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エンタープライズ Web 2.0: 第 1 回 Web 2.0 でビジネス・イノベーションの波に乗る

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レベル: 初級

Rick Robinson, IT Architect, IBM 

2008年 1月 31日

Web 2.0 は、企業 (営利団体であろうと公共団体であろうと) が現世代のインターネット技術を利用しようと活気づいている流れのなかで中心的な存在を占めています。この連載では、そんな Web 2.0 が持つ、企業に関連した側面を 4 回にわたって検討していきます。第 1 回目となるこの記事で取り上げるのは、Web 2.0 の背後にあるビジネスおよび技術の駆動力、Web 2.0 が企業に提示する課題と可能性、そして Web 2.0 とサービス指向アーキテクチャー (SOA) との関係です。

はじめに

成熟期を迎えたインターネットを、コミュニケーション、そして商取引の新しい媒体として活用するという Web 2.0 は、ビジネス・イノベーションの新しい波を象徴しています。Web 2.0 は今に始まった流行ではなく、少なくとも 2003年には登場しており (「参考文献」セクションに記載した「How to Succeed in 2007」を参照)、比較的初期の段階からビジネスで採用されています。そして、その全体的意義についての論争は今でも盛んに行われています。

この 4 回の連載記事ではエンタープライズ 2.0 として知られるようになった、営利団体および公共団体による Web 2.0 の概念および技術の活用とその重要性、に焦点を当てます (エンタープライズ 2.0 の詳しい背景についての詳細は、「参考文献」に記載した「The state of Enterprise 2.0」および「The 10 top challenges facing enterprise mashups」を参照してください)。

  • 第 1 回では、Web 2.0 の背後にあるビジネスおよび技術の駆動力、Web 2.0 が企業に提示する課題と可能性、そして Web 2.0 と SOA との関係を検証します。
  • 第 2 回では、企業が Web 2.0 を活用する方法として新たに登場したソリューションのなかから、代表的なソリューションのタイプを紹介します。
  • 第 3 回では、第 2 回で取り上げたソリューションを採り入れることが可能な産業およびビジネスでの一連のシナリオを紹介し、それによってもたらすことのできる価値について説明します。
  • 第 4 回ではさらに専門的な内容として、IBM® CICS®、IMS (Information Management System™)、IBM DB2® などのコア情報処理システムのコンテンツと機能を公開する際の Web 2.0 ソリューションの選択肢に焦点を当てます。
関連コンテンツ

Web 2.0 が意味するものについて広く受け入れられている一般的な解釈は 2 つあり、どちらも Tim O'Reilly によるものです。この 2 つの解釈のうち、詳細に踏み込んだほうの解釈では、Web 2.0 を一連のパターンに分けています。そのパターンの中で現在使われている技術は、インターネット技術を利用してビジネス・モデルを作成、サポートするためのものです (「参考文献」の「Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル」を参照)。それよりも一般的な 2 つ目の解釈では、Web 2.0 の本質について実用的な見解を示しています。つまり簡単に言えば、ドットコム不況のなか、私たちはコミュニケーションおよびビジネスの新しい方法を編み出すために、成熟したインターネット技術の利用に新たな関心を持っているということです。

大きな転機

現在のような Web 2.0 への関心が生まれたのは、経済動向と技術的動向が最高潮に達したためです。この 2 つが組み合わさったことにより、現世代のインターネット技術の社会的、技術的特性はビジネス・イノベーションの宝庫となっています。具体的な動向としては、以下のものが挙げられます。

  • 指導層のみならず、組織全体で業績改善のための革新的な方法が重視されるようになっています。その理由は、経費節減や合併、買収によって組織の業績を上げることがますます難しくなっているためです (「参考文献」に記載した IBM CEO によるイノベーション調査を参照)。
  • 豊富な機能を備え、広く普及した共同の通信技術が、地球規模でその範囲と関与する対象を急激に拡大し続けています。今や 10 億人以上がネットワークに接続し、そのうちの 3億人近くがブロードバンド接続を使用しています (「参考文献」の Internet World 統計へのリンクを参照)。調査によると、ネットワーク利用者は単に商品を購入したり、情報にアクセスするために Web を使っているのではありません。それどころか、著しい数のネットワーク利用者が社会的にも経済的にも拡大するネットワークでコンテンツに寄与し、他のユーザーと対話するために Web を使用していることが明らかになっています (「参考文献」の Internet World 統計へのリンクおよび「The Internet's Growing Role in Life's Major Moments」を参照)。
  • テクノロジーに対する姿勢と、コミュニケーションや買い物、仕事の際に使われる媒体に、世代交代が起こっています。インターネットは若い世代にとって新しいものではありません。インターネット世代の彼らは、社会的交流、商取引、仕事にインターネットを抵抗なく使用しています (「参考文献」の「Generations Online」を参照)。
  • 個人向けの製品やカスタマイズした製品の機能が増えていると同時に、その製造費は減少しています。大量生産の時代は、大量個別対応の時代に発展しつつあります (「Mass Customization: The New Frontier in Business Competition」(B. Joseph Pine II 著、Harvard Business School Press、New Ed edition、1999年5月1日))。オーダーメイドでの設計や生産に異常に高い費用をかけなくても、洋服から機器、そして自動車に至るまでのあらゆるものを標準価格あるいは同程度の価格でカスタマイズしたり、個別対応したりすることが可能になっています (具体例については、「参考文献」を参照)。
  • 継続的なビジネス最適化プロセスが、ビジネスの変容およびアウトソーシングという結果をもたらしています。一連の景気循環のなかで続く世界市場での競争により、組織は絶えずビジネスの最適化に注力せざるを得なくなっています。この最適化には、ビジネス活動をサポートするコンピューティング・システムの統合、そして SOA によってビジネス活動を企業内外に一層公開していくことが含まれます。



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Web 2.0 の技術

参加の促進: ブログ、ウィキ、ソーシャル・コンピューティング

2001年頃のドットコム不況以来、インターネット技術の利用方法は成熟してきており、その結果、あらゆる世代、あらゆる文化を背景とした人々が参加できる新しいコミュニケーション媒体が生まれています。

例えば、パーソナル・プロファイルやブログ、そしてウィキは、基礎となる Web やブラウザーの技術を理解していなくてもコミュニケーションが可能な単純なツールとなります。これらのツールを使用して、人々は互いの興味や専門知識を共有し、共同でコンテンツを作成することができます。

ソーシャル・ブックマーキングを使用することにより、人々はコンテンツやサービスへのリンクを共有し、他の人がそれらのコンテンツやサービスを簡単に見つけられるようにします。さらにリンクにタグや評価を付けることで、Web のコンテンツは利用者の興味に従って分類され、格付けされます。これらの技術はすべて、以前に使われていた媒体に比べ、同じ興味を持つ個々の人々が知り合って共通の話題について意見を交換するのが容易で、リッチかつ快適なインターネット接続が実現する結果となります。そんな機能を組み込んだ連携ソフトウェアとなるのが、IBM Lotus® Connections および IBM Lotus Quickr™ です。

配信と再利用の促進: サービス、フィード、ウィジェット

前のセクションで述べたアプリケーションをサポートするのは、この 10 年ぐらいの間に登場した一連の技術です。ニュース・フィードの配信 (RSS または Atom プロトコルに従って XML にフォーマット化された単純なストーリーおよび情報のストリーム) は今や一般に普及し、集約サイトはありとあらゆるコンテンツを取り揃えており、個人が独自の集約機能を作成することを可能にしています。

Ajax resource center にアクセスしてください。ここには記事、チュートリアル、ディスカッション・フォーラム、ブログ、ウィキ、イベント、そしてニュースなど、Ajax プログラミング・モデルに関する情報が豊富に用意されており、ワンストップ・ショップになっています。新しい情報もここに記載されます。

フィードは、RESTful な原則に従って作成されたサービスの一例です。RESTful な原則とは設計および実装についての一連の規定であり、総じてインターネットと同様にスケーラブルかつ容易に使用できるサービスを作成できるようにすることを目的としています (REST とは、Representational State Transfer の略です)。多くの Web サイトでは、そのコンテンツと機能を他の Web アプリケーションに組み込めるように RESTful なサービスとして用意しています。それと同時に、オープン・スタンダードと SOA の進化により、多数のサービスおよび情報源が堅牢でセキュアな Web サービスによって利用できるようになっています。

さらに、Ajax (Asynchronous JavaScript + XML) のような技術が一層充実した機能と高い応答性を備えたユーザー・インターフェースをブラウザーにもたらしています。IBM WebSphere® Application Server Feature Pack for Web 2.0IBM WebSphere MQ Bridge for HTTP にはどちらも、REST サービス、フィード、そして Ajax ユーザー・インターフェースの作成を可能にする機能が用意されています。また、Project Zero コミュニティーの開発プロジェクト (「参考文献」にリンクを記載) も軽量なアプリケーション環境を利用して、スクリプト言語をベースとした手法で Web 2.0 ソリューションを提供しています。

アジリティーの促進: 状況依存型アプリケーションとマッシュアップ

マッシュアップ・アプリケーションでは、素晴らしいアプリケーションの作成がエンド・ユーザーの手に委ねられており、エンド・ユーザーはさまざまなソースの機能とコンテンツを組み合わせて、わずかな費用で新しいアプリケーションを作成します。よくある例として、このようなアプリケーションでは運用データにニュースとイベント、金融情報、あるいは天気が組み合わされます。このように、人々はマッシュアップを使用して、外部のサービスおよび情報を自分たち独自のデータ (休日の予定や取引相手の顧客など) に組み合わせ、必要なすべての情報と機能を一箇所で提供するアプリケーションを構成しています。

ソーシャル・コンピューティングによってマッシュアップ (あるいはマッシュアップを構成する個別のフィードおよびウィジェット) を他の人々と共有することにより、大勢の利用者がマッシュアップの威力を簡単に使用できるようになります。

IBM の Mashup Starter Kit は、alphaWorks からダウンロードまたはアクセスできます。状況依存型アプリケーションの詳細については、developerWorks の連載「マッシュアップ - SOA の進化」を読んでください。




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Web 2.0 によって解き放たれる SOA の真価

Web サービスと SOA の概念は、当初から、インターネットによって公開された既存のサービスを単純に結合するという新しい複合アプリケーションの世界を約束していました。Web サービスと SOA が登場して以来、この技術とアーキテクチャーの適用方法は進化してきましたが、 Web 2.0 の登場で今ようやくその進化が実を結びました。

RSS や Atom といったプロトコルに基づく RESTful なサービスとフィードは、必ずしも SOA の主流であると見なされていたわけではありませんが、Web サービスから離れた世界では常に SOA サービスの明らかな好例となっていました。そんな広く普及した RESTful なサービスとフィードが Web サービスに加わると、配信および状況依存型アプリケーションが可能になります。Web 2.0 は広義のテーマですが、SOA によって実現するサービス、フィード、ウィジェットを組み合わせた複合アプリケーションの概念がしっかり含まれています。したがって、Web 2.0 の概念とパターンを使えば、SOA に投資した組織は新たな価値を見い出すことができます。連載第 2 回では、その活用例を紹介します。




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ビジネスの新しい世界

技術動向とビジネス動向が最高のところで融合すると、以下のような数々の結果が生み出されます。

デジタル化可能なあらゆる形でのコンテンツの配信に革新的な変化がもたらされています。
コンテンツ (例えば、文章、映画やビデオ、音楽、数値データ、それに画像など) のデジタル化に伴い、コンテンツを全世界の潜在的な利用者に配信するための費用が非常に下がりました。その結果、デジタル・コンテンツのプロバイダー数が急激に増え、利用者は好きなときに望みの情報にオンラインでアクセスするようになったことから、通常のプッシュ・チャネル (新聞やテレビなど) を通じてアクセスするコンテンツの割合が激減しています。

従来のマーケティング、広告、ブランド化手法では、利用者の心を動かせなくなってきています。
大衆向けブロードキャストは広告主にとって効果がなくなりつつある一方で、世界中の個々の人々が自分たちの興味や関心を共有して互いの経験を役立てたり、専門知識にアクセスできるようになってきています。利用者によるレビューやコンテンツが消費パターンに影響するようになり、従来のチャネルによるマーケティングの対抗勢力として注目を集めています。

従来のビジネスはその成長のためにロングテールのニッチ市場をターゲットとするなかで、ニッチ市場のプロバイダーと競争せざるをえなくなっています。
製品、コンテンツ、そしてサービスのカスタマイズ、個別対応、配布、利用にかかる費用が低くなるにつれ、以前は対応できなかったり、ニッチ市場プロバイダーの独占領域であったり、あるいは存在さえしていなかったニッチ市場への進出が可能になってきています。このような市場の開拓を説明するのが、ロングテール経済の概念です。ロングテールとは、それぞれの顧客数は少なく、おそらく世界中の各地に散在する膨大な数の市場を表します。このようなニッチ市場に従来のビジネス・モデルで対応するのは経済的ではありませんが、Web 2.0 技術によって実現する低価格のモデルでなら市場参入は可能です。ビジネス最適化に引き続き重点が置かれるなか、ここ数年で従来の市場は飽和状態に陥っていることからニッチ市場の重要性は増しています。その極端な現象は、ピア・ツー・ピアの経済活動です。つまり、従来は大企業の領分であった、通信して、取り引きし、確約して、配布するといった機能を個々の人々がインターネット対応のブローカーおよびメディエーターを使用して利用し、個人対個人で直接ビジネスを行えるようになっています。

新しいエンド・ユーザー・アプリケーションは、組織のアジリティーを向上させるために、もしくは新しい製品およびサービスを市場に投入するために、今まで以上に短時間で配布しなければなりません。
一部の分野では、製品が商品としての競争力を維持できる期間は、平均的なアプリケーション・デプロイメントのライフサイクルよりも短くなっています。したがって、アプリケーションを配布するまでの時間を従来の限界を破って短縮化できない限り、市場は共有されて参入する隙がなくなってしまいます。また別の分野では、新しい状況や競争相手の脅威に素早く対応しなければなりません。これはすなわち、ビジネス・アナリスト、競争心の強い専門家、あるいは経営上の意思決定者には、素早く組み立てられたデータまたはコンテンツを主体とする新しいタイプのアプリケーションが必要であることを意味します。この目的や他の目的のため、組織では状況依存型アプリケーションおよびエンタープライズ・マッシュアップのデプロイメントと使用、つまりは事実上のロングテール・ビジネス・ソリューションを検討しているところです。




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まとめ

Web 2.0 とは、顧客と対話するための新しい手法、インターネットを中心とした新たなビジネス機会、そして簡単に個人対個人が接続して対話することを可能にするサポート技術を組み合わせたものです。これはある意味、SOA の原則と技術が広く採用されたことによって生まれた新しい可能性を象徴します。Web 2.0 はビジネスの機会をもたらしますが、それと同時に、企業がコミュニティーをどのように受け入れるか、機密情報の共有および保護に対していかなる手段を講じるか、そして自分たちの市場におけるロングテールをどのように識別し、活用したらよいかという課題をもたらします。連載の今後の記事では、Web 2.0 の可能性、課題、パターン、技術についてさらに詳しく探っていきます。

謝辞

この記事をレビューして意見を聞かせてくれた Matthew Perrins、Stephen Watt の両氏に感謝します。



参考文献

学ぶために

製品や技術を入手するために
  • IBM ソフトウェアの試用版を使用して、次の開発プロジェクトを革新してください。ダウンロード、あるいは DVD で入手できます。


議論するために


著者について

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Rick Robinson は、IBM Emerging Technologies チームの IT アーキテクトとして顧客と IBM 製品開発チームが Web 2.0 の新しいビジネスと技術的影響を理解し、利用できるように協力しています。この任務の前は、ヨーロッパの IBM Software Services で SOA and BPM Architecture Practise のリーダーを務めていました。世界各国の IBM で SOA と Web 2.0 の専門家として知られている彼は、技術戦略、ビジネス・デプロイメント、ソリューション・アーキテクチャー、組織改革、業務提携管理、そして技術的販売に取り組んでいます。




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