レベル: 中級 Viswanath Srikanth, Software Architect,
IBM
Johanna Koester, Open Source and Standards Manager,
IBM
Travis Grigsby, Software Engineer,
IBM
2008年 8月 07日 この記事はシリーズの第 1 回として、新たに生まれつつある標準である WS-POS (Web Services for Point of Service) によって、小売店の周辺機器 (プリンターやスキャナー) と POS (point-of-service) アプリケーションとの間の相互運用性が、周辺機器や POS アプリケーションが接続されているプラットフォーム (Java™ または Microsoft® .NET®) とは無関係に実現できることを説明します。Web サービスの分野での主要な企業はすべて、この WS-POS というオープン・スダンダードを作成するために使われる Web サービスのスタックをサポートしています。これはつまり、周辺機器が 1 つのプラットフォームに縛られる必要がなく、真のサービスとして動作できるようになることを意味しています。
はじめに
WS-POS は ARTS (Association for Retail Technology Standards) で開発中の新しい標準であり、小売店内にある複数の POS 端末の間でプリンターやスキャナーなどの周辺機器を共有するための将来の要件に対応しようとしています。周辺機器を共有することによって、小売店での新たなシナリオが可能となり、それによって顧客のエクスペリエンスが変わる可能性があります。この記事では、この来たるべき標準の基礎となっている概念と、この標準によって小売店で実現されるビジネス・プロセスのタイプについて簡単に説明します。
概要
小売業の IT の世界では、新たな、そして革新的なソリューションによって、多くの機器とその周辺機器が店に導入されています。以前は、小売業者が関心を持つ店内技術に含まれるものとしては、従来からのユーザー・インターフェースである POS (Point of Sale)(つまりキャッシュ・レジスター)、それに付随するレシート・プリンター、スキャナー、そしてディスプレイでした。しかし現在の小売環境には従来からの技術に加え、新しい POS 機器が使われています。新しい機器には、ごく一部の例を挙げるだけでも、カートに内蔵されたタブレットや店員が携帯する PDA、セルフ・チェックアウト、キオスク端末などがあります。店内にあるすべての POS ソリューションにスキャナーやプリンター、ディスプレイ、MSR (magnetic stripe reader: 磁気カード・リーダー)、そして支払い用の機器を装備してはコストがかかりすぎます。そのため、店内の周辺機器を共有することが欠かせないのです。つまり新しい従業員や顧客にタッチポイントを提供し、店内でのユーザーの場所や使用される機器にかかわらず周辺機器を利用できるようにする必要があります。WS-POS は、こうしたソリューションを実現するための、オープン・スダンダードに基づく手段を提供します。
WS-POS を使用するメリット
WS-POS を使用することによる基本的なメリットは、POS 周辺機器を、(モバイル POS ソリューションを含む) リモートの POS アプリケーションからアクセス可能なサービスとして提供できることです。そうすることによって、小売業者は SOA (Service-Oriented Architecture) の強力さを活用することができ、店内の任意の場所にある既存の周辺機器をこうしたサービスを通して利用できるようになります。WS-POS は小売業というエコシステムに関わるすべての人にとってメリットをもたらす可能性を秘めています。
小売業者にとっては次のようなメリットがあります。
- 統合の容易さ: 小売業者は、店内におけるモバイル機器と、新しい顧客や従業員のタッチポイントとをベンダーやアプリケーションに依存しない形で店内の POS 周辺機器と統合することができます。
- 迅速な精算ソリューション: 例えば、あるモバイル機器に最も近い周辺機器を発見することによって、精算時間を削減できる可能性があります。
- 必要な周辺機器の削減: 例えばセルフ・チェックアウトの列と通常の POS による列とで周辺機器を共有することで、店内に必要なプリンターの数を削減することができます。同様に、顧客が所有するモバイル機器と従業員が携帯するモバイル・タッチポイントでプリンターを共有することができ、それによって店内に新しい技術を使った機器を追加する際のコストを抑えることができます。
周辺機器の提供者にとっては次のようなメリットがあります。
- 統合の容易さ: POS 周辺機器を Web サービスとして提供することによって、アプリケーションやモバイル POS ソリューションとの統合を単純化することができます。
- エンタープライズ管理: POS 周辺機器によるサービスを企業のバックオフィス IT インフラからも容易に制御できるようになります。特に SODA (Service Oriented Device Architecture) と組み合わせた場合に有効です。
- 柔軟性: Web サービスは本質的にプラットフォームに依存しないため、WS-POS スタックを実行する機器との統合は、他の選択肢を使用した場合よりも柔軟性に富んでいます。
ISV (Independent Software Vendor: 独立系ソフトウェア・ベンダー) アプリケーションにとっては、POS 周辺機器に次のような新機能が含まれるというメリットがあります。
- オンデマンドによる発見と使用: ISV アプリケーションはモバイル環境において、オンデマンドで POS 周辺機器を発見し、使用することができます (例えばモバイル POS 機器から MSR や POS プリンターを利用する、など)。
- 機器の共有: ISV アプリケーションは共有のリモート POS 周辺機器を利用することができます (例えば、レジにある共有のレシート・プリンターにリモート・アクセスする、など)。
- 機器に保存されているデータへのリモート・アクセス: ISV アプリケーションは機器に保存されているデータにリモート・アクセスすることで、周辺機器から送信される情報に基づいてインテリジェントなアクションを取ることができます (例えば、政府による規制対象の品目を購入する場合には政府の監視リストに対するチェックが行われる、など)。
使用事例
WS-POS を実装した店に顧客が入ります。その顧客が持つ WS-POS 準拠の携帯電話をその店のネットワークが認識すると、ネットワークへの顧客のログインが行われます。携帯電話上で POS クライアント・ソフトウェアが起動し、その顧客の携帯電話をバーコード・スキャナーと POS クライアントとして使うことを店に通知します。その顧客は買い物をしながら、買いたい商品を見つけてその商品のバーコードを携帯電話で撮影し、そしてその品物をカートに入れます。携帯電話のソフトウェアによってバーコードの画像が分析された後に UPC (Universal Product Code: 商品コード)(訳注: UPC は北米で使われている商品コードで、日本の JAN (Japanese Article Number) に相当する) が判定され、店のサーバーに転送されて商品情報と価格が検索されます。次にその商品の価格が携帯電話の POS クライアントにレポートされ、携帯電話の画面に表示されます。その顧客は購入したい商品をすべて購入するまで、この動作を続けます。
買い物を終了すると、顧客は携帯電話の POS クライアントの Pay Now (支払い) を押し、どの MSR で支払いをすればよいかという情報をその店のネットワークに対して要求します。すると、顧客は利用可能な最も近い MSR が MSR 6 であるという通知を受け取るので、MSR 6 に行き、自分のデビットカードを MSR6 に通します。携帯電話の POS クライアントからは暗証番号の入力を要求されるので、そのカードの暗証番号を入力します。
顧客は自分の車を駐車した場所に最も近い出口に向かって歩き始め、出口の近くにある、3 台のプリンターが並んだ場所で立ち止まります。顧客の POS クライアントはそのうちの 1 台を自動的に選んで、そのプリンターに買い物の情報を渡します。POS クライアントは顧客に対して、その顧客のレシートがプリンター 3 で印刷されると通知します。顧客がレシートを受け取って店を出ると、POS クライアント・ソフトウェアは終了します。図 1 はこのプロセスを説明しています。
図 1. WS-POS のシナリオ
考察
先ほど触れたように、WS-POS のメリットは、それぞれ切り離されている周辺機器をサービスとして共有できることです。店は通常、すべての精算レーンに MSR とプリンター、そしてバーコード・スキャナーを備えており、精算レーンの数は最も混雑する場合を想定して決められます。
典型的な買い物で圧倒的に長い時間を取るのは、商品のバーコードをスキャンするための時間です。支払いに要する時間はスキャンの時間よりも大幅に短く、そして印刷は支払いやスキャンよりも時間がかかりません。これらの動作はすべて、通常は順番に行われるので (つまり、顧客は商品のスキャンを終えてから支払いを行い、支払いを済ませるとレシートが印刷されます)、店のシステムに接続されている周辺機器は、その一部が使われている間は他の多くの周辺機器はアイドル状態に置かれることになります。
WS-POS を利用することによって、小売業者は使用率と顧客処理効率が最大になるように周辺機器の購入や配置を計画することで、彼らの店でサポートや維持管理が必要な周辺機器の数を削減することができます。この事例では顧客の携帯電話に POS クライアントとバーコード・スキャン機能がありましたが、買い物を完了するためには MSR とプリンターを必要としました。MSR とプリンターはどちらも、他の顧客に対する利用率を最大化できるように、ジャストインタイムでスケジューリングすることができます。
WS-POS のコンポーネント
ほんのいくつかの特定領域に対応することによって、無数に考えられる使用事例を WS-POS 仕様で網羅することができます。次のコンポーネント領域は将来に対応するための一連の機能領域と見なされており、すべてのコンポーネント領域がすべてのバージョンの WS-POS に必要なわけではありません。
メッセージング・ベース
相互運用性を実現するために、メッセージングとトランスポートの詳細に関して何らかの基本的なレベルの合意が必要です。このメッセージング・ベースは他のすべての領域の基本として使用され、また交換されるすべてのメッセージを記述するための出発点としての役割を果たす一連の技術です。
セキュリティー
セキュリティーは ARTS 分散周辺機器システム全体にとって重要な懸念事項です。個人情報 (クレジットカード番号や買い物の詳細) が交換されるこうした一般消費者向けシステムでは、ユーザーがシステムに対して寄せる信頼を揺るがしてはなりません。すべての取引においてセキュリティーを保証する必要があります (例えば機器が認証され、アクセス権が保証され、そして伝送される情報がスヌーピングや改変に対して常に安全であるなど)。トランスポート・レイヤーでのセキュリティーの標準は TLS (Transport Layer Security) であり、一方 SOAP メッセージのレベルでのセキュリティー仕様の適切な選択肢は WS-Security です。
サービス記述
この領域では、一連のメッセージを正式に記述する手法を、一般に認識されている標準的な方法で定めます。そのため、さまざまなメッセージの詳細を扱う際に、既知の合意されたやり方で行うことができます。またメッセージを適切に記述することに加え、標準に準拠する製品の開発と検証を支援するツールを提供できる必要があります。
サービス発見
LAN 上にある機器 (あるいは LAN 上のプロキシーによって表現される、LAN 対応ではない機器) の発見と、その機器との組み合わせを随時行える機能は、重要な要件です。なぜこの機能が必要かと言えば、店内の機器の最終的なユーザーにとって使いやすさが重要な要件であるためです。顧客は、複雑な分散 POS システムを使ってシステムに参加することを望んでないかもしれません。従って新しい機器がシステムに導入される場合には、そのシステムおよび、その機器と連携して動作する機器群は、スムーズな形で新しい機器をシステムに統合できる必要があります。
イベント
この領域は、機器が情報を共有するために必要な機能を網羅しています。対話動作のモデルには、プル・モデルとプッシュ・モデルという大きな区別があります。プルによる対話動作は、必要とするデータの特定の情報ソースに関して情報シンクが問い合わせる場合に発生します。プッシュによる対話動作はプルとまったく反対に、ポーリングをしなくても情報ソースが関係者に新しいデータを提供します。
管理
さまざまな機器や、それらの機器が提供するサービスの監視と状態変化については、準備段階の WS-POS の議論の範囲には含まれていませんが、将来の WS-POS 仕様の要件になる可能性があります。
まとめ
小売店のオーナー達は、複数の POS 端末間で店内のより多くの周辺機器 (プリンターやスキャナー、カード・リーダーなど) を共有できるようにすることで、周辺機器への投資をより有効に生かせるように管理したいと望んでいます。そうした要求から、モバイル機器からのリモート・アクセスが許可されるようになり、またエンタープライズ IT システムから周辺機器を制御できる機能が強化されるようになります。WS-POS はこうした新しい要件に対応しているため、WS-POS によって POS 周辺機器は真のサービスとして動作できるようになります。
今後の記事では、WS-POS プロファイルの仕様に関する最終的な選択肢と実装の例について解説します。ご期待ください。
参考文献 学ぶために
製品や技術を入手するために
議論するために
著者について  | 
|  | Sri は Emerging Standards SOA Growth in Retail イニシアチブの技術リーダーです。彼は ARTS の SOA Best Practices Committee の議長であり、また ARTS SOA Blueprint for Retail ワークグループの IBM の技術代表でもあります。 |
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|  | Johanna は Emerging Standards SOA Growth in Retail イニシアチブの戦略とビジネスに関するリーダーです。彼女は ARTS のマーケティング・ワークグループのリーダーであり、また ARTS SOA Blueprint for Retail ワークグループの IBM のビジネス代表でもあります。 |
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|  | Travis はテキサス州オースチンにある IBM Emerging Standards チームのメンバーであり、また ARTS の UnifiedPOS 委員会に参加しています。 |
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