レベル: 初級 横谷 信太郎 (yokotani@jp.ibm.com), WebSphereテクニカル・セールス, IBM
2009年 7月 22日 近年の経済状況等からか、日本においても業務効率の改善に再び光が当たり始めているようです。多数のお客様にお会いして、お客様からBPM(ビジネス・プロセス・マネージメント)という言葉が聞こえるようになってきました。BPMについて勉強している方も多くなってきているようです。デベロッパーワークスでは、多数のBPM関連製品の紹介や使い方の記事があります。今回の記事では、BPMを今までより、もっと簡単に、もっと上流を含めて、始めることができる新ツールの機能と使い方について、ご紹介をしたいと思います。
はじめに
実際に、BPMをはじめてみようとするとハードルが高く感じることは無いでしょうか? BPMって、ビジネス・プロセスの分析という言葉から始まって、まず、as-isのプロセス・フローを書きましょう!という流れになると思います。
お客様 : どこエリアのプロセスのフローを書いたらいい?どういうプロセスから始めればいいの?どういうレベルから書き出せばいいの?
ベンダー : まず、やってみましょう!
BPMという言葉を聞いて始めてやるのであれば、こういうアプローチもいいでしょう。結果として、プロセスの可視化について、「こういうやり方があったか!」とか「自分たちとしては、こういうやり方が合っているな。」というような知見を得ることが出来ます。経験して、良いイメージを持てればいいのですが、「うーん、思っていたものと、なんか違うかもしれない」とか、「作業量が多そう」と言った感想を持たれる事もあるかと思います。
BPMを始めると言っても、効果が高い業務領域から手をつけたいですし、作業量は少なく、効果についての結果を論理的に説得力ある形で、上にレポートできるようにしたいですよね。
ビジネスの最上流にある戦略と目標、目標を実現するためのアクション、アクションを実行するために必要となる能力、そしてアクションの具体的なプロセスを論理的に紐付けていく。ここまでくれば、BPMを始めるのに十分な説明が出来るのではないでしょうか。
ここからは、ツールを用いて、上記の流れをどう実施していくか、何が出来るかと言う点について、話を進めて行きたいと思います。
Websphere Business Modeler Publishing Server v6.2 Feature Packで提供された、ビジネス・リーダー・スペース
BPMのリーダーは、ツールのインストールから始めるのではなく、Webブラウザーを起動して、戦略を練りましょう!
IBMのBPM製品は、ビジネス・スペースと言うWebブラウザーベースの共通GUIを提供しています。ビジネス・スペースについては、こちらの記事をご覧下さい。
この記事で、ご紹介するビジネス・リーダー・スペースは、2つのテンプレートで構成されています。
- ビジネス・リーダー・ホーム・スペース: ユーザーごとに作成されるビジネス・リーダー・スペースの管理スペースで、新規のビジネス・リーダー・スペースの作成、ユーザープロファイルの編集、作成した文書へのアクセス制御、使い方の学習が可能です。
- ビジネス・リーダー・スペース: 戦略、ケイパビリティー、プロセス・マップを作成することができ、チームによる作業ができます。
図1: ビジネス・スペースにログインした後の画面
ビジネス・リーダー・ホーム・スペース
ビジネス・リーダー・ホーム・スペースでは、戦略から検討を開始するためのビジネス・リーダー・スペースを作成します。
ログインしたユーザーごとに、ビジネス・リーダー・スペースを作成でき、作成されたスペースが一覧できます。また、初めて使用するためのサポートとして、学習用のコンテンツへのアクセス、サンプルとして用意されているコンテンツのインポートも可能です。
また、各ビジネス・リーダー・スペースで作成されたマップの編集権限やロックの解除などもここで操作が出来ます。
図2: ビジネス・リーダー・ホーム・スペースの管理画面
ビジネス・リーダー・スペース
ビジネス・リーダー・スペースでは、ビジネス戦略を立案し、どういうエリアで何をどのようにすべきかについて検討を進めていくことをサポートします。この記事では、サンプルとして用意されている「サンプル・スペース:優良サービスのためのJKAirの戦略」を使用して説明していきます。
概要タブ
このスペースの説明、使用するチーム・メンバーの追加、マップ文書の作成ができます。
図3: 「サンプル・スペース:優良サービスのための JKAir戦略」
設計タブ
ここでは、ビジネス・リーダー・スペース内にマップ文書を作成したり、別のビジネス・リーダー・スペースで作成したマップ文書をアップロードすることができます。
図4: 設計タブ
学習
提供されている各マップ・ツールの学習用に文書およびビデオが用意されています。
図5: 学習用のコンテンツ
戦略マップ
目的:戦略に対して何をすべきかについて記述
特長:ロジック・ツリーとSWOT分析の表示サポート
図6: 戦略マップ
できること
- ツリー表示を使用し、戦略に基づいた目標、アクション、指標の設定、およびSWOTの定義
使い方
- 1. 戦略を記入
- 2.1. 戦略からブレークダウンされる目標を定義
- 2.1.1. 目標に対する具体的なアクションを定義
- 2.1.2. 具体的なアクションに対する指標を定義
図7: 戦略マップに定義する要素
- 2.2. 戦略に対する内的要因、外的要因を洗い出しSWOT(強み、弱み、機会、脅威)に分類
- 2.2.1. クロスSWOTを実施し2.1.2のアクションと関連付ける
図8: 脅威(新興の低料金プロバイダー)に対する対応策として、「重要なサービス差別化要因の提案」というアクションを紐付け
SWOT分析は、一般的には、目標に対して、自社や組織(個人)が置かれた環境における強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) を記述し対応策(アクション)を検討するために使用します。
強みと弱みは、内的な要因を記述します。これは、自社でコントロールできることを記述します。機会と脅威は、外的な要因を記述します。こちらは、自社でコントロールできないことを記述します。
図8のサンプルでは、戦略に対してSWOT分析が紐付いているように見えますが、目標に対してSWOT分析(クロスSWOT分析)を行い、対応するアクションへ導いた方が自然な流れになりそうです。
クロスSWOT分析とは、SWOTのそれぞれの要素を掛け合わせ戦略の方向性を練っていく方法です。
例:
強み×機会=積極攻勢
強み×脅威=差別化
弱み×機会=弱点強化
弱み×脅威= 防衛 or 撤退
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ケイパビリティー・マップ
目的:戦略・目標からブレークダウンされたアクションを誰が実施するのか?(実行するために必要な企業の能力)について記述
特長:企業の持つ(もしくは必要となる)能力を構造的に表現
図9: ケイパビリティー・マップ
できること
使い方
- 戦略マップによって決まったアクションを実現するための機能を洗い出す
- 機能単位に説明を記述しておく
- 戦略マップとの関連付けを行う。
- 重要な領域に対して、色づけを行う。
図10: 戦略マップとケイパビリティーの紐付けによる実行主体の明確化
プロセス・マップ
目的:戦略からブレークダウンされたアクションをどのように実行すべきか?について記述
特長:キーとなるようなビジネス・プロセス・フローをざっくりと記述することができ、詳細化の際には、Websphere Business Modelerへの連携が可能
図11: プロセス・マップ
できること
- キーとなるようなビジネス・プロセス・フローを記述
- Websphere Business Modelerにビジネス・プロセス・フローをエクスポート
使い方
- 戦略マップのアクションの内容に基づいてプロセス・マップを作成
- 業務の流れを記述(ここでは、やるべきことの全体の流れが見通せるように作成すること)
- 必要に応じて、戦略マップで定義した指標との紐付けを行う
- シミュレーションによる詳細な分析を行いたい場合は、エクスポート機能を使用してWebsphere Business Modeler上で付加情報を追加し詳細分析を実施する
各マップ・ツール共通の機能
要素の色分け
各マップ・ツールで定義する要素は、色付けを行うことが出来ます。色に意味付けをしておくことにより、より多い情報を表現することが出来ます。
図12: マップ・ツールの要素への色づけ
他のマップ要素との関連付け
作成したマップの要素間を紐付けしておくことにより、意味的な繋がりを定義でき、マップ間でクリックによる移動が可能になります。
図13: 他のマップ要素への関連付け
改定履歴の管理
マップは、編集し、保存した後でも、過去のバージョンへ戻すことができます。
図14: 改定履歴の管理画面
Microsoft PowerPointへのエクスポート
各マップは、パワーポイントへエクスポートできます。報告書をまとめる際に便利な機能です。
図15: マップのエクスポート
ビジネス・プロセス・マップをWebsphere Business Modelerにインポート
ビジネス・プロセス・マップは、Websphere Business Modeler用にxml形式でエクスポートができます。
エクスポートされたxmlファイルをWebsphere Business Modelerにインポートすると以下の図16のようにビジネス・プロセス・フローとして表示されます。
ここからは、より業務知識の豊富な方によって詳細なビジネス・プロセス・フローを記述・設計したり、各種のデータを設定してシミュレーションを実行したり、システム情報を付加してサーバーで実行したりすることが出来ます。
図16: Websphere Business Modelerのユーザーインターフェース
まとめ
今回ご紹介したツールは、ビジネス・プロセス・マネージメントの上流に位置し、トップダウン型の思考を戦略マップ、ケイパビリティー・マップ、プロセス・マップを用いてサポートします。製品としては、Websphere Business Modeler Publishing Server上にインストールして頂く事によりご利用可能です。
最新のBPMの動きとして、IBMは2009年のIMPACTでBPM Blueworksを発表しました。
BPM Blueworksの全貌は、この記事がリリースされるタイミングでは、公開されていませんが、今回ご紹介した、Websphere Business Modeler Publishing Server v6.2 Feature Pack の兄弟にあたるものとお考え頂いてもよいかと思います。
参考文献
著者について  | |  | IBM ソフトウエア事業 WebSphere テクニカル・セールスのBPMチームに所属するITアーキテクトです。以前は、サービス事業に所属し、お客様先での業務アプリケーション開発等のプロジェクトでITアーキテクトとして従事していました。 |
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