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オープン・ソース・ライセンシング、第1回:目的

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レベル: 初級

Martin Streicher (mstreicher@linux-mag.com), Editor in Chief, Linux Magazine

2005年 10月 04日

「オープン・ソース・ライセンス」という用語は、ソフトウェアに固有の著作権を広く、公平に、可能な限り少ない制限で許諾する多数の取り決めを指しています。2回シリーズの第1回にあたるこの記事では、著作権についての見解を述べ、オープン・ソース・ライセンスの目的を説明します。このシリーズの第2回では、GNU Public LicenseやApache Licenseなど、個別のライセンスを見てみます。
これは法律上の助言ではありません

このシリーズは、オープン・ソース・ライセンシングの基本を読者に紹介することを目的としています。オープン・ソース・ライセンシングも著作権も、確立した法律ではありません。どちらも、このシリーズの発表後も引き続き進化し続けるでしょう。その結果、このシリーズの説明が時代遅れになったり、間違ったものになったりする可能性もあります。

また、このシリーズの発行に関与した著者も編集者も、免許を持つ法律家ではありません。このシリーズは法律上の助言を意図したものではありません。したがって、著作権問題に関する決定を下すには弁護士に相談すべきであり、このシリーズに記載されている情報に基づいて決定を下さないでください。

1600年代、英国政府は間断ない海賊の脅威に直面していました。事実、10年足らずの間にバーバリ海岸の海賊船は約500隻の商船を襲い、船を略奪し、乗組員と乗客を奴隷として売り飛ばしました。海賊たちは大手を振って徘徊し、沿岸の集落を荒らしまわり、壊滅状態に追い込むことさえ少なくありませんでした。

しかし、その当時、儲けていた略奪者は、海賊だけではありませんでした。1436年のヨハネス・グーテンベルグによる印刷機の発明により、書籍の制作、さらには海賊版の制作も非常に簡単になりました。組み替え可能な活字印刷機を使用していたスコットランドの盗作者たちは、オリジナルより30~50%も安い価格で不正コピーを売ることによって、イギリスの書店を「略奪」していました。

そこで、1662年に制定された出版許可法 (Licensing Act) に始まり、1710年のアン法(Statute of Anne)によって改善され、1774年のドナルドソン対ベケット事件により一層定義が明確になった歴史を経て、イギリス議会は現代の「著作権」の概念の元となりました。この法律が創作の著者または所有者に特定の独占権を与えることになりました。

特に、議会はコピーを製造する権利として「著作権」を生み出しました。アン法は、著者または正式に指定された著者の代理人は特定の(物理的な)印刷機で特定の書籍を独占的に複製して、それらのコピーを一般に販売することができると規定しました。要するに、「著作権」は、著者に独占権を与えて、それ以外の者が著作物の無許可コピーを印刷することを違法行為としました。

しかし、1662年の 出版許可法 (Licensing Act) に見られる「ひいき現象」に対して、アン法の立案者は著者の独占権の期限を21年にすることにしました。ドナルドソン対ベケット事件で主張された期限をもとに、アン法では、「著作権」の期限が切れた後は、該当する著作物は一般大衆が自由に使用でき、出版業者が自由に複製できると定められました。言い換えると、著者の「著作権」の期限が切れた後、著作物は「公有財産」に入るのです。これは、1774年以前には存在しなかった斬新で魅力的な概念でした。

著作権は(今でも)基本的なことは同じです

アン法が成立してから約300年後の今日でも、著作権についての基本的な見解は同じであり、著者の権利は、新しい著作物を生み出すための不可欠な原動力として広く知られています。実際、著作権は、新しいテクノロジーを包含し、あらゆる種類の画期的な形態の創作を保護し、著者の独占権を保護するために、1710年以来、何度も大幅にその対象を広げてきました。

たとえば、1886年の国際著作権法(International Copyright Act)は、著者に翻訳を行う独占権を与え、1911年の英国著作権法(BritishCopyright Act)は、著作権保護の対象を録音と建築物に広げました(同様に、1909年の米国著作権法の改訂では、著作権保護の対象を音楽とあらゆる著作物に広げました)。さらに時代を下って、1976年の米国著作権法の改訂では、著作権保護の対象を未発表の著作物に広げ、どういった事項が「公正使用(fairuse)」を構成するのかを成文化しました。また、1998年には、米国の(悪名高く、ときにあいまいな)デジタル・ミレニアム著作権法(DigitalMillennium Copyright Act)は、他の改正に加えてとりわけ船体デザインに保護を与え、コンピューター・ユーザーが保守目的でコンピューター・プログラムを一時的にコピーすることを認めました。著作権は、今では、写真、映画脚本、画像(たとえばAdobePhotoshopなどで作成された画像)、タイプフェース(活字書体)、Webページ、サウンド・エフェクト、映画などを保護しています。

もちろん、著作権はもう一つの形態の著作物である (著作物としてはかなり変わった形態ではありますが) ソフトウェアの保護にも拡張されています。小説家、画家、音楽家と同じように、著作権はソフトウェア・プログラムの作成者にも特定の独占権を与えています(著作権は、他者が著作物にできることを制限するので、しばしば、負の権利(negative right)と呼ばれています)。




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ソフトウェア開発者の権限

具体的には、ソフトウェア開発者の権限には(他の著者と同様に)、以下のものが含まれます。

  • 著作物のコピーを作成して、それらのコピーを販売する権利。これには、電子コピーと実行可能なバイナリデータも含まれます。
  • 派生版(1つ以上の既存の著作物に基づき、オリジナルとみなされる著作物)を作成する権利。
  • 著作権によって与えられた権利を他者に販売または譲渡する権利。

注:著作権は、その他の権利も作成者に与えます。合衆国法典第17編を参照してください。また、著者は、個人でもグループでもかまいません。グループの場合、著作物が共同で作成され、その著作物全体が使用されることを目的としている場合、その著作物は共同著作物とみなされ、著作権によって与えられる権利はそのグループによって管理されます。

これらの権利によれば、ソフトウェアの著者は、その唯一の権利所有者であり、コードの複製、販売、および再利用に関してすべての権利を持ちます。興味深いことに、著者は著作権によって与えられた権利を放棄できません。ただし、著者は、著作物から発生する権利をすべてまたは個別に、自らが規定した条件に従って、譲渡または許諾することができます。




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コードのライセンス

「ライセンス」という用語は、基本的に「許可」を意味します。著作権保持者、すなわちライセンサーは、他の個人または団体、すなわちランセンシーに対し、一般には、特定の期間にわたり、特定の地域(北米やスペインなど)で、何らかの対価(金銭による賠償を含む場合があります)と引き換えに、著作物を使用する特定の許可を与えます。金銭が対価の一部である場合、ライセンサーは1回限りの支払いかロイヤルティー(著作権使用料)、またはその両方を請求することができます。

また、「ライセンス」という用語は、一般に、ライセンサーとライセンシーの間の契約条項を定めた(法的)文書を指すためにも使用されます。この意味では、ソフトウェア・ライセンスとは、ソフトウェアをどのように使用できるかを定めた契約書です。たとえば、プロプライエタリー・ソフトウェア・ライセンスでは、プログラムを実行する許可をユーザーに与えますが、ソース・コードを表示する許可は与えないという場合もあります。

「オープン・ソース・ライセンス」という用語には、ソフトウェアに固有の著作権を広く、公平に、可能な限り少ない制限で許諾を目的とする多数の取り決めが含まれます。おそらく、Berkeley Software Distribution(BSD)ライセンスのことを聞いたことがあるでしょう。これは、1993年に作成された最初のオープン・ソース・ライセンスです。その他の有名なオープン・ソース・ライスとしては、GNU GPL(一般公衆利用許諾契約書)、Apache License、Sun MicrosystemsのCDDL(共同開発および頒布ライセンス)などがあります。実際には、オープン・ソース・イニシアティブ(OSI)のWebサイトには、50以上のオープン・ソース・ライセンスがリストされています。

これらのオープン・ソース・ライセンスはそれぞれ、特定の種類の内容(たとえば、あるものはソフトウェア、あるものは文書、さらにあるものは画像やデータなど)の特定の目的に応じて作られていて、その条件もさまざまですが、5つの基本目的は共通しています(弁護士Lawrence Rosenの「Open Source Licensing: Software Freedom and Intellectual Property Law」より許可を得て引用)。

  • ライセンシーは、いかなる目的でもオープン・ソース・ソフトウェアを自由に使用することができる。
  • ライセンシーは、ライセンサーに使用料を支払うことなく、オープン・ソース・ソフトウェアのコピーを自由に作成することができ、それらのコピーを自由に配布することができる。
  • ライセンシーは、ライセンサーに使用料を支払うことなく、オープン・ソース・ソフトウェアの派生版を自由に作成することができ、それらの派生版を自由に配布することができる。
  • ライセンシーは、オープン・ソース・ソフトウェアのソース・コードに自由にアクセスして、使用することができる。
  • ライセンシーは、オープン・ソースと他のソフトウェアを自由に組み合わせることができる。

すでに述べたように、ソフトウェアに内在する権利を著者が放棄することはできず、譲渡または許諾しなければなりません。ここでは、5つの基本目的すべてが「ライセンシー」という語から始まり、それぞれ特定の許可がライセンスの条件に基づいてのみ与えられることを宣言しています。ライセンシーは、条件に同意して規定されている権利を行使することができます。あるいはソフトウェアを使用しなくてもかまいません。

目的1は充分に明確ですが、その範囲は広く、深いものがあります。オープン・ソース・ソフトウェアでは、ライセンシーによるソフトウェアの使用状況の監査、適用の妥当性の証明、および導入の文書化を必要としません。

目的2も明確ですが、この権利付与には述べられていないことも重要です。すなわち、目的1と一貫して、目的2はオープン・ソース・ソフトウェアの販売を妨げていません。したがって、コピーの作成と配布を自由に行えると同時に、それらのコピーを自由に販売することもできます。

すでに述べたように、派生版とは、既存の著作物に基づくものの、新しい著作物とみなされます。目的3は、前の2つの目的に基づき、ライセンサーは新しい著作物を作成し配布する権利について金銭を請求できず、派生版に対していかなる制限を課すこともできないことを明確にしています。

派生版ソフトウェアをオリジナル版の基盤ソース・コードなしに作成できることはまれです。目的4は、オープン・ソース・ソフトウェアはトランスペアレントで、無償のソース・コードとして使用できなければならないと規定しています。

最後に、目的5は、これまでの目的に基づき、オープン・ソース・ソフトウェアを他のソフトウェアと組み合わせることをライセンシーに許可しています。しかし、さらに重要なことは、目的5は、ユーザーに対する制限を強制していないということです。ユーザーは、オープン・ソース・ソフトウェアを他の任意のソフトウェアと組み合わせることができます。

これらの目的はすべて生産的であり、ライセンサーまたはライセンシーによる規約の追加を禁じることはほとんどありません。たとえば、ライセンサーはライセンシーとの相互利益を要求できます。すなわち、ライセンシーがソフトウェアを販売する場合、ライセンサーと結んだ規約に従わなければならないという規約を課すことができます。それでも、オープン・ソース・ソフトウェアであることに変わりはありません。ライセンシーは、ソフトウェアの販売から利益を得ることができます。ライセンサーは、複数のラインセンス、すなわち、おそらく1つはオープン・ソース、もう1つはプロプライエタリー・ライセンスでソフトウェアを販売できます。たしかに、後者のライセンスはオープン・ソース・ライセンスではありませんが、オープン・ソース・ライセンスは他の同時ライセンス規約を除外するものではありません。

OSIが承認したライセンスが少なくとも50もあるというのは驚くべきことに思えるかもしれませんが、内容、目的、ライセンサーのニーズに応じて、ライセンスは多様です(それでも、OSIは承認ライセンスの数が多すぎると認めていて、できれば6つか7つに減らしたいと考えています)。GNU GPLは、Apache Licenseとは違う形でオープン・ソース・ソフトウェア・ライセンシングの目的を実現していますが、どちらのライセンスも著作権(および契約)法にしっかりと根差していて、手段は異なっても、目指しているところは同じです。




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正しいライセンスの選択

すべてのオープン・ソース・ソフトウェア・ライセンスが等しいわけではない

オープン・ソース・ライセンスはいずれも同様の目的を共有していますが、一般に、それぞれのライセンスが異なる手段で目的を達成しています。制限がゆるやかなライセンスもあれば、かなり制限が厳しいものもあります。言い換えると、2つのオープン・ソース・ソフトウェア・パッケージをダウンロードし、コンパイルし、1つのアプリケーションにリンクすることができるからと言って、コードを結合しても違法ではないとは限りません。場合によっては、あるオープン・ソース・ソフトウェア・ラインセスの仕様が、他のライセンスの規約と相入れない場合があり、さらには正反対の場合さえあるかもしれません。

このシリーズの第2回では、ライセンス間の互換性問題をさらに探る予定です。とりあえずは、異なるオープン・ソース・プロジェクトのコードを組み合わせる前に、それぞれのオープン・ソース・ライセンスを弁護士とともに検証してください。

オープン・ソース・ソフトウェア・プロジェクトを開始する場合や、既存のソフトウェアをオープン・ソース・ライセンスでリリースしたい場合、以下のことを考慮してください。

  • あなたの著作物は、どのような意味でも自由ですか。たとえば、あなたの著作物は別の著作物から派生したものですか。もし、そうならば、ライセンシーとしてどのような規約に同意しましたか。ライセンシーに与える権利がすべて自分に帰属することを証明できますか。
  • 誰がソフトウェアの著作権を保持していますか(または、保持することになりますか)。著作物は共同著作物ですか。
  • ライセンシーがソフトウェアを改善した場合、そのソフトウェアにアクセスしたいですか。その場合、どのようにして相互利益を実現したいですか。
  • オープン・ソース・ソフトウェアから利益を得たいですか。どのようにして?

このほかにも、考慮しなければならない要素が数多くあります。プロジェクトの範囲と規模によっては、有能な弁護士を雇って問題に対処した方がいいかもしれません。

逆に、あなたのプロジェクトのニーズを満たす既存のオープン・ソース・ライセンスが見つかるかもしれません。OSI Webサイトにはさまざまなライセンスがありますし、多くのソフトウェア会社が独自のライセンスを持っています。たとえば、Berkeley DBの製造元であるSleepycat SoftwareとMySQLデータベースの作成元であるMySQL ABは、「デュアル・ライセンス」を作成しました。これは、オープン・ソース・ソフトウェアについては制限のゆるやかなオープン・ソース・ライセンス規約でコミュニティーに提供し、利益目的のソフトウェアについては商用ライセンスで、製品および生産環境として使用する企業に提供するものです。

このシリーズの第2回では、いくつかのオープン・ソース・ライセンスを調べて、それぞれの利点と義務を見てみます。これは、あなたが自分のプロジェクトでオープン・ソース・ソフトウェアを採用するにしても、あるいは次に大規模なオープン・ソース・プロジェクトを立ち上げるにしても、必要な情報です。



参考文献

学ぶために

製品や技術を入手するために
  • 皆さんのオープンソース開発プロジェクトを、IBM trial softwareを使って革新してください。ダウンロード、あるいはDVDで入手することができます。


議論するために
  • developerWorks blogsに参加して、developerWorksコミュニティーの一員になってください。


著者について

Martin StreicherはLinux Magazineの編集長です。以前はBerkeley Systemsのエグゼクティブ・プロデューサーとして、YOU DON'T KNOW JACK(ゲーム)やAfter Darkを含め、様々な賞を受けたソフトウェアを開発してきました。彼はPurdue Universityにて、コンピューター・サイエンスで修士を取得しています。卒業後初めての仕事は、CONVEXスーパーコンピューター用のUNIXプログラミングでした。




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