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オープンソースで行こう!: 第5回 達人たちの秘密の隠れ家

デブサミ、YLUGとは?

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レベル: 初級

ITmedia, Writer

2007年 5月 11日

OSS開発では、多様なコミュニティーによって業界横断的なイベントも多数行われています。ここでは、技術系の勉強会、会合を主宰されているお二人にインタビューし、コミュニティー活動の魅力を伺いました。

OSS開発にたずさわるメリットの1つとして、コミュニティーでの情報交換が挙げられます。最近のシステムは、オープンシステムの流れを受けて、標準的な技術要素の組み合わせでできています。そのため、標準技術や動向を知らなければ開発できません。OSS開発では、多様なコミュニティーによって業界横断的なイベントも多数行われているため、情報のアンテナとして有効です。ここでは、技術系の勉強会、会合を主宰されているお二人にインタビューし、コミュニティー活動の魅力を伺いました。

日本最大のオフ会? Developers Summit(通称デブサミ)

Developers Summit (以下、デブサミ: 図1 )というイベントをご存じでしょうか? 年に一度、開発者たちが一同に会して技術論を戦わせたり、情報交換をしたりするサミット(会合)です。2003年に第1回が開催され、今年2月に行われたDevelopers Summit 2007ではのべ3000人の開発者を動員しました。


図1. デブサミ2007

デブサミは、主催・運営こそ翔泳社というメディア企業が行っていますが、企画の多くは、開発者たちからなる委員会で行われています。入場は無料で気軽に参加できるイベントです。

今回は、この日本最大のオフ会ともいえるデブサミを、第1回から取り仕切っている翔泳社 出版局マーケティング事業部の 岩切晃子さん にお話を伺いました。


翔泳社 出版局マーケティング事業部 岩切晃子さん

――  コミュニティーにかかわるようになったきっかけからお聞かせいただけますか?

岩切  わたしはもともとは雑誌作りにたずさわっており、米国のソフトウェア開発事情や技術情報を伝える雑誌「Dr.Dobb's Journal 日本版」(DDJJ)関連の仕事をしていました。その一環で、読者ニーズの掘り出しのため、読者をサンプリングしようと人に会っていたのがきっかけです。

そういうことをやり始めたころは、まだわたしも若くて右も左も分からなかったのですが(笑)、いろんな人と会っているうちに、だんだん分かってくるんですね。「この人の言葉は力がある」とか、「この人は正しいことをやろうとしている」とか、「先見の明がある」とか。

それでコミュニティーにもちょくちょく顔を出すようになったんです。もともとは読者を理解するという目的で始めたことですが、そういう風に人に会うということは、いまの時代を理解するためだけでなく、これから言葉を発信する人を見つける場所として、ライターを発掘する場でもあるんだという認識でやってきました。

――  デブサミを始められたのはどうしてですか?

岩切  4年ぐらい前なんですが、ちょうどオフショアが起ち上がってきて、日本のデベロッパーはいらなくなるんじゃないの? という不安があった時期なんです。業界はどうなっちゃうんだろうって。われわれ本を作ってる人間からすると、業界が発展しないと本って買ってもらえないじゃないですか。そういうこともあって、たった2日間ですけど、業界の人と顔をつき合わせて、一緒に業界を盛り上げようというか、いま直面している問題を考えようというのがそもそもの趣旨です。

まぁ、もともとはわたしの発案じゃないんですけど。たまたまわたしがコミュニティー活動を続けていたこともあって、現場を引き受けることになりました。同じようなイベントって、ITベンダーの各社さんもやられているんですよね。でも、ITベンダーさんはサービスを売るという目的があるので、やっぱりちょっと現実から外れるところがあるのかなと思うんです。逆にコミュニティーで聞こえる声っていうのは、すごく切実な現実を表している気がしてならなくて。コミュニティーベースでそういう生の言葉をしゃべってもらえる場(イベント)があった方がいいんじゃないかなと頑張ってきました。

――  運営はどのようにされているんですか?

岩切  主催者は翔泳社ということになっていますが、わたしの意識としては、なんちゃってNPOみたいな感じで、お祭りのようなものととらえています。実際に企画を立てたりするのは、開発者の皆さんからなるコンテンツ委員会というところで行われていますし、毎年いろんな企業さんに声をかけて、皆で一緒にやりましょうよという感じですね。

会社でやってるんだけど会社じゃないみたいな(笑)。当然会社ですから、ある程度利益がでなければまずいのですが、それでも「こういうことをやりたい」とか、「あの人を呼ぼう」とか。社内からも社外からもいろんな言葉が飛んできます(笑)。せっかくやるんだからそうじゃないとやる意味がないですよね。

――  楽しまないと、ということですね(笑)。

岩切  そうですね。ありがたいことに、最近ではスポンサーになってくださる企業でもデブサミのことをよく理解してくださっていて、協力しながらいい関係を築くことができていると感じています。

――  メーカーとコミュニティーの橋渡しみたいですね。

岩切  そうですね。……まだ実際には、わたしたちもそれほどうまく企業とコミュニティーの出会いをサポートできてはいないのですが、実際、企業とコミュニティーがうまくコラボレーションする例も増えてきています。例えば、オープンソースではないですけどSQL Serverユーザーグループなんかは、製品のβ版にフィードバックしたりしています。オープンソースでも、PostgreSQLユーザー会やOpenOffice.orgのユーザー会では、ドキュメントの整備などで製品にコミットするような動きがあるという話を聞いたことがあります。

コミュニティー活動というと、従来のような意見交換、勉強会を想像しますが、それにプラスして、製品に対してある程度意見を言っていこうという動きが出てきているように思いますね。

――  なるほど。コミュニティーの力が、経済活動にも影響を与えはじめているのですね。

岩切  デブサミのゴールは、個人的には「人の流動化」だと思っています。会社という組織と個人の間に、コミュニティーがあったりブログがあったりする。今後はそういう関係になっていくんじゃないかなと。個人の視点からすれば、コミュニティーは自分がどういう立ち位置にいるのかを確認するものでもあるし、勉強する場でもあります。

会社というのはコントロールの世界で、逆にコミュニティーは関心、共感の世界ですから、コミュニティー活動をすることで自分の関心を増やしたり、また新しい世界に広がっていけると思うんですよね。そしてそれはきっと、企業との関係の中でも生きてくるんじゃないかと思います。デブサミでは、そういった関心、共感の世界、そして人間性の確立をサポートしていければ幸せと考えています。





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技術者のギルド? ――技術への指向でつながるYLUGコミュニティー

YLUG、横浜Linuxユーザーグループ は、1999年に発足し2007年のいまもなお活発に活動を続けているコミュニティーの1つです( 図2 )。YLUGでは、カーネル読書会という勉強会と宴会がセットになったイベントが人気で、コアなLinuxの技術やオープンソース技術の情報交換などが積極的に行われています。カーネル読書会を主宰されている吉岡弘隆氏(ミラクル・リナックスCTO)にお話をお聞きしました。


YLUG


カーネル読書会主宰 吉岡弘隆氏

――  YLUGやカーネル読書会の沿革をお願いします。

吉岡  YLUGの沿革についてですが、ホームページがありまして、そこに年表が載っています。これによると、「1999年1月15日、LSWG新年会にて、YLUGの初期メンバーが確定しました」とありますね。Linux Seminar Working Groupという別のイベントの飲み会の席でそういう話が出たのがきっかけのようです。あのころはちょうどLinuxブームで、全国に同じようなユーザー会ができていたころです。YLUGもその流れでできたものです。

――  吉岡さんは起ち上げ時にいらしたんですか?

吉岡  いえ、わたしは少ししてから参加しました。ただ、読書会自体はかなり初期からやっていました。年表によると、1999年の4月28日に「第1回カーネル読書会」とあります。

――  カーネル読書会を始められたきっかけは何だったんですか?

吉岡  「カーネルのソースコードを読んでみると面白いかな?」ぐらいの、気軽な気持ちでしたね。まぁ読書会といっても、1行1行読むというように真面目にやるわけでもなくて、実際にはLinuxにまつわるいろいろな話や情報交換が主ですね。最近では、Ottawa Linux Symposiumの報告であるとか、独NovellでSUSE LINUXを開発されている方に現場の雰囲気をリポートしてもらったりだとか、そういうことをしています。基本的に、当事者が自分のやっていることを発表するスタイルで、裏話なども聞けて面白いですよ。

――  どれくらいの人数が集まるんですか?

吉岡  参加者は30~50人くらいです。たいていは開催の2~3日前にメーリングリストでアナウンスし、参加希望を募ります。あまり早くにアナウンスすると、人が集まりすぎて会場があふれてしまうというのもあって、こういう形態で募集することが多いです。時間は、参加者が集まりやすい19~20時ごろにセミナーをして、その後宴会というコースです。

――  参加されている方はどういう人が多いのでしょう? やはり常連さんが中心ですか?

吉岡  常連はたしかに多いですが、新しい人も来られます。基本的には新規参入がないと活性化しないので、新しい人に入ってきてもらえるよう、いろんなことをやっています。例えばOpen Source Conferenceといった大きなイベントで出張読書会というのをやったり、ほかのグループと合同でイベントを開いて他流試合のようなことをしたり。

――  なるほど。たしかに最近は、どんな組織でも新陳代謝が重要という意見を見かけることがあります。しかし、お話をお聞きしていると、吉岡さんはだいぶ積極的に活動されていますが、ご自身のモチベーションはどこからやってくるのですか?

吉岡  楽しければ続くし、つらければ続かないですよね。あとはそういうイベントに参加することで勉強になりますし、情報交換をするのは知的好奇心を刺激します。わたしは昔シリコンバレーにいて、Silicon Valley Linux User Group(SVLUG)というのに入っていたんです。当時は突然オープンソースというものが現れた時期でして、何とも言えない熱気を持っていたんですね。それで、1999年ごろ日本に帰ってきて、SVLUGのように人材交流の場所があればいいなと思っていました。

――  シリコンバレーではずいぶん刺激を受けられたでしょうね。日本のエンジニアと米国のエンジニアでは何か違いはありますか?

吉岡  これは過度の一般化かもしれませんが、米国の技術者は、技術に対して忠誠心を持っているように思います。自分の持つ専門性に対して真面目というか、こだわりを持っているというか。日本の技術者は、会社に就職して、会社への忠誠心は持っているかもしれないですが、自分の技術に対する忠誠心のようなものが必ずしも高くない気がして、それがある種、日本の国際競争力を阻害しているんじゃないかと思うんです。

例えば日本でも、漫画家はずっと漫画家です。文学者は死ぬまで文学者で。また、スポーツ選手も引退するまでずっと、スポーツというものに対して自分の能力をピークで維持するわけです。でも日本のプログラマーは違う。日本では、会社がプログラマーにそういうものを求めていないですし、エンジニアの方も自分の専門性に対する自覚がないんじゃないかと。

一方で、米国のエンジニア、プロフェッショナルと呼ばれる人たちは、自分の専門性を極めるために、会社とは違う何かに、ある種属しているところがあるんですよ。で、そこを高めることによって、実は自分の価値を高めることにもなるし、会社にとっても優秀な人材を抱えることで価値が高まるわけです。そういうメカニズムが働かないと、少くともソフトウェアのような競争力の激しい分野では、国際競争力を維持できないと思います。

わたしは、プログラマーとしての専門性を高めて食べていければいいなと思っていましたので、それでカーネルやLinuxといったものでいろんな人と交流して勉強してみたいなと思っていたんです。だから、カーネル自体は自分の仕事と直接関係がなかったんですが、自分の専門性を高める部分で役立つんじゃないかと考えてコミュニティー活動をやってきました。

――  吉岡さんは ご自身の日記 に「47歳ではじめてカーネルコミュニティーにデビューしたぞ」と書かれていましたよね。

吉岡  そうですね。やろうと思えばやれるということを示せたと思います。Linuxカーネルにパッチを送るというと、難しそうで尻込みしがちです。でも、難しくてもやってみる。何でもいいからやる。そして、やってみると、案外うまくいくかもしれない。Linuxカーネルに限らず、何かを変えるというのは思ってるより難しくないですよ。そういうことをできる人が増えてくれば、最もっと世の中面白くなってくると思うんです。




参考文献



著者について

ITmedia




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