今回、シリーズの目的は、実際のビジネスに使用できるe-ビジネス上の対話方法を構築することによりWebサービスの真価を実証することです。現実のビジネス問題に基づき、ロゼッタネットが提供している検証済みのソリューションを採り上げ、e-ビジネス上の対話方法に取り組んでゆきます。このシリーズでは、最も重要な面として、Webサービスのe-ビジネス上の対話方法にあることを示します。 e-ビジネス上の対話方法とは何か、ビジネスパートナーに対する対話方法を構築する方法を説明します。シリーズの第1回目にあたる今回の記事では、以下を取り上げます。
- Webサービスの本当の可能性
- e-ビジネス上の対話方法を実装する方法の理解
- ロゼッタネットを活用することの利点
- ロゼッタネット入門
- ロゼッタネットをWebサービスに移行する
第2回と第3回では、Webサービスのコレオグラフィーについて取り上げ、ロゼッタネットとBPEL4WSを組み合わせる利点を実証する末端間のe-ビジネス・シナリオサンプルを提供する予定です。
Webサービスは漠然とした概念ではないことを読者は確信出来るでしょう。Webサービスは今日のままでさえ、ビジネスの問題を解決することができます。それらはWSDLとSOAPのようなオープンスタンダードの使用に類似した素晴しい機能です。そしてハードウェア、ソフトウェアおよび専門技術を含む既存のWebインフラストラクチャーの再利用を提案します。Webサービスの真価は、企業間のe-ビジネス上の対話方法を実装するためにそれらを利用することにあります。アプリケーションの統合と単純なWebサービスが目的に適しているため、企業間のe-ビジネス上の対話方法は共同Webサービスの広範囲に及ぶ可能性となりえ、実際にe-ビジネスにおいて著しく肯定的なインパクトを与えるでしょう。e-ビジネス上の対話方法で、Webサービスが未開の地には乗り出していないことに注目することは重要です。それらの領域では、ロゼッタネットやEDIのような試験済みのe-ビジネス標準から学んだ経験という恩恵が受けられるからです。
最も単純な意味で、Webサービスは非常にアクセスしやすく、技術的な中立のパブリック・インターフェースでサービスを定義することを可能にします。このインターフェイスは、XMLベースでアクセスを許可された(他のオプション間で)WSDL(Web Services Description Language)、XMLベースのSOAP(Simple Object Access Protocol)メッセージを使用したWebインフラストラクチャーを介して定義されます。なぜこれらの単純な機能がこれほど多くの興味を引き起こすのかをこれから説明しましょう。
図1: 重大な変化をもたらすWebサービス
筆者は、Webサービスはビジネスとインフォメーションテクノロジーにおける関係の革命であると確信しています。この革命はe-ビジネスに関する以下のような要点を実行します。
- e-ビジネスは「e」(テクノロジー)に関してより少なく、ビジネスに関してはより多くを実行します
- e-ビジネスのパブリック・インターフェースはサービスを第一義に考えます
- e-ビジネス上の対話方法はテクノロジーに捉われません
- テクノロジーは、e-ビジネスを拘束するのではなく、支援するべきです
Webサービスは、組織のe-ビジネスに対する考え方に重大な変化をもたらすようになってきました。これらの変化の一部は些細なものですが、確実に劇的な結果をもたらします。Webサービスがe-ビジネスにもたらす最初の変化としては、ビジネスが極めてサービス指向になるということです。これは組織が存在するそもそもの理由が顧客やビジネスパートナーへのサービス提供であることを考えれば、適切なことです。次にもたらされる変化としては、組織内の異なるグループ間でのコミュニケーションが円滑になり、知識の共有が図れるということです。Webサービスによって、誰もが「サービス」、つまり概念の共有という観点から考えるようになります。コミュニケーションが改善されることで、概念設計の段階から堅牢なサービスを設計し、目的にかなった設計がなされるようになります。
Webサービスがe-ビジネスにもたらした最も重要な変化は、ビジネス上の対話がいくらか技術的不可知論になってしまうという点です。Webサービスでは、組織はオープンな規格、共通言語に基づいた公衆インターフェースを通してサービスを提供します。Webサービス上でのこうした分離、公衆部分と組織独自部分の分離はe-ビジネスの対話からOS、プログラム言語、プラットフォーム等に対する懸念を取り去ります。それにより、全く異なる技術基盤に立つビジネスのパートナー同士でも苦労なく対話できることになります。対話のための技術的な障害を取り除くことが、e-ビジネスでの対話遂行の第一歩です。次のステップは標準化された対話方法、メッセージ、用語を使うことです。先に述べたように、Webサービスを使ってe-ビジネスの対話方法を構築しない限り、本当の意味でのWebサービスの可能性は分からないのです。
図2: Webサービスのパブリック/プライベート・サイド
現実のWebサービスをうまく行なうためには、ビジネスパートナー同士が電子的にビジネス対話ができることが基本です。e-ビジネスなので対話はデジタルであり、対話する相手同士両側どちらのソフトウェアも対話を理解できる必要があります。ソフトウェア・システムは目的の対話のみを「理解」出来ればよく、同じビジネス活動に関する対話にいくつもの解釈方法をプログラムしたりすると、e-ビジネスの対話コストが高くなりすぎてしまいます。例えば売買相手として22のビジネスパートナーがいる場合、受注処理にそれぞれ別の対話方式を定義してしまうと、同じことをするのに22の対話方式を用意しなければならなくなります。ですからビジネス活動や対話方法を記述したり、アクセス、処理するのに標準的な方法を使うことが決定的に重要になってくるのです。
それではe-ビジネスとは、どんなものでしょうか。e-ビジネス上の対話方法とは、ビジネス活動を実施するためにビジネスパートナーのソフトウェア・システム間で行われる対話です。その対話は簡素で、時には実行の必要があるbusiness activityによっては精緻化できます。
図3: e-ビジネス上の対話方法の構成要素
図3で、Acme社がJoeLaptops社に対し購入注文書要求を出す簡単なe-ビジネス上の対話方法を見ることができます。e-ビジネス上の対話方法に必要ないくつかの構成要素は以下の通りです。
- オープンでアクセス可能なパブリック・インターフェース
- パートナーの役割
- 合意されたコレオグラフィーに基づいて交換される標準メッセージ
- 標準用語
- 環境の安全性と信頼性
AcmeとJoeLaptopsがビジネス上の対話を始めるためには、両方の組織は標準的方法で定義され、インターネットベースのプロトコルを介してアクセス可能なパブリック・インターフェースを持つ必要があります。オープンでアクセス可能なインターフェースによって、Acme社(Javaベースの仕事場)はJoeLaptops社(大型汎用でCOBOLベースの仕事場)と簡単且つ安く通信できます。
役割とコレオグラフィーについて理解するために、映画の台本を想像してみてください。e-ビジネスでの対話は、映画の台本のように、ビジネス・パートナーによって演じる役割が異なります。この例では、Acme社は買い手の役割を担い、JoeLaptops社は売り手の役割を担っています。映画の台本のセリフを言う俳優のように、組織はe-ビジネスでの対話によって指定されたオーダーに基づき、互いにメッセージを「送ります」。e-ビジネスでの対話においては、シーケンスとオーダーの概念は、コレオグラフィーまたは編成として知られています。最も単純な形は、メッセージが交換されるシーケンスの作成です。またコレオグラフィーもサービス、パートナー、あるいは他のe-ビジネスでの対話を編成する複雑な対話の生成に使用できます。BPEL4WSを扱う次回の記事で、これについてより詳しく説明しましょう。
ビジネス上の対話はソフトウェア・システム間でなされており、ソフトウェア・システムは推測するということは得意ではないため、何一つ曖昧にしておいてはいけないということを覚えておいてください。Acme社とJoeLaptops社間で交換されるメッセージには、標準構造および標準用語が用いられています。つまり、メッセージは定義されたスキーマに従うべきで、メッセージで使用される全ての用語は両組織において同じ意味を持たなければならないということです。用語の定義と使用法の標準化は重要です。常用語が異なる専門職種では異なる意味となってしまうように、日常生活においても標準化の必要性は十分に理解することができます。例えば、先ほど映画の台本に言及しましたが、技術的な知識があるところに、著者が単に「スクリプト」という単語のみを使ったのであれば、「スクリプト」という単語はPerlのスクリプトなのか映画のスクリプト(台本)なのかと混乱させていたかもしれません。「マウス」は医薬の研究所では小さな毛皮で覆われた動物のことですが、コンピューターの研究所ではポインティング・デバイスのことになります。コンピューターの研究所がマウスの注文書を出したら、売り手がネズミを発送しないということは重要です。幸いなことに、e-ビジネスのメッセージで使用する用語の辞書を作成する標準化団体が存在しています。
e-ビジネスの要素として一番大事なものとして安全性と信頼性が挙げられます。組織が現実の世界でビジネスを行なうときには、契約書にサインし、法的に拘束力を持った関係になります。e-ビジネスでは、個々にやり取りされるメッセージを契約書として扱うことで、こうした信頼を確立します。メッセージは関係者間で合意された期間保存され、各ビジネスパートナーはメッセージに含まれている「約束」に拘束されることになります。この概念は否認防止として知られています。ビジネスパートナーはまた、どの従業員のうち誰がそのe-ビジネス対話の遂行権限を与えられているかを明示し、その従業員の権限と素性はe-ビジネスの実行期間中に交換されるメッセージにあるデジタル証明書とデジタル署名で認証されます。メッセージは改変防止されており、第三者が内容を書き換えたり、ビジネス取引当事者に被害を与えたり出来ないようになっています。さらにメッセージはセキュアな線路上でやり取りされるので、第三者が機密情報を盗み見たりすることも出来ません。
このシリーズのテーマは、ロゼッタネットの概念と構成要素を活用し、BPEL4WSとWSDLで記述されるe-ビジネス上の対話方法を構築するために使用すれば、Webサービスは本来持つ可能性に応えられるというものです。BPELがビジネスプロセスに関する記述によく対応できるにもかかわらず、いったいなぜロゼッタネットで悩まなければならないのでしょうか。
前述したように、現実的なWebサービスを構築するためには、e-ビジネス上の対話方法を実施する機能を作成する必要があります。有用なe-ビジネス上の対話方法を構築するためには、オープンでアクセス可能なパブリック・インターフェースに加え、標準化されたメッセージ、用語、コレオグラフィーの使用が必要です。根本的に標準的e-ビジネス・プロセスを取り込み、Webサービス環境で使用可能にしなければなりません。
ロゼッタネット(www.rosettanet.org)は、e-ビジネス・プロセス仕様では業界のリーダーです。したがって独自のe-ビジネス上の対話方法のために、ロゼッタネットベースの「標準」e-ビジネス・プロセスを選択するのは自然なことです。
著者は次の理由から、ロゼッタネットベースのWebサービスを使用するべきであると考えています。
- ROI(投資収益率)を計算しやすい
- ビジネスのベストプラクティスが役立つ
- パートナーの受諾を獲得しやすい
- ビジネス上の対話方法の構築において時間と労力を節約できる
しかしながらWebサービスで起こりうることをアピールし約束しても、多くの組織はWebサービス・プロジェクトに資金を委ねることを躊躇します。映画Jerry McGuireで有名な科白「証拠の金を見せてくれ」は、戦いに疲れきったマネージャー全員の口癖のようです。これはもっともな要求であり、既存のビジネス問題のコストの削減と時間の短縮に照準を絞ったWebサービスを構築することによりWebサービスの真価が証明でき、Webサービスによって可能になったニュービジネス・モデルに重点的に取り組めると思います。
Webサービスをロゼッタネットの仕様で形成すると、ロゼッタネットのROI計算のいくつかを使用できます。もちろん、ロゼッタネットで挙げた本当の恩恵は標準化されたe-ビジネス・プロセスの使用にあるのですが、多くの計算が利用できることはまだ充分魅力的です。ロゼッタネットのWebサイトには、e-ビジネス・プロセスとしてビジネス活動を実装する利益を証明する事例研究があります。例えば、INTEL社はe-ビジネス・プロセスを使用して同社の売買活動の10%以上を取引きしたと最近発表しました。実に50億ドル以上の取引額となります。私がこの記事で構築するWebサービスは、ロゼッタネットPIP3A4(パートナーが購入注文を出せるe-ビジネス・プロセス)に基づいています。
ロゼッタネットはビジネスの対象に関し、あるビジネス・プロセスのための業種別ベストプラクティスを識別するエキスパートのグループを集めることにより、e-ビジネス・プロセスを構築します。次にe-ビジネス・プロセスとして実際のビジネス・プロセスのベストプラクティスをモデル化します。さらにe-ビジネス・プロセスは仕様としてリリースされる前に、産業専門家による多くの精査を経ます。最後に残るどんな問題も取り除かれ、仕様は業務用に供されます。ロゼッタネットのPIP(e-ビジネス・プロセス)には、ビジネスの特殊な部分を構築する最良の方法を含む莫大な量の業界知識と専門技術があります。ロゼッタネット仕様に基づいて独自のWebサービスを構築すれば、この価値のある専門技術および知識から恩恵を受けられます。
e-ビジネス上の対話方法は、実際には2者間の対話です。現在のWebサービスの設計とは異なり、e-ビジネス上の対話方法を行なうWebサービスは、1つのパートナーのみのために単独で設計することはできません。両方のパートナーはそのことに同意する必要があります。パートナーは新規のビジネス・プロセスの交渉を開始できますが、双方がロゼッタネット仕様に基づいていれば非常に容易です。これらの仕様は実際のビジネスを行うために使用されており、一方のパートナーの方へ偏ることがありません。
BPEL4WSには、ビジネス・プロセスを構築するツールがあります。どのようにビジネス・プロセスを設計するかは設計者にかかっています。BPEL4WSは、新規のビジネス・プロセスを構築するために、あるいはロゼッタネットベースのe-ビジネス・プロセスをモデル化するためにも使用できます。著者はわかり切ったこと、およびe-ビジネスの領域で過去25年にわたってなされてきた多くの仕事を最初からやり直さないことを確信しています。過去に培われたものの中にはEDIとロゼッタネットのような優れた労力の結晶も含まれますが、私たちはこれらを活用することや、独自のプロジェクトに再利用するために学習することができます。単にロゼッタネットのe-ビジネス・プロセスを採用しBPEL4WSでそれを書くことだけで、時間、労力、および共有のe-ビジネス・プロセスを高度に構築するのに必要な専門技術を思い切って削減できます。
この記事では実際のビジネスを行うための低価格でできるe-ビジネス上の対話方法の広く知られた使用法として、Webサービスの本当の可能性について取り上げました。e-ビジネス上の対話方法とはどのようなものか、またどのように機能するかを説明し、なぜロゼッタネットのWebサービスでe-ビジネス上の対話方法を形成することが優れているのかを述べました。次回の記事では、ロゼッタネットPIP3A4およびBPEL4WSを使用して、拡張したe-ビジネス・シナリオの作成を取り上げましょう。
- Suhayl Masudによる「Web services: An elephant in the dark」をお読みになると、Webサービスの本当の価値がより詳しく分ります。
- Holt Adams他による「Webサービスのベスト・プラクティス: 基本に立ち戻る 第1回」(developerWorks および2002年10月)は、Webサービスの構築にベストプラクティスを適用するための優れたソースです。
- Sanjiva Weerawarana他による「Business Process with BPEL4WS: all columns」(developerWorks および2002年8月)をお読みになれば、BPEL4WSでビジネス・プロセスを書くことに関してより深い知識が得られます。
- Holt Adamsによる「Asynchronous operations and Web services, Part 1: A primer on asynchronous transactions」(developerWorks および2002年4月)は、非同期Webサービス構築に関する有益な情報を与えてくれます。
- Holt Adamsによる「Asynchronous operations and Web services, Part 2: Programming patterns to build asynchronous Web services」(developerWorks および2002年6月)には、非同期Webサービス構築についてのより有益な情報が記載されています。
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RosettaNetのWebサイトには、e-ビジネス上の対話の技術面とビジネス面に関する豊富な情報があります。
Suhayl Masudは、Different Thinking社(トレーニング、設計、アプリケーション作成サービスの提供により、組織が電子ビジネスを理解し構築することを可能にするコンサルティング会社)の社長です。Suhaylはロゼッタネットの指導的技術設計者として、コンサルティングを担当したことがあります。彼は、ロゼッタネットで次世代のe-ビジネス・プロセス標準の定義に関わりました。Suhaylは読者の便りを楽しみにしています。Webサイトwww.DifferentThinking.comで連絡が取れます。