クラウド・コンピューティング ― 企業戦略を推進するプラットフォーム

この記事では企業活動に関連したクラウド・コンピューティングの概念に焦点を当てます。この記事の中では、企業にとってのクラウド・コンピューティングの重要性、クラウド・コンピューティングの方法論、クラウド・コンピューティングの効率、クラウド・コンピューティングによる長期的な影響、そして最後にクラウド・コンピューティングのインフラストラクチャーについて説明します。

Nimantha de Silva, Technical Writer, IBM

Nimantha de SilvaNimantha de Silva はプロのテクニカル・ライターであり、IT 業界に 4 年間の経験があります。Nimantha は WSO2 Developer Portal、Associated Content、Enterprise Resource など、いくつかの技術ポータルに一連の技術記事を寄稿しています。



2010年 6月 07日

はじめに

新興のコンピューティング技術であるクラウド・コンピューティングは、その名前が示すように、インターネットと集約されたリモート・サーバーを使用することでデータやアプリケーションの保守を行います。クラウド・コンピューティングでは、インターネットを介して任意のコンピューターから個人ファイルにアクセスすることができ、インストール作業も必要ないため、今日の企業活動には欠かせない要素となっています。クラウド・コンピューティング技術では、ストレージ、メモリー、処理、帯域幅を中央に集約することで、従来よりもはるかに効率的なコンピューティングを実現しています。この、クラウド・コンピューティングという新しい手法は、以下の 3 つの主な要素に分解することができます。

  • アプリケーション
  • プラットフォーム
  • インフラストラクチャー

上記の各要素の目的は要件によって異なり、主に世界中の企業を対象として要素ごとにさまざまな製品が提供されています。また個人でもクラウド・コンピューティングを利用することができます。2009年 6月に行われた調査研究によれば、さまざまな業界で、経験豊富な IT 専門家の 41% が実際にはクラウド・コンピューティングの何たるかを知らず、また世界のさまざまな業界で、経験豊富な財務専門家の 3分の2 がクラウド・コンピューティングの概念に混乱しています。また、2009年 9月に行われた別の研究グループの調査によれば、賢明な会社では、主にクラウド・コンピューティングの概念を適用することで、IT 予算を平均で 18% 削減し、データセンターの電力コストを 16% 削減しています。


問題の領域

企業にとって、クラウド・コンピューティングへの移行に大きな責任が伴うことは事実です。多くの IT 専門家やビジネス専門家が共通して提起する疑問は、アプリケーションや、場合によってはデータでさえも、自らが保管、管理、制御するのでないならば、それは企業にとって膨大なリスクではないか、という疑問です。そうした疑問が提起される主な理由は、これらのサービスの提供者が消滅する可能性や、データ自体に壊滅的な事態が起きる可能性があるためです。そこで、「なぜ企業がそんなリスクをおかすのか」という興味深い疑問がわいてきます。では、その答えを考えてみましょう。

皆さんが自分は技術的な知識があると思っているか、あるいは皆さんが IT 分野を専門としている人であるなら、間違いなくクラウド・コンピューティング・モデルへの移行には多少なりともメリットがあると思うことでしょう。しかし、そうしたメリットを明らかにすることが、ビジネスの側に訴えかけることになるということは、ほとんど理解されていません。企業が成功するためには将来を見据えることが重要です。多くのビジネス指向戦略モデルでは、クラウド・コンピューティングを契約して利用するモデルを採用することで、管理可能なサービスに固定費がかかるようになります。それにもかかわらず、クラウド・コンピューティングを利用する主な理由は、社内の IT 部門をバイパスできる点にあります。社内の IT 部門は、コストもリスクもますます高くなっていて、明らかに管理が困難なものと見なされるようになっています。ビジネスの側から予算削減の議論が提起されると、IT 部門の人達は必ず、大げさで恐ろしい、そして場合によっては妥当な理由を挙げるため、誰も彼らと議論することができません。なぜなら、IT 部門からの反論の背景にある概念を本当に理解している人は誰もいないからです。これはマネージメントにとっては脅威であり、CIO (最高情報責任者) の地位が設けられた理由はそこにあります。技術的な知識がそれほど豊富ではない多くの CEO (最高経営責任者) は常日頃、うまく IT 部門を管理できないと感じています。IT 部門が一定以上の規模になると、その部門の存在理由は企業が行うあらゆる活動による売上や利益の向上のみにある、という事実を忘れてしまうようです。そうした IT 部門は、企業の目標ではなく自分たち独自のプロジェクトの目標に突き進むようになり、そのため事態が一層混乱します。

別の見方として、クラウド・コンピューティングはアウトソーシングへの需要と同じ需要に応えています (アウトソーシングは、ここしばらくの間に IT 業界で起きた最新で最大の革命でした)。多くの専門家は、もし企業が、ビジネスを行うための単純なコストとして IT を扱うことができ、IT 活動の全シナリオを管理する専門の IT 企業に作業を任せられるならば、コスト管理が可能となり、信頼性を向上できると考えています。では、そうした予想どおりになったか、という疑問がわいてきます。その答えは、基本的にノーです。その主な理由は、IT 部門をアウトソースした企業は結局、期待していたほど大きな節約をできなかったからです。また、そうしたアウトソース先となった企業は社内部門と同じ問題に苦しんでいるものの、社内部門ほど強い圧力は受けていないことも知られています。これはアウトソース先の企業は社内部門ほど直接的に管理されていないためです。多くの企業は、社内の IT 部門の再構築という、非常にコストのかかる課題に直面しています。場合によると、あらゆることを行った結果、サーバー・ハードウェアや他の周辺装置すら所有しなくなった企業もあります。そうした企業は確かに再度「わな」にはまっていますが、その「わな」の形やアーキテクチャーは企業によって異なります。


クラウド・コンピューティングの効率

上記の問題領域を検討した結果、大部分の企業では、企業のプロセスや企業活動のモデルに効率性が欠けていることは明らかです。クラウド・コンピューティングを利用すると、サーバー・ハードウェアのリソースの大規模な統合により、素晴らしい効率をもたらしてくれるように思われます。また、データ・セキュリティーやバックアップ手段、開発を集中管理できるシステムは、どのようなビジネス・プロセスにも必ずメリットがある数少ない領域です。最近では相互運用性が要求されるのが普通ですが、クラウド・コンピューティング環境では相互運用性が高まる傾向があり、またアプリケーションが適切に構築されていれば、そのアプリケーションはユーザーに好まれます。最終的には、私達が全員、クラウド・コンピューティングを多用する市場で作業するようになる可能性が高いと言えます。クラウド・コンピューティングはまだ歴史が浅く、実績に欠けていますが、長期的にはそうした方向に進むでしょう。


クラウド・コンピューティングと長期的展望

IT に関して多くの予測がなされてきましたが、残念ながらその説明がされることはほとんどありません。この記事では、多くの IT アナリストによる幅広い予測をいくつか取り上げます。一部は実現するかもしれず、一部は実現しないかもしれません。しかし以下に挙げる内容は、彼らが今後 10 年間で市場がどうなるかを予測した内容です。

基本的に、インターネットは「Cloud (雲、クラウドなど)」として知られています。しかし当然ですが、「これこそがインターネット」というものはなく、多種多様な人々、国、企業が所有する、相互接続された大量のネットワークがあるにすぎません。また、今後はいくつかの非常に堅牢で相互運用可能なフレームワークが使われるようになることも明らかです。私達がメールを読んだり文書を作成したり、また協力して作業を行うために使用するアプリケーションはすべて、このフレームワークの中に含まれるようになるでしょう。

少し昔に戻り、コンピューターが登場したばかりの頃を考えてみると、その当時はコンピューティング・ハードウェアがありました。そうしたハードウェアは単純で機能は限定されており、何をする場合にも必ず物理的な結線が必要でした。次に BIOS システムが登場し、入出力を目的とした複雑な部分の分離が実現しました。その後、ディスク・オペレーティング・システムが登場し、プログラムは BIOS を介した一貫性のある方法でハードウェアとインターフェースを取れるようになりました。さらには、さまざまなオペレーティング・システムが使われるようになり、また要求されるようになった結果、スレッド・セキュリティーが導入され、BIOS やハードウェアへの直接アクセスが禁止されるようになりました。この機能は Microsoft 以外のすべての OS でサポートされましたが、Microsoft ではサポートされませんでした。ごく最近になると、Windows、MAC OS、X-Windows などと共に GUI (Graphical User Interface) が登場し、ユーザーやプログラムは単純な方法で Google デスクトップや Adobe Air などのフレームワークとやり取りできるようになりました (Google デスクトップや Adobe Air は .NET、Java Eclipse、Notes、その他のランタイム・フレームワーク上で動作するように作られています)。

現在では、分離のための新しいレイヤーが急激に増えて一般的になっているようであり、プログラマーが新しいツールを作成する際に活用できるようになっています。これらのフレームワークは時間と共に十分堅牢なものになり、最終的には真に堅牢なマイクロ・アプリケーションの普及に必要な高度なセキュリティーや安定性、豊富なユーザー・インターフェース、データ・ストレージ、機能などを提供するようになるはずです。この時点でクラウド・コンピューティングが登場します。


クラウドのインフラストラクチャー

インフラストラクチャーはクラウド・コンピューティングの概念全体のバックボーンと言われています。多くのインフラストラクチャー・ベンダーが、この記事の初めの方に触れたあらゆるサービスの実現に必要な物理ストレージ・スペースや処理能力を提供しています。この記事で説明した製品はクラウド・コンピューティングにおける他の分野の製品とは少し異なりますが、ユーザーがアプリケーションを作成するためのマネージド・ホスティングや開発環境などを含んでいます。


なぜクラウド・コンピューティングに移行するのか

では、コンピューティング業界のパラダイム・シフトによって影響を受けるのは誰なのかを考えてみましょう。さまざまな企業がこのシフトに影響され、またソフトウェア企業、ISP (Internet Service Provider)、ハードウェア・メーカーなど、コンピューティング業界内のいくつかの業種が影響されるでしょう。こうした各業種の企業は、クラウド・コンピューティングが業界の次のステップであるならば、ある程度大きな変化に直面することになり、実際クラウド・コンピューティングは次のステップであるようです。主要なソフトウェア企業やインターネット企業がそうしたシフトに影響されることは比較的容易に理解することができます。一方で、そうした企業がシフトの影響を受けるおかげでハードウェア業界やインターネット業界がシフトするプロセスは少し楽になるでしょう。


まとめ

この記事ではクラウド・コンピューティングの基本について、企業活動に関係するアプリケーション、プラットフォーム、インフラストラクチャーに焦点を当てながら説明しました。次に、典型的な問題領域に焦点を当て、IT アウトソーシングを取り上げながら、その落とし穴を説明しました。さらにこの記事では、クラウド・コンピューティングの効率について説明し、クラウド・コンピューティングによって企業活動がどう改善されるかを説明しました。そして最後に、クラウド・コンピューティングのインフラストラクチャーとして知られるクラウド・コンピューティングのバックボーンに焦点を当てました。

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