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developerWorks インタビュー: Project Zero について Jerry Cuomo に聞く

新しく始まったばかりのコミュニティー主導型開発プロジェクトとは何か

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レベル: 中級

Scott Laningham (scottla@us.ibm.com), Podcast Editor, IBM developerWorks

2007年 7月 10日

IBM フェローの肩書きを持つ WebSphere CTO、Jerry Cuomo が、ポッドキャストのホスト Scott Laningham とオープン・ソース・プロジェクトおよび Ajax Resource Center の developerWorks 編集者である Denise Ruterbories のインタビューに応じて、Project Zero の概要を語ります。Project Zero は、Web 2.0 とその先の展開を焦点として IBM 内で始まったアジャイル開発のインキュベーター・プロジェクトです。Cuomo はこの 13 分間のポッドキャストで、Web の社会的側面、開発プロセスの簡略化、そしてコミュニティー主導型開発プロセスを利用した新しいビジネス・モデルの出現について語っています。

Laningham: 皆さんがお聴きのこの developerWorks インタビューでは、技術界の著名人や思想的リーダーをさまざまな専門分野からお招きし、技術の専門家にとって興味深いトピックについて意見を伺っています。ホストは私、Scott Laningham です。今日出演していただくのは、IBM Fellow で WebSphere の CTO でもある Jerry Cuomo です。ようこそ、Jerry。

Cuomo: こんにちは、Scott。お招きありがとうございます。

Laningham: そして今日はもう 1 人、オープン・ソースと Ajax 関連の developerWorks 編集長を務める Denise Ruterbories にもお越しいただいています。今回 Denise にはホスト役に回ってもらい、専門的知識で話題を提供してもらいます。また出演してくれてありがとう、Denise。

Ruterbories: こちらこそ、お招きありがとうございます、Scott。

Project Zero について Jerry Cuomo に聞く

このインタビューをお聞き逃しなく。

Laningham: さて、今回私たちが話題とするのは、Project Zero です。私が聞いたところ、Project Zero はコミュニティー主導型開発という表現で説明されていました。そこから連想したのが alphaWorks という IBM で成功をおさめた早期採用プログラムです。そこで Jerry にお願いしたいのですが、私たちの基礎知識として、Project Zero とは一体どういったものなのか説明してもらえませんか。

Cuomo: もちろんです。まず、Project Zero は私たちが約 1 年前に IBM で開始したインキュベーターです。実際、alphaWorks と developerWorks からアイデアを得ています。私たちが目的としているのは、このアイデアを完全に内部で隔離して育成し、完成させることではなく、外部の世界に公開して私たちが Project Zero と呼んでいるこのコンセプトを発展させていく中で、コミュニティーが思考プロセスの形成と方向付けをしていくことです。

ゲスト: Jerry Cuomo

Jerry Cuomo は IBM Fellow の肩書きを持つ、WebSphere ブランドの CTO です。また、WebSphere Technology Institute のディレクターとして、Project Zero などの先端技術の特定と開発によって将来を切り開くという使命を与えられています。IBM では 20 年間、TCP/IP の分野での飛躍的革新が盛り込まれた先端技術のソフトウェア、リアルタイム連携ソフトウェア、そしてハイパフォーマンス・トランザクション・システムに取り組んでいます。彼が情熱を燃やしているのは、アプライアンス、仮想化、そして Web 2.0 技術によりミドルウェアの使用を徹底的に簡素化することです。Jerry のブログを読んでください。

Laningham: このプロジェクトには明らかに Web 2.0 との強力なつながりがあるということはわかりますし、またこのポッドキャストでも過去数ヶ月にわたって多くの人々が Web 2.0 について話してくれました。最近で言うと、IBM CIO テクノロジー・チームの Dave Neubold もその 1 人です。そこであなたの考えをお聞きしたいのですが、IBM にとって Web 2 の開発は何を意味するのでしょうか?

Cuomo: 確かに、Project Zero についてほんの少し説明するだけでも、さまざまな側面で Web 2.0 に対する大きな影響が見えてきます。実際のところ、Web 2.0 は一種の抽象的な考え方ですが、IBM では具体的に捕らえていて、私たちが Web 2.0 について考えるときには多くの視点から検討しています。

その 1 つは、社会的側面です。Web 2.0 には社会的側面があり、そこには Web を中心としたコミュニティーの集団知能を利用するという考えがあります。これは確実に 1 つの視点として挙げられます。別の視点としては、Web をコンピューティング・プラットフォームとして使用するという考えもあり、この考えを実現できれば世界の簡素化につながるはずです。実現可能な方法を示す使用事例は数多く実在していると思います。そして、おそらく 3 番目の視点として私たちが Web 2.0 モデルに関連して注目しているのは、新しいビジネス・モデル、つまり Web 上での新しいビジネスの方法です。この方法では、オープンなコミュニティー主導型開発からサービスとしてのソフトウェアまでのあらゆるものを、サブスクリプション・ベースのモデルにします。例えば、永続的なデータを早期に調べてサブスクライブすると、製品のライフサイクル全体をとおしてそのデータを追跡できるといったモデルが挙げられます。

Ruterbories: 新しいビジネス・モデルが Web 2.0 開発の顕著な特徴だということですが、このコミュニティー主導型開発モデルについてもう少し詳しく説明してもらえますか?

Cuomo: もちろんです。私の考えでは、コミュニティー主導型開発モデルは 私たちが行っている取り組みのなかで最も画期的な部分であると同時に、Project Zero に関して私たちが採っている行動方法でもあります。他にも Software Group 関連でこのモデルに従っている例はあると思います。その考え方を説明すると、例えば私は WebSphere に取り組んで約 10 年になります。その間に数々の優れた実績や画期的な実績が WebSphere にはありました。革新的なことの数々です。もちろん場合によっては、それほど有効でないこともあります。このように、WebSphere のような製品を長年開発してきたなかで学んだ教訓の歴史には、いわゆる時間的な記録というものがありません。WebSphere でどのように数々の実績を達成してきたか、その方法を記した文書記録はまったくないのです。

当初から参加している人は私を含め数人いるので、歴史家の一団としての役割を果たすことができますが、それよりも望ましいのは、そしてカスタマーにとって興味深いと思うのは、何かを行うためにどうしてその特定の方法を採ったのか、そしてそこに至るまでの思考プロセスと活動を調べられるようにすることです。これを何かに例えるとすれば、Google で WebSphere の歴史を検索すると、何が起こったか、そしてそこに至るまでの過程が分かるようにしたいということです。つまり、開発をオープンに行う理由の一部には、プロジェクトの歴史をすぐにでも公表して、人々が調べられるようにするとともに、プロジェクトの方向に影響を与えたいということがあります。

そこで登場するのが、コミュニティー主導型という概念です。ソース・コードを外部のバグ追跡システム、エンジニアに公開し、そしてフォーラム、ブログによってアクセスできるようにすることによって、ある種の索引付けと検索が可能な情報基盤を確立し、カスタマー、プロジェクトに新しく参加したエンジニア、コントリビューターが情報を追跡できるようにします。さらに重要なことには、自分たちのチーム自体の枠や内部アーキテクチャー委員会の枠を超えた見識を得ることができたり、評価、ランク付け、ポーリング・ツールといったツールを使って、ユーザー・コミュニティーの考えを照会することが可能になります。そしてできれば、重要なアイデアに関してはこれを繰り返します。このことを、私はソフトウェア開発のダーウィン的手法と呼んでいます。いわゆる、「適者生存」という手法です。

Ruterbories: なるほど。

Cuomo:アイデアが公開されれば、後は素早く事が運びます。定着して生き残るアイデアもあれば、定着しないアイデアもあります。脇に追いやられたアイデアは、定着したアイデアを重視している間に消えてなくなります。これがいわば適者生存といったもので、この手法こそが、より一層アジャイルな開発環境を構築します。こういった理由から、コミュニティー開発が重要だと思うわけです。このようなアジャイル開発の概念を持ち込み、プロジェクトの歴史をすぐにでも文書記録にすることで、私自身も含めた歴史家の一団が 10 年後に出てきて事の次第を説明する必要はなくなります。そしてより広範な関連コミュニティーの声によって、方向を決定できるようになります。

Ruterbories: そのとおりですね。

Laningham: Denise、私に質問させてください。今の Jerry の説明から思ったのですが、確かに IBM はコミュニティー主導型開発においてある程度リーダーシップとしての役割を果たしています。しかし今の説明からすると、我々は何らかの進化する勢力に反応していて、その勢力に必要不可欠なのが全体的なコミュニティー主導型とも受け取れます。そういうことなのですか?

Cuomo: そうですね。IBM がコミュニティー主導型を始めたのはずいぶん前のことになります。IBM はかつても今もオープン・ソースにおけるリーダーです。進行中の活動も多数あります。Linux をサポートしているのは極めて明らかですし、Apache とその組織をサポートしているのも極めて明らかです。Eclipse についても然りです。このように、オープン・ソースに関連する IBM の実績は知れ渡っていて、理解されています。その点で、IBM は常にリーダーでした。

今はそれをステップ・アップしようとしている最中です。つまり、私たちがこれほど信頼を置いているオープン・ソース・モデルをより広く適用しようとしています。オープンであること、そしてエンド・ユーザーとの直接の対話こそが極めて重要な点で、それを一層広めることは、私たちが切望してきたことであり、努力してきた目標でもあります。そこで現在はオープン・ソース・モデルを商用ソフトウェア開発の分野に移し、商用ソフトウェア開発をコミュニティー主導型の形式で進める実験を行っているところです。全体を通して、ソフトウェアがオープンであること、そしてソフトウェア開発プロセスがオープンであることこそが、私たちが確信するものであり、広げていきたいものだからです。目下の問題は、どの製品を対象にするか、そして製品の背後にある技術にどのようにライセンスを与えるかということだけです。言ってみれば、オープンであることと、無料であることを切り離して考えています。

Laningham: なるほど。

Cuomo: 無料であるということは、プロジェクトのさまざまなライフサイクルにおいて重要だと思っています。自由に着想を得て意見交換し、そして自由にソフトウェアを閲覧してアクセスすることができるからです。そのうちに、そのプロジェクトの性質に応じて、IBM はコミュニティーだけで開発を行うのではなく、広く普及させることが重要であるかを判断し、それに応じてライセンスを与えることになります。ビジネスの中核になるだろうと判断すれば、その判断に従ってライセンスを与えるでしょう。オープンであることと無料であることの概念を切り離し、興味の対象としているモデルを確実にこの両方の領域に保つことが、私たちが目指していることなのです。

Ruterbories: 今のとても詳細な説明で、オープンであること、開発者との直接的な対話についてよくわかりました。先ほど、簡素化がこの Project Zero の一環であるという話もしていましたが、その点についてもう少し詳しく話してもらえますか?

Cuomo: そうですね、もう少し Project Zero とは何かを説明させてもらうと、例えば一言でこのプロジェクトを表すとすれば、「徹底的な簡素化」といったところです。具体的にはアプリケーションのビルドについての徹底的な簡素化です。最近 M.I.T. Media Lab の John Maeda が書いた本が出版されましたが、そのなかで、彼が簡素化の法則について説明しています。私たちは John の功績と彼の法則のいくつかからアイデアを得ています。私たちが目指している目標の 1 つは、簡素化をアプリケーションのビルドとデプロイに適用することです。Zero はいくつもの次元での簡素化の取り組みを表しており、そのうちの 1 つが、アプリケーションのビルドの簡素化です。前にも言ったように、Web をプラットフォームとして使うという Web 2.0 の概念は、簡素化の重要な側面となっています。

もう 1 つ、簡素化の重要な側面には、アプリケーションのビルドのスクリプト化という概念があります。PHP や Java ベースのスクリプト技術を使った私たちの作業は Groovy と呼ばれます。Web をプラットフォームとして使用し、スクリプトを使用し、構成に規約を使用し、REST とフィード技術、そして RSS、ADAM などの HTTP 技術をこの環境内に組み込まれたサービスやコンポーネントとの対話を行う手段として使用します。

Laningham: Jerry、Project Zero は活動を開始したばかりで、コミュニティーの部分については確かに始まって間もないと思いますが、開発者はどうやって参加するのですか?開発者が今すぐできる活動と言ったら何ですか?

Cuomo: 今すぐ開発者が参加する方法としては、まずコミュニティーのサイト www.projectzero.org にアクセスすることです。サイトにアクセスして、そこに掲載されている資料を読み、サンプルを調べ、環境をダウンロードしてスクリプトをいくつかビルドして組み立ててみます。例えば、一連の REST サービスや PHP をビルドしてみたり、あるいは Groovy を使ってみるといったことです。それを何人かのエンジニアと共有することが、コミュニティーに参加する絶好のきっかけとなります。

Laningham: なるほど。サイトへのリンクはポッドキャストの参考資料に掲載しておきます。Denise、あなたもきっとここにリンクを載せるのでしょうね。

Ruterbories: もちろんです。有益な情報を聞かせてくれてどうもありがとう、Jerry。とても役に立ちます。

Laningham: 締めくくりの言葉やまだ説明していないこと、言っておきたいことがありますか、Jerry? Denise のほうは、まだ質問がありますか?

Ruterbories: ありません。

Cuomo: このプロジェクトはある意味、気持ちの持ち方に関するものです。つまり行動です。会社として、エンジニアとして、科学技術者としてどのように行動するかということに関連しています。このプロジェクトにはそういった部分があるのは確かです。そして Web 2.0 の動きを見てみても、やはりその目的は 1 つだけではなく、このような多くのことを組み合わせることを目的としています。

今日を表す包括的な言葉は Web 2.0 で、これは時間とともに進化していくと思いますが、今が IT 産業に身を置くにはいい時期だと思います。私たちはさまざまな分野でのルネッサンスを目の当たりにしているからです。これが、今まさに体験していることで、技術だけに限らず、さまざまなものが関わってきます。IBM 内でまだ作業が行われていて、確実に標準にかなったものにしなければならないのは、新しいビジネス・モデルとその適用方法です。そこで、行動についての話、技術についての話をしましたが、これを完成させるためにはまず正しいビジネス・モデルを定着させる必要があると思います。また、研究する余地もたくさんあると思います。

Ruterbories: Jerry もご存知だと思いますが、Web 2.0 に関わる開発者たちのために、developerWorks では優れた情報源として Web Development ゾーンを用意しています。ここにアクセスすれば、利用可能な技術とツールを実に詳しく調べることができるので、私はすべての人にこのゾーンにアクセスすることを奨励しています。

Laningham: いい指摘ですね、Denise。この話題を持ち出してくれてありがとう。素晴らしい話題です。このゾーンは大きな活性力となり、コミュニティー主導型のアイデアや開発などあらゆる可能性について取り上げています。「コミュニティー」とは偉大な言葉です。これについてはできる限り話題にしていきたいと思っています。今日は楽しかったです、Jerry。お忙しいところお時間を割いてくれて感謝します。

Cuomo: どういたしまして。

Laningham: Denise も参加してくれてありがとう。また近いうちに出演してくれることを楽しみにしています。

Ruterbories: ありがとう、Scott。ありがとう、Jerry。

Laningham: 今日の出演者は Jerry Cuomo、IBM Fellow でもある WebSphere の CTO でした。また、オープン・ソースと Ajax の developerWorks 編集長を務める Denise Ruterbories にも出演してもらいました。このポッドキャストに関する説明は、ibm.com/developerworks/podcast をご覧ください。developerWorks のすべての方々のホストは私、Scott Laningham でした。ありがとうございました。



参考文献



著者について

Scott Laningham

developerWorks ポッドキャストのホスト、Scott Laningham は以前、developerWorks ニュースレターの編集者を務めていました。IBM に入社する以前は、Public Radio International で放送されたニュース番組の受賞レポーター兼ディレクター、American Communications Foundation と CBS Radio のフリーランス・ライター、そしてソングライター兼ミュージシャンの経験を持ちます。




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