切なサービスに結びつけます。顧客信用サービスのエンドポイントは2つ用意されています。1つはCCISによって提供されたエンドポイント、もう1つはCredit Diggerによって提供されたエンドポイントです。

図1 システム相関図
図1 システム相関図

まとめ

この記事ではビジネス・ケースを分析する方法とデザイン・ワークシートの書き方の例を紹介しました。次回は、このワークシートを使ってオントロジー拡張とコンポジット・ビジネス・サービス・モデルを作成し、Composition Studioでポリシーに基づくエンドポイント選択のシミュレーションを行います。

注釈

(注1)財布シェア:顧客の全金融取引(財布)における自社取引の割合を意味する用語。
(注2)業界オントロジー:業界固有の概念を表したもの。詳細は第3回記事を参照のこと。

参考文献

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publish-date=05092007