レベル: 中級 Lance Walker (lancew@us.ibm.com), IBM Distinguished Engineer, IBM Akram Bou-Ghannam (akram@us.ibm.com), Certified IT Architect, IBM Software Group, Application and Integration Middleware Software, IBM Luba Cherbakov (lubacher@us.ibm.com), IBM Distinguished Engineer, IBM
2006年 10月 31日 この記事では、2 つの SOA インプリメンテーションを例に用いて、IBM 内での重要なビジネス・サービスのデプロイメントを説明します。最初に説明する輸出管理サービスは、アメリカ合衆国内の企業が商取引を行ってはならない個人、企業、あるいは国を定義した合衆国政府の輸出規制に、組織が順守していることを確実にするためのものです。2 つ目の SOA サービスは、さまざまなソースから寄せ集められた一連の顧客情報の管理と可用性をサポートします。
はじめに
この連載の第 1 回では、SOA による 6 つの事業価値の提案と、それぞれに関連したビジネス・ドライバーについて説明しました。また、SOA が可能にする 7 つの IBM 内部変革イニシアチブも紹介しました。これらの事例が説明する多種多様なビジネスの課題は、ソリューションに SOA を活用します。
前回の事例研究では、COATS (Customer Order Analysis and Tracking System) とマイクロエレクトロニクスの「箱の中のファクトリー」という 2 つの事例を取り上げました。説明した内容は、ビジネスの背景、内部変革イニシアチブが克服しなければならなかった課題、最終的なソリューションのアーキテクチャー概要、そしてそのソリューションを可能にした技術とツールです。さらに、それぞれのソリューションによって達成された業績、IBM および IBM のクライアントで現在適用されているベスト・プラクティスと教訓についても説明しました。
今回の記事では、以下の事例を取り上げます。
- 事例 3: 法規制の順守を目的とした EVS (Export Validation Service)
- 事例 4: CCMS (Central Customer Master System)
EVS および CCMS は規制順守の管理と「サービスとしての情報」をそれぞれ目的とした、重要な IBM 内部ソリューションです。政府による規制の要求内容が複雑さを増し、統合データ・ソースを管理してロケーションの透過性を実現する必要に迫られるなか (詳細は「参考文献」を参照してください)、この 2 つのサービスは IBM 内部での SOA 使用例として卓越したものとなっています。
事例 3: 法規制の順守を目的とした EVS (Export Validation Service)
ビジネスの背景
アメリカ合衆国輸出規制では、国境を越えて輸出可能な品目と輸出相手について制限を定めています。これらの規制は広義の視点 (合衆国から他の国へのハードウェア、ソフトウェア、サービス・ツール、技術などの提供を含みます) から、あらゆる類の輸出が関わるすべての状況に適用されます。そのため、従来の物理的輸出品だけではなく、合衆国外に拠点を置く相手側 (個人、企業、組織、政府) に対するソフトウェアあるいは技術情報の電送も規制対象となります。
国家の安全に関わる特定の製品や技術 (暗号化技術、核兵器、化学兵器、生物兵器、ミサイルなど) は、規定リストに挙げられた国々に対する売却あるいは出荷が禁止されています。合衆国政府は、合衆国の企業がいかなる種類の商取引も行ってはならない相手のリスト、DPL (Denied Parties List) を発行しています。また、商取引に関する制約事項をさらに追加した、通商禁止国またはテロリストが関与する国のリストも発行しています。
課題
違反によって生じる高額な罰金やその他の悪影響を防ぐため、政府による規制を確実に順守するための方針を正式に確立し、企業レベルで管理することがますます重要になってきています。合衆国政府の ERP (Export Regulation Procedures) に対する IBM の順守体勢に責任を持つのは、IBM の ERO (Export Regulation Office) です。ERO では、合衆国政府が企業に対して商取引を禁止している個人、企業、国のリストを毎月更新しています。そのため、IBM のオンライン・ソフトウェア販売およびダウンロード (無料および有価ソフトウェアの両方) に必要となるのは、配布物と配布相手をリアルタイムで検証することを可能にする一層自動化された手段です。そのような手段によって、政府の規制に対する違反を防がなければなりません。
IBM 内には、合衆国輸出規制の順守をサポートする複数のアプリケーションがデプロイされています。また、複数のビジネス・エリアでは何通りかの輸出チェックも実施されています。これらのすべてに ERO による管理リストの月例更新を組み込んで、規定リストに記載されている相手と誤って開始されてしまった商取引を回収するという時間のかかる手作業を防ぐ必要がありました。そのため企業内で輸出管理機能を増設した結果、開発および保守の費用が不必要にかさむことになり、さらに順守の一貫性を確実にするために ERO が複数の開発チームと作業しなければならなくなりました。
IBM の SDF (Software Delivery and Fulfillment) 組織は当初、独自のオンライン販売・配布に対して各種の輸出チェックを実行する機能を作成しましたが、使用目的に合わせて容易に統合できる一層効率的なソリューションが必要となりました。また、そのソリューションは企業の他の組織にも広められるように、再利用性にも優れていなければなりません。SDF のビジネス・モデルは企業内でのサービス普及を促進させるものであったため、SDF は、新しい要件に対応してサービスを利用する可能性のある組織から資金を調達することができました。
以下に、このソリューションで対処しなければならなかった課題を要約します。
- 合衆国のサーベンス・オクスリー法によって、一連の広範な政府規制の順守をサポートする新しいクラスの IBM 内部サービスが必要であるという認識が高まっていたこと。
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アプリケーション間での重複があり、過剰な開発費と維持費がかかっていたこと。
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複数のアプリケーションを毎月更新して、合衆国政府の輸出管理リストをアプリケーションのローカライズ・コピーに組み込まなければならなかったこと。
- 輸出管理リストの変更内容がタイムリーに組み込まれない場合、IBM の統合サプライ・チェーン (Integrated Supply Chain) プロセスに遅れが生じるおそれがあったこと。
SOA ベースのソリューション
初期のいくつかの SOA ビジネス・ソリューションと同じく、このサービスの基礎はすでに Web アプリケーションに存在していました。つまり、ブラウザーでソフトウェアをダウンロードする顧客に対するリアルタイムのチェックはすでに実行されていたということです。2003 年 12 月、SDF 組織はブラウザー指向の基礎を拡張して、SOAP ベースの Web サービスを作成しました。これが現在、EVS (Export Validation Service) として知られているサービスです。このサービスでは、合衆国政府の輸出規制に準拠するための顧客分析機能を他のサービスから呼び出すことができます。
EVS は現在、サブミットされた顧客の人口統計学的情報 (名前、住所、場所、IP アドレス、商取引に関わっている IBM のサービス提供など) に基づいて、主要な分野に対する以下の輸出チェックをサポートしています。
- ユーザーのチェック。1) 合衆国政府の DPL と照合し、2) ミサイル、化学兵器、生物兵器、あるいは核兵器のために使用可能な技術が指定された国々に拡散しないよう選別します。さらに、3) 合衆国政府の輸出禁止国リストと照合します (住所、E メール、または IP アドレスを使用)。
- 暗号化製品のチェック。強力な暗号化技術が含まれる暗号化製品の輸出を管理します。
- デンマークおよびアイルランド政府の要件に特有の輸出チェック。この輸出チェックは、この 2 国での IBM ソフトウェア・フルフィルメント業務をサポートするために必要でした。
図 1 に示すソリューションには、分離されたエンタープライズ・データが ERO による合衆国政府の DPL 更新という形で含まれています。
図 1. 輸出検証アーキテクチャーの概要
この図は、HTTPS での SOAP ベースのエクスポート Web サービス (Export Web Service) の他、DPL を更新するバックグラウンド・プロセスも説明しています。つまり、手動で ERO の公式更新済みリストにアクセスし、DPL 管理ツール (DPL administration tool) を使用して最新の更新内容を EVS のデータベースに組み込むというプロセスです。また、「ファジー」ロジックが規定リストの顧客を正しく識別しなかった場合に起きる誤った肯定結果を無効にするための管理者機能 (Override administration tool) も図示されています。サブミットされた情報でこのファジー分析を行うのは、同じような名前や多少のスペルの違いを考慮に入れるためです。
多くのビジネス・サービスの場合と同様に、EVS は完全なスタンドアロン機能ではなく、手動ビジネス・プロセスと統合されて、このサービスの「舞台裏」で付加価値を提供しています。これはヒューマン・タスクを組織構造に統合する「ヒューマン・サービス・バス」という概念で、サービス・インプリメンテーションと連携して企業標準との適合を確実にします (「参考文献」の記事「Impact of service-oriented architecture on enterprise systems, organizational structures, and individuals」を参照)。EVS の場合、企業標準には政府の規制も反映されています。
開発チームは当初、IBM WebSphere® Studio Application Developer™ を使用していましたが、アプリケーション開発ツールを最新の IBM 製品に更新する際に、IBM Rational® Application Developer™ に移行しました。WebSphere Application Server Version V5.1.x、IBM DB2® Connect Enterprise Edition™、および IBM HTTP Server はいずれも、それぞれのランタイム環境の AIX サーバー上で稼動します。
EVS は、既存の IBM ビジネス・プロセスのいくつかではすでに有効にされており、輸出規制順守についての顧客チェックが必要となる新しいプロセスでも使用される予定です。この顧客チェックには、販売時点 (Web または電話のいずれか) でのトランザクション、そして顧客に商品を配送する前の最終チェックが含まれます。
業績
合衆国政府の輸出管理を一層容易に、Web や電話での顧客とのあらゆる対話に即時に統合できるようになりました。このサービスは、すべての IBM 輸出チェック機能の一元化と一貫性を実現し、合衆国政府からの管理リスト更新がタイムリーに組み込まれることを確実にして規制違反による罰則のリスクをなくしています。
EVS のサービス・ベースの再利用性により、複数のアプリケーションで重複した輸出管理機能を作成する場合の開発および保守関連の費用を節約できます。また、新しく機能を作成する代わりに既存のサービスを使用できるようになったため、費用だけでなく、開発スケジュールも短縮できます。
EVS は、IBM のエンタープライズ対象アーキテクチャーにおいて、主要な SOA 「エンタープライズ・コンポーネント」として定義されています。この定義により、EVS は IBM のすべての事業体で再利用することが指定されています。EVS はまた、顧客のビジネス・プロセスにサービスと手動オーバーライド・プロセスの両方を提供できる IBM の商業用資産としても見込まれています。会社と事業体のアーキテクチャー管理組織は連携して、重複した機能を作成する代わりに、アプリケーションでこうしたエンタープライズ・コンポーネントを使用しなければならないように強化しています。
使用されているベスト・プラクティスと教訓
複数業種の要件に対応する際によく懸念事項となるのが、エンタープライズ・サービスの一元化された資金調達です。多くのエンタープライズ・サービスは、そのサービスの所有者を通じて、サービスのビジネス機能の任務を請け負う 1 つの組織によって主な資金を得ています。EVS は、これとは異なるビジネス・モデルに従っています。このビジネス・モデルでは、新しい要件に対応するためのサービス更新は、(独自のニーズに合わせた変更を要求している) サービスを利用する側のグループから個別に資金を得ています。このようなモデルは非常に有効に機能していて、EVS は新しい業務方針の課題に対応するのに十分な資金を得ています。
ただし、このようなビジネス・モデルでは増分開発によって新しいコンシューマーの要件を一つずつ満たしていくため、抜本的な改善の遅れにつながることがあります。独特の要件を持つ新しいコンシューマーは時として、エンタープライズ全体のサービスを構成する一般的な基礎要素への資金提供には消極的です。EVS をソフトウェア製品の域を超えたエンタープライズ規模の範囲にまで拡大するには、EVS の頑強性を強化して、さらなるボリュームを確実に処理できるようにしなければなりません。例えば、Perl スクリプトに基づく古いコードを Java™ に変換するなど、性能に関するさまざまな改善点があります。機能および機能以外の両方に関する一般的なエンタープライズ能力に関しては、新しいクライアントがエンタープライズ同然の要件を持っている場合に EVS チームが段階的に対処しているところです。さらに、IBM Business Transformation CIO がガイダンスと資金を提供しています。
EVS が明らかにしているのは、サービスを利用する側の事業主は、ただ単に特定の Web サービスを利用するだけでなく、それ以上のことも理解しなければならないということです。EVS では現在、輸出チェックの結果が疑わしいものを追跡するために、手動のバックエンド・プロセスが必要とされています。サービスを使用する側の開発グループは多くの場合、サービスのインターフェースにのみ注目しますが、手動サポート機能も同じく考慮しなければなりません。手動サポート機能も、サービスの有用性を向上させる可能性を秘めています。
事例 4: Common Customer Master System による IBM 内での統一した顧客表示
ビジネスの背景
コール・センター、インターネット、ビジネス・パートナーなど、使用する媒介によっては、IBM がそれぞれ独立して業務を行う複数の企業のように顧客の目に映ります。そのため、顧客の経験だけでなく、顧客の組織と連絡情報には時として一貫性や継続性が欠けている場合があります。かつてはこのことが顧客満足に悪影響を及ぼしていましたが、IBM ではこの問題に対処するため、顧客が「一つの IBM」を経験できる SOA ベースのソリューションとして CCMS (Common Customer Master System) を採用しています。
CCMS の主要なビジネス目標は以下のとおりです。
- すべての IBM 顧客データを単一のシステムと関連リポジトリーにマージすることによって、IBM 内に存在する顧客情報の複数のインスタンスとともに、該当する保守経費を排除すること。分散するその他の顧客リポジトリーからの情報提供は廃止し、この単一システムに置き換えます。
- 組織の階層を顧客データに組み込み、顧客情報をより有意義かつ実用的なものにすること。組織の階層構造は、事業体間の相関関係、そして事業体の住所と子会社に関するビジネス情報を提供します。これらの階層構造は毎月更新し、IBM の信頼性の高い組織階層データ・ソースとして使用できるようにしなければなりません。
- 顧客データの品質を改善すること。
- グラフィック・ユーザー・インターフェース (ブラウザー) を介してユーザーが直接アクセスできるようにして、顧客情報の実用性を向上させること。
- すべての IBM 顧客情報に関する IBM の唯一の顧客レコード作成および顧客情報源として、この集中システムをアプリケーションが利用できるようにするためのサービス・インターフェースを提供すること。
課題
この問題の範囲と複雑さは、以下のとおりです。
- さまざまなデータ・ソースからの顧客データを統合しなければならないこと。これには、D&B (Dunn and Bradstreet)、RDc (Reference Data customer) ハブに保管された IBM の顧客データ (各種の IBM 顧客データベースからの顧客情報)、そして CRM/Siebel (北米、欧州、アジア太平洋での 3 つの個別インスタンス) が含まれます。この統合作業で、データ検証機能、そして D&B、IBM CRM ソース、および RDc からの入力で重複するレコードを修正するための機能をインプリメントする必要性にも対処します。
- 単一の SOA 対応機能セットでユーザー・アクセス機能とアプリケーション・アクセス機能の両方の必要を満たさなければならないこと。
- 119 か国をサポートする必要性から生じる広範な要件。
- 複数の顧客データ・モデルを単一の論理モデルに統合する際の複雑さ。この論理モデルは、D&B、CRM および RDc のロードをサポートするために IBM の標準化されたビジネス・データ定義に従っています。
- 本質的に異なる複数のレガシー顧客データ・ソースを、SOA による統合ソリューションに変換しなければならないこと。
- 一様にインプリメントできる新規ルールを一貫して導入する必要があること。このルールには、以下が含まれます。
- データ・ソースのデータ・モデルから新しい集中データ・モデルまでのデータ要素ごとのビジネス・ルール・マッピング。このマッピングには、データ品質と許容値要件のリストも含まれます。
- 各ソースのデータ要素ごとの変換ルール。CCMS でのデータの作成および保守に必要です。
- すべてのソースのデータ要素ごとのデータ集約ルール。これも、CCMS でのデータの作成および保守に必要です。
SOA ベースのソリューション
CCMS チームはまず、アーキテクチャーに関して重要なシナリオを特定し、優先順位をつけて、これらのシナリオを基準として必要なサービスを定義することにしました。この分析と設計には、それぞれ個別に作成されたサービスの使用状況を識別して調和させるため、WebSphere Business Integration Modeler で作成したビジネス・プロセスをモデル化する作業も伴います。分析を各シナリオに適用してサービスの最適な適用範囲と粒度を決定する際には、サービス間の分離を強化するためにリファクタリングも行っています。CCMS レガシー・システムを調査した結果、サービスとして「ラッパー」の対象にできる既存のソフトウェア・コンポーネント、そしてシステムが提供していない機能のために新しく開発しなければならないサービスが解明されました。
IBM Rational XDE を使用して、IT 成果物を対象とした UML のユースケースとオブジェクト・モデルを作成し、コンポーネント・モデルの定義に組み込みました。ワークフローをベースとしたプロセスは WebSphere Application Developer Integration Edition で設計し、一連の既存サービスから新しいサービスを組み立てました。Rational XDE および Business Integration Modeler モデルは直接 WebSphere Application Developer Integration Edition に入力し、これを使って追加成果物 (XML スキーマ、Java コード、サービス、およびルール) を WebSphere Business Integration Server Foundation にデプロイされた BPEL ワークフローに関連付けています。
図 2 に示すコア・トランザクション更新サービス (Core Transaction Update Service) は、CCMS ワークフローをベースとしたサービスの一例で、各種の更新関連プロセス (CRM 更新、RDc 更新、および D&B 更新) はこのサービスを使用して一貫性およびデータ品質を確実にするとともに、冗長性を排除しています。この特定の更新サービスには、住所の標準化、入力されたレコードが固有のものか既存のものかを判断するための照合、集約、そしてパーシスタンスのためのアクティビティーが含まれます。集約アクティビティーは、CCMS データが更新される前にデータ集約ルールをインプリメントします。この集約ルールは、更新対象の顧客レコードに含まれるデータ・グループごとのデータ・ソースを考慮に入れ、CCMS データの更新時に信頼できる (データ・グループごとの) データ・ソースを示します。
図 2 には、CRM 更新プロセスをインプリメントしてコア・トランザクション更新サービスを使用する CRM 更新サービス (CRM update service) も示されています。
図 2. CCMS アーキテクチャーの概要
既存の資産をサービスに変換する作業例は、住所標準化サービス (Address std service)、照合サービス (Matching service)、そしてキー割り当て (Assign key) サービスに示されています。住所標準化サービスと照合サービス (レコードが固有のものであるかどうかのチェック) は、既存のレガシー Trillium エンジンが提供するラッピング機能によって作成されています。カプセル化 Trillium によって作成されたこれらのサービスは現在、顧客更新プロセス内だけでなく、他の顧客情報ビジネス・プロセスでも再利用できるようになっています。CCMS パーシスタンス・サービス (Persistence Service) などの別のステップでは、再利用できる既存の基本サービスがないため、新しくサービスを作成する必要がありました。
業績
CCMS の SOA 変換は、オンデマンド企業という IBM のビジネス構想の実現に向けた大きな前進です。SOA を用いることで、CCMS は再利用をベースとした柔軟で順応性のあるソリューションになっています。エンタープライズ・ビジネス・プロセスは、独自のサービスを開発する代わりに CCMS サービスを再利用しています。CCMS の更新サービス、検索サービス、住所標準化サービス、照合サービスはいずれも、再利用可能なサービスの好例です。CCMS は再利用可能サービスを提供しただけでなく、今ではそのサービスをエンタープライズ・プロセスと調和させる能力も備えています。再利用によって強化されたこの柔軟性は、IBM に大きな事業価値をもたらしています。利益はまだ金額に換算されていないものの、このソリューションの事業価値は明らかです。
CCMS でもう 1 つ明らかになっている事業価値は、顧客情報をサービスとしてインプリメントしていることです。顧客情報は IBM の業務に不可欠であることから、CCMS は IBM 内部での主要な「サービスとしての情報」の 1 つとなっています。CCMS SOA ソリューションでは、情報はビジネス・プロセスに対するサービスとしてパッケージ化されるため、すべてのプロセスで、一貫性のある管理しやすい情報が標準化された方法で利用できます。CCMS 以前の環境では、それぞれのビジネス・プロセスが情報へのカスタム・アクセスを作成していたため、プロセス間で顧客データの表示が一貫していない、ルールの適用が統一されていない、そして同一ロジックに対して複数の保守ポイントがあるといった問題がありました。
測定可能な CCMS の業績は、データ品質の改善です。顧客データの品質を測定するためにインプリメントされたエンタープライズ・プロセスが、以前のソリューションに比べて遥かに改善された CCMS データ品質を報告しています。CCMS でデータ品質が改善されたことにより、正確かつタイムリーな顧客情報に依存する販売、機会管理、サービスなどの IBM のビジネス・エリアでは、顧客満足の向上が目に見える形となっています。SOA ベースの CCMS ソリューションは、主に重複した顧客データベースを廃止して CCMS に置き換えることにより、年間 815 万ドルの経費削減をもたらすと見込まれています。
バックエンド機能にワークフローを用いる CCMS では、一層徹底した方法で、IBM 内の複数の顧客データ・ソースからの顧客情報を統合できます。これにより、不完全あるいは正確でない顧客情報によって、重要な商取引に深刻な遅れが生じるというリスクが少なくなります。CCMS は現在、IBM の唯一の顧客レコード作成ポイントおよび顧客データのマスター・ソースとなっています。さらに、複数の業種が顧客情報を簡単に相互参照できることから、新しい販売機会も実現されています。CCMS はまた、多数の重複した顧客情報データ・ソースを徐々に廃止するという段階的過程も可能にしました。
使用されているベスト・プラクティスと教訓
CCMS は、サービス・インターフェースからアクセスできる情報の管理において、バックエンド・プロセスが重要な役割を果している SOA ソリューションの一例です。サービス・インターフェースは、氷山の一角でしかありません。サービス・インターフェースをデプロイする前に、CCMS はまず、すべての IBM 顧客情報の統合ビューを作成する必要がありました。これには、WBI Server Foundation が提供するビジネス・プロセスの柔軟性を利用して、複数のソースからの顧客データを管理するための操作ワークフローを作成するという作業も伴いました。
エンタープライズに不可欠な多くのアプリケーションの場合と同様に、「ビッグバン」のアプローチは費用の点でも危険度の点でも採用できませんでした。顧客情報を管理する CCMS バックエンド・プロセスを開発する前に必要となったのは、重要な顧客情報にアクセスするための Web サービスです。このため、既存の RDc ハブへのサービス・インターフェースを公開するという急場しのぎのソリューションが採用されました。そして、この急場しのぎのソリューションには、戦術的な顧客情報へのアクセス・インターフェース (CCMS が結果的に採用した) が使用されました。このような段階的アプローチにより、間に合わせのサービスから CCMS へのマイグレーションの作業が最小限に抑えられています。
レガシー顧客データ・システムから CCMS へのマイグレーションに必要な費用とリソースにより、安全で緩やかなマイグレーションの過程以外に選択の余地はありませんでした。IBM がエンタープライズ要件を満たすために設計したその他多くの一般サービスで経験したように、これらのサービスへのマイグレーションは時間をかけて徐々に行われますが、レガシー顧客データ・リポジトリーを短時間で廃止するという積極的な行動によってマイグレーションを加速することも可能です。
謝辞
実際の事例研究報告や、その他の技術的情報を提供してくれた同僚たちの考察力と貢献に感謝します。Geoffrey Meissner と Carl Osipov はこの連載記事の制作に協力してくれました。LeeAnn Kania と Greg Terwilliger は EVS アーキテクトで、初期の SOA パイオニアとして EVS 技術情報を提供してくれました。また、彼らのアーキテクチャーに関する著作は、この記事の貴重な情報源となっています。Bob Fremin、Jim Anderson、Wes Williams、Tim Owings、Scott Joffe は、CCMS の戦略的インプリメンテーションでそれぞれの役割を果たしてくれました。
また、ここでは紹介しきれませんが、多くの革新的 SOA ソリューションを開発し、その経験と教訓を文書化するのに時間を費やしてくれた IBM の多くの同僚、コンサルタント、アーキテクト、開発者、そしてプロジェクト・マネージャーにも感謝の言葉を送ります。
参考文献 学ぶために
製品や技術を入手するために
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IBM 製品の評価版をダウンロードして、DB2®、Lotus®、Rational®、Tivoli®、および WebSphere® のアプリケーション開発ツールとミドルウェア製品を使ってみてください。
議論するために
著者について  | |  | Lance Walker は、IBM CIO Office のシニア・テクニカル・スタッフ・メンバーです。IBM エンタープライズ・アーキテクチャー全体の複数の分野でアプリケーション・アーキテクチャーに取り組んでいます。この記事を作成した時点では、企業の SOA+ イニシアチブの PDTL 兼主任アーキテクトを務め (IBM 内部での SOA 促進の責任者)、IBM 内部の SOA Guidance Council の議長でもありました。それ以前には、Isolation Layer Framework など、複数の CIO アプリケーション・アーキテクチャー・イニシアチブのリーダーを務めた経験もあります。Web Identity (IBM の顧客とビジネス・パートナーのための共通ユーザー ID とパスワードを作成する) での最初の主任アーキテクトとしての職務を始めとするエンタープライズ共通サービスでの経歴が、顧客特有のビジネス・ニーズや IBM 内での SOA インプリメンテーションの制約事項に対する彼の理解力の支えとなっています。専門分野は、SOA、エンタープライズ・アーキテクチャー、Web サービス導入の促進、統合アーキテクチャーです。デンバー州立大学でコンピューター情報システムと電気通信の修士号を取得し、コロラド州立大学で機械工学の修士号を取得しています。また、IBM 認定アーキテクトでもあります。 |
 | |  | Bou-Ghannam 博士は認定 ITアーキテクトで、過去 3 年間にわたり、IBM 企業の EBI での SOA 有効化を率先してきました。現在は、再利用可能な統合およびビジネス・サービスの作成、そして再利用可能な資産による SOA アプリケーションの構築を重点に、EBI での SOA 変換を推進しています。この記事で説明した CCMS の事例では、CCMS の SOA 変換に関する主任アーキテクトを務めました。この活動に携わる前は、5 年間、WBI (WebSphere Business Integrator) 製品での SWG 製品開発に取り組んでいました。また、IBM B2B 接続アーキテクチャー作成チームのリーダー、そして WBC (WebSphere Business Connect) 製品のアーキテクト兼開発リーダーでもありました。SOA およびインテリジェント・エージェント技術を専門分野とする博士は、2 つの特許を持ち、現在 16 の特許を申請中です。また、IBM Seventh Level Invention Achievement Award を受賞した他、複数の著作物もあります。 |
 | |  | IBM 指折りのエンジニアで、IBM Academy of Technology のメンバーでもある Luba Cherbakov は、IBM CIO Office の主要な技術リーダーです。現在、Web 2.0 技術、増加するサービス可用性、そしてエンタープライズ・データを一つにまとめる CIO Situational Applications Environment Initiative を推進しています。彼女は、サービス指向メソッドとコンポーネント・ベース・メソッドを用いた複合エンタープライズ・アプリケーションのアーキテクチャー、設計、開発における著名な専門家です。また、SOMA (Service-Oriented Modeling and Architecture) メソッド、リファレンス・アーキテクチャー・アセット、Architectural Description Standard、そしてグリッド・コンピューティング・サービス提供の作成者、提唱者、貢献者でもあります。IEEE Computer Society and ACM のメンバーである彼女は、ソフトウェアおよびシステムを専攻し、人工知能とシミュレーションを副専攻としたジョージ・ワシントン大学で、コンピューター・サイエンスの修士号を取得しています。 |
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