CBM-SOMA を利用して RCM (Resource and Capacity Management) センターに最新の技術を取り入れる手法

事例研究

この記事で取り上げるのは、IT システムの変換を支援する RCM (Resource and Capacity Management) のビジネス業務とプロセスです。この記事で説明する手法によって、SOA を使用したエンド・ツー・エンドの自動ビジネス・プロセスを実現する際に、現在の資産とツールに手を加えて統合できるようになります。RCM センターを企業の視点で検討した私たちは、ビジネス・コンポーネント・モデルを構築して重要なコンポーネントを特定し、SOA ソリューションによる階層型エンタープライズ・アーキテクチャー・モデルを開発しました。ビジネス・サービスを識別し、候補となる IT サービスに変換する方法としては、SOMA のサービス識別および分析手法を適用します。この事例研究では、既存の RCM IT システムとそのビジネス業務に最新の技術を取り入れる上で IBM が適用している CBM-SOMA 方法論と IBM SOA ソリューションの例も紹介します。

Prabhakar Mynampati, SOA architect, IBM

Prabhakar Mynampati PhotoPrabhakar Mynampati は、インド IBM Software Labs で HiPods に取り組む SOA アーキテクトです。彼は IBM のクライアントが IBM の SOA、CBS リファレンス・アーキテクチャーを使用してアセット集約ソリューションを構築する際の支援を行っています。



Milind Vaidya, Business Solutions Leader, IBM

Milind VaidyaMilind Vaidya は、GBS グルーバル・デリバリー・チームの BT/IT ビジネス・ソリューション・リーダーです。



2010年 7月 27日

はじめに

RCM (Resource and Capacity Management) は、IBM に関わる人員のキャパシティー計画、監視および管理、そして雇用を行うセンターです。ここでは、IBM 事業体からの人員要求に社内の人員で対応し、社内の人員が足りない場合、あるいは適切ではない場合には、人事部を通して外部人員の雇用活動を開始します。この RCM センターでは、短期的および長期的なキャパシティー計画活動を行うとともに、さまざまな事業体からもたらされる突発的な需要の変動を吸収し、需要を調整することで、対象とするセンターや人事部がその管理された雇用プロセスに従って外部人員の雇用活動を円滑に行えるようにします。RCM センターでは常に、需要と供給のギャップをなくすために懸命に努力しています。

RCM センターでは、すべての事業体からの需要を満たすための人員供給源として、ローテーション、ロールオフ、遊休、雇用 (ANOB)、SSP (IBM 受託業者)、および新卒採用という 6 つのチャネルを使用します。需要の発生源についても同様に、1. 既存のプロジェクト契約、2. 新しいプロジェクト契約、3. 補填、の 3 つがあります。補填の需要は、プロジェクトから人員が外れることが予定されている場合に、それに代わる人員を配するために発生します。

RCM センターは十分に確立されたセンターであり、監査されたビジネス・プロセスを周期的に行って、日常業務のすべてを実行します。このうち重要なプロセスとしては、キャパシティー計画プロセス、フルフィルメント・プロセス (雇用の実施、人員のローテーション、ロールオフ、遊休人員の管理、SSP 業務、GH 雇用といったプロセス) などが挙げられます。これらのプロセスを実行するために使用されているのは、Professional Marketplace などの IBM の世界的規模の戦略ツール、Global Opportunity Marketplace、PD ツール、Project DB、Lotus Notes ベースのツール、そして Microsoft ® Excel です。

ビジネス・プロセスを IT 分野に適応するように変換する上で採用されているのは、IBM の CBM-SOMA 方法論です。その SOA ソリューションによる階層型エンタープライズ・アーキテクチャー・モデルが、RCM センターのエンタープライズ・アーキテクチャーをモデルとして定義するために利用されています。この記事では、エンタープライズ・アーキテクチャー・モデルの各セクションについて詳しく説明するとともに、既存のビジネス・プロセスを最適化して IT ソリューションを定義します。この過程で、プロセス所有者のワークショップが何度か企画されました。これらのワークショップを通して、プロセス所有者は現状のプロセスを把握し、既存のプロセスおよびツールでの問題点を文書化し、プロセスのあるべき形としての論理および物理モデルを計画しました。

図 1. RCM センターの需要と供給の図
RCM センターの需要と供給の図

RCM センター – コンポーネント・ビジネス・モデル (CBM) マップ

図 2. RCM センターの CBM における重要なコンポーネント
RCM センターの CBM における重要なコンポーネント

ビジネス・コンポーネントの説明

供給戦略および計画 (Supply Strategy and Planning): GDC IBM India で行われている業務のスケールは大きいため (Geos と同じスケール)、人員供給の戦略および計画は非常に重要です。このコンポーネントは人員雇用戦略を短期間および長期間のベースで構築し、それに従って雇用実行計画を作成します。このコンポーネントはビジネス優先順位、組織戦略を世界的なレベルで考慮します。

需要戦略および計画 (Demand Strategy and Planning): IBM と顧客のビジネス拡大計画、顧客の将来的な吸収合併計画、そして新しい技術の導入などといった市場主導の戦略を基に、組織の目標を達成するための人員需要戦略が構築されます。そしてこの戦略に従って、長期的な人員需要が計画されます。

人員供給管理 (Resource Supply Management): このコンポーネントは、人員供給に関する情報を収集し、短期および長期計画に動員できる従業員、関連会社、合弁会社、および請負業者の人員供給ステートメントを作成します。人員に対する事業体 (BU) のニーズは、ビジネスの優先順位、戦略的イニシアチブ、その他の考慮事項を基に認識されます。また、BU のニーズを基に、必要とされる人員および指定されたスキル・セットのプロファイルを作成するなどの機能もあります。このコンポーネントは国内の人員供給と国際的な人員供給の両方を分析します。特定のスキルに対する既存の人員供給および需要をベースとして、最初の要員キャパシティー計画を作成します。

人員需要管理 (Resource Demand Management): このコンポーネントは、需要に関する情報を収集し、需要計画を作成します。この計画には、短期計画と長期計画のどちらにも適用できる確定的需要 (進行中の作業)、潜在的需要 (パイプライン)、そして予測される需要が含まれます。需要計画は、BU 需要に対する人員供給と突き合わせてキャパシティーのギャップを識別することによって作成されます。

人員管理 (Resource Administration): このコンポーネントは、正しい人員情報 (JRSS、スキル・セット、履歴書、DOJ など) をそれぞれのリポジトリーで確実に利用できるようにして、配属後の活動 (現場キオスク、雇用された人員用の DM 対話など) を容易にします。また、従事者の査定表の管理、LOA および長期休暇の関係で配属不可能な人員の管理も行います。

人員の配属および追跡 (Assign and Track resources): このコンポーネントは、考えられるすべてのチャネル (ロールオフ、ローテーション、遊休、雇用、および SSP 業務など) から、さまざまなプロジェクト・アカウントの人員需要のニーズに人員供給を割り当てます。さらに、人員のプロジェクト契約終了日、プロジェクトでのローテーション人員のニーズ、遊休人員を追跡します。このコンポーネントの目的は、組織の人員需要に関して目標とするフルフィルメント計画を効率的に達成することです。

人員雇用 (Resource Hiring): このコンポーネントは、R&CM と人員配属チームが業務 (雇用の拡大、プロジェクト固有の雇用、雇用イベントの実施など) を円滑に遂行できるように仲介する役割を持ちます。このコンポーネントは、適切なタイミングで需要に適った人員を雇用します。また、雇用パイプラインを構築して需要の変動に対処します。このコンポーネントが行う決定は、雇用の転換率に基づきます。

新卒採用 (Graduate Hire): このコンポーネントは、新卒採用者だけでなく、経験の浅い被雇用者 (12 ヶ月未満の経験) を管理し、必要な研修を行って人員を育成し、実際の業務に就けるようにします。新卒採用者は、プロジェクトで見習い期間を経た後で実際に配属されることになります。このコンポーネントは、何人雇用するか、どの分野の人員を雇用するか、およびどの大学/会社から雇用するかを計画します。

SSP 業務 (SSP operations): このコンポーネントは、請負業者の採用と配属を管理します。さらに、戦略的ベンダー、スキル・セット、将来的展望などのベンダー・リレーションシップも管理します。このコンポーネントが SSP 候補者の採用を担当し、履歴書の提供、面接、採用手続、配属、契約終了/再配属などを行います。

ビジネス分析 (Business Analytics): このコンポーネントは、パフォーマンスを測定して R&CM とビジネス実現のための特定の振る舞いを制御するためのレポートを作成します。コンポーネントが生成する特別レポートは、問題を特定し、ソリューションを提供する上で役立ちます。このコンポーネントには、R&CM の生産性向上に役立つツールもあります。このコンポーネントの分析によって、問題を事前に予測して特定できるだけでなく、繰り返し手動で行われる手順を自動化できるようにもなります。

図 2 に赤で示されたコンポーネントは、ビジネス変換で第一に優先される RCM の重要なコンポーネントです。黄色のコンポーネントは「重要になる可能性があるコンポーネント」として、ビジネス変換で 2 番目に優先されます。

現在の問題点

フルフィルメント

  • 現在、キャパシティー計画のサイクル期間は1 ヶ月に及びます。手作業のプロセスに費やされる時間が、さまざまな利害関係者の決定および対応を遅らせていることから、最新の需要と供給の動的バランスが考慮されず、不正確なキャパシティー計画という結果になっています。
  • 需要と供給力の日々の変化により、正確なフルフィルメント計画になりません。
  • SSP プロセスはサイロ型で運営されており、現行のフルフィルメント・システムおよび雇用システムとの密接な連携が取れていません。
  • 人員の需要をタイミングよく満たせていないことから、収益に損失が出ています。
  • 拡張された RCM センターでは、能力開発マネージャー、業務遂行マネージャー、人員マネージャー、配属マネージャーなどの実行スタッフの作業を減らす必要があります。
  • 完全な仕様がなく、検証されていない需要を減らし、フルフィルメントに要する時間を減らす必要があります。

雇用

  • 現行の雇用要求の作成プロセスには労力がかかり、最終決定に関与するさまざまな利害関係者の間に合理的なワークフローがあるわけでも、利害関係者同士が合理的に連携しているわけでもありません。
  • 現在、RCM の採用部門と人事部は、それぞれに独立した巨大なサイロとして機能しています。この 2 つの部門間のやりとりは自動化されておらず、情報交換は Excel シートによって行われています。
  • JRSS の詳細が明記された正しい雇用情報を人事部の人員配属チームに提供するのは困難です。
  • 新規採用者の役職コードを作成するプロセスは、現在 4 人のメンバーからなるチームが手動で行っています。
  • 雇用要求を最新のものに更新し、過去の雇用要求と対応付けることで、雇用要求を最適化する必要があります。
  • 雇用のサブプロセスはすべて手動で行われます。

将来のプロセス・モデルに対応したビジネス・アーキテクチャーの決定

フルフィルメント・システム

  • 現行のキャパシティー計画プロセスは、社内供給のフルフィルメント要件が満たされた後に、未対応の需要に応じて人員を採用するというボトムアップ方式となっています。最新の技術を取り入れた提案では、分析に基づく供給計画を中心に雇用の大半を行うという、トップ・ダウン方式に従うことになります。
  • 現行のキャパシティー計画プロセスは、RCM 業務から外されます。
  • PAL による需要検証プロセスは、需要検証の遅れが考慮されない RCM フルフィルメント・プロセスのスコープから外されます。検証された需要は、フルフィルメント・プロセスの入力となります。要するに、需要検証はアップストリーム・プロセスになるということです。
  • 45 日以内に対応しなければならない需要に対してのみ、ソリューションが作成され、フルフィルメント計画が準備されます。
  • 現在のフルフィルメント・ソリューションでは、各種チャネルから採用可能な社内の人員だけでなく、外部雇用のパイプラインで発生している現行の雇用要求も考慮して、フルフィルメント計画を行います。
  • フルフィルメント計画で検討される外部人員は、IBM 正規雇用 ANOB、SSP ANOB、技術限定、PDM 限定の候補者です。
  • 空き要員に対する PMP の需要に対応するための雇用要求は、供給計画に基づく社内人員および既存の雇用要求をすべて合わせても、需要の要件を満たせない場合にのみ作成されます。実際には、このような雇用要求は、全体の雇用要求のわずか 3 パーセントから 4 パーセントを占めるにすぎません。
  • ビジネス・ルール文書に指定された属性に基づき、各要求に需要優先順位の DPI 値を指定します。
  • 月間または週間のフルフィルメント計画を 1 週ごとに準備するという考えを排除します。毎日増え続ける需要に対し、毎日フルフィルメント計画を作成して 45 日の時間枠を設けたソリューションを提供します。

雇用システム

  • 提案されているトップ・ダウン方式では、供給計画は CFE/SFE と SLC & RCM のリーダーによって検討され、雇用計画に変換されます。
  • 外部雇用チャネルからの人員は、ソリューション作成期間中に PA、セクター、セクター間に論理的に割り当てられます。
  • 候補者が職務に就くまでは、需要要件に変更がない限り、この論理的な割り当てが維持されて人員の実際の割り当てに確定されます。
  • 人員の論理的割り当てに影響があった場合、または ANOB ステージで論理的割り当てが行われていない場合には、ビジネス・ルール文書に記述された DPI ベースの割り当てビジネス・ルールに従って候補者の割り当てが行われます。
  • オファーのリリース承認タスクとオファーの例外承認タスクは、CFE/SFE リーダー、SLC & RCM リーダーがそれぞれに行います。これらのタスクは、雇用プロセスに最新の技術を取り入れるなかに含められます。
  • 供給計画から雇用要求計画への変換を、以下の内部要因と結び付けます。
    • 需要を把握するための統計
    • 遊休人員が持つ同様のスキル・セット
    • CFE/SFE および SL&C リーダーの特別要件

IT アーキテクチャーの決定

フルフィルメント・システム

  • 現在、RCM 業務は Excel シートをベースとしたデータ・ストアによって遂行されていますが、このことが RCM スタッフの生産性の障害となっています。その原因は、デスク・トップや ThinkPad で Excel シートを開いて大量のデータを処理していると、途中でマシンがハングしてしまうためです。毎日のように世界中のツールからデータをダウンロードし、Excel シートでデータを処理するのは単調な上に、手作業で何度も繰り返す処理が多いため、RCM スタッフの生産性を無駄にします。そこで推奨されるのが、「RCM エンタープライズ・ソリューションの概要」セクションで提案しているように、社内 RDBMS データ・ストアを利用することです。
  • プロセス指向の SOA ベースの IT システムで RCM 業務を実現します。
  • WebSphere アダプターを使用した SOA ベースの ESB アーキテクチャーにより、リアルタイムのデータを統合して世界中の需要、供給、および HR 戦略ツールからのデータを社内 RDBMS に取り込みます。
  • Web ベースのフルフィルメント・システムを 1) IBM BPEL のコレオグラフィー機能を使用したエンド・ツー・エンドのワークフロー、2) 個別のサポート機能を備えたユーザー・インターフェースの使用ケースとして開発します。
  • 提案されているフルフィルメント・システムでフルフィルメント計画を準備し、PMP で提案して割り当てます。
  • 提案されているシステムから PMP にフルフィルメント計画を統合します。
  • 提案されている IT システムには、毎日フルフィルメント計画を生成する機能を備えます。
  • PFM と CFE が (自動ワークベンチで) 手動でソリューションを作成してフルフィルメント計画を作成するタスクには、IBM BPEL を使用した自動ワークフロー・ソリューションが提案されています。
  • 供給および需要データのクレンジングと補強には、ESB 層のビジネス・ルールを使用します。
  • 供給および需要データ・マートのデータでは、その日に発生した変更のみを取得します。
  • 自動化された実行前タスクにより、プロジェクト・コードと請求コードで GBS GD PMに対する各需要および通知をチェックします。

雇用システム

  • Lotus ベースの HPAT ツール、Excel シートによる RCM と HR チーム間のデータ転送を、本格的な SOA Web ベースの雇用アプリケーションに置き換えます。Web ベースの追跡ツールに実装するのは、供給計画の準備、公開、雇用要求の作成、承認および終結プロセス、オファーのリリース承認、およびオファーの例外承認です。さまざまな利害関係者たちがオンラインで連携を取れるように、Web ベースの雇用追跡機能を作成します。
  • Web ベースの雇用システムと GOM を統合します。GOM で記録された HR イベントを Web ベースの雇用システムに転送することにより、要求 ID に関連付けられたすべての HR イベントを追跡します。データ統合という手段、あるいは GOM データ構造から取得した詳細に基づいてアプリケーションを統合するという手段のいずれかを使用して、提案されている雇用システムから GOM に雇用要求を公開することが推奨されます。
  • オファーのリリース承認タスクおよびオファーの例外承認タスクに関連する使用ケースを作成して雇用システムに組み込みます。
  • このアプリケーションでは、雇用システムで役職コードの作成要求を作成し、HRMS システムに対する Web サービス呼び出しを行って役職コードを取得します。
  • 役職コードを作成するための Web サービスは、HRMS システム内でホストします。
  • Web ベースの雇用システムを 1) IBM BPEL のコレオグラフィー機能を使用したエンド・ツー・エンドのワークフロー、2) 個別のサポート機能を備えたユーザー・インターフェースの使用ケースとして開発します。
  • 割り当てられていない ANOB 候補者をパイプラインで接続するためのシステム DPI サービスを開発します。
  • 雇用要求計画は、手動で雇用システムへ供給されることはありません。
  • 雇用要件は、統合された Web ベースの雇用システムを介して SL&C リーダーが更新します。
  • 自動再調整サービスが ANOB 詳細と要求詳細を突き合わせて要求を終結します。
  • 自動 PeM は、パイプラインで接続された候補者に対する接続アドバイザー更新サービスです。
  • 自動パイプライン割り当てサービスでは、DPI ベースのビジネス・ルールを使用します。
  • 供給計画から雇用要求計画への変換は、事前定義されたビジネス・ルール・サービスによって自動的に行われます。

RCM エンタープライズ・ソリューションの概要

このセクションでは、IBM の S3 (SOA Solution Stack) モデルを使用したアーキテクチャー層モデルで表現し、エンタープライズ・サービス・レベルでの最新の技術を取り入れた RCM アーキテクチャーについて説明します。S3 モデルは、アーキテクトと設計者が SOA ソリューションを設計する際に役立ちます。S3 モデリングは、業界のベスト・プラクティスと SOMA サービス・モデリングをベースに、基本的な S3 モデルにおいて各アーキテクチャー層を構成する一連の要素を識別することによって、抜本的に拡張されています。S3 モデリングのガイドに従うことで、SOA ソリューション・アーキテクトはカスタマイズした SOA ソリューション・アーキテクチャー・モデルを確立することができます。

図 3. RCM センターの SOA ソリューション・スタック概要
RCM センターの SOA ソリューション・スタック概要

SOA ソリューション・スタックは、SOA アーキテクチャー層と、ソリューションの重要なコンポーネントを明確にします。層の機能は、カスタム・コンポーネントの開発によって実現されることも、ミドルウェア・インフラストラクチャー・ソフトウェアによって提供されることもあります。垂直方向に並んだ層には、以下の 5 つがあります。

  • ビジネス・プロセス層 (Business Process Layer)
  • サービス層 (Service Layer)
  • サービス・コンポーネント層 (Service Component Layer)
  • 機能および技術コンポーネント (Functional and Technical Components)
  • 運用システム層 (Operational System Layer)

ビジネス・プロセス層では、ビジネス・プロセスの実行をアトミック (粒度の細かい) サービスのオーケストレーションによってサポートする、ビジネス・サービスおよびビジネス・プロセスのコンポーネントを表しています。ビジネス・サービスの例としては、需要と供給のマッピング・サービス、需要検証サービス、需要の優先順位標識サービスなどがあります。主要なビジネス・プロセスの例として挙げられるのは、フルフィルメント計画プロセスです。フルフィルメント計画プロセスは、現行の需要情報および供給情報に関するビジネス・サービス、そして需要と人員供給のマッピングを行うビジネス・サービスからなります。この層には、フルフィルメント計画に関連するキャパシティー計画プロセスとして、予測需要に関するサービスのオーケストレーション、ANOB 候補者供給サービス、長期キャパシティー計画の導出なども含まれます。

サービス層では、サポートされるサービスのサービス契約を表しています。サービス契約には、ビジネス・サービスのサポートおよびアトミック (粒度の細かい) サービスが含まれます。サービス契約を指定するために使用されるのは、WSDL (Web Service Description Language)、およびガバナンス層によって管理されるサービス管理ポリシーです。キャパシティー計画の場合に考えられるサービスとしては、需要情報および供給情報に関するサービス、マッピング・サービスがあります。同様に、雇用サブシステムの場合には、雇用要求生成サービス、要求調整サービス、要求承認サービスなどが候補として考えられます。

サービス・コンポーネント層で表しているのは、サービス契約の実装をサポートするサービス・プロバイダー・コンポーネントです。サービス・コンポーネントには、機能コンポーネントと技術コンポーネントがあります。機能コンポーネントを実現するサブシステムは、1 つのサービス・コンポーネントで構成されることもあれば、多数のサービス・コンポーネントで構成されることもあります。最新の技術を取り入れた RCM の SOA 階層型モデルでの各サービス・コンポーネントは、上記の図に示されているように、さらに 1 つまたは複数の機能コンポーネントで構成されるサブシステムのそれぞれに対応します。

運用システム層には、RCM 業務に使用される既存の IBM システムおよびツールがあります。PMP は、需要を把握して割り当てを行うフルフィルメント用ツールです。GOM (Global Opportunity Market place) は、人事部が新入社員の情報を収集するために使用します。内部供給情報およびすべてのスキル・セットの詳細に対応する PD ツールは、供給情報に使用されます。BluePages や Live core DB は、供給レポートの生成時に候補者詳細を取得するために使用されます。HRIS は、候補者の詳細、BUCOMG によって生成された役職コード、PAL および PeM の情報を更新するためのシステムです。IBM の世界的戦略ツール、OODB は、現在の Lotus Notes ベースの SSP IS ツールの代わりに使用されます。最新の技術を取り入れた RCM システムでは、これらの既存のツールと適切なインターフェースを取るように提案されています。

水平方向に並んだ層には、以下の 4 つがあります。

  1. インテグレーション層 (Integration Layer)
  2. サービス品質層 (QOS Layer):
  3. データ・アーキテクチャー層 (Data Architecture Layer)
  4. ガバナンス層 (Governance Layer)

インテグレーション層は、統合コントローラーとメッセージ変換コンポーネントによってサポートされます。統合コントローラーには、ゲートウェイ ESB (Enterprise Service Bus) と内部 ESB の両方が組み込まれています。ESB は、トランスポート・プロトコルの変換、サービス・エンドポイントの仮想化とルーティング、さらにメッセージ変換、ロギング・サービス、セキュリティー・サービスなどのサービスのメディエーションを行うための管理対象インフラストラクチャーです。ESB はサービス・レジストリーおよびサービス管理ランタイムとインターフェースを取ってサービスの実行を管理します。ゲートウェイ ESB インフラストラクチャーは、提案されている RCM の中間層インフラストラクチャーをベースに (HTTP および Web サービス・セキュリティー・オプションを介して) セキュリティーを有効にします。

最新の技術を取り入れた RCM システムとして提案されているシステムと、既存の運用システムとの統合ポイントには、以下のものがあります。

  • 最新の技術を取り入れた RCM フルフィルメント・サブシステムとして提案されているシステムと PMP のフルフィルメント計画提案の統合
  • HPAT ツールに置き換わるシステムとして提案されている、最新の技術を取り入れた RCM 雇用サブシステムと GOM との統合
  • 最新の技術を取り入れた RCM フルフィルメント・システムと PMP の需要および供給データの統合

データ・アーキテクチャー層には、提案されている一連のリレーショナル・データベース・システムの供給、需要、雇用、およびフルフィルメントのデータ・リポジトリーがあります。現在、PMP ツールによって G42 需要レポートからダウンロードされた需要情報と、各種ツールによって供給レポートから取得された供給情報は、すべてフラット・ファイルと Excel シートで処理されています。提案されている RDBMS リポジトリーには、データ統合とメディエーション・モジュール、そして一連のビジネス・ルールを使用して PMP の供給および需要データがコピーされ、フルフィルメント・データベース・リポジトリーから入手可能な PAL 詳細、セクター、アカウント情報が追加されます。フルフィルメント・リポジトリーには、事業体情報の詳細だけでなく、内部および外部のフルフィルメント提案計画の詳細も保管されます。さらに、エンド・ツー・エンドのフルフィルメント・トランザクション・データ (配属済み要員が雇用されてから需要に割り当てられるまでの情報など) も保管されます。このリポジトリーは、候補者を突き合わせるために、未割り当ての ANOB に関する詳細も保持します。監査データからのデータは、適切な時点で履歴データベースにアーカイブされます。

雇用サブシステムにも同じく、個別の DB ストア・コンポーネントが提案されています。このデータベースには、キャパシティー計画のガイダンス情報 (需要に一致しない供給に関する情報)、雇用要求情報、雇用ステータス、GOM データ、雇用割当の詳細などが保管されます。

QOS 層では、プロセスおよびサービス実行の運用管理と監視を行います。この層は、IBM の Tivoli® サービス管理製品スイートを使用したサービス管理インフラストラクチャー・ソフトウェア、または社内で作成された監視および管理サービス (セキュリティー・サービスを含む) によってサポートされます。ハイパフォーマンスのトランザクション・データの監視および管理を行うために、アーキテクチャーのさまざまな層でのキャッシング・サービスと、定期的データ保持メカニズムが提案されています。

ガバナンス層は、RCM 運用サービス全体の管理をサポートします。管理をサポートする RCM 運用ガバナンス・プロセスには以下のものがあります。

  • 遊休ガバナンス・プロセス
  • ローテーション・ガバナンス・プロセス
  • ロールオフ・ガバナンス・プロセス
  • 雇用ガバナンス・プロセス
  • フルフィルメント・ガバナンス・プロセス
  • 需要管理ガバナンス・プロセス

以上のすべてのガバナンス・プロセスは、RCM、HR、SL&C、セクターの各責任者、RCM、HR、SL&C、セクターの各リーダー、RCM および HR の幹部という 3 層で構成されたガバナンス組織を確立することによって定義する必要があります。


SOMA のサービス識別方法: ビジネス・コンポーネント – 人員雇用の例

プロセスの分解

人員雇用プロセスの分解図を以下に示します。人員雇用は大きく分けて、4 つのサブプロセスで構成されます。具体的には、供給計画の準備、雇用の実行、人員の割り当て、そして人員配属です。このレベル 2 で分解した人員雇用ビジネス・プロセスは、以下のようになります。

1.1 供給計画の準備
1.2 雇用の実行
1.3 人員の割り当て
1.4 人員の配属

上記のレベル 2 のプロセスをさらに細かいプロセスに分けていくと、以下のようになります。

1.1 供給計画の準備
1.1.1 供給計画の作成
1.1.2 供給計画の公開
1.1.3 供給計画の承認 (雇用のコンテキスト)

1.2 雇用要求の作成および追跡
1.2.1 ID プロセスの要求
1.2.2 雇用の追跡

1.3 HR 採用プロセス
1.3.1 調達および選抜
1.3.2 オファーの処理

1.4 人員の割り当て
1.4.1 要求 DPI の取得
1.4.2 人員の割り当て
1.4.3 役職の作成

1.5 雇用要求の終結
1.5.1 再調整プロセス
1.5.2 要求終結プロセス

上記のサブプロセスのそれぞれから、候補のサービスが識別されて初期サービス・ポートフォリオに保持されます。

図 4. レベル 3 での雇用コンポーネントのプロセス分解
レベル 3 での雇用コンポーネントのプロセス分解
図 5. サービス・ポートフォリオ
サービス・ポートフォリオ

雇用形態指向の分析

この人員雇用ビジネス・プロセスの階層を示す UML 図は、詳細な設計および実装のロードマップとなります。

hiring type というクラス属性は、雇用の形態が IBM の常勤社員であるか、SSP であるか、または IBM の非常勤スタッフであるかを決定します。この hiring type 属性によって、それぞれのチャネルからの雇用サブプロセスが変わってきます。SSP の雇用は、ボトムアップ方式、つまり PMP 需要仕様をベースに行われます。IBM 正社員のうち、90 パーセントから 95 パーセントについては雇用要求が供給計画から派生し、残りのパーセンテージについては PMP の空き要員に対する需要要求から派生します。このことから、人員雇用の要求タイプに応じて雇用を分類しました。つまり、以下の図に雇用のソース・クラスとして示されているように、供給計画による雇用、PMP の需要による雇用という 2 つのタイプです。残りの JRSS/Band/Location というクラス属性は、どの人員雇用にも共通します。この雇用形態指向の分析からは、さらにいくつかのサービスが特定されています。これらのサービスは、以下のとおりです。

  1. 供給計画に基づく雇用要求の取得
  2. 空き要員に対する PMP の需要に基づく雇用要求の取得
  3. SSP 雇用要求の取得
  4. IBM 正規社員雇用要求の取得
  5. 供給計画に基づく、JRSS/Band に一致する雇用要求の取得
  6. 空き要員に対する PMP の需要に基づく、JRSS/Band に一致する雇用要求の取得
  7. 供給計画に基づく、JRSS/Band/Location に一致する雇用要求の取得
  8. 空き要員に対する PMP の需要に基づく、JRSS/Band/Location に一致する雇用要求の取得
  9. SSP の JRSS に一致する雇用要求の取得
  10. SSP の JRSS および Location に一致する雇用要求の取得
図 6. 雇用形態指向の分析
雇用形態指向の分析

サービス・モデリングの目標

人員雇用プロセスの目標と、識別された KPI およびメトリックを以下の表 1 に記載します。

表 1. 目標および KPI
目標KPI
IBM プロジェクトに参加する人員の即時確保参加する遊休人員が、組織が目標とする数値よりも少ないこと
供給計画から雇用要求を事前に生成することによる、大きな需要変動の調整割り当てられた雇用チャネルに対する需要が 30 日間を超えないようにすること

参加する遊休人員を最小限に抑えるために定められたサブ目標は、以下のとおりです。

  • 最大遊休人員数のスキル・セット分に相当する人員のオファー承認手続きと参加手続きを遅らせる
    • この情報を収集するサービスを作成します。
  • オファーの受け入れおよび確定期間中に候補者を確実に割り当てる
    • 未割り当ての候補者に対するアラート・サービスを作成します。
  • 国内求人担当者に対し、確実に国外のプロジェクトを割り当てる
    • 国内の人員を、重複する国外の需要に対応付ける識別サービスを作成します。
  • オファーがリリースされた後に需要が取り下げられた場合には、参加した人員が確実に他の需要に割り当てられるようにする
    • 候補者を再割り当てするためのアラート・サービスを作成します。

雇用チャネルに対する需要が 30 日間を超えないようにするためのサブ目標は、以下のとおりです。

  • 供給計画から、同様のスキル・セットに対する雇用要求の作成を異なる間隔で行うように分散し、雇用要求の制御を強化する
    • 同じスキル・セット、雇用ステータスを追跡するサービスを開発します。
  • 現行の時間枠内で需要の高いスキルを識別し、供給計画の要求とは別に要求する
    • 市場で需要の高いスキルを識別するサービスを作成します。

既存の資産の分析

現在、RCM 側から人員雇用業務をサポートする IT システムはありません。GOM はありますが、GOM がサポートするのは HR 関連の業務だけです。Lotus アプリケーションをベースに作成された SSPIS ツールや HPAT ツールが既存の資産を利用するとは考えられないため、RCM で使われている Lotus Note ベースのツールはすべて廃止する方針となっています。


まとめ

インドの RCM センターでの現行の業務とツールを包括的に調査し、RCM のさまざまな利害関係者の問題点を理解した上で、私たちはフルフィルメント・システムと雇用システムの IT ソリューションを作成することを提案しました。私たちが提案するシステムは、PMP と GOM などの同種の IBM の世界的戦略ツールを利用して、その機能の完全性を実現します。これらのシステムは、SOA 標準に基づく手法で作成されるため、既存のツールと簡単に接続することができます。さらに、スケーラビリティーに優れているとともに柔軟な構成が可能であることから、世界各地のあらゆる IBM グローバル・デリバリー・センターに配置することができます。


謝辞

この記事の執筆を支援してくれた、Global Delivery Center、BT&IT の Rohini Balaji 氏と、RCMのビジネス・アナリスト、Verendra Mallasandra 氏に感謝いたします。

参考文献

学ぶために

製品や技術を入手するために

  • ご自分に最適な方法で IBM 製品を評価してください。評価の方法としては、製品の試用版をダウンロードすることも、オンラインで製品を試してみることも、クラウド環境で製品を使用することもできます。また、SOA Sandbox では、数時間でサービス指向アーキテクチャーの実装方法を効率的に学ぶことができます。

議論するために

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Zone=SOA and web services
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ArticleTitle=CBM-SOMA を利用して RCM (Resource and Capacity Management) センターに最新の技術を取り入れる手法
publish-date=07272010